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街中の私有地で、「違法駐車を見つけた場合には罰金〇万円をいただきます」などという貼り紙を見かけたことはないでしょうか。これは、勝手に自分の土地に迷惑駐車された土地の所有者によるものなのでしょうか。
また、友人同士の間で「約束を破ったら罰金ね!」などという使い方をすることもあるでしょう。
このように、世間では「罰金」という言葉を日常的に使います。
しかし、法律的には「罰金」とは犯罪行為に対して科される意外と重い刑罰で、罰金刑を受けることは刑罰を受けること、つまり「前科が付くこと」になるのです。
今回は、この罰金について解説いたします。
罰金とは、日本の刑罰司法制度の中における6つの刑罰のひとつであり、一定額の金銭の支払いを命じる刑罰です。
罰金の支払い命令には支払いを行うべき期限が定められており、その期限内に支払いを行わない場合には財産の差押えや身柄の拘束が行われるなどのペナルティを受けることになります。
統計(※)によると、2021年度における刑法犯に対して科された刑罰の中で、罰金刑は約78%と圧倒的に多くなっています。
※【参考】犯罪白書の概要 令和5年版(法務省)
罰金刑において支払いを命じられる金額に関してはどのような罪を犯したかによって大きな相違がありますが、刑法では第15条において最低額を1万円と定めています。
そして、罰金刑の上限額に関しては刑法上では1,000万円、それ以外の法律(不正競争防止法など)では3,000万円と定めている規定まで存在します。
犯した罪が重ければ重いほど、罰金刑で支払いを命じられる金額は高くなる傾向が見られます。
世間的に見た場合、罰金刑を受けることの多い典型的な事例をいくつかご紹介しましょう。それぞれの事例における刑罰の規定も併せて確認してください。
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
5年以下の懲役または100万円以下の罰金
10万円以下の罰金
日本の刑事司法制度における刑罰には、いくつかの種類が存在しています。
刑罰の重い順から列挙すると、以下のようになります。
①死刑
②懲役
③禁固
④罰金
⑤拘留
⑥科料
いうまでもなく最も重い刑罰は「死刑」ですが、その次に重いのが「懲役」。そして次が「禁固」となっています。これら3つの刑罰を受ける場合には、すべて刑務所に収監されることになります。
罰金刑は命じられた一定額の金銭の支払いを行うことで刑の執行が終わる刑罰ではありますが、こうして見てみると刑務所に入る一歩手前の刑罰であることが分かります。つまり、罰金刑とは一般的に考えられているよりも重い刑罰と言えます。
ちなみに、罰金刑の次に重い刑は「拘留(こうりゅう)」であり、金銭の支払いの代わりに一定の期間(1日以上30日未満)身柄の拘束を受ける刑罰となります。
身柄を拘束されている期間は、当然会社に出勤できません。会社員の場合は会社を辞めざるを得ないケースも考えられます。
罰金刑を受けた場合、定められた金額を一定の期間までに納付する必要があります。罰金の支払いに関しては一括払いが原則であり、罰金額が高額であったとしても通常のケースでは分割払いが認められることはありません。
罰金は納付告知書記載の金融機関や検察庁において納付することが可能です。
なお、罰金を期限までに支払わなかった場合には、後述のペナルティを受ける可能性が高くなりますので、くれぐれもご注意ください。
何らかの法律違反を犯し、罰金刑を受けた場合には以下の影響があります。
①前科が付く
②身柄が拘束される可能性がある
それぞれについて簡単に確認しておきましょう。
罰金刑は上述のように、犯罪に対する立派な刑罰です。そのため、罰金刑を受けた場合には、前科が付くことになります。
前科が付くと、そのことが前科調書に記載され、検察庁において記録として残ることになります。また、前科は一部の職業においては欠格事由であり、就職が制限されたり、資格取得ができなくなったりします。すでに資格を有している人に前科が付くと、資格が剥奪される可能性もあります。
懲役や禁固などと違い、罰金刑は比較的身近な刑罰のイメージがあり罰金刑を受けたとしても前科がつかないと思っている方は多いかもしれませんが、その考え方は間違いです。罰金刑を受けた場合には、前科が付くことになるのでご注意ください。
罰金刑は上述のとおり、一定額の金銭を支払うことで終了する刑罰です。しかし、罰を受ける原因となった法律の違反行為に対する実際の刑罰が決定されるまでの間、場合によっては身柄が拘束される可能性もあるので注意が必要です。
罰金刑を受ける場合、通常では「略式起訴」が行われるため、正式な裁判を受けることなく簡易的な方法で刑罰が決まることになります。このようなケースでは裁判が行われないため、身柄の拘束を受けずに済むことが一般的です。
しかし、犯罪の行われた状況などによっては略式起訴とはならず正式な裁判を受ける可能性もあり、その場合には判決の言い渡しを受けるまでは拘置所などに身柄を収容される可能性もあるのです。
すでに述べたように罰金には支払い期限が定められており、その期限内に支払いを行うことが必要です。
罰金の支払い期限は、その支払いを命じる「納付告知書」または「督促状」などに明記してあります。
このように定められた期間内に納付を行うべき罰金ですが、それを支払えない場合にはどうなるのでしょうか。
数万円程度の金額であれば支払うことができる人は多いでしょうが、罰金額も10万円を超え高額となるような場合、しかも一括払いとなると支払いが困難となるようなケースもあるでしょう。
定められた期限内に罰金が支払われない場合、検察は罰金刑を受けた者の財産に対して差押えなどの強制執行を行うことになります。
しかし、強制執行すべき財産がない場合には、「労役場留置(ろうえきじょうりゅうち)」が行われます。これは「労役場」(刑務所内に存在する施設)に身柄を収容し、罰金の支払いに代えて一定期間労働させることによって罰金を完納させる処分のことです。
一般的には1日の留置について5,000円相当と換算するため、例えば10万円の罰金を完納するためには20日間労役場に留置されることになります。
労役場留置を受けた場合、一般的な日常生活を行うことは当然不可能となります。
当然、会社に出勤することはできないため、場合によっては会社から解雇されるリスクも考えられるでしょう。
そのようなリスクを避けるためにも、罰金は極力期限内に支払うべきです。
また、もし罰金を期限内に支払えない場合には、なるべく早い段階で検察庁に相談しましょう。場合によっては、何らかの解決策が見つかるかもしれません。
何らかの法律違反に対する罰則として一定額の金銭の支払いを命じられるケースは、罰金刑だけではありません。
罰金と類似した罰則として、以下のようなものがあります。
①科料
②過料
③反則金
これらは定められた金銭を支払う必要があるという点で同様の罰則ではありますが、罰則の性質に違いがあります。
それぞれの相違点について、順次確認していくことにしましょう。
「科料(かりょう)」とは、罰金と同じように一定額の金銭の支払いを命じられる刑罰です。
前述した6つの刑罰の中では、もっとも軽いものである点が特徴と言えるでしょう。
科料は、比較的軽微な犯罪に対して科される刑罰です。刑法では暴行罪や侮辱罪などを犯した場合や、軽犯罪法違反などに対して適用される刑罰となっています。
また、科料で支払いを命じられる金額は罰金よりもずっと少なく、1000円から最高でも1万円である点も大きく異なる点です。
「科料」と読みが同じであるため混同しやすい言葉として「過料(かりょう)」が存在します。両者は混同しやすい言葉ではありますが、科料は刑事罰であり、過料は行政罰である点が決定的な違いです。前科は刑事罰で付くものですから、行政罰である過料を受けた場合には前科が付くことはありません。
行政罰の身近な例としては、①路上喫煙禁止条例・歩きたばこ禁止条例による過料が挙げられます。例えば、渋谷区には公共の場所での喫煙を過料(2,000円)の対象となることを定めた条例があります。また、②公正取引委員会による課徴金制度なども行政罰にあたります。
駐車違反などを犯した場合、「反則金」の納付を命じられることがあります。反則金も罰金と類似した制度ではありますが、これはあくまでも刑罰ではなく交通反則通告制度にもとづく行政罰であり過料の一種です。このため反則金の支払いを命じられた場合であっても、前科が付くことはありません。
交通反則金は交通違反の中でも比較的軽い違反について命じられることが多く、駐車違反や軽微な速度超過などのケースで多く見受けられるものとなっています。これに対して、悪質な違反行為(飲酒運転、過度な速度超過、無免許運転など)に関しては反則金では済まず、罰金刑を受ける可能性が高くなります。
なお、反則金を受けること自体は刑罰ではないため前科が付きませんが、反則金を支払わない場合には、道路交通法違反事件として刑事手続に移行し裁判を受けることになります。罰金や懲役刑を受ける可能性があるので注意が必要です。
日本の刑罰における「罰金」は、私たちが想像しているよりも重い刑罰であること、また、私たちが日頃「罰金」だと思っているものの中には、厳密には「罰金」でないものも含まれていることについて、解説いたしました。
罰金は定められた一定期間内に支払うことが必要ですが、これを支払わない場合には最悪のケースとしては労役場で一定期間身柄を拘束される可能性があります。
身近な言葉であるため軽く考えがちではありますが、罰金刑を受けた場合には期限内に納付することが重要です。
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