業務の効率化を図るために、入社書類を電子化する企業も増えています。紙で入社書類を作成するのはコストがかかり、人事にも大きな負担がかかるためです。現在では、雇用条件通知書をはじめ、入社の際に必要な書類は電子化することが認められています。
しかし、重要な書類を電子化することに不安を覚える方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、入社書類電子化のメリットやその方法、電子化するために活用できるシステムについてご説明します。最適なシステムを導入すれば、入社手続き以外の業務の効率化も可能になります。
【セミナー無料配信中】労働条件明示のルール改正について弁護士が深掘り解説
目次
入社書類を電子化するメリット
入社書類を電子化することで、コスト削減のほか、業務の効率化、迅速化を図ることができます。
コスト削減ができる
今まで紙で作成していた書類を電子化すれば、紙代や印刷代を削減できます。書類を保管するスペースを確保するための費用や書類保管サービスを利用する必要もなくなります。
人事担当の従業員のテレワークがしやすくなる
人事担当の従業員は、入社手続きのために内定通知書や入社誓約書、雇用条件通知書、入社時必要書類の案内などを準備する必要があります。入社時に提出してもらう書類の管理や社会保険・税金関連の手続きも必要です。書類を電子化してやり取りし、電子申告できつ形を整えることで、人事担当の従業員がテレワークで働きやすくなります。
スマホからもアクセスできる
電子化された書類をクラウド上に保存すれば、スマホからもアクセスできるので、どこにいても内容を確認できます。
採用から契約締結までをスピーディに行える
2019年の労働基準法施行規則が改正されたことで、雇用条件通知書の電子化が可能になり、メールやLINEなどでも雇用契約を結ぶことができるようになりました。そのため、採用から契約締結までを短時間で行うことができます。
コンプライアンスを強化できる
紙の書類の場合は紛失や更新漏れが起こりやすいですが、電子化することでこうしたミスを少なくすることができます。もちろん、データ流出の可能性は否定できないので、データアクセスの権限設定したり、ウィルス対策ソフトを導入する等セキュリティ面での強化は必須です。
入社手続きを電子化できる労務管理システムについて
労務管理システムとは、入社手続きをはじめ、人事労務全般を効率的に行うことができるシステムです。
労務管理システムの主要機能
主要機能は、入退社の手続きや年末調整、従業員情報管理、マイナンバー管理、電子申請、人事マネジメントなどです。これらの機能がすべてそろっているシステムもあれば、一部の機能を利用するのに、ほかのシステムとの連携が必要なものもあります。
労務管理システムのタイプ
労務管理システムには、クラウド型とオンプレミス型があります。
クラウド型は、クラウド上で管理するもので、月額料金がかかりますが、導入にはあまりコストがかかりません。
オンプレミス型は、自社サーバー内で管理するものです。システム構築に時間がかかり、導入時に一定の費用が発生しますが、あくまで自社内でのデータの管理であるため、情報漏えいなどのリスクを軽減できます。
労務管理システムで入社手続きが簡単になる
従来の入社手続では、入社書類を作成してから内定している従業員に郵送し、記入と捺印のうえ、返送をしてもらう必要がありました。人事担当の従業員は、返送されてきた書類を確認し、そのデータを入力、手続書類に転記し、押印してから、行政に提出する書類等を作成の上、必要な手続を行います。
労務管理システムを導入すると、このやりとりをかなり簡素化できます。人事担当の従業員は、入社情報の提出をメールで依頼し、内定者はスマホかパソコンで必要事項を入力して送信するだけです。雇用契約書も、内定者本人に入力を依頼して、オンライン上で雇用契約を結ぶことができます。すべて電子的なやりとりで済むので、人事に関する業務負担が大幅に軽減されます。
入社手続には年金事務所やハローワークに手続書類を提出する仕事も含まれますが、労務管理システムでは、従業員が記入した書類をもとに、手続書類が自動的に生成されます。ですから、データを転記したり、押印したりする必要もありません。そのまま電子申請によって行政への書類の提出を行うことが可能です。
労務管理システムで電子申請するには電子証明書が必要
労務管理システムを利用することで電子申請ができますが、その際にはあらかじめ電子証明書を取得しておく必要があります。
電子証明書を取得するには、法務省が提供している「商業登記電子認証ソフト」をインストールします。
電子証明書の発行申請に必要なファイルを作成するためのソフトです。
ファイルを作成する時には、鍵ペアファイルと証明書発行申請ファイルを作成します。オンラインで申請を行うと、登記供託オンライン申請システムから連絡があり、電子証明書を取得するのに必要なシリアル番号を受け取ることができます。
シリアル番号を受け取ったら、電子認証登記所にアクセスして、電子証明書を受け取ります。取得した電子証明書は、利用している労務管理サービスに登録しておきます。
なお、取得をサポートしている会社を利用して、電子証明書を取得する方法もあります。(当然のことですが、他社に依頼する場合は費用が別途発生します)
入社書類に法的有効性を持たせるための電子契約システム
入社書類には雇用契約書が含まれます。法的な有効性を持たせ、トラブル防ぐために、電子契約システムサービスを活用できます。
電子契約システムとは
電子契約システムは、契約のための一連のプロセスをクラウド上で行えるシステムです。契約者本人の同意が確実であることを証明するために、電子署名を使用します。高度な暗号技術を利用しているので、改ざんをすぐに発見できるようになっています。
電子契約システムの基本機能
電子契約システムには、電子署名機能と電子証明書発行機能、タイムスタンプ機能があります。
電子署名は、署名が当事者の意思によって作成されたものであり、文書の内容が改ざんされていないことを証明するものです。電子証明書は、印鑑証明のような働きをします。タイムスタンプは、実際の契約書の署名時刻や作成日時がわかる機能です。
これらのほかにも、業務効率化に役立つークフロー設定機能や情報管理に役立つ機能があります。(どういった機能が契約に含まれるかは各自、契約前にしっかりと説明を受けた上で確認してください)
電子契約システムの選び方
[電子契約システム選びのポイント]
・自社の用途に合わせたシステムであるか
・UI/UXなどの使いやすさや操作性
・価格
・サポートの充実性
・外部システムとの連携が可能か
・契約相手先がアカウントを作成しなくても署名していただけるか
電子契約システムを選ぶ時には、自社の用途に合わせたシステムであるかを確認します。
電子契約を締結するための機能以外にも、業務効率を向上させるための機能も必要であれば、タスク管理の面でも優れた機能を備えた電子契約システムを選ぶことができます。特に、電子契約の当該システムによる証明の程度(電子証明書を発行してくれるのか等)については、万が一当該契約書でトラブルに発展してしまった際に非常に重要な機能の有無になりますので、しっかりと確認してください。
使いやすいサービスを選ぶことも大切です。お試しフリープランなどを利用して、使用感を確認しましょう。
あわせて読みたい
無料で使えるおすすめの電子契約サービス19選!失敗しない選び方も解説【2025年2月最新版/比較表付き/...
電子契約サービスの電子署名を利用すれば、書類に押印をする契約書と同等の効力を持つ契約が交わせます。雇用契約書や賃貸借契約書といった従来では電子化が難しかった...
費用面での確認も必要です。初期費用とランニングコストの両方を検討します。既に利用しているほかのサービスと機能が重複していないかも確認しましょう。
セキュリティ性が高く、トラブル時のサポートが充実していることも大切です。その分コストはかかりますが、安心して利用できます。
当該システムについて、導入のために必要とする期間も考慮します。新年度から契約書を電子化したいのであれば、間に合うように導入できるかを確認します。
電子契約システムは、ほかのシステムとの連携が可能です。社内のデータを集約・管理するためのシステムと連携できるものもあるので、どんなシステムと連携可能なのかも確認しておきましょう。
また、電子契約システムは、雇用契約書だけでなく、ほかの企業との契約の時にも使用するものです。ただし、電子サービスシステムの中には、取引先もアカウントを持っていないと利用できないものもあります。アカウントがなくても利用できるシステムかどうかの確認が必要です。
あわせて読みたい
電子契約サービス29社を徹底比較!どこを選ぶべき?特徴や料金、使いやすさなどをご紹介【2025年2月最新...
紙の契約書は、作成後に署名・押印を行い、さらに相手方にも同様の手続きをしてもらう必要があり、非常に手間がかかる業務です。しかし、電子データを用いて契約書の作...
代表的な電子契約システムサービス
導入実績が豊富なサービスには、クラウドサインや電子印鑑GMOサインがあります。
クラウドサインはMicrosoft TeamsやKintoneをはじめとして、連携できる外部サービスが非常に多いのが特徴です。
電子印鑑GMOサインは導入実績が300万社以上(※2023年7月時点)の国内シェアNo1のサービスです。
電子印鑑GMOサインの特徴としては、権限設定や閲覧制限が細かく設定でき、部外秘の文書も安心して保管が可能であること、1件当たりの送信料は他社サービスと比較してほぼ半額という魅力的な価格設定です。また、会社実印や個人実印が必要となる重要な契約から契約印を使った日常的な契約業務、そして海外企業との取引まで、ありとあらゆる契約締結に活用できます。もちろん電子帳簿保存法など関連法令には準拠しているので安心です。
※導入企業数は「電子印鑑GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントとする 。自社調べ
最適なシステムを選択して業務の効率化を図る
入社書類を電子化すれば色々な手続を簡素化できますから、企業にとっても従業員にとってもメリットがあります。電子契約システムを使えば、雇用契約もスピーディかつ安全に行うことが可能です。自社にとって最適なシステムを選択し、業務の効率化を進めましょう。