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建設業は割と身近な業種ですが、具体的にどのようにして仕事を行っているかご存じでしょうか?危険が伴う業種であるため、建設業を営むためには許可が必要です。
本記事では、許可の取得条件や更新方法について詳しく解説します。
建設業とは、建築物や土木の工作物を建設する業種です。私達が生活する住宅をはじめ、商業施設や病院などの施設、車が走るための道路など、暮らしに関わる設備を作って整備する仕事が該当します。
建設業は主に建築と土木の2種類に大別され、施設を作るのが建築、道路やトンネルといった交通インフラを整備するのが土木です。
建設業は現場で作業を行うだけではなく、作業に至るまでには施工管理や設計といった細かい工程を入念に進め、工事後の安全管理も欠かせません。また建設業を営む事業主は、他の業種と比べて怪我や病気をしやすいため、従業員の安全を保障する目的で社会保険に入ることが義務付けられています。
建設業を営む際には、建設業法の第3条に定められている建設業の許可を受ける必要があります。
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
出典:建設業法 | e-Gov法令検索
この建設業の許可が必要な工事は、請負金額が500万円以上のものが該当します。許可が必要な金額の工事であるにも関わらず請け負った場合は、建設業法に違反したとして3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が科せられるため注意しましょう。
建設業は「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に分けられます。
一般建設業は、元請ではなく下請として工事を行う場合や下請に出さず元請である自社が施工する、もしくは下請に4,500万円以上(建築一式工事では7,000万円以上)で依頼しない場合が該当します。
一方特定建設業、は下請に4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,500万円)で工事を依頼するケースが該当します。また一般建設業や特定建設業と行う場合には、個別に建設業許可が必要です。
建設業が工事の種類は非常に多く、建設業許可は工事の種類ごとに必要です。国土交通省が公開している建設業の種類は、以下の通りです。
出典:建設業法第二条第一項の別表の上欄に掲げる建設工事の内容|国土交通省
建設工事の種類 建設工事の内容 土木一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。) 建築一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 大工工事 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 左官工事 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 とび・土工・コンクリート工事 イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事ニ コンクリートにより工作物を築造する工事ホ その他基礎的ないしは準備的工事 石工事 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 屋根工事 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 電気工事 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 管工事 冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 タイル・れんが・ブロツク工事 れんが、コンクリートブロツク等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロツク、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 鋼構造物工事 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 鉄筋工事 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 ほ装工事 道路等の地盤面をアスフアルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事 しゆんせつ工事 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 板金工事 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 ガラス工事 工作物にガラスを加工して取付ける工事 塗装工事 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 防水工事 アスフアルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事 内装仕上工事 木材、石膏ボート、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペツト、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 機械器具設置工事 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 熱絶縁工事 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 電気通信工事 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 造園工事 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事 さく井工事 さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 建具工事 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 水道施設工事 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 消防施設工事 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 清掃施設工事 し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事
上記28種類に加えて平成28年に「解体工事」も追加され、計29種類の工事に分類されています(令和5年10月時点)。請け負う工事がどの種類に当てはまるかを調べたうえで、適切な建設業の許可を取得できているかを事業者側は必ず確認しなければなりません。
建設業許可を取得していなければそもそも500万円以上の工事を実施できませんが、その他にも許可を得ることによるメリットがありますので詳しく解説します。
建設業許可は、定められた複数の条件を満たしていなければ取得できません。そのため許可を得ていれば、信頼できる企業であることをアピールできます。施工実績が少ない企業でも、建築業許可を取得しているだけで信頼性や知名度のアップにつながります。
公共工事とは、国や都道府県などの行政が発注して行われる工事です。公共工事への入札参加資格の申請には、建築業許可が必要となります。公共工事を施行できれば非常に大きな実績として認められるため、他の顧客からの受注も期待できるでしょう。
自社が建設業許可を取得していれば、500万円以上の規模になる工事や公共工事が受注可能になります。つまり、受注できる工事の幅も増えて業務範囲の拡大を狙えるのです。規模の大きな仕事を受けられると、財政的な安定につながります。
建設業許可の取得には、以下の6つの条件をすべて満たすことが必要です(令和5年10月時点)。そこで、一般建設業の許可条件について解説します。
・管理責任者がいる
・専任技術者がいる
・財産的基礎が安定している
・誠実性を有している
・欠格条件に該当しない
・社会保険に加入している
建設業に関して一定の経営能力を有している人である「経営業務管理責任者」が経営幹部や役員として自社に所属していることが必要です。建設業が個人事業の場合は事業主本人、法人の場合は取締役に管理責任者が置かれていなければなりません。
管理責任者は、建設業に関して5年以上の経営業務管理責任者経験がある人物、またはそれに準ずる地位で経営管理の経験がある人物、もしくは6年以上経営管理を補佐する業務経験のある人が対象になります。
建設業に関する一定の資格を有しており、実務経験のある専任技術者を雇用していることも許可条件の一つです。資格については許可を受ける種類によって異なりますが、実務経験は10年以上、または指定学校を修了して高卒後5年、大卒後3年以上の実務経験を有する人が該当します。
経営が安定しているかも条件として求められます。財産的基礎の定義は、資本金500万円以上で会社を設立している、会社の口座に500万円以上の残高がある、貸借対照表の純資産が500万円以上あるなどが当てはまります。
なお特定建設業許可の場合では、資本金が2,000万円以上で純資産が4,000万円以上など条件が難しくなります。
不正な工事を行わないかなど誠実性を問われます。建設業以外の事業であっても、過去に不正を働いて処分を受けていた経歴などがあると、建設業許可を得られない場合もあります。正しく経営されている誠実性のある会社ならば取引先との信頼関係も深まり、より多くの案件を依頼されるようになるでしょう。
過去に建設業許可取り消しの経歴がある、破産手続きを受けて復権できていない、反社会勢力の一員や禁固刑以上の刑罰を受けた経歴を持つ人が所属している場合などには、欠格条件に該当しているとみなされます。
社会保険には、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つが該当します。それぞれ適切に加入して従業員の安全を保障できていなければ、建設業許可の申請ができません。義務化されているため、必ず社会保険に加入しましょう。
建設業許可は一度取得したら有効であるわけではありません。建設業許可は、許可された日から5年間が有効期間になります。この有効期間を過ぎると失効されるため、引き続き建設業許可が必要な工事を受注する場合は更新手続きが必要です。
更新手続きは、審査に時間を要するケースもあり、許可の有効期限より30日前までには受付を行わなければなりません。
建設業許可の更新も、以下の条件を満たさなければなりません。それぞれ詳しく解説します。
・5年分の決済届を提出済
・重要事項の変更届を提出済
・管理責任者と専任技術者の条件を満たしている
・社会保険に加入している
建設業許可を受けている5年の間は、毎年決算届を行政庁に提出する必要があります。事業年度が終了した日から4ヶ月以内には提出しなければならないため、忘れずに提出しましょう。
会社の商号や営業所が変わったり、役員の解任など社内で大きな動きがあったりした場合は、変更届を提出しなければなりません。この変更届が提出できていなければ更新も認められないため注意しましょう。
管理責任者と専任技術者が会社に常勤しており、欠けていないことも条件になります。更新の手続きには、管理責任者と専任技術者が持つ被保険者証の写しの添付も求められます。この時、5年間の間に管理責任者や専任技術者が欠けた期間があることが発覚した場合は、更新手続きに影響が出る場合もあるため注意しましょう。
社会保険に引き続き加入しているかも確認されます。該当する保険が外れていた場合などは更新手続きを行えませんので、気をつけましょう。
建設業許可の更新手続きには、費用もかかります。更新にかかる費用は、一般建設業や特定建設業の区別に関わらず一律で5万円です。申請にかかる準備を行政書士などの専門家に依頼する場合は、その分も費用も必要です。
また、一般建設業と特定建設業の許可をそれぞれ取得しており、ともに更新する場合はそれぞれ5万円の費用が発生するため注意しておきましょう。
建設業許可は、建設業を営む事業者が規模の大きい工事を請けるためにも欠かせない許可です。工事の種類ごとに判別したうえで適切な建設業許可を取得して、業務拡大を狙いましょう。
また、許可取得日から5年で期限は失効するため、更新も忘れずに行う必要があります。更新に必要な条件を常日頃から満たせているかを確認しつつ、期限が近づいたら余裕を持って更新手続きに進めるようにしておきましょう。
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