世の中には、いろいろな会社名やロゴ、マークなどが存在します。日常生活では、街中や電車の中、テレビコマーシャルなどで目にしない日はないといっても過言ではありません。
これらの大部分は商標として登録され、保護されています。
商標を取得する理由は、手続きをして登録をしないと、自社と同じマークを使用されるなど不利益を被る可能性があるためです。
今回は、この「商標」について解説します。
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目次
「商標」とは?
商標とは、会社など事業を行う者が自己の製造・提供する商品やサービスなどを他者のものと区別するために使用する目印(マーク)やネーミングのことをいいます。
商標は「トレードマーク」と呼ばれ、™と商標の右肩に小さく記載されているとがあります。役務(サービス)の商標は「サービスマーク」とも呼ばれ、℠と商標の右肩に表記されているものは、これにあたります。
適法に登録された商標を「登録商標」といい、商標権として法的保護の対象となります。
具体的には、同一または類似の商標を他社が無断で使用することができなくなるため、自社の商標を守ることができるのです。登録商標であることを示すために商標の後ろに🄬のマークがつけることがあります。🄬は登録商標の証です。
商標の種類
商標は文字だけでなく記号や図形、立体的形状、またはこれらを組み合わせたものなど、各種のタイプが存在します。
2015年からは「動き商標」「ホログラム商標」「色彩のみからなる商標」「音商標」「位置商標」なども商標登録することが可能となりました。
商標の役割・機能
商標にはいくつかの役割や機能がありますが、基本的なものは識別機能です。
識別機能とは商標を利用することで、自己の商品・サービスなどと他者の物を明確に区別することができることです。例えば、ビールやバッグで考えてみたときに、どこの企業のビールであるかを判断することができるのは、商標のおかげです。
また、その商品・サービスの提供元がどこなのかを示す出所表示機能、一定の品質が維持されていることを示す品質保証機能(例:○○社のビールなら衛生検査がしっかりしているだろう、□□のバッグなら品質も良いだろう)なども認められます。
長期間使用されている商標に関しては、さらに宣伝広告機能(例:○○社のビールなら美味しいだろう、□□社のバッグを持ちたい)が認められる場合もあります。
これら「出所表示機能」「品質保証機能」「宣伝広告機能」が発揮されることで、商標がブランド化することができます。
商標権とは|登録商標の独占的使用を認める権利
商標法という法律に基づいて適法に登録された商標は、登録商標となり商標権が認められます。
商標法は、国によって内容が異なりますが、商標権を認められた者は、その商標を独占的に使用することができ、同一または類似の商標の使用を排除することが認められます。
これによって自社の商品やサービスに対するブランド的イメージを維持・向上させることが可能となるのです。
商標制度は国によって違いがある
商標法は各国にあり、各々の登録制度を持っています。商標を権利として法的に保護するにあたっては国によって考え方が異なります。
そのため、海外展開を考える企業やサービスはそれぞれの国の商標制度に基づいて出願・登録することになります。進出したい国の商標制度がどのような制度を導入・採用しているか確認する際は、以下の点に気を付けましょう。
(1)「使用主義」と「登録主義」
商標権を誰に認めるかについては、使用主義と登録主義という2つの考え方があります。
使用主義とは、ある商標を実際に使用した者に商標権を認める考え方です。
同一(または類似した)商標を使用している者が存在する場合には、最も早く使用を開始した者が優先することになります。
これに対して登録主義とは、その名前のとおり商標を登録することによってはじめて商標権が保護されるという考え方です。
世界の大半の国では登録主義が採用されており、日本も登録主義の国です。
(2)「審査主義」と「無審査主義」
商標を登録する際に、商標の識別性の有無や他者の登録商標との抵触関係等を審査するかどうかによって審査主義と無審査主義に大別されます。
日本やアメリカ、中国やイギリスなどは審査主義を採用しています。これに対して、EUでは無審査主義が採用されています。
(3)「先願主義」と「使用主義」
同じ商標が同日に複数の事業者から商標登録の出願をした場合に、商標権を誰に認めるかに関しては以下のように先願主義と使用主義という2つの考え方があります。
先願主義とは最先出願登録主義ともいいます。時間的に最も早く商標の登録出願を行った者に商標権が認められるとする考え方です。このため、昔からその商標を使用してきた者が他に存在したとしても、他者によって先に登録されてしまった場合には、以後はその商標を使用することができなくなってしまうのが原則です。日本では、先願主義が採用されています。
使用主義は、先使用主義、最先使用者登録主義ともいいます。その商標を実際に使用し始めた時期によって商標登録の可否を判断する考え方です。より早い時期に使用し始めた者に商標の登録が認められることになります。アメリカは使用主義を採用しています。
日本における商標制度
世界的にみた場合、商標権に関する制度には上記のようにいくつかの考え方がありますが、日本では、商標を登録する必要があり、登録がされて初めて法的に保護される仕組みになっています。具体的に見ていきましょう。
(1)登録主義
日本では登録主義が採用されています。つまり、日本において商標権を守ろうとする場合には、その商標を登録する必要があるのです。
(2)審査主義
商標の登録を希望する場合は、特許庁に商標登録に関する希望する手続き(出願)をする必要があります。特許庁は、商標の識別性の有無や他者の登録商標との抵触がないかなどの審査が行います。特許庁の審査が通って登録が認められると(登録査定)、登録料を国に納付することで商標が登録されることになります。登録料の支払いによって登録商標となり、商標権による5年間または10年間の保護を受けられます。更新を希望する限り、何度でも更新が可能となっていますが、更新料を納付しないと更新の意思がないとされ、商標権は消滅します。
(3)先願主義:一部例外あり
日本では先願主義が採用されているため、自分の商標を守ろうとする場合には、他者より先に登録出願する必要があります。昔から使用している商標であっても、他者が先に商標登録してしまえば、原則として商標の使用が認められなくなってしまうからです。
なお、先願主義に関しては、例外として先使用権が認められています(商標法第32条)これは商標登録がなされた商標であっても、その商標を以前から使用していた者が他にいる場合には一定の条件のもとに、先に商標を使用していた者に商標の使用が認められるとするものです。
まとめ
自分の会社の商品やサービスを商標として登録し、その権利を保護することはビジネスにおいて非常に大切なことです。
商標の登録に関しては、日本では登録主義・登録主義・先願主義が採用されています。このため、昔から使用してきた商標であっても、他者によって先に商標登録がなされてしまえば使用することができなくなるリスクがあります。
また、ビジネスの海外展開を考える際は、各国の商標制度に基づいて商標出願・登録を行う必要があることにも注意が必要です。
商標は、いわば会社や商品・サービスのトレードマーク。大切な商標を守りたい場合には、なるべく早く商標登録することをおすすめします。