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初めての介護はわからないことが多いものの、誰かに相談したくても知り合いには話しにくい、専門家の伝手(つて)もないといった場合、頼りになるのがケアマネージャー(※)の存在です。介護者の相談対応からケアプランの作成、介護サービス事業者との調整など介護にかかわるあらゆる役割を果たします。
※「ケアマネジャー」と表記される場合もあります。
本記事では、自宅介護や施設介護の中から適切な介護サービスを探している方にとって大きな力となるケアマネージャーについて、仕事内容や支援を依頼する方法、関係性の構築方法などをお伝えします。これから介護を始める方で何から始めればよいかとお悩みの際はぜひ参考にしてください。
現在介護業界ではDX化が急速に進んでいます。DX化の要素の一つ「電子契約」について、次の記事で詳しく解説しています。介護業界で業務改善に取り組まれている方必見の内容です。ぜひご覧ください↓
ケアマネージャーの正式名称は「介護支援専門員」で、2000年の介護保険法が施行された際に生まれた職種です。要介護者や介護者からの相談対応、ケアプランの作成、支援策の調整などを行います。
ケアマネージャーは国家資格ではなく各都道府県が認定する公的資格です。医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士など国家資格が必要な指定業務を5年以上かつ900日以上の実務経験を経る必要があります。そのうえで、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、研修の受講をすることでケアマネージャーの資格を得られます。
合格率は年によっても異なるものの、令和に入って以降は平均20%程度(※)と決して高い数字ではありません。裏を返せばそれだけ高い知識や経験を持っていなければ就けない仕事だといえるでしょう。
※参考:第26回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省
ケアマネージャーの種類は大きく分けて2つあります。一つは、自宅で介護をしている介護者や要介護者を支援する「居宅ケアマネージャー」。そしてもう一つは、介護老人保健施設や介護老人福祉施設などの施設で要介護者を支援する「施設ケアマネージャー」です。
居宅ケアマネージャーの役割は、自宅で介護を必要としている方に対し、適切な介護サービスの手配をすることです。主に訪問介護事業所や居宅介護支援事業所に勤務しています。具体的な仕事内容は次のとおりです。
介護者や要介護者からの依頼を受け、介護に関する相談(インテーク)に対応します。具体的には、介護者が自宅で介護をするうえで困っていること、それから要介護者の状態や自立した生活を送るために何をすべきかなどの聞き取りを行い、分析(アセスメント)します。
また、現状の把握をしたうえでどのような介護サービスがあるのか、介護保険を使って何ができるのかなどの説明も仕事内容の一つです。
介護を希望する方が介護サービスを利用するには、介護が必要であることを数値で表す要介護度の判定を行う「要介護認定」が必要です。
認定は客観的で公平な判定を行うため、コンピュータによる一次判定を原案として保健医療福祉の学識経験者が行う二次判定の二段階で行われます。
要介護認定を受けるには、要介護者がお住まいの地域にある地域包括支援センターや役所の介護保険課に申請をしなければなりません。
介護者や要介護者の家族でも申請は可能ではあるものの、経験がない方にとっては多くの手間を要するため、居宅ケアマネージャーが申請の代行を行うケースが一般的です。
要介護度は自立、要支援1と2、要介護1~5の8段階に分かれていて、おおよその目安は次のようになっています。なお、自立は介護サービスが必要ない状態であるため介護保険は適用されません。
要介護者の状態の程度 | 区分 | おおよその目安(※要介護者の実際の状態と完全一致するものではありません) |
---|---|---|
軽度 | 要支援1 | 排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。ただし要介護状態とならないように身の回りの世話の一部になんらかの介助(見守りや手助け)を必要としている。適切にサービスを利用すれば改善の見込みの高い方 |
要支援2 | 排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。ただし身の回りの世話になんらかの介助(見守りや手助け)を必要としている。適切にサービスを利用すれば改善の見込みの高い方 | |
要介護1 | 排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。ただし身の回りの世話になんらかの介助(見守りや手助け)を必要としている方 | |
中度 | 要介護2 | 排泄や食事になんらかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがあり、身の回りの世話の全般になんらかの介助を必要としている。歩行や移動の動作になんらかの支えを必要としている方 |
要介護3 | 身の回りの世話や排泄が自分ひとりでできない。また、移動等の動作や立位保持が自分でできないことがある。いくつかの問題行動や理解の低下が見られることがある方 | |
重度 | 要介護4 | 身の回りの世話や排泄がほとんどできない。移動等の動作や立位保持が自分ひとりではできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下が見られることがある方 |
最重度 | 要介護5 | 排泄や食事がほとんどできない。身の回りの世話や移動等の動作や立位保持がほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下が見られることがある方 |
要介護者の要介護度が確定したら、聞き取りの分析結果を基にしてどのような形でケアしていくのがよいのかをまとめます。これがケアプラン(介護サービス計画書)です。
居宅ケアマネージャーの場合、要介護者の要介護度が要支援1もしくは2だった場合は、要介護状態になるのを防ぐための「介護予防サービス計画書」を作成します。
要介護1~5だった場合に作成するのは、自宅での生活を基本としつつ、訪問サービスや介護施設への短期入所、介護用品の活用などをするための「居宅サービス計画書」です。
なお、一般的なケアプランは、主に次の4項目を記載します。
ケアマネージャーが作成したケアプランの原案を基に医師や介護職員のほか、要介護者や家族同席のうえで会議を開催します。また、介護用品のレンタルが必要であれば福祉用具専門員、食事のケアが必要であれば栄養指導員など状況に応じて専門スタッフの同席も必要です。納得いくまで話し合いを行い、ケアプランを完成させます。
完成したケアプランの内容について、要介護者もしくは介護者やその家族に対しあらためて説明します。
ケアプランを実行に移すには、要介護者や介護者、家族などから文書により同意を得なければなりません。また、作成したケアプランは要介護者に交付しなければならないと規定されているため、必ず交付します。
なお、ケアプランは新規作成時のほか、計画期間終了で更新する際にあらためてアセスメントを行い、要介護者の状態に変化があれば、再度ケアプランの作成をする必要があります。
居宅ケアマネージャーは、ケアプランを実行するため、関係各所と連携を取り適切にサービスの提供がされているかをモニタリングします。具体的には介護用品をレンタルする手続き、介護施設へ短期入所する際の連絡調整なども居宅ケアマネージャーの仕事です。
また、介護保険を使った介護サービスの利用に際し、かかった介護給付費の管理も居宅ケアマネージャーが行います。
一般的に施設ケアマネージャーは、居宅ケアマネージャーに比べ担当人数が大きく異なります。
居宅マネージャーが担当する要介護者の平均は40名前後なのに対し、施設ケアマネージャーが担当できる人数は100人です(※要介護を1人、要支援を0.5人で計算)。
仕事内容的には、施設に入所してきた要介護者と面談や情報の分析といった点は居宅ケアマネージャーと変わりません。ただし、居宅ケアマネージャーとは異なり施設によっては複数人のケアマネージャーで分担しながら業務を進めます。
また、施設での電話受付や来客対応、デイサービスやショートステイで訪問してきた要介護者の送迎も施設ケアマネージャーの重要な仕事の一つです。
ほかにも施設で行われるイベントの準備や設営など施設の運営にかかわる業務もこなしつつ、要介護者の支援を行います。
要介護者が施設に入る場合、ケアマネージャーは施設ケアマネージャーとして施設にいるため、あらためて探す必要はありません。しかし、自宅で介護をする際に必要となる居宅ケアマネージャーは、介護者や家族が自分で見つけ出す必要があります。
居宅ケアマネージャーの多くは、訪問介護事業所や居宅介護支援事業所に所属しています。そのため、自身がお住まいの地域にある訪問介護事業所や居宅介護支援事業所から探すのが基本です。
どこにあるかわからないといった際には、70以上の自治体が発行する情報誌「ハートページ」で探します。北海道・関東・北陸・東海・関西・中国・九州の市区にある訪問介護事業所や居宅介護支援事業所の情報が掲載されています。また、Web版も地域別で用意されているので、こちらで探してもよいでしょう。
居宅介護支援のほか、訪問介護やデイサービス、ショートステイ、介護施設なども掲載されているので、自宅周辺の介護施設情報を知るのにも役立ちます。
参考:ハートページナビ【公式】
要介護者に合ったケアマネージャーを選択するには、次の点をしっかりとチェックしたうえで見極めましょう。
ケアマネージャーになるためには、医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士などの資格を取得したうえで実務経験が必要です。そのため、どのような資格を持ち、何をしていたかにより、それぞれが持つ知識や経験も異なります。
また、ケアマネージャーになってからも、過去の職業での知識や経験を活かしたうえで、どのような要介護者のサポートをしてきたのかもさまざまです。
自身が介護する要介護者に近い要介護者のサポート経験がどれぐらいあるのか、介護サービスに対する知識はどれだけあるのかはしっかりと確認しましょう。
介護者が介護を行ううえで問題点が発生した際、迅速に相談に乗ってくれ、適切なアドバイスをくれるかどうかも重要な選択ポイントです。
困ったときにすぐに連絡が取れない、相談をしても適切なアドバイスがもらえないなど、コミュニケーションに難があるケアマネージャーでは、安心してケアプランの作成も任せられません。
電話やネットだけで選択するのではなく、必ず実際に会って話をすることで、しっかりと話を聞いてくれるか、時間を守れるかなどの適正をチェックしておきましょう。
知識や経験は重要ではあるものの、目の前の要介護者に寄り添わず、過去の実績だけでケアプランを作成するようなケアマネージャーは避けたほうがよいでしょう。
どれだけ経験があっても要介護者の状態は一人ひとり異なります。介護者や家族の話をしっかりと聞いてくれ、わかりやすい言葉でプランの説明をしてくれるケアマネージャーを選択することが重要です。
適切な介護により、要介護者の状態を悪化させず自立した生活ができるようにしていくことは簡単ではありません。要介護者の状態にもよるものの、さまざまな人の協力を得て初めて適切な介護が実現します。
その中でもケアプランの作成や各介護サービスとの連携、やり取りなどを行うケアマネージャーの存在は重要です。介護者と綿密なコミュニケーションも必要になるため、妥協することなく最適な選択をしましょう。
ケアマネージャーを選択するポイントはいくつかあるものの、信頼関係を築けるかどうかは前提として非常に重要です。わからないことがあった際にすぐ相談に乗ってくれる、こちら側の要望を親身になって聞いてくれる、どれだけ忙しくても適当な対応をしないなどはしっかりとチェックしましょう。
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