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高年齢者雇用安定法とは?改正法の内容やポイントについて解説

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目次

高年齢者雇用安定法とは

国内では少子高齢化が急速に進んでおり、それに伴い働き手も減少傾向にあります。この経済社会の衰退を食い止めて、活力を維持することが求められています。

働く意欲がある高齢者にその能力を十分に発揮してもらえる環境を整備することを目的として、高年齢者雇用安定法が制定されました。この法律に基づいて、国内企業の高齢者の雇用における義務が明確化されました。そのため、高年齢者雇用安定法について理解し、適切な雇用環境を作り上げることが重要視されています。

高年齢者雇用安定法の制定・改正の歴史

高年齢者雇用安定法の元々の名称は、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法であり、1971年に制定されました。中高齢者の雇用や失業の状況を鑑みて、その人の能力に適合した職へ就くことを促進する措置を講じ、職業の安定化を図る目的で定められた法律です。

1986年に名称が現在の高年齢者雇用安定法に変更され、60歳定年を努力義務とする改正が行われました。努力義務のため強制力はありませんが、当事者が目的達成に向けて最大限努めなければなりません。

その後、1994年の公的年金制度改正により年金支給開始の年齢が引き上げられた背景もあり、高齢者にとってよりよい雇用環境の整備が求められたのです。

2013年の改正では、定年の引き上げや定年廃止、継続雇用制度の導入のいずれかを企業に求める仕組みができました。事業主が定年を定める際は、60歳未満を定年と設定してはいけません。また、65歳までの定年引き上げや定年制の廃止、希望者全員に勤続雇用制度を導入することが義務化されています。

2021年4月1日施行の改正法

2021年4月に施行された改正法では、努力義務として以下の措置を行う必要があります。

高年齢者就業確保措置

従来は65歳までの就業機会確保が努力義務として課されていました。しかし、改正法によって70歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、再雇用や勤務延長といった70歳までの継続雇用制度の導入が努力義務として定められています。

これは、労働者に必ず70歳まで仕事を続けてもらわないという意味合いではありません。労働者が70歳まで安定的に働ける環境を整備することが目的で、あくまで働きたいと考えている高年齢者の意思を尊重するためのものです。

それまで会社で設定されていた定年が65歳未満の場合は、定年を引き上げるか定年制度の廃止、または継続雇用制度を導入しなければなりません。就業規則を変更して、労働基準監督署へ提出することで、制度の導入が完了したとみなされます。

制度を導入しないままでは、改正高年齢者雇用安定法違反となり勧告を受けることになります。この勧告を無視して制度の導入を拒んでいると、企業名を厚生労働大臣が公表する場合もあります。その他、助成金が支給されなくなる、ハローワークに求人の掲載ができなくなるといった不利益を被る可能性もあるため、注意が必要です。

創業支援等措置

創業支援等措置は、会社の従業員としてではなく、業務委託契約といった形で直接的に雇用せずに支援する措置です。この措置に取り組むためには、以下に記載する<計画>をまずは作成する必要があります。

令和2年3月に改正され、令和3年4月から施行される高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)では、事業主は、65歳までの雇用確保措置を講じること(義務)に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保することが努力義務とされました。

この就業機会の確保(「高年齢者就業確保措置」)に当たっては、次の①~⑤までの選択肢があります。 ①定年年齢の引上げ

②定年制の廃止

③継続雇用制度の導入

④継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤継続的に次のいずれかの社会貢献事業へ従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業

④及び⑤を創業支援等措置といいますが、これらを導入するに当たっては、創業支援等措置の実施に関する計画を作成した上で、過半数労働組合等(※)の同意を得る必要があります。

※ 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者をいいます。

〈計画記載事項〉

① 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由

② 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項

③ 高年齢者に支払う金銭に関する事項

④ 契約を締結する頻度に関する事項

⑤ 契約に係る納品に関する事項

⑥ 契約の変更に関する事項

⑦ 契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)

⑧ 諸経費の取扱いに関する事項

⑨ 安全および衛生に関する事項

⑩ 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

⑪ 社会貢献事業を実施する法人その他の団体に関する事項

⑫ ①~⑪のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項

※⑪および⑫は該当がある場合に記載する必要があります。

【引用】https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000750086.pdf

計画作成後、過半数労働組合、または労働者の過半数代表者との同意を得て、計画について労働者に周知したうえで対象の高年齢者と契約を締結します。これによって、定年を迎えた従業員の創業支援だけでなく、それぞれの状況に応じた臨機応変な働き方の支援が可能となります。

改正による高齢者雇用のメリット

高年齢者雇用安定法は企業にとってもメリットがあり、今回の改正によってそれがさらに強まっています。高齢者が自社で働き続けるメリットを理解したうえで、会社の成長に大いに貢献してもらいましょう。

労働力不足の解消

少子高齢化が進んで若手の労働力が少なくなるため、活発に働いてくれる高齢者の存在は今や必要不可欠です。採用基準の年齢の幅を引き上げることで、より自社が求める人材とマッチする確率も向上します。改正によって働く高齢者が増えるということは、労働力不足の解消につながります。

優秀な人材確保

長年働き続けてきた高齢者は、さまざまなスキルを有する優秀な人材です。専門的な知識が求められる業種であるほど重宝する存在となり、自社の仕事で大いに活躍してくれます。企業が成長すれば、高齢者や若手を問わず、優秀な人材が入社してくれる可能性も高まります。

高齢者の持つ経験ノウハウを若手へ伝授

高齢者の持つスキルや経験ノウハウを若手に伝授してもらえることは、従業員全体のレベルアップにつながります。仕事に必要な知識は独学で学ぶことはできても、イレギュラーな事態やプロジェクト進行などは実際に働いてみないと経験できない部分も多いです。経験豊富な高齢者の存在は、若者のスキルやモチベーション向上に大いに役立ってくれます。

助成金などの優遇を受けやすい

高齢者を雇用している会社は、税制が優遇され、助成金の支給対象にもなります。助成金には、複数の種類があります。たとえば、65歳以上への定年引き上げや定年制廃止といった措置を実施した場合には、65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)などの助成金が申請可能です。

周囲のモチベーション向上

意欲的に働く高齢者は、それだけで周囲の仕事におけるモチベーション向上に寄与する存在です。また、業務経験の豊富さや高齢者ならではの視点でさまざまなアイデアを生み出してくれるケースもあります。高齢者は、商品やサービスの開発・改善にも大いに貢献してくれるでしょう。

企業の社会的信用度やブランド力の向上

高齢者に働いてもらうことは自社内部にとっても多くのメリットがあります。また、対外的に見ても人材の多様化という面から社会的信用やブランド力の向上につながります。働き方改革でも職場の多様化は推進されているため、高齢者の雇用は非常に重要な要素です。

改正による高齢者雇用のデメリット

高齢者雇用はメリットも多い一方でデメリットもいくつか存在します。高齢者を雇用する場合はこれらの要素にも注意しましょう。

高齢者の健康管理

高齢者は若手と比べると体調を崩しやすく、健康面ではさまざまなリスクを抱えている人も多いです。働きすぎて無理をしないよう、従業員自身が体調管理を徹底するとともに、会社側も業務の割り振りなどは負担を考えて慎重に行いましょう。

仕事内容によっては苦戦を強いられる

IT技術が急速に発達した現代では、ほとんどの仕事でパソコンを使用します。最近はスマートフォンを所有する高齢者も増えたことで、ある程度のITリテラシーは身につけられているかもしれません。しかし、パソコンを操作して行う業務などは若手の方が早く習得できるのが現状です。

若い頃からパソコンなどに慣れ親しんできた高齢者であれば問題ありません。しかし、仕事でパソコンを使うのが初めてという高齢者は、苦戦を強いられるでしょう。その場合、作業に時間がかかり、教育に費やすコストもかかるため、会社としては活用が難しい人材となります。

若い世代が中心の職場では馴染めない場合がある

若手が中心の職場では、価値観や仕事のスタイルが合わずに中々馴染めない高齢者も出てきてしまいます。職場においては、人間関係もモチベーションを大きく左右する要因のひとつです。その人の能力がフルに発揮できる部署に配置して、作業のしやすい環境など本人の希望を最大限叶えてあげられるよう努めましょう。

改正に伴い企業がとるべき対応

高齢化社会の現状や今回の法改正の中であっても、企業が成長を続けるためには、早急な対応が求められます。経営者の立場においては、以下のような準備を進めることが大切です。

新たな役割を用意して活躍できる場を広げる

高齢者がこれまで培ってきた経験やスキルを存分に活かせられる役割を用意しましょう。

たとえば、マネジメントが得意な人であればプロジェクトメンバー全体を取りまとめるマネージャー的な役割が向いています。また、教えることが上手な人には若手人材の教育担当に就いてもらうなど、その人にふさわしいと思われる役割を設計します。適切な役割設定によって、企業全体の活性化はもちろん、自社製品やサービスの向上にも大きくつながります。

人事的戦略の再構築

高齢者を雇用するにあたっては、雇用パターンの選択肢を増やすなど、さまざまな人事的戦略の再構築に努めましょう。自社に合う働き方を、多様な選択肢の中から選べるようにすると、高齢者はもちろん若手も含めた社員全体のモチベーション向上に効果的です。

また、新たに役割を用意した場合は、その役割に合わせた研修などにも力を入れることで、広い世代間でのコミュニケーション促進につながります。与えられた環境で大きく成長できる機会を、制度や教育を改善して与えることが重要です。

今度の改正も見越して中長期的視点での対応を

高年齢者雇用安定法は、働く意欲のある高年齢者が働き続けるためにも欠かせない法律です。

国内の少子高齢化や労働者不足の背景もあり、高年齢者の需要も高まっています。働きやすい環境や制度を導入して、高年齢者の活躍が若手や社内全体に大きなメリットをもたらすように努めましょう。

高年齢者雇用安定法は、今後も改正される可能性が高い法律です。高齢者に活躍の場を提供しやすい職場環境の構築など、中長期的な視点を持って少しずつ対応を進めていくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

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