ビジネスにおいて、保存しておかなければならない書類があることをご存じでしょうか。ここでは書類の保存に関する解説と、書類による期間の違いなどを紹介しています。保存の理由や保存期間を知り、正しく書類を扱いましょう。
目次
ビジネスで書類の保存が必要な理由は?
ビジネスにおいて、一部の書類を一定期間保存しておかなくてはならない理由は、法律に定めがあるからです。中でも、経理業務で扱われる書類には、その対象となるものが多く存在します。
ここでは、特に経理業務で扱われる書類について、どのようなものがあるか確認しましょう。
証憑書類
証憑書類は、取引を行ったことを記録し、正確性や真実性を証明するための書類のことで、保管義務が定められています。社内取引における証憑書類には、納品書、発注書、請求書の控えなどが該当し、社外取引の場合ですと、注文書、商品受領書、領収書がこれに該当します。こうした書類は、取引が口約束ではなく双方同意のもとで決定・締結したという証拠となるため、重要です。
帳票書類
帳票書類も証拠を残すためのものですが、証憑書類とは異なり、会社や店舗との間で行われた取引に関する記録です。帳票書類には、帳簿と伝票があります。帳簿は、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、買掛帳、売掛帳などが該当します。伝票には、入出金伝票、見積書、請求書や納品書、領収書が該当します。
これらの書類は税法上、保存期間が定められています。すべての書類が同じ期間というわけではなく、書類によって期間が異なることに注意が必要です。
保存期間が法律で決められている書類
前述のように、保存期間が法律によって定められている書類には、さまざまなものがあります。ここでは例として、国税関連、下請法関連、消費税法、人事労務関連について、保存期間の定められている書類を紹介します。
保存期間の定めがある文書の例
・国税関係の決算関係、税申告関連(法人税法)
国税関係の決算関係、税申告関連(法人税法) |
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書類の種類 |
期間 |
起算日 |
帳簿(決算書、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など) |
7年(白色申告、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては10年※青色申告) |
事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 |
書類(棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書) |
7年(白色申告、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては10年※青色申告) |
事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 |
・国税関係の決算関係、税申告関連(会社法)
国税関係の決算関係、税申告関連(会社法) |
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書類の種類 |
期間 |
起算日 |
決算書、仕訳帳、現金出納帳、総勘定元帳など |
10年間 |
各期末 |
・消費税法関連
消費税法関連 |
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書類の種類 |
期間 |
起算日 |
消費税に関する帳簿(請求書など) |
7年間 |
課税期間の末日の翌日から2カ月を経過した日 |
・下請法関連
下請法関連 |
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書類の種類 |
期間 |
起算日 |
下請事業者に対し製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容,下請代金の額等について記載した書類(5条書類) |
2年 |
— |
・人事労務関連
人事労務関連 |
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書類の種類 |
期間 |
起算日 |
労働者名簿 |
3年間 |
労働者の退職、死亡の日 |
タイムカード、残業命令書など労働時間の記録に関する重要な書類 |
3年間 |
最後の記入日(書類ごと) |
雇用保険に関する書類(被保険者関係以外の一切) |
2年間 |
完結の日(退職、解雇死亡の日) |
健康保険・厚生年金保険に関する書類(資格取得確認通知書、資格喪失確認通知書、被保険者標準報酬決定通知書など) |
2年間 |
完結の日(退職、解雇死亡の日) |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告 |
7年間 |
法定申告期限 |
なお、決算書、総勘定元帳、仕訳帳のように、法律によって保存期間が異なる書類の場合、保存期間が長い方に合わせて保存するようにします。
保存期間が過ぎた文書の扱い
保存期間が過ぎた文書は保存しておく必要がありません。しかし、保管が必要な書類には個人情報や取引記録といった、漏えいしてしまうと問題となる情報が多く記載されています。破棄を行う場合は、こうしたリスクを踏まえた上で、適切に行う必要があります。
書類の保存についてのよくある質問
書類の保存方法に決まりはありますか?
必要となった場合はすぐ取り出せるように保存しましょう。例えば、各書類を年度ごとに分け、ファイリングし、倉庫や棚などに探しやすく整理した上で管理します。重要な情報となるので、施錠管理を行いましょう。
紙と電子書類で保存期間に違いはありますか?
国税関連の申告書や帳簿などといった書類の場合、保存期間に違いはありません。
原則的に帳簿書類の保存は、紙によるものとされていますが、電子帳簿保存法により、「棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類以外の一定の書類」については、電子化したデータ、すなわち紙の書類をスキャナで取り込んだ電磁的データを保存することで、紙の書類を破棄できます。なお、スキャナ保存をおこなう場合は、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出する必要があります。
最初からパソコンで作成された帳簿書類で一定の要件を満たすものは、サーバーやCD-ROMなどに電子データのまま記録し保存することが可能です。こちらも事前に所轄税務署長に対して申請書を提出する必要があります。
なお、紙で保存している場合、6年目以降(一定の書類については4年目以降)、一定の要件を満たすマイクロフィルムでの保存が可能です。
保存期間が終了した書類はどのように処分すれば良いですか?
紙の書類の場合、記載された内容が外部に漏れないように廃棄する必要があります。目的と必要に応じて、シュレッダーや溶解といった方法を選択しましょう。
・シュレッダーによる廃棄
シュレッダーによって書類を裁断し、廃棄する方法です。自分で作業ができるメリットがありますが、大量の書類を廃棄する場合だと、時間がかかることや裁断後の廃棄などといった問題から不向きと言えるでしょう。また、目の粗いシュレッダーでは、書類を復元できてしまう恐れもあります。
・溶解による廃棄
書類を溶解することで読めなくする廃棄方法です。この作業は自分では行えませんが、専門業者に依頼することで、ダンボールに入れたまま預けたり、回収に来てもらえたりするため、手間がかかりません。その反面、回収後にきちんと廃棄されたのか見届けられないことや、回収から処理までの間に漏えいが起こるリスクがあるため、信頼できる業者を選択する必要があります。
法律で保存期間が決められていない書類はどのように扱えば良いですか?
法律で定められていない場合は、必要に応じて自社内でルールを作り、廃棄します。法律に関係がないとはいえ、個人情報や機密情報が含まれている書類は資産と捉え、きちんとした管理と廃棄を行う必要があります。
一定期間は保存が必要な文書もある、電子文書にも保存期間が!
ビジネス文書には法律によって保存期間が定められているものがあることがわかりました。それは電子文書についても同様です。しかし、一定の要件を満たした書類であれば、紙の書類を廃棄し、電子文書だけで保存することも可能です。
紙の書類における保存場所といった問題の対策として、「電子印鑑GMOサイン」などを使い、可能なものは電子書類での管理に切り替えるのも良い選択のひとつでしょう。「電子印鑑GMOサイン」は保存期間をリマインドする機能もあり、期限管理もできるためとても便利です。
<参考>
帳簿書類等の保存期間及び保存方法
親事業者の義務(下請法)
帳簿の記載事項と保存
会社法432条
給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間