テレワークを導入したものの、うまくいっていない、失敗したと考える企業が少なくありません。なかでもコミュニケーションや生産性の低下について、多くの企業が「課題がある」と答えています。ここではテレワーク導入の失敗事例を紹介するとともに、テレワークを成功に導くためのポイントと、導入しておきたいツールについて解説します。
目次
テレワークの導入後によくある失敗事例
新型コロナウイルス感染防止対策や、国が推し進める働き方改革への対応などから、テレワークを導入する企業が増えています。しかし導入の結果、さまざまな問題が発生し、いわば「テレワークの失敗」も耳にするようになりました。ここではテレワーク導入後の失敗事例を6つ紹介します。
社員間のコミュニケーション不足による業務進捗の遅れ
テレワークを導入する前の業務環境では、社員がオフィスに出社し、お互いの顔を見ながら仕事ができました。業務上必要な会話はもちろん、空き時間に雑談を行うなど、コミュニケーションは容易に行えていたはずです。
しかし、テレワークを導入したことにより、気軽に声をかけたり相談したりする機会が減り、コミュニケーションが円滑に取れず、結果的に業務進捗の遅れに繋がってしまうのです。
テレワーク環境が整備されていない社員がいる
テレワークを導入したことにより、社員は基本的に在宅勤務となりました。しかし、すべての社員がテレワーク環境に恵まれているわけではありません。例えば自宅にインターネット回線を引いていない場合や、引いていても業務に必要な速度が出ないといったこともあります。また持っているパソコンのスペックが低く、業務に支障がある社員もいます。さらに、小さな子どもや両親と同居しているなど、集中して仕事ができる環境ではない社員もいます。
監視ツールの導入や頻繁な電話連絡、進捗確認などで社員のモチベーションが下がる
オフィスで社員の働きぶりを見る代わりに、企業が社員のパソコンに監視ツールを導入する企業もあります。しかし、こうしたツールは社員からすると「信頼されていない」と捉えられがちで、モチベーションは低下してしまいます。また、業務の進捗状況を確認するために、上司が社員に対して頻繁に電話をかける場合もあるでしょう。これが集中力やモチベーションの低下に繋がり、結果的に生産性を下げてしまいます。
サボりやオーバーワークが起こる
上司は社員が目の前で働いている姿を見ることができません。そのため、「いま何をしているのだろう」と常に気になってしまうケースがあります。直接働きぶりを見たり、話をし続けたりしないと、社員が本当に働いているのか不安になるのです。結果的に、「本当に働いているかわからない=サボっている」と考えがちな上司も少なくありません。
また、オフィスでの仕事と違い、在宅勤務は就業時間後も仕事を続けやすい環境といます。このため作業に没頭して深夜まで仕事を続けたり、進捗を気にするあまり遅くまで仕事をしたりしてしまう、いわゆるオーバーワークをする社員もいます。
セキュリティ管理ができておらず情報漏洩が起こる
テレワークでは、社員個人が所有するパソコンに、業務で使用するデータを格納することがあります。このとき、使用するパソコンにセキュリティ対策ソフトがインストールされていなかったために、コンピュータウイルスに感染し、情報が漏洩するといった可能性があります。また、外に持ち出したパソコンの置き忘れや覗き見、パソコンへのパスワード設定忘れなどからも、情報漏洩リスクがあります。
また、ネットワークにも注意が必要です。自宅で使っている無線LANが暗号化されていない場合は、通信内容が筒抜けになってしまうこともあります。さらにカフェなどにあるフリーWi‐Fi(Wi‐Fiスポット)も暗号化されていないものが多く、情報漏洩の危険があります。
紙の書類を使用するワークフローが残っている
業務そのものはテレワークで行えていたとしても、会社内に紙の書類を運用するワークフローが残っている場合があります。こうした場合、客先との書類のやり取りのために出社して郵便物を受け取ったり、郵便局までの移動を強いられたり、さらには押印や契約書作成のためだけに出社するといったこともあります。これらは当然、生産性低下の原因となります。
テレワーク化の失敗を防ぐポイント
これまで紹介したようなテレワークの失敗は、社員やシステムが「新しい働き方に対応できていない」ことが原因といえます。個々の事例に対してしっかりと対策することにより、上記のような失敗は防ぐことができるのです。ここではテレワーク導入を失敗させないためのポイントを解説します。
コミュニケーションを増やすためITツールを導入する
テレワークでもコミュニケーションを円滑にできるよう、ITツールを導入しましょう。コミュニケーションツールの一つであるビジネスチャットには、プロジェクト単位でグループ(会議室)を作成できるものもあります。そういった機能を活用して、進捗や技術的な相談、情報共有などを気軽に行える環境を整備しましょう。また、こうしたツールの利用シーンは業務関連だけに留まりません。例えば業務以外の趣味のグループを作れば、テレワークでも社員同士の活発なコミュニケーションを促すことに繋がります。
ペーパーレス化を推進する
テレワークでは、社内で扱う紙の書類をそのままにしていてはいけません。書類のやり取りをするためだけに、出社しなくてはならないからです。まず、仕事上必要な書類や、請求書などといった簡単なものからペーパーレス化を進めます。最終的に契約書などの重要な書類についても電子化すれば、円滑なテレワークを実現できるでしょう。それだけでなく、生産性向上やビジネススピードの加速などといった、ペーパーレス化のメリットも享受できます。
データの取り扱いに関するルールを策定する
社外で業務を行うからといって、従業員がなんでもかんでも社外にデータを持ち出して良いというのはあまりに危険です。持ち出し可能なデータの種類を絞り、持ち出しを許可する部署や社員を限定するといったルールづくりを行いましょう。データにアクセスできる社員を限定するITツールの導入や、社内ファイルサーバのアクセス権限を見直すことも、情報漏洩リスクを減らす有効な施策です。
社員/部下を信頼する
テレワークでは、上司と部下は同じ場所で仕事をしません。そのため上司はこれまで以上に、社員や部下を信頼する必要があります。頻繁に進捗を確認したり、社員のパソコンに監視ツールを導入したりするような行為は、社員の仕事に対するモチベーションを低下させるだけです。
しかし、部下がきちんと仕事をしているか心配になることも事実なので、進捗確認の方法を改めましょう。まずは部下に対して明確に業務指示を行います。例えば今日はこれを、明日はこれを、今週はこれをといったように、日毎や週毎に完了報告や進捗報告をもらうようにすれば、進行具合や問題点も把握できます。このようなタスク管理に適したITツールを導入すると、作業漏れや報告漏れを防ぐことができて便利です。
経営層などの理解を深める
上司が部下を信頼できても、さらにその上層にいる経営層がテレワークに不安を感じているケースがあります。このような場合、ITツールの導入やペーパーレス化といった新たな試みを考えても、スムーズに進まない原因になります。まずはテレワークでも業務ができることを説明し、ITツールなどの導入によって、より円滑に仕事が進むことを理解してもらいましょう。新しい働き方を説明して経営層の理解を得ることは、テレワークの成功だけではなく、企業の将来の生き残りや業績向上にも繋がる会社全体にとって重要な事項です。
リモートワーク用インフラのルール設定や、パソコンといった機器の支給
テレワークで使用するパソコンやネットワークについても、社内パソコンと同様のセキュリティ対策と使用ルールを定めます。例えば、自宅で使うWi‐Fiの暗号方式は「WPA2 Personal」以上とする(暗号化なしは絶対に避ける)、フリーWi‐Fiは使用不可、ネットワークの利用はVPNに制限する、仕事に利用するパソコンの共有フォルダは停止する、などです。また、社員が個人で所有するパソコンを業務利用させるのであれば、セキュリティ対策ソフトを支給、場合によってはパソコン本体の支給も検討しましょう。
テレワーク化の失敗防止に役立つITツール
テレワークを失敗させないためには、ITツールの導入が欠かせません。ここでは便利な6つのITツールについて解説します。
勤怠管理ツール
テレワークの場合、仕事をする=出社という考え方ではありません。このため、タイムカードなどに代わる勤怠管理ツールが必要となります。勤怠管理ツールでは、スマートフォン向けのアプリやブラウザの操作で会社に現在の状況を通知できるため、どこで仕事をしていても、仕事を始めるときに「出勤」状態にでき、終了時に「退勤」できます。こうしたツールを活用し、労働時間の多い社員に対しては適切なコミュニケーションを取るようにしましょう。
ビジネスチャット
チャットツールのなかでも、特にビジネス向けのツールはビジネスチャットと呼ばれます。チャットでのコミュニケーションを実現するツールで、前述したように、プロジェクトや部署、趣味といったグループを作ってリアルタイムのやり取りが可能です。ファイルの送受信も可能なため、上手に活用することで、オフィスでの業務よりも生産性が向上できる効果も見込めます。
グループウェア
スケジュールやタスク管理、ビジネスチャットや勤怠管理機能など、グループウェアには多くの機能が内包されています。会社から社員へのお知らせなども掲載できる、社内ポータルサイトのような役割を担うことも可能です。もちろんグループウェアに含まれる機能だけを使い、他のITツールを使わないという選択肢もありますし、チャットやタスク管理は別のITツールを使うという選択肢もあります。
Web会議ツール
会議室に集まっての会議やミーティングができないテレワークでは、Web会議ツールの導入は必須ともいえます。パソコンにマイクとカメラを接続し(または内蔵されているマイクとカメラを使用)、映像と音声でのやり取りを複数名で行えます。ファイルの送受信やチャット、パソコンの画面を共有することも可能で、社内だけでなく社外とのやり取りにも便利に使えます。専用のソフトウェアをインストールするものや、ブラウザだけで利用できるものがあります。
リモートアクセスサービス
パソコンやスマートフォンなどから、別のパソコンを遠隔操作するITツールです。例えば社内のパソコンを自宅からリモートアクセスツールで遠隔操作すれば、大切な企業のデータを持ち出さずに作業することも可能です。また、どうしても社内からしかアクセスできないシステムがあったとしても、社内のパソコンを遠隔操作することで利用できます。
電子契約サービス
紙の契約書と同様に、法的効力を持った電子契約を実現できるサービスです。法的効力を持った電子ファイルを作成するためにはさまざまな知識が必要ですが、こうしたサービスを導入することで誰でも簡単に作成できます。電子契約だけでなく、社内決裁などに対応している電子契約サービスもあります。
テレワーク時の契約手続きを効率化する電子印鑑・電子契約サービス
テレワークにおける最大の敵ともいえるのが紙の書類のやり取りです。なかでも契約書は押印や社内決裁も必要なため、移動なども伴い特に面倒な作業となります。そこでおすすめしたいのが、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」の導入です。
「電子印鑑GMOサイン」を導入すれば、社員が押印や契約書の作成のために出社する必要はなく、すべて自宅から行えます。利用できる電子印鑑は、認印に相当するものと、実印に相当するものの2種類が使い分けられるため、社内決裁から社外との法的効力を持った電子契約まで対応しています。また、社内にあるこれまでの承認ワークフローをそのまま再現できるため、契約書の送付前に上司に決裁をもらうといった流れもスムーズに行えます。
テレワークを失敗させないためにはITツールの導入が鍵
テレワークはさまざまな要因で失敗してしまいます。そのほとんどが、上司やシステムが「新しい働き方に対応できていない」ことが原因です。一方で、これらは上司や経営層の意識改革に加え、ITツールの導入で解決できます。
また円滑なテレワークの実現には、紙の書類のやり取りが残っていてはうまくいきません。押印や契約書作成のために出社しなければならないのはナンセンスですし、その時間はビジネスにとって損失でしかないでしょう。テレワークの成功の第一歩は、「電子印鑑GMOサイン」のようなITツールの導入にあるといっても過言ではありません。