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NPO法人(※)とはボランティア活動を行っている団体、といったイメージを持たれている方も多いと思いますが、正直なところ、具体的な内容についてよく分からないというのが実情ではないでしょうか。
※NPO(非営利団体)の中で法人格を取得している組織のことです。
2023年度8月末時点において、日本には50,000以上ものNPO法人が存在しており、各種の社会活動を行っています。今回は、分かっているようでありながら実はよく知らない存在である「NPO」について解説いたします。
NPO(「エヌ・ピー・オー」)とは、「Non Profit Organization」あるいは「Not-for-Profit Organization」を略した言葉です。「Non Profit」とは、英語で「非営利的な(儲けることを目的としない)」、「Organization」とは「組織・団体」を表す言葉です。
つまりNPOとは、「非営利団体」(営利活動することを目的としない人の集まり)のすべてを表す言葉と考えてよいでしょう。
民法は、本来、権利を持ったり義務を負ったりすることができるのは「生きている人間」(「自然人(しぜんじん)」と呼びます)だけに限定しています。たしかに食事や睡眠、結婚、子育て、相続……といった人間しかできないこともありますが、会社のような組織や町内会、学校、高校・大学の同窓会のような団体などが人間のように物を所有したり、契約したりできないとなるととても不便な世の中になってしまいます。
そこで、民法は、一定の要件を備えた組織・団体などに限定して、自然人と同様の権利能力(法律上の権利・義務の主体となることができる資格)を認め、「法人」という名前をつけました(民法第33条、第34条)。
1 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
引用元:民法第33条(法人の成立等)
2 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
引用元:民法第34条(法人の能力)
法人が権利・義務の主体となることのできる法律上の資格を「法人格」といいます。「法人格」が認められることによって、その団体等はその団体自体の名義で契約等をすることが認められ、結果として権利を得たり義務を負ったりできるようになるのです。
たとえば、「A」という名前のNPO団体があったとしましょう。この団体に法人格が認められない場合、「A」というNPO団体は、法律上すべての行為を原則として団体の代表者が個人として行わなければいけません。銀行口座を作るにしてもNPO団体名義で作ることはできず、その代表者の個人名義でしか作れません。事務所を借りる場合も、代表者個人が借りる形式となります。このため代表者が交代した場合、それらの契約は新代表者が締結し直さなければならず、必要な作業は言うまでもなく大変な負担となります。
これに対してNPO団体に法人格が認められた場合には、法律上の行為はすべて「NPO法人A」名義で行えるよになります。銀行口座は「NPO法人A」名義で作ることができ、事務所を借りる場合にも法人名義で契約することが認められるようになるのです。
NPOは、一定の社会貢献活動を行うことを目的として設立されます。NPOは、「Non profit」というその名前のとおり「非営利」的な活動を行うことを目的とする必要がありますが、その活動の中で儲けや利益を出してはいけないということではありません。
ここでいう「非営利」とは、活動の中で発生した利益を分配することを目的としない、という意味です。たとえば、株式会社は、利益が出たら株主に配当という形で還元しますが、そういうことは認められていないということです
NPOは、利益を得ることを目的とする活動を行うことができ、その活動で得られた利益に関してはNPOの本来の目的である社会貢献活動に役立つ使い方をする必要があります。
「非営利組織だから働いている人もボランティア」という勘違いを生むことがありますが、 周囲の支援を受けながら運営していくためには、優秀な人材を集める必要があります。NPO法人で働く人に給与を支払うことは、利益の分配にはあたりません(経費として扱われます)。
なお、NPOは法人格の有無などによってNPO、NPO法人、認定NPO法人そして特例認定NPO法人の4つに分類できます。しかし、利益の追求を目的とせず、多種多様な分野において社会貢献活動を行うという点においてすべて共通しています。
何らかの社会貢献活動を目的とし、さらに利益を得ることを主たる目的としない団体であるNPO(非営利団体)は、以下のように4つの種類に分類できます。
それぞれについて確認していくことにしましょう。
「NPO」という言葉は、広義と狭義の2つの意味で使用されることが多い言葉です。広義では、法人格を持たない団体を含め、NPO活動をする団体の総称を意味します。また狭義では、法人格を持たないNPO団体のことを指すことが一般的です。
特定非営利活動促進法という法律の規定に基づいて法人格を取得した法人が「NPO法人(特定非営利活動法人)」です。法人格を取得することにより、そのNPO団体の名義で各種の契約を結べるようになるなどのメリットを受けることができます。
NPO法人となるためには、法務局において設立登記をすることが必要ですが、そのためには前提として所轄庁による「認証」を受ける必要があります。「認証」を受け、設立登記をすることによってNPO法人が成立します。
特定非営利活動促進法は、NPO法人の活動対象を20の分野に分類しています(第2条)。このようにNPO法人は、多岐にわたる方面で社会的に価値のある活動を行っており、社会問題の改善や解決、公共の福祉の増進などに向けて活躍しているのです。
一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
引用元:特定非営利活動促進法 別表(第二条関係)
二 社会教育の推進を図る活動
三 まちづくりの推進を図る活動
四 観光の振興を図る活動
五 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
六 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
七 環境の保全を図る活動
八 災害救援活動
九 地域安全活動
十 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
十一 国際協力の活動
十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
十三 子どもの健全育成を図る活動
十四 情報化社会の発展を図る活動
十五 科学技術の振興を図る活動
十六 経済活動の活性化を図る活動
十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
十八 消費者の保護を図る活動
十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
「認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)」とは、所轄庁によって特に「認定」を受けたNPO法人のことです。所轄庁によって「認定」を受けるためには、直前の2事業年度において一定の基準を満たす実績が必要とされています。
「特例認定NPO法人」とは、NPO法人として設立後5年以内のものであり、一定の要件を満たすことによって所轄庁の特例認定を受けたNPO法人のことです。具体的には、NPO法人としての運営組織や事業活動が適正であり、特定非営利活動の健全な発展の基盤を持ち、公益の増進に資すると見込まれるなど一定の基準に達していると判断された場合に特例認定NPO法人となることができます。
一般社団法人は、法律の規定によって営利を目的とすることはできませんが、公益まで目的とする必要はありません。一方、NPO法人は、やはり営利を目的にはできませんが、公益を目的とする必要があります。つまり、両者は「営利目的でない」という点では同じですが、公益を目的とする必要性の有無の点において相違があります。
また、一般社団法人とNPO法人は設立の根拠となる法律が異なります。NPO法人は「特定非営利活動促進法」に基づいて設立されますが、一般社団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の規定に基づき設立されます。なお、一般社団法人や一般財団法人について次の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
NPOについて解説いたしました。NPOは、社会貢献活動を目的として設立され、多種多様な活動を行っています。NPOは非営利活動を行うイメージがありますが、活動に際して利益を得ることが禁止されているわけではありません。得た利益を分配せず、活動の目的に役立つように使うのであれば法律上何の問題もありません。
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