注文書や発注書は聞いたことがあるけれども、注文請書という言葉にはあまりなじみがないという人は多いかもしれません。
日本では、注文書や発注書の発行後、注文請書のやり取りなしで、次に発行される書類が納品書や請求書というケースが珍しくありません。しかしもし注文請書の提出を求められたときのために、知識として頭に入れておいて損はないでしょう。
目次
注文請書の基礎知識
注文請書と言われてもピンとこないという人は多いかもしれません。そもそも「注文請書」と書いて、どう読むのかを知らない人もいるでしょう。注文請書の基本的なことについて紹介しますので、全く知らない人は読み進めてください。
そもそも注文請書とは?
注文請書とは一言で言えば、発注内容を確認・承知したという意味合いの文書です。発注者側から注文書や発注書と呼ばれるものが発行され、「発注を承りました」というかたちで受注者側が注文請書を発行するという順番です。
ただし契約は書面なしでも成立しますので、絶対に注文請書を作成しなければならないということはありません。単に受注者側で発行すれば、それで文書としては成立します。
「注文請書」の読み方
注文請書の読み方ですが、「ちゅうもんうけしょ」です。
「請書」の部分を「しょうしょ」や「せいしょ」と間違えがちなので、注意が必要です。読み方を間違えると、知らず知らずのうちに恥ずかしい思いをしてしまいます。また注文請書を常日頃から取り扱っている慣れた業者の中には、「請書」と略語を用いるところもあります。
発注請書との違い
業者によっては「発注請書」という言葉を用いることもあるかもしれません。注文請書とまた違った書類なのかと思ってしまうかもしれません。しかし両者は基本的に一緒の文書だと思ってください。発注書も注文書も同じものを指すのと同じような感覚です。ちなみに発注請書の読み方は「はっちゅううけしょ」です。
注文請書の役割とは?
注文請書を作成する目的は、発注者側の注文に対してその注文を受ける意思のあることを発注者側に表明することです。
一般的に商取引の流れですが、まず発注者が見積もりを依頼し、受注者が見積書を作成し発注者に送付します。見積書を確認し発注者側が納得できれば注文します。受注者は注文内容にのっとり商品やサービスを提供し、発注者が代金を支払います。
上の流れの中でも、発注者が注文し受注者が納品する流れで何もないと発注者側はこちらの注文を受注者側が受諾したか確認できません。そこで注文請書を発行することで、注文を受ける意思表示をかたちとして残せます。発注者側からみれば、注文請書を受け取ることで、受注者側がのちに「そのような注文は受けていない」「納期の話は聞いていない」などと言い逃れができなくなります。
注文請書の作り方
注文請書の読み方など基本的なところがわかったところで、具体的にどのように作成するか知っておくと、いざ先方から発行を求められたときにすぐに対応できます。
実は注文請書の書式に決まりはありません。しかし以下で紹介する項目は必ず記載しておくべきです。
注文請書の発行日
まずは注文請書を発行した日付を記載しましょう。書類の右上に記載するのが一般的です。注文請書の発行日ですが、注文書の発行日より前にならないように注意してください。注文請書は発注者の注文書を受けて発行されるものなので、注文書以前の日付になると注文の流れが成り立たなくなるからです。ですから注文書に記載されている日付以降にしてください。また注文書と発注請書の日付が同日であっても問題はなく、同じ日にしなければならない決まりもありません。
発注者の名称
日付の下、中央部分に「注文請書」とタイトルをレイアウトします。そしてその下部、左側に発注者の名称を記載するのが一般的です。発注元の社名や担当者の氏名を記載します。「御中」「様」などの敬称を入れるのも忘れないでください。注文書に記載されている発注者の名称をそのまま転用すれば問題ありません。発注者の名称欄には、先方の住所や電話番号を記載する必要はありません。
受注者の名称
発注者情報の右斜め下には、受注者側の情報を記載します。受注した会社の名称、担当者、所在地、電話番号、メールアドレスなどを記載すればよいでしょう。受注者側の方には所在地や連絡先を記載します。注文請書に記載されている内容に関して先方が問い合わせしやすくするためです。またすぐにコンタクトが取れるように、受注者側の担当者の名前も明記しておくと丁寧です。
注文内容
続いて記載する項目は注文内容です。注文した商品やサービス名、数量、単価、合計金額などを記載すればよいでしょう。もし複数の商品やサービスを受注した場合には、品目ごとに単価や数量を記載しておきましょう。そのうえで今回の案件における合計の数量や代金を記載します。
もし注文書と内容が異なるとトラブルのもとになりかねません。そこで注文書に記載されている内容をそのまま記載するように心がけましょう。最初に発注金額を記載し、その内訳、小計・消費税・合計金額の順番で記載すると先方もわかりやすいです。
納品条件
納品に関する条件を続いて記載しましょう。納品先や納期に関する記述です。特に納期に関しては明記しておくべきです。発注者側と受注者側とで納期の意思統一が図られていないとトラブルに発展する恐れもあるからです。事前に話し合って、合意した納期を明記してください。
支払条件
代金の支払いに関する項目を最後に記載しましょう。支払方法については、そこまで詳細な記述は必要ありません。「振込みにてお支払いのほどお願いいたします」程度の内容で十分です。振込みによる支払いの場合、銀行口座情報などは記載する必要はありません。納品後に請求書を別途送付し、その中に具体的な支払い先を記載しておけば問題ないからです。
注文請書には印紙税がかかる?
注文請書を作成するにあたって、収入印紙を貼る必要があるのか迷うところでしょう。注文請書の内容が一定の条件を満たしているのであれば、収入印紙を貼り付けなければなりません。どのようなときに印紙税が発生するのかここで紹介しますので、注文請書を作成する際に自分のケースは該当するかの判断材料にしてください。
印紙税について解説
印紙税とは、経済取引に基づいて作成された契約書や金銭の受取書に課税される国税のことです。該当文書に収入印紙を貼り付けることで納税するかたちです。
1.印紙税とは
印紙税とは、経済取引等に伴って契約書や領収書などの文書を作成した場合に、印紙税法に基づきその文書に課税される税金です。
印紙税は、印紙税法別表第1の課税物件表に掲げる20種類の文書に課税されることとされていて、この課税物件表に該当しない文書には課税がされません(課税対象外)。
また、「課税物件表」に該当しても印紙税が課税されない「非課税文書」があり、次のものが該当します。
(1) 契約金額が少額なもの等(別表第一の課税物件表の非課税物件欄に記載)
(2) 国、地方公共団体その他の非課税法人が作成するもの(別表第二非課税法人の表に記載)
(3) 日銀や独立行政法人など特定の者の作成する特定の文書及び国民健康保険法や厚生年金法などの特別法により非課税とされる文書(別表第三の非課税文書の表に記載)
つまり、印紙税は「課税物件表」に該当し「非課税文書」に該当しない文書(課税文書)に課税されることとなります。
印紙税の納税義務は課税文書を作成した時(領収書等であれば交付の時、契約書等であれば契約当事者の意思の合致を証明(契約者双方の署名押印が揃う)する時)に成立し、納税義務者は課税文書の作成者となります。
納税義務者は課されるべき印紙税相当額の収入印紙を課税文書に貼り付けることで印紙税を納付し、課税文書と貼り付けた印紙の彩紋とにかけて消印(割印)を押します。
【出典】https://profession-net.com/seminar/glossary/word-15/
印紙税が必要な文書
印紙税の課せられる文書ですが、請負契約のかたちで取引する際の文書が該当します。具体的には受注者が発注者の指示を受けて、何らかの制作や役務の提供を行う契約です。
請負についての契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」に該当します。
請負とは当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれます。
【出典】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7102.htm
一方、既存のものを売買する場合、これは通常の売買契約に分類されるので、基本的には印紙税の課税対象外です。単発の売買契約の場合は非課税ですが、継続的な売買契約を交わした場合で第7号文書に該当するときは課税対象となりますので注意しましょう。
請負契約になりますと、記載金額がある場合は階級定額税率が適用される第2号文書(請負に関する契約書)になり、記載金額のない請負契約で継続するものは、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)になります(通則3のイ)。
また、物品の売買契約になりますと、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き、不課税文書になります。
【出典】https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/12/01.htm
収入印紙を貼り付けなかった場合には過怠税がかかる
本来収入印紙を貼り付けるべき注文請書だったにもかかわらず、印紙を貼り付けずに交付すると過怠税が発生します。この過怠税ですが、納付しなかった印紙税の額の3倍に相当する額になります。かなり大きく余計な税負担になりますので、印紙税の対象文書かどうか自信がなければ税理士など専門家に相談するといいでしょう。
印紙による納付の方法によって印紙税を納付することになる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する過怠税を徴収されることになり、また、貼り付けた印紙を所定の方法によって消さなかった場合には、消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収されることになっています。
ただし、課税文書の作成者が所轄税務署長に対し、作成した課税文書について印紙税を納付していない旨の申出をした場合で、その申出が印紙税についての調査があったことによりその課税文書について3倍の過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その過怠税は、その納付しなかった印紙税の額とその10%に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の1.1倍)になります。
【出典】https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/21.htm
受注者が印紙税を負担するのが一般的
契約書に収入印紙を貼る場合には、受注者側と発注者側がそれぞれ負担するのが、民法上の原則です。しかし注文請書は契約書とは違って、双方保管するのではなく1部しか発行されない場合が多いです。そのため、作成者の受注者側が印紙税を負担するのが一般的です。
印紙税は、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うことになります。
ここにいう「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。
【出典】https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/05/01.htm
電子化した注文請書に対して印紙税はかからない
請負契約や継続的な売買契約に関わる注文請書には印紙税が課税されます。しかしこれはあくまでも相手に交付する紙の書類のみです。印紙税法には、「作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」 と規定されています。「作成」というと文書ができた段階と思われますが、印紙税法では「目的に従って行使する」ところまで含まれます。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
2 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。
【出典】https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=342AC0000000023
そして印紙税法の基本通達の中で、「作成の時」とは、「相手方に交付する目的で作成される課税文書」の場合は「当該交付の時」と規定されています。つまり、相手に交付されたタイミングで、目的に従って行使されたものとされます。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
2 課税文書の「作成の時」とは、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平13課消3-12、平18課消3-36改正)
(1) 相手方に交付する目的で作成される課税文書 当該交付の時
(2) 契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 当該証明の時
(3) 一定事項の付け込み証明をすることを目的として作成される課税文書 当該最初の付け込みの時
(4) 認証を受けることにより効力が生ずることとなる課税文書 当該認証の時
(5) 第5号文書のうち新設分割計画書 本店に備え置く時
【出典】https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/07.htm
では、注文請書を電子化している場合はどうなるのでしょうか。この場合、電子化された注文請書をデータで送信することになり、書面として交付することにはあたらないので、印紙税の課税対象にならないとされています。
まとめ
注文請書は一般の方からしてみると、聞き覚えのない言葉かもしれません。
しかし取引先によっては、注文請書を作成するように求められる場合もあります。注文請書の読み方や作り方がわからなければ、赤っ恥を書いてしまう可能性がありますので知識として覚えておいて損はないでしょう。
また印紙税法をはじめとした法律上のルールにのっとって作成する必要のあるものも見られるので、注文請書は慎重に作成してください。電子化すると印紙税の課税対象から外れるので、電子印鑑GMOサインなどの電子契約サービスの導入も検討してみてください。