近年、システム開発においてオンプレミスからクラウドに移行する企業が増えています。クラウドの概念は以前からありましたが、クラウドという言葉が使われるようになったのは2006年ごろです。
クラウドにはオンプレミスに比べてさまざまなメリットがあることから、企業だけでなく公共機関や官公庁などもクラウドの利用を進めています。今回はクラウドを優先的に採用するクラウドファーストやオンプレミスとの違い、メリット・デメリットを解説します。
目次
クラウドファーストとは?
クラウドファーストとは、システムを構築する際に独自のインフラ構築やアプリケーション開発を極力おさえ、事業者が提供するパブリッククラウドサービスであるSaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)を利用することを第一に考えることです。
従来はオンプレミス(自前のサーバやネットワークでシステムを構築する形態)が主流でした。しかしながら、ネットワーク技術や仮想化技術の発展により、事業者が提供するクラウドサービスを活用することで低コストかつ短期間でシステムを構築できるようになりました。
また政府は2018年の「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」にて、クラウド・バイ・デフォルト原則という言葉を使い、政府の情報システムの導入にはクラウドサービスを利用することを第一候補にするとしています。
クラウドとオンプレミスの違い
クラウドは事業者が提供するクラウドサービスを利用してシステムを構築しますが、オンプレミスではサーバやネットワークを自前で用意してシステムを構築します。この違いによって以下のようなメリット、デメリットが生まれます。
参照:「オンプレミスとクラウドはどう違うの?」
クラウドのメリット・デメリット
クラウドはクラウド事業者が提供しているサービスを組み合わせてシステムを構築します。よって自前でサーバやネットワークを用意する必要がないため、クラウドを使ったシステム開発はコストを抑えられるメリットがあります。
そしてクラウドでは必要なサーバ台数やデータベースの量などを物理的な設備の制限をうけることなく、増減させることが可能なため、システムの拡張性(スケーラビリティ)の確保がオンプレミスよりも容易になります。
参照:「オンプレミスとクラウドはどう違うの?」
また、インフラやプラットフォームはクラウドサービス事業者から提供を受けるため、物理的なデータセンターの監視業務やインフラ設備管理、セキュリティ対策はクラウドサービス事業者に任せられます。つまりクラウドは運用コスト削減にも寄与すると考えられます。
ただし、クラウドサービスはインターネット接続を前提とするため、セキュリティの懸念があるという意見もあります。また障害が発生した場合、オンプレミスでは自社内で障害復旧プロセスが完結するケースが多いのに対して、クラウドサービスを活用するシステムではクラウドサービスを提供する事業者との連携が必須です。
オンプレミスのメリット・デメリット
オンプレミスであればサーバやネットワークを自前で揃え、アプリケーションも自由に作り込むことができます。完全オーダーメイドなシステムを構築することが可能です。
しかし、その分コストは高くなりがちです。また災害対策のために、物理的に離れた場所に構築すること(ディザスタリカバリ)もオンプレミスで実現するのは容易ではありません。クラウドであればオンプレミスより低コストで、物理的に離れたデータセンターに複数のシステムを構築できることから、災害対策の面ではオンプレミスが劣ります。
クラウドファーストに向けて企業が進めるべき準備
クラウドファーストの考え方が必要になるタイミングは、システム改修や新規開発の検討段階だと考えられます。検討段階においてシステムをクラウドで構築するには、経営陣や上層部の理解が必須です。
例えば、経営陣の中にはインターネット接続を理由にクラウドは危険だと考える人もいます。しかしながら、インターネットから物理的に離れていればセキュリティ上、安全だというわけではありません。データベースなどがクラウド上のサーバに存在しても、物理的なサーバに存在してもインターネット接続していることに変わりはなく、どちらもセキュリティ上の懸念があり、それぞれ相応の対策は必須です。
またクラウドを使ったシステム開発は、クラウドサービス事業者の選定や障害発生時の責任分界点の取り決めが非常に重要です。クラウドサービス事業者が対応しているセキュリティ基準や障害発生時の責任範囲、対応力などを見極めることが重要となります。
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クラウドファーストはシステム開発の基本に
クラウドファーストは、システム開発時にクラウドサービスの利用を優先する考え方で、政府の情報システム調達においてもクラウド・バイ・デフォルトという言葉で表現されています。これからは、民間企業のビジネスだけではなく、さまざまな分野でクラウドファーストの考えのもとにシステム開発が行われ、クラウドへの移行も増えてくるものと考えられます。
そして、クラウドは比較的に低コストでシステム開発や運用を進められます。また災害対策やシステムのスケーラビリティ確保の面ではオンプレミスより優位です。コストとシステム設計の自由度を比較しながら、クラウドの採用を判断しても良いでしょう。