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公開日:2020年7月30日

最終更新日:2022年10月28日

成年・未成年の定義とは? 2022年の民法改正による企業への影響と対策

成年・未成年の定義は、社会の基盤となる重要なルールの一つです。このルールは、商品・サービスの提供や契約に際し、年齢による利用制限や保護者の同意確認をするフローなどの形で、企業経営にも大きな影響を及ぼしています。

2022年より、民法が改正されて成年・未成年の定義が一部変更されます。したがって、企業によっては利用規約や業務フローなどが影響を受ける可能性があるということです。今回は、民法の改正内容を概観したうえで、企業にどのような影響を与えるのか、またどのような対策が必要となるのかご説明します。


民法の改正で成年・未成年の定義はどう変わる?

現在の民法上で成年や未成年がどのように定義されているのか、そして改正後にどのように変わるのかを押さえておきましょう。

現行民法での成年・未成年の定義

現行の民法第4条では、「年齢二十歳をもって、成年とする」と定められています。言い換えれば、20歳に満たない人が未成年ということです。この点は、民法を引用しなくても常識として知っている人が多いのではないでしょうか。

続く民法第5条によると、未成年者は原則として法定代理人の同意がなければ法律行為を行うことができません。ここでの法定代理人とは、未成年者の親権者や未成年後見人などの選任された成人を指しています。ここでいう法律行為とは、契約の締結や訴訟などが挙げられます。

未成年者は、成年者と比べて経験や知識、判断能力が不足しているため、法律行為を単独で行うとトラブル詐術に引っかかるリスクが高いと考えられます。そのため、未成年者保護の観点から、法定代理人の支援が必要です。仮に未成年者が同意を得ずに法律行為を行った場合、法定代理人は取引を無効にできるようになっています。

例えば、未成年者だけで携帯電話利用の契約を結ぶことはできません。必ずしも法定代理人が店舗へ同行する必要はないのですが、法定代理人が記入した同意書や法定代理人の本人確認書類のように、契約の締結が許可されていることを示す書類を、未成年者が自分で持参しなければなりません。一人暮らしをするための賃貸借契約や、クレジットカードの作成なども同様です。

こうなると、「一般的なスーパーやコンビニなどの買い物も未成年者だけではできないのか」と疑問に感じる人もいるかもしれません。この場合は、支払う代金がお小遣い(正確には「法定代理人から処分を許された財産」)の範囲内であると考えられるため、未成年者本人だけでもできます。一方、父母に無断でお小遣いの範囲では支払えないような高額商品・サービスを子供が購入するのは、許容範囲を逸脱すると考えられます。

参考:基礎知識「未成年者契約の取消し」

こうした未成年者による契約で思わぬ不利益を被ると、場合によっては相手方へ取消通知を出すことで契約を取り消し、商品を返還するという取消権を法定代理人は有しています。時効は未成年者が成年になったときから5年間、または契約から20年間です。また、取り消せる法律行為に対して、後からその行為を取り消さないと意思表示することもできます。これを「追認」といいます。

2022年の民法改正による変更点

2018年6月に、現行の民法を一部変更するための法律が成立しました。民法第4条で定められた成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられます。18歳以上であれば、成人として法定代理人の同意を得ずに契約締結をはじめとした法律行為を行えるようになります。

<法律の要点>

1 成年年齢の引下げ(民法第4条)
①一人で有効な契約をすることができる年齢 いずれも 20 歳から18 歳に引き下げ、「成年」と規定する他の法律も18 歳に変更
②親権に服することながなくなる年齢
2 女性の婚姻開始年齢の引上げ(民法第 731条)
(現行法)男性 18 歳
女性 16 歳
女性の婚姻開始年齢を18 歳に引き上げ
婚姻開始年齢は男女とも18 歳に統一

参考:「民法改正 成年年齢の引下げ」

他にも大きな変更点としては、女性の結婚可能年齢が挙げられます。現在ですと16歳ですが、改正民法施行後は男性と同じ18歳へ引き上げられます。一方、喫煙や飲酒などが可能になる年齢は、現在と変わらず20歳のままです。また、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払期間が短縮されるわけではない点にも注意が必要です。

今回の引き下げの背景には、日本における「18歳」という年齢の重要性が増していること、そして世界的な潮流が挙げられます。もともと日本での成年年齢は明治9年以来、20歳と定められてきました。しかし、公職選挙法に基づく選挙権年齢や、憲法改正国民投票の投票権年齢が2018年より18歳へ引き下げられたことで、市民生活を規定する民法も足並みをそろえるべきではないかという議論が高まり、今回の引き下げにつながったと考えられます。

また、アメリカやイギリスをはじめ、成年年齢を18歳とする国の方が多いという事情もあります。経済協力開発機構(OECD)諸国で20歳を成年年齢とするのは、日本を除くとニュージーランドだけです。社会の高齢化が進む中で、18歳や19歳の「市民」の権利を拡充し、その自己決定権を尊重するとともに、積極的な社会参加を促す目的があります。

参考:「民法改正 成年年齢の引下げ (2ページ目)」

今回の民法改正は、2022年4月1日から施行されます。2002年4月1日までに生まれた人は、20歳の誕生日に成年に達します。2002年4月2日から2004年4月1日までに生まれた人たちは、2022年4月1日に一斉に成年に達することになります。そして2004年4月2日以降に生まれた人たちは、18歳の誕生日に成年に達します。

成年年齢の引き下げによる企業への影響と対策

成年年齢が引き下げられることで、企業やサービスにはどのような影響があるのでしょうか。BtoB企業、取引先が主に法人や企業が多い場合の影響は小さいかもしれません。が、未成年者を含む幅広いターゲットに商品・サービスを提供しているBtoC企業の場合、申込や契約、サービスの利用規約などの修正、情報システムや業務フローなどの変更が必要になる可能性があります。

約款や利用規約の修正が必要になる

現行の約款や利用規約で未成年者を20歳未満で定義している場合、改正民法の変更に沿って内容の変更を行いましょう。例えば、携帯電話会社やクレジットカード会社などの利用規約を見ると、「契約時に20歳未満の方が登録される場合は、法定代理人の同意を得ているものとする」といった趣旨の条項が記載されているケースも多いです。これらを全て洗い出し、変更を加える必要があります。

こうした内容の確認や修正、法務チェックなどには、多大な手間がかかるものです。若者層をターゲットに含む限り、変更作業を避けて通ることはできませんが、この際年齢を指定せず未成年という表記に変えれば、民法改正前後で効力が変わらなくなります。

サービス登録者のステータス変更が必要になる

サービスの中には、未成年者または年齢で利用を制限ないし禁止しているものも多いでしょう。2022年の3月31日時点で未成年だった人が、4月1日から成年に変わるということは、このタイミングでシステム変更を行う必要があるということです。特に、2002年4月2日から2004年4月1日までに生まれた人たちは、年齢が違っても一斉に成年を迎えますので、このタイミングで登録可否ステータスなどを切り替えられるようシステム改修することになります。

当然ながらシステムエラーを起こすリスクがありますし、システム面のみならず、業務フローに一時的な混乱をきたすリスクもあります。事前に人員やシステム周りの体制を整え、成年年齢の引き下げに備えておきましょう。

企業は民法の動きを見逃さないように対策しよう

2022年から実施される成年年齢の引き下げは、社会にとって重要な変化の一つであることは間違いありません。したがって、社会を支える一部である企業にとっても、この変化が重要なものであることもまた確かです。
業界に関連する法律や個人情報保護法などだけではなく、民法のように企業へ影響する法律の変化にも、企業は目を配っておく必要があります。約款や利用規約、契約条件、システム、業務フロー、事業ポリシー、ビジネスモデルなどが影響を受ける範囲を明確にし、事前に確認しておくことをお勧めします。

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牛島 直紀

筆者

牛島 直紀

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 電子契約サービス推進室長
早稲田大学法学部卒業。GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社に入社後、クラウド事業・電子認証事業において国内外の法務を担当。電子契約の事業化とともに現職。経済産業省 電子署名法研究会 WG構成員。

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