公開日:2021年9月10日
最終更新日:2022年7月13日
実印作成の基礎知識|必要な理由や登録方法、向いている印鑑の種類
特別なイメージのハンコに「実印」があります。実印とは、どのような場面で必要なのでしょうか?ここでは、実印の意味や、作成するときに覚えておきたいサイズや種類、実際に実印登録する流れなどを解説します。実印に関する、よくある質問を回答とともに紹介します。
目次
実印の定義
「実印」は、市区町村に届け出ている印章、いわゆるハンコのことです。印章を市区町村に登録し、受理されることで、その印章が登録者本人のものであることを市区町村が証明するもので、申請をすれば「印鑑登録証明書」を発行してもらうことができます。このように、市区町村に届け出ている印章のことを「実印」といいます。なお、銀行に届け出ている印鑑のことは一般的に「銀行印」や「届出印」と呼ばれています。
実印が必要な理由
実印は、本人の印章であることを証明できるため、名義の登録や変更を必要とする場面や、高額な売買を行う際に使用します。例えば、不動産取引や自動車の購入の際に必要です。そのほか、重要な契約を締結する場面で、相手から実印を求められることもあります。
実印の登録方法
それでは、実際に実印を登録する手順や必要なものを確認してみましょう。
実印の用意
実印として登録したい印章を用意します。印鑑登録に使用できる印鑑については、市区町村の条例によって定められており、市区町村によって登録できる印章のルールは若干異なります。ここでは、例として東京都千代田区印鑑登録を行う場合を解説します。実際に実印を登録する場合には、届け出を行う市区町村のルールを確認する必要があることに注意してください。
【参考】印鑑登録・証明書(東京都千代田区ウェブサイト)
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/koseki/inkan/index.html
・実印の印影の文字
印影にする文字には以下の決まりがあります。
1.氏名を完全に表示したもの
2.氏(名字)だけを表示したもの
3.名だけを表示したもの
4.氏と名の各一部を組み合わせて表示したもの
なお、住民基本台帳に旧氏(旧姓)が併記されている場合には、実印に旧氏(旧姓)も使用できます。また、印鑑登録が行えるのは、千代田区に住民登録がある15歳以上でのみとなります。
・実印の大きさ
実印に登録する印章には、以下のように大きさの決まりがあります。
印影の大きさが、1辺の長さ8mmの正方形に収まるもの(小さすぎてはNG)
印影の大きさが、1辺の長さ25mmの正方形に収まらないもの(大きすぎてはNG)
・実印として登録できない印章
次のように、実印として登録できない印章もあります。
ゴム印など印影が変形しやすいもの
印影に職業や資格、肩書など氏名以外の文字があるもの
印影が不鮮明なもの(毀損や摩耗した印章、輪郭のない印章、輪郭の欠けた印章、逆彫の印章などは登録できません)
すでに、ほかの人が登録している印章(既製品は重複のおそれがあります)
これらは、東京都千代田区における実印登録のルールの一部です。ほかの市区町村もほぼ同様のルールがあります。
実印登録に必要なもの
東京都千代田区における実印登録は、3つの方法で本人確認を行い登録できます。郵送で照会文書を送る「文書照会による本人確認」と、本人確認書類を持参する「免許証等の本人確認書類による本人確認」、都内に住民登録があり、すでに印鑑登録をしている第三者に保証人となってもらう「保証人による本人確認」です。ここでは、一例として「免許証等の本人確認書類による本人確認」について解説します。まず、登録に必要なものは以下の2点です。
登録したい印章
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、官公庁が発行した顔写真付きの本人確認書類
印鑑登録の流れ
窓口にある印鑑登録申込書に必要事項を記入し、登録したい印章と、本人確認書類を提示します。印鑑登録は当日中に完了し、印鑑登録の完了とともに、印鑑登録証が交付されます。
実印に向いている印鑑
実印に登録する印章は、どのようなものが適しているのでしょうか。もちろん、各市区町村で実印として登録可能なルールに適合していることが必須です。しかし、それ以外の要素にも「実印に向いているもの」があります。
実印に向いている印章の形とサイズ
実印向けの印章を作成する業者を調べると、概ね丸い形の印章が実印向けとなっています。サイズは直径13mm程度から18mm程度で、男性には大きいもの、女性には小型のものが好まれます。なお、男女でサイズが違う理由は、性別によるものではなく、印章を押す際に手に収まりやすく、押しやすいことが理由です。
実印に向いている文字の種類
実印として登録する印章の印影は、第三者に簡単に複製されては危険です。このため、一般的に使われる書体ではなく、印章独特の書体が多く使われます。文字が印章の枠につながっている「吉相体(きっそうたい、別名“印相体(いんそうたい)”)」、や、吉相体ほど読みにくさはない「篆書体(てんしょたい)」などが多く使われます。また、筆書きのような「隷書体(れいしょたい)」や、「古印体(こいんたい)」が使われることもあります。
なお、市区町村によっては「読めない」ことを理由に、実印として登録できない場合もあります。印章の作成は、実際に実印を登録する市区町村にある印鑑店を選び、必要に応じてアドバイスを受けると安心です。
実印に向いている印章の素材
実印は簡単に欠けてしまったり、摩耗しやすくなったりという素材は向いていません。また、ゴム印のように押す力によって印影が変形しやすい素材も向いていません。このため、「黒水牛」や「チタン」、木製であれば「柘植(つげ)」などが向いています。
実印に関してよくある疑問
印鑑登録ができる市区町村は決まっているのでしょうか?
印鑑登録は住民票を登録している市区町村で行います。住んでいる場所と住民票が異なる場合は、住民票のある市区町村でのみ登録が可能です。
引っ越したら印鑑登録はどうなるのでしょうか?
引っ越し先によって変わります。まず印鑑登録をした市区町村とは別な市区町村に引っ越す場合です。この場合、市区町村に「転出届」を提出すると同時に、印鑑登録も破棄されます。このため、引っ越し先の市区町村で、改めて印鑑登録を行いましょう。次に同じ市区町村内で引っ越す場合です。こちらの場合は市区町村に「転居届」を提出しますが、転居届の提出によって同時に印鑑登録の住所も変更されるため、印鑑登録に関する手続きを行う必要はありません。
実印を紛失した場合は、どうすればよいでしょうか?
実印をなくしてしまった場合、市区町村で印鑑登録の廃止手続きを行います。印鑑登録証と、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどを、認印とともに市区町村の窓口に持参し、手続きを行います。なお、実印が破損してしまった場合も、一度廃止手続きを行い、改めて新しい印章を実印登録します。
印鑑登録証を紛失した場合は、どうすればよいでしょうか?
印鑑登録証を紛失した場合は、市区町村で印鑑登録亡失届を出します。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどを持参し、市区町村の窓口で手続きを行うことで印鑑登録を抹消できます。その後、改めて実印の登録を行いましょう。
実印の紛失対策には、どのようなものがあるでしょうか?
実印を紛失してしまうと悪用されるおそれがあるため、直ちに印鑑登録を廃止する必要があります。特に印鑑登録証と実印を同時に紛失してしまうと、悪用の危険が高まるため、実印と印鑑登録証は別々の場所に保管するようにしましょう。
また、実印が必要となった場面で登録し、使い終わったらすぐに廃止するという方法もあります。この方法であれば、もし、第三者に悪用されたとしても、実印登録されていない期間であれば、実印としての効力はありません。しかし、この方法は、印鑑登録証明書の提出が必要な場面では注意が必要です。印鑑登録証明書とは登録された印鑑が本物であることを証明する書類ですが、相手方に印鑑登録証明書を提出したにもかかわらず、実印を廃止してしまった場合、提出した印鑑登録証明書も無効となってしまうためです。
実印は自動車の購入や不動産取引に必要な市区町村に届け出る印章
実印は市区町村に届け出る印章のことです。市区町村で、自分自身の印鑑であることを証明できる印鑑登録証明書を発行してもらえます。自動車の購入や不動産取引など、重要な契約を結ぶ際に、印鑑登録証明書とともに求められる印鑑です。
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筆者
ハンコ脱出作戦 編集部