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フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインについて

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2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、私たちの生活仕事の環境を大きく変えました。
テレワークが進んだことで通勤時間が短縮され、そこで生み出された時間を使って個人のスキルを活かした副業を始めた方もいらっしゃると思います。また、仕事の相手方がフリーランス・副業の方というケースも増えているのではないでしょうか。このように多様な働き方が日本で急速に広まっていくなかで、課題も浮かび上がっています。
今回は、このような背景をもとに政府が発表した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」について解説します。

目次

フリーランスの定義、クラウドワーカーとは?

実は、法令上には「フリーランス」の定義はまだありません。
そのため「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」)では、「実店舗がなく、雇っている人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と説明されています。
たとえば講師やインストラクター、文章やウェブサイトの作成、デザイン制作、配送・配達といった業務を、事務所を構えずに個人のスキルや時間を活かして請け負っている方をイメージするとわかりやすいでしょう。

 

近年では、企業と個人がオンラインでつながり仕事を受発注できる「クラウドソーシング」の場を提供するサービスや企業が数多くあります。インターネットを通じて短期・単発の仕事をクラウドソーシングで受注し、個人で働く方を「クラウドワーカー」と呼びます
一般的にフリーランスやクラウドワーカーは、仕事の依頼や業務の指示を受けるかどうか自ら決められない(拒否できない)、業務内容や遂行方法について具体的な指揮命令を受け、勤務場所や勤務時間が指定され、管理されている「雇用契約」でなく「業務委託契約」を締結します。そのため労働基準法などの労働関係法令が適用されないのも特徴です(この点については留意すべき点があるため後述します)。

日本におけるフリーランスの状況

内閣官房は2020年(※)の調査において日本におけるフリーランス・副業者の試算人数を462万人(本業・副業の合計)と発表しています。
これは就業者全体の約7%に相当しますが、これはコロナ禍に突入する前のデータです。実際、クラウドソーシングのサービスサイト「Lancers(ランサーズ)」を運営するランサーズ株式会社の「働き方調査2023 ~副業の実態・オンライン化による課題や対策~」(2023年2月21日発表)では、フリーランスとして働く方の4割、副業を始めた方の6割以上が2020年以降に始めたと回答しており、フリーランス・副業者の人口は、内閣官房の調査から3年で大きく増えていることがうかがえます。
 
※2020年2月10日から3月16日。
【出典】「働き方調査2023」(ランサーズ株式会社)

ガイドラインの制定の背景

ここ数年でインターネットを使ったビジネスやサービスがますます発展し、私たちの生活や働き方は大きく変わりました。定年を迎えるまでフルタイムでひとつの会社に勤務しという働き方だけでなく、本業とは異なる分野で副業を始めたり、何社か掛け持ちして働いたりなど、多様な働き方が広がっています。
他方、政府も多様な働き方を後押ししたいと考えています。少子高齢化が急速に進む日本では、すでに労働人口の不足が現実のものとなり、大きな課題となっているからです。経験ある高齢者の雇用をはじめとした働き手の増加のためにも、多様な働き方を拡大させていくのは、国の成長戦略のカギといえるのです。
しかし、企業(発注者)と個人(受注者)の取引となると個人はどうしても弱い立場に置かれがちです。企業と個人の間で契約交渉や取引に関するトラブルが起こると個人が泣き寝入りするしかないというケースもあります。そこで政府は、2021年3月に内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名でガイドラインを発表しました。フリーランスや副業者が安心して働ける環境の整備を目指し、フリーランスや副業者が事業者と取引をする際に、(法律をふまえると)どのような点に気を付けるべきかを整理したものです。

ガイドラインの概要

ガイドラインは、フリーランス・副業の方が優越的地位にある事業者(発注者)と取引をする際に気を付けるべき点について事例を挙げながら説明しています。フリーランス・副業の方は事業者(発注者)が以下のような事例を起こしていないか、発注時の取引条件が明確であるか、契約内容が実態に即しているかをよく確認しましょう。

①独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法の観点から

<報酬面>

  • 報酬の支払遅延
  • 報酬の減額
  • 著しく低い報酬の一方的な決定

<受発注>

  • やり直しの要請(仕様どおりに業務を行ったにもかかわらず)
  • 一方的な発注取消し

<成果物の取り扱い>

  • 著作権など、成果物に含まれる権利の一方的な取扱い
  • 成果物や役務(サービス)の受領拒否
  • 成果物や役務(サービス)の返品

<強い立場からの強制>

  • 不要な商品や役務(サービス)購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 合理的な必要範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定

②労働関係法令の観点から

先述の通り、フリーランスや副業者は、企業(発注者)と雇用契約ではなく業務委託契約を締結します。
業務委託契約の場合、仕事の依頼や業務の指示を受諾するかを自ら決めることができますが、雇用契約の場合はできません。
その代わり雇用契約は労働関連法令の適用を受けますが、業務委託契約の場合はその規制の外になります。
 
なお、雇用契約と業務委託契約のどちらに該当するかについての判断は、契約のタイトルや内容ではなく、業務の実態に沿って行われます。業務の事態に「労働者性」と認められる場合には雇用契約として扱われ、労働関係法令の適用を受けます。
たとえば飲食やECサイトの配送業務で考えたとき、受けるかどうかは受託者が決められることが業務委託契約である条件のひとつとなります。他方、これが勤務時間を決められ、時間ベースで報酬額が決まるとなると「労働者性」があるとされ、雇用契約として判断される可能性が高まります。その場合は、業務委託契約を締結していても雇用契約として扱われ、労働関係法令の適用を受けることになります。

2023年の政府の動向について~下請法の限界と法改正~

ガイドラインの発表から1年、政府が事業者(発注者)とフリーランス・副業の方の取引を保護し取引トラブルをなくすために、関係法令の改正を検討しているとの報道がありました。具体的には下請法の改正で対応することを検討しているようです。

下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)とは、強い立場である発注者による受注者に対する優越的地位の濫用行為を規制し、弱い立場となりがちな受注者の利益を保護することを目的とした日本の法律です。下請法の対象取引は、資本金の額取引の内容で定義されています。

①下請法の対象取引

【A:物品の製造・修理委託、情報成果物作成(*プログラム作成)・役務提供委託(*運送・物品の倉庫保管・情報処理)を行う場合】

親事業者(発注者) 下請事業者(受注者)
資本金3億円超 資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1000万円超3億円以下 資本金1000万円以下(個人を含む)

【B:情報成果物作成・役務提供委託を行う場合(Aの場合を除く)】

親事業者(発注者) 下請事業者(受注者)
資本金5000万円超 資本金5000万円以下(個人を含む)
資本金1000万円超5000万円以下 資本金1000万円以下(個人を含む)

②下請法が適用された場合の親事業者(発注者)の義務や禁止事項

下請法が適用になると親事業者(発注者)には以下のような主に義務や注意事項が生じます。

 
<親事業者(発注者)の義務>

  1. 定められた記載事項を含む書面の交付義務(下請法第3条)
    (受託側が事前に承諾すれば電子交付も可能ですが受注者に追加費用が生じるような場合は認められません。)
  2.  

  3. 支払期日を定める義務(下請法第2条の2)
    物品や成果物を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務を提供した日。以下同じ)から起算して60日以内に支払期日を定める必要があります。
  4.  

  5. 書類の作成・保存義務(下請法第5条)
    給付(受領したもの)の内容や代金などについて記載した書面を作成し2年間保 存する必要があります。
  6.  

  7. 遅延利息の支払義務(下請法第4条の2)
    物品や成果物を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払いを するまでの機関の遅延利息を支払う必要があります。

<親事業者(発注者)の禁止事項>

下請法では、親事業者(発注者)に以下の禁止事項が定めています(下請法第4条)。これらは、たとえ受託者の了解を得ていても法律で禁止されています。

1)受領拒否

注文した物品等の受領を拒むこと。

2)下請代金の支払遅延

下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。

3)下請代金の減額

あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

4)返品

(不良品等でないにもかかわらず)受け取った物を返品すること。

5)買いたたき

類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

6)購入・利用強制

親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

7)報復措置

下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

8)有償支給原材料等の対価の早期決済

有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

9)割引困難な手形の交付

一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

10)不当な経済上の利益の提供要請

下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること。

11)不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

③下請法適用の限界

先述のとおり、資本金のルールがあるため、発注者が資本金1000万円を超える企業との取引でないと下請法の適用ができません(2006年から株式会社は資本金1円から設立できるようになりましたが、それまでは株式会社の資本金は1000万円以上である必要がありました)。資本金が1000万円以下の企業とフリーランスの取引に関して下請法の適用ができない状況にあるため、政府はこの点について法改正を検討しているのではないかと推察されます。

まとめ

ここ数年のインターネットを介したビジネスの急速な発展と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、私たちの生活に大きな影響を与えました。多様な働き方はますます拡大していくでしょう。
発注者サイドには、法改正によって業務に大きな影響が出る可能性があります。
今後、政府によるフリーランスの定義も明確となるとともに、下請法の改正または新たな法令の制定があるとすると、契約書等の取引に関する書面の取り交わしが必須となると考えられるからです。今後の法改正の動向を見守るとともに、業務フローの確認を行いましょう。現行の下請法に同様の書面の作成や保管が発注者の義務となった場合、取引に関する書類は膨大なものとなります。これからの時代、これらの書類は紙で保管するのではなく電子印鑑GMOサインのように保管機能が備わった電子契約サービスを積極的に取り入れていくことを検討しましょう。業務の効率化を進めながら今後の法改正に備えましょう。

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この記事を書いた人

GMOサインが運営する公式ブログ「GMOサインブログ」の編集部です。
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