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遺言のデジタル作成は可能か?遺言書の電子化についての最新情報

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遺言は、「財産の分け方」「相続人以外への遺贈」「結婚していない間柄で生まれた子供の認知」など、最後の思いを自分の死後に実現するツールです。とても大切な書類ですから、法令で作り方が定められています。

遺言は、デジタルでの作成は可能なのでしょうか?たとえばWordで作成した電子ファイル「遺言202304.docx」をプリントアウトしたものでも遺言として認められるのでしょうか?電子化の最新情報についてまとめました。

※本記事は2023年3月時点の情報を元に作成しています。
2023年7月に更新しました

目次

遺言とは?

遺言の作り方は、日本では、民法で細かく定められています。その種類として主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。その中でも「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類が一般的に活用されています。

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「デジタル遺言」の有効性

(1)手軽なウェブサービスやアプリを使って遺言を作ってもOK?

最近、ウェブ上やスマホアプリを使って遺言を手軽に電子データとして作成できるサービスが見受けられます。このようなサービスを使えば、手書きで遺言を書く必要がなくなりますし、証人を2人も用意して公証役場に行く必要もなくなりますから、遺言作成のハードルは一気に下がります。

それでは、はたしてウェブサービスやアプリで作ったいわゆる「デジタル遺言」は、法的に問題ないのでしょうか。その答えは、残念ながら今の日本ではNOです。法的に効力のある遺言をするには、民法で定められた書き方等のルールに従う必要があり(民法第960条)、そのルールのひとつとして遺言書を「紙」で作成しなければならないことが定められています(民法第968条、第969条)。

(2)法的な効力がなくても作成することが無意味とも言いきれない

法的に効果がないからまったくの無意味かというと、必ずしもそうとも言いきれません。というのも、法的な効力がないとしても、最後の思いを「残し」「伝える」ことには意味があるからです。紙で作った正式な遺言書にも、オプション的な位置付けで「付言事項」という部分があり、ここに書いた内容には法的な効力は発生しませんが、大切な人へのメッセージを自由に書くことができます。その結果、思いが伝わりトラブルの防止につながる、という事例も見聞きするところです。

法務省の調査によると、55~59歳の方でも、遺言の作成経験者は自筆証書・公正証書合わせて4%程度しかいないそうです* 。遺言を書く方があまりにも少ないという現状をみると、最後の思いをきちんと伝えることでトラブルを少しでも減らせるのならば、デジタル遺言は民法上の遺言書にはなりえませんが、作る効果はあると言えるのではないでしょうか。

【出典】『我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務報告書』P.11 法務省(2018)

電子データで遺言を作れるようになる?

現状では遺言を電子データとして作成しても法的に有効な遺言としては扱われません。しかし、遺言制度に電子データがまったく取り入れられていないわけでもありません。

たとえば自筆証書遺言書保管制度では、紙で作った遺言書原本とあわせて、画像化されたデータも保管される形となっています。公正証書遺言でも、2014年から紙の原本とあわせて電子化されたデータを保存するという対応がされています。このような動きの背景には、自然災害の被害を教訓として、紙の遺言が失われた場合でもデータから復元できるように、という考えがあります。

紙と電子データをそれぞれ別に保管すれば、万が一紙で作った遺言が失われてしまっても、電子データから復元して活用することが可能になります。これらは、あくまで「役所側」での対応の話ですが、私たち「遺言作成者側」も、民法の改正により2019年から自筆証書遺言のうち財産目録部分についてはPCでの作成が認められるようになりました(民法第968条第2項)。ただしこの場合も、プリントアウトして署名押印を行うことが必要です。

遺言書電子化の動向

冒頭の「遺言202304.docx」をプリントアウトしたものは遺言として認められるのかという話ですが、自筆証書遺言は手書きで作成し、署名押印する必要があるため、現在は認められていません。

このように官民一体となって脱ハンコが進められている今でも、遺言は電子化が認められていない数少ない書類ですが、法務省のアンケートでも84%を超える人がデジタルによる公正証書作成を「積極的に利用したい」「利用してもよい」と回答しており、電子化のニーズが非常に高まっていることがわかります。

【出典】公正証書のデジタル化に関するアンケート調査結果の概要 法務省民事局(令和5年1月)

実は、遺言の電子化への歩みは少しずつではありますが着実に進んでいます。最後に、遺言書の電子化に関する最新情報をご紹介したいと思います。

(1)自筆証書遺言の電子化の動向

自筆証書遺言については、残念ながらデジタル遺言のような形で作成できる見通しはたっていません。しかし、国の規制改革推進会議が公表した資料の中で、電子化について次のように触れられており、今後の進展が期待されています。

「法務省は、国民がデジタル技術を活用して、現行の自筆証書遺言と同程度の信頼性が確保される遺言を簡便に作成できるような新たな方式を設けることについて、必要な検討を行う。」

【出典】『規制改革推進に関する答申(案)』p.100 第13回規制改革推進会議(令和4年5月27日)

(2)公正証書遺言の電子化の動向

一方で、公正証書遺言の方はかなり具体的な話が進んでいます。まさに本年の通常国会で公正証書遺言の電子化を可能にする法改正について審議中です。法案が可決した場合は公正証書の作成手続について、すべてオンラインで完結できるようになる見通しです。法案では2025年上期のスタートを目指すことになっていますが、オンライン化が実現すれば公正証書遺言の電子データでの作成・保存が原則化され、紙だけでなく電子データとしても発行を受けられる想定になっています。

【出典】『公正証書に係る一連の手続のデジタル化の概要』 法務省民事局(令和5年2月)

(3)電子化に関する報道【2023年7月追記】

本記事掲載後、政府が法的効力がある遺言書をインターネット上で作成・保管できる制度(デジタル遺言制度)の創設を検討していることが報道されました。

電子署名法の要件を満たす有効な電子署名には「本人性」と「非改ざん性」が求められますが、デジタル遺言制度にとっても重要な要素となるでしょう。これに加えてさらなる確実性を担保するためにブロックチェーンの要素も搭載されるかもしれません。

報道では「法務省が2023年内に有識者らで構成する研究会を立ち上げ、2024年(来年)3月を目標に新制度の方向性を提言する」とのことです。

今後の動向に注目しましょう。

【参考】デジタル遺言制度を創設へ 政府、ネット作成・署名不要 円滑相続を後押し(日本経済新聞 2023/5/5)

まとめ

海外に目を向けると、アメリカでは2019年7月に承認された法律により、一部の州で合法的に電子的に遺言を作成できるようになりました。日本でも議論がより一層進み、使いやすい遺言制度ができてくることに期待しつつ、引き続き動向に注目したいと思います。

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この記事を書いた人

GMOサインが運営する公式ブログ「GMOサインブログ」の編集部です。
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