不動産業界では今も紙文化が根強く、
電子契約を導入したものの、現場に定着しない
取引相手(オーナー・入居者・買主)が紙を希望するのではないかと不安で踏み切れない
といったお悩みをよく耳にします。
制度面の環境は整いつつあります。2022年の宅建業法改正により、不動産取引における電子契約は本格的に活用しやすくなりました。一方で、制度が整っても「浸透」までたどり着けるかどうかは、現場の運用設計次第というのが実情です。

この記事では、2026年7月28日に開催した不動産業界向けユーザーイベントのトークセッションをもとに、不動産の売買・仲介を手がける三井住友トラスト不動産株式会社と、賃貸管理を手がける株式会社日本財託管理サービス、業態も導入の動機も異なる2社の事例から、電子契約を「導入」で終わらせず「浸透」させるためのポイントを解説します。
この記事でわかること
- 不動産業界で電子契約が浸透しない典型的な壁と、その乗り越え方
- 全社規模で展開する場合と、システム連携で運用を絞る場合、それぞれの浸透メソッド
- 取引相手(オーナー・入居者・買主)に電子契約を受け入れてもらうためのカギ
- 自社で電子契約の導入・浸透を進める際のチェックポイント
なぜ不動産業界では電子契約が「導入止まり」になりやすいのか
不動産業界で電子契約が根づきにくい背景には、いくつかの共通課題があります。
- 取引金額が大きく、対面・書面での契約に安心感を求める商習慣が根強いこと
- 契約相手が高齢のオーナーや個人のお客様であることが多く、デジタル対応への不安があること
- 営業担当者自身が「お客様に嫌がられるのでは」という懸念から、案内をためらってしまうこと
- 紙の契約書を前提にした社内フロー(承認・保管・郵送)が残っていること
今回ご紹介する2社は、まさにこの壁に向き合い、それぞれ異なるアプローチで乗り越えてきました。
イベント概要
今回のトークセッションは、GMOサインが不動産業界のお客様を対象に開催したユーザーイベント内で実施されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年7月28日 |
| 対象 | 不動産業界のGMOサイン導入企業様 |
| 登壇企業 | 三井住友トラスト不動産株式会社(売買・仲介)/株式会社日本財託管理サービス(賃貸管理) |
| モデレーター | GMOサイン カスタマーサクセスチーム |
| トークテーマ | ①電子契約に取り組んだ背景と当時の課題/②活用の広がりと浸透に向けた工夫/③SMS活用と普及のカギ |
2社の取り組みを比較
業態も導入のきっかけも異なる2社ですが、それぞれの運用には特徴があります。
| 項目 | 三井住友トラスト不動産 | 日本財託管理サービス |
|---|---|---|
| 事業領域 | 不動産売買・仲介 | 不動産賃貸管理 |
| 導入時期 | 約4〜5年前 | 約4〜5年前 |
| 展開方法 | 全社員へID配布し、全社標準の運用に | 更新契約からスタートし、新規契約へ段階的に拡大 |
| 電子化の状況(目安) | 全てのセンター及び営業社員へ展開済み | 更新契約は約7割、新規契約は約8割が電子契約に対応 |
| 浸透のカギ | 電子契約を営業の武器として位置づけ全社員にIDを配布。同時に社内相談窓口を設置し、安心して利用できる体制を構築。 | システム連携(いえらぶCLOUD)による自動化とSMS送信の活用 |
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ポイント①:導入の「目的」を、コスト削減だけでなく現場の負担軽減に置く
浸透がうまくいかないのは、電子契約を「コスト削減施策」としてだけ現場に説明してしまうケースです。今回の2社は、現場・取引相手の負担軽減という視点も軸に据えていました。
三井住友トラスト不動産の萩原様は、売買・仲介契約における紙の負担をこう振り返ります。
「売買・仲介の契約の場でお客様に押印が、住所と署名を10箇所ぐらいに書いてもら、10回ぐらいしてもらう。それだけで30分近くこともあって。にとっても、お客様にとってもメリットがあると強く感じています」
萩原様(三井住友トラスト不動産株式会社)
また、電子契約導入の判断の背景には、制度変更をきっかけとした競争力への意識もあったといいます。
「この改正のタイミングでシステムを導入しようと思ったきっかけとしては、電子契約が完全にできるということがお客様のメリットにつながるというが。競争力のが、一番大きな理由だったと思います」
萩原様(三井住友トラスト不動産株式会社)
一方、日本財託管理サービスの遠藤様は、より率直に効率化を動機として挙げつつ、紙・郵送運用の非効率さを課題として語っています。
「の効率化とコスト削減上からはコストを下げろと。毎回書面で郵送して、届かなくて対応できなかったらもう1回送ってください、みたいなラリーが正直多かった。そこを電子に変えたいというのが最初のメリットでした」
遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
電子契約導入の目的を「コスト削減」だけで説明すると、現場の当事者意識が生まれにくくなります。営業担当者・取引相手それぞれの具体的な負担(押印の手間、郵送の遅延など)を数え上げ、「誰のどんな時間が減るのか」を言語化して共有することが有効です。
ポイント②:心理的ハードルを下げる仕組みを、システムの外側に用意する
電子契約の浸透は、ツールを導入するだけでは進みません。2社に共通していたのは、「使う人の不安を潰す」ための地道な運用設計でした。
三井住友トラスト不動産では、電子契約を単なる事務効率化の手段ではなく「営業担当者の武器」として位置づけ、全社員へIDを配布しています。トップダウンで「営業担当者は必ず電子契約で契約を締結すること」という方針を出し、以下のような支援体制を整えました。
- お客様向けの説明用リーフレット、様式、チェックリストの整備
- 「電子契約のことは何でも聞いていい」専用相談窓口の設置
- 締結後の全件モニタリングと、問題があった場合の管理者・担当者へのフィードバック運用(4年以上継続)
- マニュアルだけでは読まれないため、使い方をまとめた動画の作成
- 各店舗の店頭に電子契約可能のPOPを設置(全国74拠点)し、お客様側から「電子でできるの?」と聞いてもらえる状態を作った
「専用の相談窓口を今も設けていて、窓口に常駐し、電子契約のことはいつでも何でも聞いていいという体制を社内に敷いています」萩原様(三井住友トラスト不動産株式会社)
日本財託管理サービスでは、導入当初にオーナー側からの懸念があったものの、実際の運用では想定ほどネガティブな問い合わせが発生しなかったといいます。
「オーナー様、紙じゃなくて大丈夫なのという話は正直あったです。いざ導入してみると、そこまで。導入後2年間でも数十件ぐらいの問い合わせでした」遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
導入前に想定される懸念(オーナー・取引相手からの反発など)は、多くの場合「導入前の不安」ほど大きくは顕在化しません。まずは小さく始めて実績を作り、社内外への説明資料・相談窓口といった「安心材料」を並行して整えることが、心理的ハードルを下げる近道です。
ポイント③:取引相手に届く手段(SMS)で、回収スピードを上げる
浸透のカギとして両社が挙げたのが、SMS(ショートメッセージ)による案内・通知でした。
「今の送信を見ると、全体の1/3から1/4ぐらいがSMS送信になっていて、結構上がってきているなと感じています。もしこれがなかったら、ここまではやれてなかったかなと思います」
遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
日本財託管理サービスでは、更新契約時の情報変更などでメールアドレスの取得が難しい場面が多く、確実に入力してもらえる携帯電話番号を軸に、案内をSMSへ統一しました。結果として、更新契約の回収率はほぼ100%に達しているといいます。
「紙の郵送通知だと『そんな通知知らない』という方もいるんですが、ショートメールは見てますよねという話になると、その場で『じゃあこのまま手続きしてほしいです』と対応してくれる。気が変わらないうちに通知を送れるのが、一番のメリットです」
遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
三井住友トラスト不動産でも同様に、情報変更時のメールアドレス取得の難しさから、案内・通知をSMSにする運用を採用しています。また、繁忙期における電子契約件数の伸びの背景として、日本財託管理サービスからは次のような話もありました。
「昨年、物価高の影響で賃料改定の契約が急増しまして。以前は賃料改定でデータが整っていない場合は紙で送り直す運用だったですが、システム連携によって賃料改定後もすぐ電子で回収できる仕組みを整えたことが、大きな伸びの要因だったと思っています」
遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
この仕組みづくりには、システム連携先のいえらぶCLOUD様にもご協力をいただいたといいます。遠藤様は「賃料改定に伴う更新契約は特にスピードが求められるので、電子契約との相性が非常に良い」と話しています。
不動産取引は「対法人」より「対個人」の接点が多い業界です。メールより開封率・即時性で優位なSMSを電子締結の手段として選べるかどうかは、回収スピードと回収率に直結します。
今後の展望
最後に、両社からは今後の展望も語られました。
「より柔軟性のある契約形態をいきたいと思っています。単純な電子契約の利用促進に関しても、まだまだ課題が残っていますが、業務品質を維持しながら業務プロセス全体を広げていくことが、お客さまにとっても従業員にとっても、より高い価値につながっていくのかなと思っています」
萩原様(三井住友トラスト不動産株式会社)
「個人のお客様との契約に関しては、ほぼほぼ電子で進めさせていただいているんですが、法人のお客様のご契約では、まだ書面じゃなきゃというニーズが残っているのかなと思っているので、そこをしっかり連携した上で、電子契約の対応を進めていくのが今後かなと思っております」
遠藤様(株式会社日本財託管理サービス)
よくある質問
まとめ:電子契約を「浸透」させるためのチェックリスト
2社の事例から、これから電子契約の浸透に取り組む不動産会社が押さえておきたいポイントを整理しました。
- 導入目的を「コスト削減」だけでなく、現場・取引相手の負担軽減として言語化できているか
- 相談窓口やマニュアル・動画など、迷ったときに頼れる仕組みを用意しているか
- 取引相手に届きやすい手段(SMSなど)で案内・通知できているか
- 小さく始めて実績を作り、社内外の不安を段階的に解消できているか
業態が異なる2社でも、共通していたのは「取引相手・現場にとっての負担を、いかに小さくするか」という視点でした。制度は整っています。あとは運用設計次第で、電子契約は「導入」から「浸透」へと進めることができます。
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GMOサインは、今回ご紹介したような不動産業界特有の課題に対応できる機能・支援体制を備えています。
- 取引相手に届きやすいSMS認証に対応し、電子契約に不慣れな方への案内もスムーズに行えます
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