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仕事を辞めた後、次の職が決まっていない場合、失業状態となります。すぐに新しい仕事が見つかれば問題ありませんが、転職活動が長引くと、その間の生活が厳しくなってしまいます。そこで、失業者を支援するために設けられているセーフティネットが「失業手当(失業保険)」という制度です。
しかし、失業手当を受給するための条件や手続きについてよくわからない方も多いでしょう。自己都合退職の場合でも受給できるのか、受給額はどのくらいになるのかなど、気になる点がいくつかあります。本記事では、失業手当(失業保険)について詳しく解説します。
失業手当のほかに失業保険というのも耳にすることがあるでしょう。どのように違うのか、自分が受給できるのはどちらなのか、気になる人もいるかもしれません。
実は、失業手当と失業保険は呼び方が違うだけで、まったく同じものを指します。また、いずれも俗称で正式名称ではありません。正式名称は基本手当といい、雇用保険で設けられている制度です。
ほかにも「失業給付」などと呼ばれることがあります。
失業手当(失業保険)の受給対象になるのは、次の3つの条件に該当している人です。それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
失業状態というのは、働く意思と能力があるにもかかわらず、就業できていない状態のことを指します。
働く意思があるというのは、単に働きたいと思っているだけでは十分ではありません。ハローワークに求職の申し込みをするなどして、求職活動をしている必要があります。
また、ケガや病気で働けない状態の場合には、働く能力の面で失業状態には該当しません。後にケガや病気が治って働ける状態になれば、失業状態に該当します。
前提として、失業手当は雇用保険の制度であるため、失業(離職)前に雇用保険に加入していた人が対象です。さらに失業手当を受給するためには、一定の被保険者期間が必要ですが、具体的な期間は離職理由(自己都合か会社都合か)によって異なります。
会社都合で離職した人および自己都合であっても特定理由離職者に該当する場合、退職日以前の1年間に6カ月以上の被保険者期間が必要です。特定理由離職者以外の自己都合離職者の場合、退職日以前の2年間に12カ月以上の被保険者期間があれば、失業手当を受給できます。
なお、特定理由離職者というのは、自己都合離職者のなかでも一定の離職理由に該当する人のことです。具体的には次のような理由が該当します。
など
失業手当を受給する際には、所定の手続きを済ませなければなりません。手続きのなかで失業状態にあることが認定され、一定の被保険者期間があることも確認されます。手続きを済ませずにハローワークで仕事を探していても、失業手当は受給できないため注意しましょう。手続きの詳細は後で詳しく解説します。
失業手当の1日分の金額を基本手当日額といいます。基本手当日額は、賃金日額に給付率をかけて算出される金額です。賃金日額とは、退職日以前の6カ月間の賃金の合計金額を180で割った金額で、上限と下限が設けられています。
2024年9月現在、賃金日額の下限は一律2,869円となっており、上限は次の表の通り年齢によって異なります。
年齢 | 賃金日額の上限 |
---|---|
30歳未満 | 14,130円 |
30~44歳 | 15,690円 |
45~59歳 | 17,270円 |
60~64歳 | 16,490円 |
なお、給付率は賃金日額によって異なりますが、賃金日額が高ければ給付率は低くなる仕組みです。60歳未満は50~80%の範囲内で決まり、60~64歳は45~80%の範囲内で決まります。
さらに、基本手当日額にも上限と下限が設けられています。下限は一律2,295円で、上限は年齢別に次の表の通りです(2024年9月時点)。
年齢 | 基本手当日額の上限 |
---|---|
30歳未満 | 7,065円 |
30~44歳 | 7,845円 |
45~59歳 | 8,635円 |
60~64歳 | 7,420円 |
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和6 年8月 1 日から~」
会社都合退職とは、勤務先の会社が倒産して失業した場合や解雇された場合が該当します。また、実際の労働条件が契約内容と著しく異なる場合や一定期間以上賃金が支払われていなかった場合なども会社都合です。
なお、期間の定めのある労働契約を締結していて更新されなかった場合にも、会社都合に該当するケースがあります。これまで更新が繰り返されて3年以上継続して雇用されていたにもかかわらず、更新されなかった場合です。
会社都合退職の場合は、自己都合退職と比べて失業手当を受給する上で有利に扱われます。自己都合の場合は、2カ月(状況によっては3カ月)間の給付制限期間が設けられますが、会社都合の場合は給付制限がなく7日間の待期期間を終えたら受給開始です。待期期間について、詳しくは後述します。
会社都合退職の場合に受給できる失業手当の日数は、年齢と雇用保険の被保険者期間によって決まります。具体的には次の表の通りです。
年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30~34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35~44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45~59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60~64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
自己都合退職が受給できる失業手当の日数は、特定理由離職者に該当する場合と、該当しない場合で異なります。特定理由離職者に該当すれば、受給できる日数は会社都合退職と同じです。それ以外の自己都合退職は、失業手当を受給する上で、やや不利に扱われています。
また、特定理由離職者以外の自己都合退職の場合には、会社都合退職と違って年齢は関係ありません。被保険者期間のみで決まります。具体的には、10年未満だと90日、10年以上20年未満で120日、20年以上なら150日です。
雇用保険の被保険者期間 | 失業保険(基本手当)の給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上5年未満 | |
5年以上10年未満 | |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
給付制限期間が設けられているのも、会社都合退職や特定理由離職者との大きな違いです。特定理由離職者以外の自己都合退職では、7日間の待期期間の後、2カ月(状況によっては3カ月)間の給付制限期間を過ぎた後に支給が開始されます。
失業手当を受給する際には、次のような手続きを行う必要があります。
失業手当を受給する上でまず必要なのが離職票という書類です。正式には雇用保険被保険者離職票といいます。職場から発行してもらう必要がある書類のため、退職時に忘れずに受け取っておきましょう。職場によっては退職後に自宅に郵送するケースもあります。
通常は退職者の方からはとくに何もいわなくても、総務(労務)担当者の方で離職票を発行してもらえるでしょう。ただ、稀に担当者が離職票の作成を忘れてしまっている場合もあります。退職日の時点で離職票を渡されていない場合には、担当者に確認を取っておきましょう。退職後に離職票を受け取っていないと気づいた場合には、電話などで確認を取っても問題ありません。
最寄りのハローワークに足を運び、求職の申し込みをした上で、離職票を提出します。離職票の他にも提出を求められる書類があるため、忘れずに持参しましょう。具体的には次の書類です。
- 個人番号確認書類(いずれか1種類)
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)出典:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険の具体的な手続き
- 身元(実在)確認書類
※(1)のうちいずれか1種類((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など- 写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
※本手続及びこれに続き今後行う支給申請ごとに個人番号カード(マイナンバーカード)を提示することで省略が可能です。- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能です。)
離職理由にかかわらず、求職の申し込みをしてから7日間は待期期間として扱われ、失業手当の対象になりません。ハローワーク側で失業状態について調査するために設けられている期間です。待期期間中から求職活動を始めても問題ありません。求職活動の準備をする、または休息を取るための期間として使うのがいいでしょう。
なお、特定理由離職者以外の自己都合退職の場合には、7日間の後にさらに2カ月(状況によって3カ月)間の給付制限期間が加算されます。準備や休息にあてる期間としてはやや長いこともあり、給付制限期間の経過を待たずに求職活動を始めるのが一般的です。
一定の条件下であれば、給付制限期間中にアルバイトを行うことも可能です。
求職活動はハローワークで仕事を探す方法の他に、求人サイトなどを利用する方法で行っても問題ありません。失業保険を受け取るためには、ハローワークで失業中であることを確認してもらう必要があり、それを失業認定日といいます。基本的に働く意思を持っていることが受給条件となっており、失業認定日までに2回以上の求職活動が必要です。
また、ハローワークで手続きを行う際に、7日間の待期期間後に開催される説明会の案内が行われます。この説明会で失業認定申告書が交付され失業認定日を決められるため、必ず参加しましょう。また、説明会への参加も1回分の求職活動として扱われ、失業認定申告書に記録されます。他にも求職活動をした日には、同様に日付とともに記録される仕組みです。
失業認定日の日に、失業認定申告書を持参してハローワークに足を運びましょう。求職活動を2回以上行っていて、まだ失業状態にあることが確認されれば、4週間分の失業手当が支給されます。
そして、次の失業認定日と時間が決定される仕組みです。基本的に4週間に1回の頻度で失業認定が行われ、時間はその日によって異なります。同様の流れを就職先が見つかるか、受給期間を満了するまで繰り返します。
失業手当を受給する際には次のような点に注意が必要です。
雇用保険法第10条の4には、失業手当の不正受給に関する規定があります。不正受給が発覚した場合、厚生労働大臣が定める基準に基づき、支給された失業手当の全額または一部の返還を求められます。さらに、場合によっては、不正受給した金額の2倍に相当する額以下の金額の納付が命じられる恐れもあるのです。合計すると最大で不正受給した金額の3倍に達する可能性があります。
このように、失業手当の不正受給に対しては厳しい措置が講じられており、受給者は正当な理由がない限り、受給を行わないよう注意が必要です。
(返還命令等)
第十条の四偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。
出典:雇用保険法 | e-Gov法令検索
意図せずに不正受給をしてしまうケースもあるため注意しましょう。よくある不正受給は、受給している期間に働いて、申告していなかったケースです。求職活動を実際には行っていないにもかかわらず、行っているような申告をした場合にも不正受給として扱われます。
他に、自営業を始める準備をしているときや他の制度による給付金を受給している場合なども申告が必要です。自営業に関しては収入の有無を問いません。
失業手当受給中のアルバイトは、1週間に20時間までで求職活動を続けている場合に、認められています。きちんと申告をしていれば、失業手当を受給可能です。
ただし、アルバイトで得ている収入によっては、失業手当が減額されてしまう可能性もあります。また、1週間の労働時間が20時間を超えていると、アルバイトでも就職として扱われてしまうため注意しましょう。この場合、失業手当の受給はできません。
不安な場合には、アルバイトをする前にハローワークに確認しておくのが無難です。
失業するとこれまで加入していた勤務先の社会保険から外れます。それでは、失業手当受給中の社会保険はどのように扱われるのか見ていきましょう。
健康保険は、任意継続という形で前の勤務先の健康保険に引き続き加入可能です。ただし、保険料の会社負担分がなくなり、全額自己負担しなければなりません。また、退職日から20日以内に手続きを済ませておく必要があります。
他に国民健康保険に加入することも可能です。失業者の場合には、申請をすると保険料が減免されることもあります。
年金は、厚生年金を抜けるため、国民年金の第1号被保険者になります。保険料を毎月支払わなければなりません。国民健康保険と同様に失業者の場合には、減免の対象になる場合があります。
失業手当は失業してしまった人が次の仕事が見つかるまで生活できるようにするための制度です。雇用保険に加入していて一定の被保険者期間のある人が受給できます。実際に受給するには手続きが必要で、待期期間を経た後に失業の認定を受けなければなりません。
また、受給できる日数が決まっており、90日から330日まで年齢や被保険者期間、離職理由によって異なります。また、1日辺りの金額である基本手当日額は、離職前半年間の賃金が高かった人ほど高くなる仕組みです。
失業手当(失業保険)の受給を考えている方は、本記事を参考に手続きを進めてみてください。
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