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顧問契約は、専門知識を持つ人材の技術や知識で自社のサポートを依頼する目的で交わされる契約です。
しかし、通常の雇用契約や業務委託契約とどう違うのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、顧問契約の基本的な内容や他の契約との違い、顧問契約のメリット・デメリットを紹介します。
職業ごとに報酬の相場も紹介しますので、顧問契約に関する知識を深めるためにお役立てください。
顧問契約とは、特定分野の専門家に顧問料を支払って自社のサポートを依頼する契約です。
顧問契約では、専門家に任意のタイミングで顧問に相談事や助言、事務処理などの業務をおこなってもらいます。
顧問契約の定義は幅広く、ケースによっては顧問料の他に個別で料金を支払うなど、態様は様々です。
顧問契約は税理士や弁護士といった特定分野の専門家と交わされる場合が多いですが、特定の経験や実績がある経営コンサルタントと締結する場合もあります。
顧問契約は料金や取り交わす相手など、ケースによって様々なパターンがあることが特徴です。
顧問契約は、社外の人材と取り交わす契約です。
社外の人材と交わす契約には、顧問契約以外にも業務委託契約や雇用契約などがあります。
次の項目からは顧問契約と他の契約の違いを解説しますので、顧問契約に関する知識を深めるためにお役立てください。
顧問契約と業務委託契約の違いは、目的と契約相手です。
顧問契約は専門家の知識や技術を自社の経営に活かすことが目的であり、任意のタイミングで相談を依頼したり助言を求めたりします。
一方で業務委託契約は、受託者に特定のプロジェクトを完遂してもらうことが目的です。
そのため、専門家に依頼する業務を委託と捉える場合には、顧問契約も業務委託契約と認識することがあります。
また、顧問契約は特定分野の専門家と交わされますが、業務委託契約を取り交わす相手は必ずしも特定分野の専門家とは限りません。
顧問契約と雇用契約の違いは、業務の範囲です。
業務に事務作業が含まれる場合がありますが、顧問契約は一般的には定められた特定業務のみをおこないます。
対して雇用契約は、企業と労働者となる個人が交わす契約です。
契約を交わした規定時間内であれば、企業は労働者に多様な業務を任せられます。
顧問契約の業務範囲は限定的であることが多い一方、雇用契約では労働時間内であれば多様な業務を任せることが可能です。
顧問契約では、専門家の知識や技術をすぐに自社に取り入れられます。
顧問契約後は、専門家の意見や技術を自社の経営に活かせられるためです。
企業と弁護士の顧問契約を一例に、顧問契約のメリットを紹介します。
企業が弁護士に相談したいシーンを考えた場合、契約書の法的な部分の確認や取引先との紛争における対応など、時間が差し迫っていることが多いでしょう。
企業と顧問契約を交わしている弁護士がいる場合には、顧問の弁護士が迅速に対応してくれます。
しかし弁護士との顧問契約を交わしていない場合には、対応を任せられる弁護士を探したうえで自社の現状を説明する段階から始めなくてはいけません。
顧問契約を交わしている場合には、通常よりも優先的に対応をしてもらえたり、日頃から電話やメールで相談できたりします。
顧問契約のメリットは、専門家の知識や技術を必要なタイミングで取り入れられることといえるでしょう。
顧問契約のデメリットは、顧問契約締結後に自由に契約解除をするのが難しいことです。
顧問契約は、契約期間が長期にわたることが前提となっています。
顧問と自社との相性が悪いと感じられた場合にも、短期間で契約解除できない場合があるため注意しましょう。
契約解除の難しさに加えて、顧問契約を結べる人材を探すことが難しいこともデメリットです。
特定分野の顧問を探す際には、人材紹介サービスを利用することが一般的ですが、理想の人材がすぐに見つからない場合があります。
顧問契約は、信頼できる人材と契約が長期にわたることを前提に取り交わす必要があるため、慎重に締結しましょう。
ここでは、顧問契約の報酬の相場について解説します。
顧問契約を検討している場合には目安として参考にしてみてください。
税理士と顧問契約を交わす場合は、月額3万円からが相場です。
ただし、税理士と顧問契約を結ぶ場合には、自社の規模や契約を交わす税理士事務所の規模によっても報酬が大きく変動します。
記帳代行や年末調整などは顧問料に含まずにオプション料金と設定されている場合が多いです。
例えば、決算申告業務の報酬は年額10~30万円が相場となっています。
顧問契約の月額は一般的に3万円からとなっていますが、業務範囲が限定的な税理士や個人事務所所属の税理士だと1万円から顧問契約を締結できる場合も多いです。
顧問の税理士に幅広い業務を任せたい場合には、顧問料の範囲内で任せられる業務とオプション料金となる業務を確認したうえで顧問契約を締結しましょう。
中小企業における弁護士の月額顧問料は、3~5万円が相場です。
月額報酬内の業務は顧問契約の内容によって異なるため、高頻度で依頼したい業務がある場合は顧問契約の締結前に確認しましょう。
顧問弁護士の報酬は、月3時間までの法律相談が月額範囲内の目安です。
中小企業のための弁護士報酬の目安によると、半数以上の事務所が相談手段・調査の要否に関わらず月3時間までが月額報酬の業務範囲と回答しています。
【参考】https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/smeguide.pdf
弁護士と顧問契約を締結する際には、月額報酬の業務範囲を事前に確認しましょう。
顧問社労士の報酬相場は、月額2~17万円です。
社労士の顧問契約は、契約を交わす企業の従業員の人数によって月額が大きく異なります。
社労士の報酬は社会保険労務士会が一律に決めていた時期があったため、当時の旧報酬規定を参考に顧問料を決めている社労士事務所が多いです。
社会保険労務士会による旧報酬規定を踏まえた社労士の報酬の目安を確認してみましょう(従業員の人数30人未満を抜粋)。
従業員の人数 | 社労士の報酬の目安 |
---|---|
4人以下 | 20,000円 |
5~9人 | 30,000円 |
10~19人 | 40,000円 |
20~29人 | 50,000円 |
従業員の人数は事業主や役員を含む人数であり、建設業の場合には上記の金額に50%が加算されることがあるため、注意しましょう。
経営コンサルタントは、ケースごとに報酬が大きく異なります。
顧問経営コンサルタントの月額相場は20~50万円であり、時間契約の場合は1時間あたり5千円から10万円です。
業務内容や従業員の人数で顧問料が大きく異なるため、注意しましょう。
月額の顧問経営コンサルタントは、長期にわたって常日頃から頼れる相談相手に対して、自社の課題についてのアドバイスを求めたい場合に適しています。
時間契約は、特定のプロジェクトや議題について経営コンサルタントの意見を求めたい場合におすすめです。
また、経営コンサルタントは、経営コンサルタントが持つスキルや実績によっても報酬が大きく異なります。
経営コンサルタントと顧問契約を交わす際には、自社のどのような問題を解決したいのかを明確にしたうえで月額か時間契約を選びましょう。
顧問契約は報酬の形態によって、どのように報酬が発生するのかが異なります。
顧問契約における報酬の主な形態は、定額型・タイムチャージ型・成果報酬型の3種類です。
ここからは、顧問契約の3種類の形態を詳しく紹介します。
定額型の場合には、顧問への報酬が固定となります。
顧問への報酬が定額型となる場合には、月額固定が多いです。
定額型の顧問契約は、中~長期的な成果を求める税理士や弁護士などの士業や技術顧問で多く用いられます。
月額報酬のメリットは、中〜長期になっても顧問に支払う報酬が把握しやすいことです。
定額型であれば年間にどれくらいの報酬がかかるのかを把握しやすいため、同じ業務をおこなう顧問の報酬額を比較しやすくなります。
タイムチャージ型は時間契約型報酬制であり、一般的には時給制に近いです。
タイムチャージ型では、顧問の報酬額が時間単位で計算されます。
よって、限定的なプロジェクトや特定の問題を顧問に任せやすいです。
タイムチャージ型はピンポイントで稼働できるため、経営コンサルタントや特定の技術顧問など実際に顧問となる人材が現場に訪れる場合に適しています。
また、タイムチャージ型は顧問のスキルや実績によって、時間単価が変動しやすいことも特徴です。
成果報酬型では、顧問の業務で成果が発生した場合にのみ報酬が発生します。
稼働時間ではなく、売上の数%などの割合で顧問への報酬が発生することが一般的です。
成果報酬型の場合には、どのような場合に成果と判断するのかをお互いの思い違いがないよう事前にすり合わせをする必要があります。
一口に顧問契約といっても、委任契約・準委任契約・請負契約の3種類に分類されることが特徴です。
顧問契約は法律の目線では業務委託契約の一種と見なされますが、民法では業務委託契約という名称の契約は存在せず、委任契約または準委任契約に含まれることとなります。
ここからは、顧問契約の区分について紹介します。
民法643条以下に規定されている委任契約は、依頼側の当事者が受託側の当事者に仕事を依頼して、受託側が了承した場合に成立する契約を指します。
委任契約は狭い意味合いだと法律行為を委託する契約を指しますが、委任契約は準委任契約を含んで呼ばれている場合が多いです。
委任契約の法律行為の具体例としては、不動産の売買契約締結の委任や弁護士への訴訟代理の委任などが挙げられます。
準委任契約は、依頼側の委託と受託側での了承という点では委任契約と同様です。
しかし、法律行為以外の事務処理を受託側に委託している点が委任契約と異なります。
具体的には、司法書士に会社設立手続きを依頼する場合、会社設立行為は法律行為にあたるため、司法書士に委託するのは委任契約となります。
一方で、 医師に診察を依頼する場合、診察は法律行為にあたらないため、医師に依頼するのは準委任契約となります。
委任契約が法律行為に限定されるため、一般的に委任契約と捉えられている契約の多くは民法上では準委任契約にあたる場合が多いです。
請負契約は、受託側が依頼側に仕事の完成を約束して締結される契約です。
委任契約では有償とした場合に仕事の履行に対して報酬を支払いますが、請負契約では仕事の完成に対して報酬が支払われます。
よって、請負契約の場合には仕事が未完成だと契約義務の未履行となり報酬の支払いを請求することはできません 。
仕事の未完成以外にも、成果が依頼側の要求を満たせていない場合や完成できない事情が生じた場合には、契約解除事由が発生することとなります。
弁護士に訴訟行為を依頼するケースを考えると、この場合は委任契約になりますので、勝訴を目指す努力があれば基本的に裁判の結果に関係なく契約が実行されたと考えられます。
顧問契約を結ぶ手順は、以下の通りです。
顧問契約を締結する多くの場合は、依頼先の専門家が顧問契約の書式を所持しています。
専門家が所持している書式を使用する場合は、契約内容の不明点や本件とは異なる部分などを確認し、訂正したい部分があれば専門家に指摘しましょう。
依頼内容や業務の範囲などに問題がなければ、契約書を取り交わします。
顧問契約書に記載する主な項目は、以下の通りです。
● 契約書の名前
● 当事者の名前
● 契約が成立する日
● 契約するサービスの内容
● 費用
● 顧問契約の期間
● 解約の取り決め
● 管轄する裁判所
契約書の名前には、シンプルに顧問契約書という名前の場合や、経営コンサルティング契約書といった依頼内容を含める場合など、様々なパターンがあります。
顧問契約書に記載する費用は、顧問料です。
金額だけでなく、支払い期日についても明記します。
顧問料以外に都度発生する費用についても、条件や金額を契約書に記載しておくとトラブルが低減するでしょう。
顧問契約で失敗しないためには、契約書の入念な確認が必要です。
金額に関する内容や顧問の業務範囲、契約期間など多面的に確認することで、契約締結後のトラブルが予防できます。
顧問と契約内容のすり合わせをする際には、曖昧な表現を避けて後々思い違いが発生しないように気をつけましょう。
この記事では、顧問契約に関して職業別の報酬相場やメリット・デメリット、注意点などをご紹介しました。
顧問契約は長期にわたる契約のため、締結前に内容を把握することが特に大切です。
顧問契約書が紙媒体の場合には、修正する際に契約書を作り直す手間が生じる可能性があります。
しかし、電子印鑑GMOサインなどの電子契約はオンラインで完結できるため、電子契約書を活用することで修正の手間を削減することが可能です。
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