電子契約を学ぶ

2022年11月2日

2022年11月4日

電子契約の有効性が争われた裁判例(判例)|民事訴訟における電子署名の証拠能力と証明力について解説

契約を締結後にトラブルとなった場合、裁判で解決をはかることがあります。そういった時に、証拠とされるのが契約書です。今日では紙媒体の契約に代わって電子契約がされることが多くなってきています。

電子契約は、紙契約のような郵送や印刷に係るコストを削減することができ、物理的な管理も必要ないのがメリットですが、電子契約は紙の契約書と同じ効力があるのでしょうか。

  • 「電子契約を裁判所に提出して証拠として認められた判例ってあるの?」
  • 「具体的な判例とは?」

と疑問に感じていませんか。

裁判の際に証拠として電子契約を提出し、証拠として採用された例があります。また、日常業務で使うメールを証拠としてみなした判例もあります。

この記事では、そうした電子契約の有効性を争った民事訴訟の判例をご紹介しましょう。

電子契約書を有効的に作成・運用するためには、基本的な電子契約書の知識を押さえておく必要があります。万が一のトラブルの場合に備えて、有効性のある電子契約書を運用するために準備すべきことや、知っておくべきポイントについても解説します。



電子契約とは

ではまず、電子契約とはどのようなものかおさらいしておきましょう。

電子契約とは、紙の契約書に代わってPDFなどのデータ形式で作成された電子契約書を用いる契約方式のことです。

電子契約は、「タイムスタンプ」と「電子署名」という2つの仕組みにより、改ざんされていないことや原本であることが証明されています。

タイムスタンプ

電子契約書の作成が完了した日時と、それ以降に編集が加えられていないことを証明するものです。

契約締結後に文書の改ざんが行われたとしたら、タイムスタンプにある情報と照合することで、改ざんされたことが判明します。

電子契約書が改ざんされてないことを証明するものは、タイムスタンプに登録されたハッシュ値です。

ハッシュ値とは関数を使用して出力される数値であり、データの改ざんがない限り、同一の値が出力されますが、改ざんがあれば違う値が出力されます。

電子署名

電子契約書に付与される電子的な署名のことです。

電子署名には2種類があり、1つは、契約者本人が、電子証明書による署名を付与する「当事者型の電子署名」です。

もう1つは、事業者がメール認証等を利用して本人確認をした後、事業者が電子署名を付与する「事業者署名型の電子署名」です。

電子契約のメリット

電子契約にはいくつかのメリットがあると言われています。具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

印紙税の削減

紙の契約書は1件あたり200円~数10万円の印紙税の添付が必要です。たくさんの契約を交わさなければならない企業にとって、印紙税は大きな負担となります。もし、収入印紙の添付を怠った場合は、納付すべき印紙税額の3倍を徴収されてしまいます。

しかし、電子契約であれば、「課税物件に掲げる文書」とはされていないので、印紙税の添付が不要です。そのため、印紙添付漏れのリスクもありません。

事務経費や稼働の削減

契約書を作成するには、契約書を印刷し、製本し、収入印紙を貼り、封筒に宛名を書いて、封筒に契約書を入れ、郵便局に行って投函するといった一連の作業が必要になります。また、印刷費、郵送費などの関連費用がかかってしまいます。

電子契約の場合、インターネット上で契約書の作成から送付まで行うことができます。印刷や製本、宛名書き、封入、投函といった作業が必要ありません。さらに、印刷費や郵送費も不要です。

契約締結までの時間が短縮できる

紙の契約書の場合、契約に合意できたら、契約書を印刷して製本し、押印し、相手に郵送します。相手は、郵送された契約書を受け取ったら、社内稟議で決裁を取得し、契約書に押印して返送します。

回覧ルート上の承認者が休みなどで、決裁を取得するまでに時間がかかってしまうこともよくあるようです。最悪の場合、遡及決裁となってしまうおそれがあり、その結果、取引に悪影響を及ぼしてしまいます。

電子契約なら、インターネット上で契約書データを送受信や確認ができるので、契約締結までの時間が短時間ですみます。契約書のひな型のファイルがあるので、契約書の作成や変更も容易です。さらに、電子契約サービスを提供する企業に、契約書作成のサポートを行ってもらうことができます。

効率的に管理や保管ができる

法律の定めにより、契約書は一定期間保存しなければなりません。紙契約の場合は、契約書原本を書庫などに施錠管理する必要があります。そのため、書庫や保管スペースを確保する必要もあるでしょう。

電子契約なら、契約書は電子媒体なので、クラウド上に保管できます。管理の手間や保管場所を用意する必要がありません。紛失や情報漏洩のリスクも少なくなります。

また、検索が容易な点もメリットの1つです。急な監査対応などでも、電子契約なら、キーワードや決裁日などから、契約書を容易にスピーディーに検索することができます。

電子契約のデータは裁判の証拠となる

電子契約は、たくさんのメリットがあるので、社会的にもニーズが高くなっています。電子契約は、紙契約と同様、民事訴訟の際の証拠とすることは可能なのでしょうか。

電子契約も裁判の証拠となる

結論から言いますと、紙媒体と電子データのどちらも、民事訴訟の証拠となります。民事訴訟で証拠とされる契約書は、必ずしも紙媒体のものでなくても問題ありません。

例えば、ビデオテープに録画された映像や、磁気ディスクに保存された電子データなども「準文書」とされ、証拠とすることは可能です。電子署名された電子契約もこれらと同様に、証拠とすることができます。

立会人型でも問題ない

電子契約における電子署名には、2種類の方法があります。

1つは、「当時者型」と言って、契約書作成者自身が電子署名をする方法です。もう1つは「立会人型」と言って、契約書作成者の代理として、事業者が電子証明を行う方法です。

当事者型の場合は、利用者自身が電子証明書を発行しなければならないので、手間とコストがかかってしまいます。

一方、立会人型の方は、利用者に代わって、サービスを提供する事業者が電子署名を行ってくれるので、手間とコストを省くことが可能です。立会人型の方が電子契約サービスとしてのシェアは高くなっています。

立会人型では、電子署名事業者が本人に代わって署名するため、厳密には本人による署名ではありません。そう考えると、立会人型の場合、第三者である電子署名事業者が署名をする点に懸念があります。

この点に関して、経済産業省は、2020年に「本人の意思によって第三者が行った電子署名は、本人が行った電子署名である」との見解を示しました。この見解によって、当事者型と同じように立会人型の方も有効な契約であるということがオーソライズされたのです。従って、電子印鑑GMOサインのような、事業者が署名する「事業者署名型電子契約」も、準文書として扱われることになりました。

社会のニーズ

ペーパーレス化・非対面化という社会のニーズがますます高まってきています。現在では一部の定期賃貸借契約などを除いて、ほぼ電子契約が認められています。

今後、電子契約が普及するにつれ、民事訴訟で電子契約書が証拠として扱われる事例もますます増えていくことでしょう。

電子契約を民事訴訟で証拠とするには

裁判の証拠とするには、物や紙の形で証拠として裁判所に提出するのが一般的です。電子契約の場合は、紙にプリントアウトして提出するか、外部媒体に電磁的に記録して提出するかのいずれかを選択することになります。また、電子署名の検証画面、契約締結までの交渉経緯を記録した電子メール等を、証拠として提出することもあるようです。

現在、裁判所や法務省によって裁判手続きのIT化が検討されています。そのうちに、インターネットによる証拠提出ができるようになるでしょう。

契約書の「二段の推定」

契約書の署名や押印が本人の意思で行われたかどうかを確かめるのが事実上困難です。そこで、「第三者が実印を持ち出して使用することは通常は起こるはずがない」という経験則から、契約が有効であることを推定することとしました。これが、民事訴訟法第228条4項の規定する「二段の推定」です。

まず、一段目の推定として本人の実印が押されている契約は、「本人の意思で行われた」契約であるとします。続いて、二段目の推定で、本人の署名や押印がされていれば、「有効な契約である」とします。

なお、推定とは「一定の状態であるものと判断する」という意味です。

電子署名の場合も電子署名法第3条によって、「二段の推定」が可能であるとしています。しかし、電子署名の場合は、その署名が本人によって行われたものであることが証明できなければなりません。

例えば、認証局に電子証明書を発行してもらうこともあるでしょうし、本人が秘密鍵を管理しているといったこともあるでしょう。あるいは、電子署名を付与する時に本人しか知り得ないパスワードが使用されているといったことも必要です。

電子契約が初めて認められた裁判

貸金返還等請求事件判決 2019年7月10日 東京地裁」をご紹介します。

東証一部上場企業である社Aは、B社との間で、9億9千万円を上限とする「相互極度貸付契約」を電子契約で結びました。

しかしながら、債務者であるB社は貸付金の利息の支払いを怠り、未払いのままとまっていました。

そこで、債権者であるA社は、支払いを求める訴訟である、貸付金返済に関する準消費貸借契を起こして、B社に支払いを求めたのです。

B社はA社がB社に相談なく勝手に相互極度貸付契約の電子署名を行ったものであるとし、契約の無効を訴えました。

こうしてA社とB社の間で、電子署名で締結された「相互極度貸付契約」の有効性が裁判で争われるようになったのです。

判決で裁判長は、Bの主張を退けました。

B社は、一貫して貸付金を資金とした事業活動を進めており、B社は契約に合意し、B社の意思で電子署名がされた有効なものであると判断したのです。

背景として、被告であるB社は当初、原告であるA社の子会社だったのですが、お互いの信頼関係がなくなり、親子会社の関係は解消されてしまったということがあります。

この裁判では、電子証明書自体の改ざんの検証は行われずに、これまでの事実関係から、電子証明書等が有効であると判断されました。

この裁判は、日本で最初に電子契約が認められた貴重な判例と言えるでしょう。

電子メール契約が有効とされた裁判

さらに、我々が日常生活や仕事で利用している電子メール契約が、契約書として有効とされた判例もあります。

業務委託料請求事件判決 2013年2月28日 東京地裁」をご紹介します。

原告のC社(広告代理店)は、メールを使用したD社からの広告の発注は契約書として有効であると訴えました。

これに対し、被告のD社は、メールはC社によって書き替えられた無効な契約であると反論したのです。

裁判の判決で裁判長は、メールは書き替えられた証拠が見つからないので有効であるとしました。

電子契約を証拠資料とした実例

代理人の弁護士により、電子サインがされた電子契約が証拠資料として裁判に提出されたケースもあります。

このケースで、裁判官に電子契約の仕組みの説明が行われた結果、理解を得ることができました。

その結果、電子サインがされた電子契約による請求債権が有効とされ、仮差押の発令がなされました。

ただし、この判例では、電子契約自体の有効性について争われたものではありません。

裁判所に理解してもらうための方法

民事訴訟では、電子契約の技術的な仕組みなどが、裁判官に正しく理解されてなければなりません。

裁判官は優秀でも、電子署名やクラウドの知識に関してはうといかもしれません。

合理的な判断をしてもらうためには、以下の点についてわかりやすく、かつ論理的かつ正確に説明することが、訴訟を円滑に進めることができるかのポイントとなります。

  • 契約として採用した電子契約サービスの仕組み
  • ハッシュ関数等の技術的な仕組みを用いた電子署名の詳細
  • 電子署名法と民事訴訟法との関係

なお、最近は、裁判官に電子契約や電子認証の仕組みを説明するための資料を、サービスとして提供している電子契約事業者もあります。

電子契約導入時の注意点

導入メリットの大きい電子契約サービスですが、導入時の注意点もいくつかあります。ここでは、2つの大きな注意点をご説明します。

全ての契約書を電子化できない

不動産の一部業務など、法律上で契約書原本の電子化を禁じているケースがあります。

例えば、任意後見契約書は公正証書によらなければなりません。また、事業用定期借地権設定のための契約書も公正証書が必須です。さらに、農地の賃貸借契約書も書面による契約書の作成が必要とされています。

したがって、電子契約サービスを新しく導入する場合は、対象となる業務が電子化できるかを事前に確認しておく必要があります。

市場シェア率の高い電子契約サービスを導入する

電子契約サービスを導入する場合、相手方もそのサービスが導入できるかの確認をする必要があります。

もしも、市場シェア率が少ない電子契約サービスを導入するとしたら、相手方はそのサービス導入に消極的である可能性が高いのではないでしょうか。

今日では、電子契約サービスも数多くあるため、複数の電子契約サービスを使って契約を締結してしまうと、別々の法的対応が必要です。さらに、セキュリティーチェックもそれぞれ行わなければなければなりません。

市場シェアの高い電子契約サービスに限定して利用し、相手にもそのサービスをすすめるというやり方の方が効率的でしょう。

相手方にも電子契約サービスの導入を依頼する場合は、市場シェア率が高い電子契約サービスを選定したうえで、導入をすすめるという手順をおすすめします。

まとめ

電子契約は、電子署名法第3条や民法522条により、裁判に必要な証拠となりうる「準文書」とされています。

また、判例では、件数はまだ少ないのですが、電子契約・電子署名が有効であるとされたケースもあります。

裁判の証拠資料として、電子サインがされた電子契約が提出されたケースもありました。このように、電子契約を認めようとする大きな流れはありますが、現時点では、まだまだ電子契約の判例が少ないため安心できません。

これからは、電子契約に関する判例もたくさん出てくるでしょうから、突然電子契約の有効性が覆るようなケースが出てくるともかぎりません。電子契約が裁判時の証拠として問題なく利用できるかは、今後の判例を引き続き注視する必要があります。

現時点では電子契約の判例は少ないとはいえ、時代の流れから民事訴訟の証拠として採用されることはほぼ間違いないでしょう。

電子契約に関する判例も今後ますます蓄積されていくので、法律面の整備もさらに充実されてくると思われます。

従って、社会のニーズに応える意味でも、自社のさらなる契約業務の効率化や経費削減を目指す意味でも、電子契約サービスの活用は今から進めておいた方がいいでしょう。

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