企業が持つハンコの中で、最も重要なものが「代表者印(丸印)」です。それでは代表者印はどのような役割があり、どのようなときに必要になるハンコなのでしょうか。ここでは代表者印の役割や会社印との違い、作成方法や紛失してしまった場合の対処方法などを解説します。
目次
代表者印(丸印)とは
代表者印(丸印)とは、経営者が会社の代表者として対外的に使用するハンコ(印鑑)です。このハンコは、会社設立の際に法務局に登録する必要があるため、すべての企業に存在します。ほとんどの会社が丸い印影のハンコを登録することから「丸印」と呼ばれることもあります。また、「会社実印」とも呼ばれます。
デザインの特徴として、印影が二重の円となっています。外枠には「〇〇株式会社」のように社名が配され、内枠には役職名(株式会社であれば「代表取締役印」、合同会社であれば「代表社員之印」、合資会社や個人商店であれば「代表者印」など)が彫刻される場合が多いです。
代表者印(丸印)の役割と利用シーン
代表者印は、会社設立の際に法務局に必ず届け出るハンコであり、契約など体外的な書面のやり取りで使用されるほか、企業の存在証明が求められる場面では、印鑑証明書の添付も併せて要求されることがあります。
▼代表者印を利用するシーン
- 各種契約書
- 登記申請書
- 代理人への委任状
- 官公庁への入札に関する届出書類
代表者印(丸印)と会社印の違い
このように、代表者印は重要な書類や取引に使われます。一方、ほとんどの会社では、個人が持つ認印のような役割がある「会社印」を用意しています。代表者印が一般的に丸い形状であるのに対して、会社印は四角の印影であることが多いため「角印」とも呼ばれています。印面には「○○株式会社」と会社名だけが彫刻されているものが一般的です。
角印は個人で小包を受けるときに押すようなハンコと同じような役目を果たします。例えば領収書や発注書のように大量に作られるもののフォーマットが決まっており数字部分を変更して利用する書類、法的には押印の必要がない書類などに慣習として利用されています。
会社印(角印)は、認印と同じような意味合いしか持っていません。つまり、角印では代表者の意思を表したものであるかどうかが明確にならないため、契約書に利用した場合に法的効力が認められない可能性があります。もし契約時に相手先が角印を使用していたり、打ち合わせの議事録や合意書などといった書類に角印を使っていたりする場合には、注意が必要です。必要に応じて代表者印の押印をお願いするようにしましょう。
代表者印の規格と作成時のポイント
法務局で登録できる印鑑の印影サイズには決まりがあります。「辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まるもの」と法令で定められています。そこで多くのハンコショップでは直径18mmから21mm程度のものを代表者印として販売しています。
ハンコの素材(印材)は木材やチタン、黒水牛の角などが多いものの、厳格に決まりがあるわけではありません。ただし、押印時に力の入れ加減で変形してしまい、印影にバラツキが出る恐れのあるゴム印は、代表者印として登録することができません。
彫刻する文字については、会社名と「代表取締役印」ないし「代表者印」を記すことが一般的です。
代表者印(丸印)の管理方法と紛失・盗難時の対処法
代表者印は企業にとって大変重要なハンコであるため、紛失しないよう厳重に管理する必要があります。また、紛失や悪用、盗難などのリスクを分散させるために、銀行印とは別の場所に保管しましょう。(なお、銀行印として登録するハンコは代表者印でも構わないのですが、紛失・盗難時に大きな問題となるため、銀行印は代表者印とは別に作成しておくとよいでしょう。)
さて、代表者印を登録すると「印鑑カード」の発行が可能になります。印鑑カードとは、印鑑証明書の取得に必要なカードです。リスクを分散させるためにも、印鑑カードも代表者印とは、別の場所に保管するようにしましょう。
▼代表者印を紛失してしまったら
代表者印の紛失に気がついたら、早急に管轄の法務局に届け出ましょう。具体的には、以下のような手続きを行います。
代表者印を紛失した場合
法務局で改印手続きを行います。新しい代表者印と、代表者個人の実印、そして代表者個人の実印の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)を法務局に持参して、改印届に必要事項を記載して届け出ます。この場合、印鑑カードは引き続き使用できます。
代表者印と印鑑カードを紛失した場合
法務局で改印手続きを行うとともに、印鑑カードの廃止手続きと、新たな印鑑カードの交付申請手続きが必要になります。新しい代表者印と、代表者個人の実印、そして代表者個人の実印の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)を法務局に持参して手続きを行いましょう。
印鑑カードを紛失した場合
法務局で印鑑カードの廃止手続きと、新たな印鑑カードの交付申請手続きが必要になります。代表者印を法務局に持参し手続きを行いましょう。
なお、会社の代表者自身が法務局で手続きを行えない場合、司法書士や従業員が代理人として手続きを行うことがあります。この場合、届出書類にある委任状欄に記載が必要です。
また、どこかへ置き忘れてしまった、あるいは盗難にあったなど、紛失時の状況によっては悪用される恐れもあるため、直ちに警察へ連絡しましょう。
そのほか、取引相手にも紛失したことを連絡しておきましょう。急ぎの契約についてすぐに押印できない可能性がある旨、また代表者印が変わる理由をあらかじめ伝えておけば、相手先も安心できるはずです。
電子化した書類への押印はどうする?
電子化した書類に関しては、基本的に押印は不要です。せっかくペーパーレス化したのにも関わらず、印刷して押印するのは意味がないことです。
電子契約の場合には押印の代わりに「電子署名」を行い、データが保存された日付や時刻を記録する「タイムスタンプ」を付与することで、非改ざん性や本人性を担保することができます。
また、作成した書類は電磁的記録(データ)としてハードディスクやCOM(電子計算機出力マイクロフィルム)などに保存します。紙で受領した書類はスキャンするなどして保存することができます。
書類の電子化や保存については、電子帳簿保存法によって認められています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
電子帳簿保存法とは?データ化できる文書の種類と適用に必要な手続き
代表者印(丸印)は会社で最も重要なハンコ
代表者印(丸印)は、経営者が会社の代表者として対外的に使用する重要なハンコです。会社設立の際に法務局に登録する必要があるため、すべての企業が保有しています。
また、会社印(角印)は個人が持つ認印のような用途のハンコで、代表者印を押すほどではないが、慣習として押印が必要とされているような場面で使用します。
代表者印を紛失してしまうと、悪用されるといったリスクもあるため、厳重な管理が必要です。銀行印と作り分ける、印鑑カードや銀行印と別々に管理するなどのリスク対策が重要となります。
特に近年ではリモートワークを導入したのにも関わらず、押印のためだけに出社を余儀なくされるケースが話題となっています。往復の交通費などのコストがかかる、従業員が移動に時間を費やすことで生産性が低下するなど、さまざまな弊害が生じます。こうした問題を解消する意味でも、電子契約は非常に有効です。ぜひ、こちらの記事もご参照ください。
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