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工事の受発注における「工事請負契約書」の作成はマストです。2001年4月、改正建設業法の施行に伴い、建設業法第19条に規定されている契約書の書面化義務が廃止になりました。それにより契約書の電子化が可能となったため、電子契約を導入する企業が増加傾向にあります。
本記事では、工事請負契約書の基礎知識に併せて、約款との違いや変更方法など、契約書の重要性について解説します。
工事請負契約とは、注文者が請負人に工事を発注し、請負人が受注する契約です。住宅建築工事、リノベーション工事など、多くの種類があります。
工事請負契約は、民法の請負契約に該当するため、双方の契約締結の意思が合致することのみで成立します(民法第632条)。
ただし、建設業法の定めにより、契約が成立した場合は契約書を作成交付し、双方が署名もしくは記名押印する義務があります。なお、契約書に記載すべき内容も定められています(建設業法第19条)。
契約締結にあたっては、当事者同士の合意、そして、合意したことがたしかに確認できることが重要です。そこで、これまでは紙の契約書の契約書を作成し、記名押印もしくは署名を行ってきました。紙の契約書+記名押印(または署名)と同じ法的効力を電子契約にも持たせるためには、電子契約に契約者の本人確認ができる措置を講じなければならないと定められています(建設業法施行規則第13条の4第2項第3号)。
しかし、現行法では、この本人確認措置がどの程度行えばよいか明確に規定されていません。そこで、電子契約サービスの提供を検討する事業者がグレーゾーン解除制度を利用して国に確認を求めたところ、国土交通省より以下の回答がありました。
契約当事者による本人確認措置を講じた上で公開鍵暗号方式による電子署名の手続きが行われることで、契約当事者による契約であることを確認できると考えられることから、建設業法施行規則第十三条の四第二項に規定する技術的基準を満たすものと解される。
つまり、電子契約を利用するにあたっては、契約当事者がメールアドレスを用いて本人確認をし、クラウド上で契約を行うことで、措置の基準を満たすことができるとの回答でした。「電子印鑑GMOサイン」を使えば、安心して建設業法の基準を満たした電子契約が利用できるのでおすすめです。
工事請負契約書に記載すべき事項は、次の16項目を定めなければなりません(建築業法第19条)。契約書の記載事項とその書き方、注意点を解説します。
工事名や工事を行う場所などを記載します。
請負代金の金額を記載します。なお、工事請負契約書には印紙税がかかりますが、印紙税の額は記載金額によって異なります。消費税等の税額が契約書上で不明確の場合は税金を含めた金額で印紙税を計算することになるため、印紙税の観点においては税額が具体的にわかるように請負代金を記載することが重要です。
工事の期間を記載します。極端に短い工期だと請負契約を締結できない可能性がある点に注意が必要です(建築業法第19条の5)。
工事を行わない日、時間帯があれば記載します。建設業における長時間労働を是正するため、2019年の改正で盛り込まれました。
請負代金につき、前金払や出来形部分に支払いがある場合に記載します。
当事者の一方的な都合により、工事が延期や中止になる可能性があります。損害の負担範囲や算定方法を記載します。
天災その他不可抗力より工期が変更になった場合や、損害の負担額と算定方法を記載します。
インフレなどによって、材料価格が変更になった場合の措置を記載します。
工事の施工によって、第三者が損害を受けた際の損害賠償負担や算定方法を記載します。
注文者が、工事に使用する資材や重機を持参して請負人に使用させる場合は、内容や方法を記載します。
注文者が、工事の途中経過や完成を確認するための検査の時期、方法、引き渡しの時期を記載します。
工事が完成した後の請負代金の支払方法及び時期を記載します。
工事の目的物が契約の内容に適合しない場合の保証保険契約の締結や、その他の措置に関する事項がある場合に記載します。
履行の遅滞、債務不履行の場合における遅延利息や違約金、損害金などを記載します。
第一審の合意管轄裁判所を定めることで、訴訟に発展した場合、スムーズに手続きができます。
その他に、国土交通省令で定める事項を記載します。
請負人は現場代理人を置く場合、書面により注文者に通知する必要があります(建設業法第19条の2第1項)。
現場代理人の権限や注文者の請負人への意見申し出の方法を記載します。
「一括下請負」とは、請負人が下請事業者に建設工事の一切を委託することをいいます。原則、一括下請負は禁止とされています(建設業法第22条第1項、2項、3項、建設業法施行令第6条の3)。
下請負をする場合は、その同意、下請業者の内容を記載します。
住宅やマンションなどを購入する場合、通常金融機関のローンを利用します。本人や勤め先の状況によっては、融資が下りない場合も珍しくありません。万が一、住宅ローンの審査に通らなかった場合、契約を解除できる項目が「ローン特約」になります。
この他にも、反社会勢力排除条項や秘密保持条項などが考えられます。工事内容は広範囲にわたるため、その都度検討し、工事内容に合わせて適宜、追加や削除が必要です。
「工事標準請負契約約款」とは、工事請負契約では網羅できない詳細事項が記載されたものです。一般的に、請負契約書に併せて工事標準請負契約約款が添付されます。国土交通省が作成したものを使用するのが一般的です。
契約は、双方の契約締結の意思が合致しさえすれば成立します。そして、過去には発注者に有利な内容での契約がされるケースも多数ありました。
そこで建設業法では、中央建設業審議会が当事者の具体的な権利関係の内容を定め工事標準請負契約約款を作成すると定めています(建設業法第34条第2項)。
同項は、契約当時者双方の権利義務を守る重要な役割を担っています。
工事標準請負契約約款の種類は4つに分けられます。
主に、国の機関や地方公共団体から発注される請負契約が対象になります。民間企業の電力やガス等の工事も含まれます。
民間の比較的大規模な工事の発注者と、建設業者における契約を対象としています。
民間の個人住宅等、比較的小規模な工事の発注者と建設業者との契約が対象です。
公共工事や民間工事を問わず、全般の下請工事を対象にしています。
工事内容の変更に応じて、工事請負契約の一部変更合意契約や追加変更工事請負契約を締結する際においても、建設業法第19条第2項の規定により契約書の作成が必要です。その際に「工事請負変更契約書」を作成することが一般的ですが、変更契約書を電子契約で締結することも可能です。
電子契約により、製本や郵送などの事務作業の手間が省けるため、大幅なコスト削減が可能です。併せて、契約の可視化がされることで契約の更新漏れ防止が図れるため、コンプライアンス強化につながります。
「電子印鑑GMOサイン」を利用することで業務の効率化ができるでしょう。
建設業法第19条では、次のように定められています。
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない
工事請負契約にあたり、契約書の作成、取り交わしは義務といえます。契約書を作成しなかった場合、国土交通大臣もしくは都道府県知事から、指導や監督処分を受ける可能性があります。違反の程度によっては建設業許可など重い処分が下され、業務が滞る事態も想定できます。また、行政処分は公告されるため、会社の信用やイメージに影響するでしょう。
工事内容は多岐にわたるため、それぞれのケースに合わせて判断することになります。国土交通省では「建設業法令遵守ガイドライン」を作成しています。罰則と併せて確認するとよいでしょう。
契約書が印紙税法で定められた「課税文書」である場合、印紙を貼付しなければいけません。工事請負契約書は課税文書に該当するため、印紙の貼付義務があります。貼付すべき金額は、契約書の内容によって異なります。電子契約の場合、印紙の貼付が不要になるので、印紙の貼付漏れが防げ、コストカットにつながります。
工事請負契約書の場合は、下記の表の通りです。
(なお記載金額が100万円を超えるもので、2024年3月31日までに作成される契約に関しては軽減税率が適用されます。)
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
工事請負契約書の作成は法律で義務づけられています。ここでは、その理由を3つのポイントに分けて解説します。
工事内容を明確にしていない場合、注文者の意図と異なってしまう可能性があります。耐震耐火基準や建築材料をはじめ、壁面や造作家具の配置などを詳細に決めることで、トラブルを避けられます。契約に定められた仕様は、完成品が契約に適合しているかどうかの判断の基礎となるため、明確に定める必要があります(民法第559条及び562条)。
建設工事は、物価高騰や天候、予期せぬ事情などにより、内容や費用が変わることは珍しくありません。トラブルになった場合、手続きを円滑にし、早期解決を図るために必要といえます。
請負契約は、請負人との力関係により、発注者の有利な契約がなされるケースがあるため、契約の片務性を防ぐ必要があります。具体的な事案は、建設業法令遵守ガイドラインに記載されています。
建設工事は金額も大きく、工事の追加変更は珍しくないためトラブルが起きやすい環境であるといえるでしょう。そのため「工事請負契約書」にて取り決めるべき事項は多数ありますが、詳細に決めなければいけません。また、内容に変更があるたびに、契約書を交わす必要があります。事前にさまざまな事項を取り決めることで、トラブルを回避することができます。
その点、電子契約は紙の契約書と異なり、オンラインで締結が完了するため、変更のたびに新しい契約書を調製する必要もなく、印紙税などの契約にかかるコストを削減することができです。電子契約や電子署名を導入の際は、過去の契約書や変更契約書の履歴も併せて確認できる「電子印鑑GMOサイン」がおすすめです。
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