MENU

電子契約に同意書・事前承諾書は必要?必要なケース・取得方法・ひな形を弁護士が解説

電子契約を導入するとき、「取引先から同意書や事前承諾書を取る必要があるのか」と疑問に感じる法務・総務担当者の方は多いのではないでしょうか。

結論からいえば、同意書や事前承諾書はすべての契約で必要なわけではありません。一方、建設業や不動産取引、運送契約のように、法令上、相手方の承諾がなければ書面を電子化できない場面もあります。さらに、2026年1月施行の取適法(旧下請法)のように、法改正で事前承諾が不要になった領域もあります。

本記事では、同意書・事前承諾書が不要なケースと必要なケースを業界別に整理したうえで、承諾の取得方法、承諾書に記載すべき項目とシーン別のひな形まで紹介します。

この記事のポイント
  • 電子契約を利用するだけで、すべての契約について独立した同意書・事前承諾書が必要になるわけではない
  • 「契約そのものを電子で締結すること」と「法令上の書面を電磁的方法で交付すること」は別であり、後者では法令によって事前承諾が必要になる
  • 建設業・不動産・運送・特定商取引などでは電子交付に承諾が必要な場合がある一方、フリーランス法や取適法では電磁的方法による明示に事前承諾を要しない
  • 承諾が必要な場合は、対象書面や提供方法、ファイル形式、撤回方法などを整理し、後から確認できる形で記録を残すことが重要

記事執筆:中澤泉(弁護士)

目次

電子契約の同意書・事前承諾書は全契約で必要なわけではない

「電子契約を使うなら、まず相手から同意書をもらう必要がある」と思われがちですが、これは正確な理解ではありません。どのような場合に必要になるのかを正しく判断できるよう、まずは用語と論点を整理しましょう。

「承諾」「事前承諾書」「同意書」の意味と違い

「承諾」「事前承諾書」「同意書」という言葉は、いずれも電子契約の場面でよく登場しますが、実務では次のように意味が異なり、混同されやすい傾向にあります。

承諾:法令が求める意思表示そのもの。「書面に代えて電磁的方法によることを承諾する」という相手方の意思表示です。

事前承諾書:その承諾を、あらかじめ書面や電子データの形で取得しておくための文書です。

同意書:より広く、電子契約の利用に関する当事者間の合意を記録する文書全般を指すことが多い言葉です。

つまり、法令が求めているのは「承諾」という意思表示であり、同意書・事前承諾書はそれを証拠に残す手段のひとつです。書類自体が常に義務というわけではありません。

「契約を電子で締結すること」と「法定書面を電子で交付すること」は別問題

同意書・事前承諾書の要否を判断するうえで最も重要なのが、次の2つの場面の切り分けです。

1つ目は、契約そのものを電子契約で締結する場面です。民法上、契約は原則として当事者の合意(申込みと承諾の意思表示の合致)で成立し、書面などの方式は要求されていません。電子署名は合意を証明する手段であり、その利用自体に独立した同意書の取得が常に義務付けられるわけではありません。

2つ目は、法令上の書面交付・明示義務を電磁的方法で代替する場面です。建設業法や宅建業法などでは書面での交付が義務付けられており、PDFファイルをメールで送信するなど、電磁的方法による提供に代えるには、あらかじめ相手方の承諾が求められるのが一般的です。

電子契約の同意書・事前承諾書について考えるときは、自社のケースがどちらの場面にあたるのかを分けて整理することが大切です。

電子契約の同意書・事前承諾が不要なケース

ここからは電子契約の同意書・事前承諾書が不要なケースと必要なケースを順に見ていきます。まずは不要なケースからです。実は、日常的に交わされる企業間契約の多くはこちらに該当します。

一般的な企業間契約は、電子契約の利用に合意していれば同意書は不要

業務委託契約や売買契約、秘密保持契約など、法令上の書面交付義務がない一般的な企業間契約であれば、双方の合意があれば独立した同意書・事前承諾書がなくても締結できます。

実務上は、署名依頼に対して相手方が署名・承認の操作を行うことが、電子契約を利用することへの合意を示す事情の一つになり得ます。そのため、法令上の書面交付義務がない通常のBtoB取引では、契約のたびに独立した承諾書を取り交わす必要はありません。ただし、法令上不要でも承諾を取っておくことを検討したい場面はあります。詳しくは後述します。

フリーランス・中小受託事業者への取引条件の明示は、事前承諾なしで電子化できる

法令上の書面交付・明示義務がある取引であっても、近年の法改正により、電磁的方法を用いる際の事前承諾を不要とする見直しが進んでいる領域があります。代表例が、フリーランス法と取適法です。

フリーランス法(2024年11月施行)では、フリーランス(特定受託事業者)への業務委託時に、給付の内容や報酬の額などの取引条件を直ちに書面または電磁的方法で明示しなければなりません。方法は発注事業者が選択でき、電子メール等で明示する場合でもフリーランス側の事前承諾は不要です。

取適法(旧下請法/2026年1月1日施行)でも同様の見直しが行われ、委託事業者が中小受託事業者に対して行う発注内容の明示(いわゆる4条明示)は、電磁的方法による場合でも事前承諾が不要になりました。改正前の下請法では、電磁的提供に下請事業者の事前承諾が必要で、承諾のないままの電子メール発注は書面交付義務違反とされていたため、実務上大きな変更点です。現在は電子メール・EDIのほか、SMSやSNSのメッセージ機能、電子媒体の交付でも明示できます。

もっとも、いずれの法律でも、電磁的方法での明示後に相手方から書面交付を求められたときは、保護に支障がない場合を除き遅滞なく書面を交付しなければなりません。詳細は公正取引委員会・中小企業庁の「中小受託取引適正化法テキスト」など最新資料で確認するとよいでしょう。

出典:
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)4条
中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月) 公正取引委員会・中小企業庁

法令上、電子化に事前承諾が必要なケース

ここからは反対に、法令上、電磁的方法での代替に事前の承諾が必要となるケースを業界別に見ていきます。承諾を得ないまま電子化すると、書面を交付したものと認められないおそれがあるため、自社の契約が該当しないかを確認しておきましょう。なお、法令ごとに「誰の承諾が必要か」が異なる点にも注意が必要です。

業界・分野対象となる主な書面承諾のポイント
建設業建設工事請負契約書、見積書契約の相手方(注文者等)の承諾が必要。電磁的措置の種類・内容を事前に提示する。
不動産取引35条書面、37条書面、媒介契約書面、定期建物賃貸借の事前説明書面相手方等・賃借人の承諾が必要。提供方法と記録方式を提示する。
運送契約運送契約に関する書面、商法上の送り状運送契約に関する書面は契約相手方の承諾が必要。商法上の送り状は運送人の承諾が必要。
労働・雇用労働条件通知書、派遣の就業条件明示書面労働者本人が希望した場合に電子交付が可能。
特定商取引法訪問販売・電話勧誘販売等の申込書面・契約書面等消費者の承諾が必要。承諾取得の手続き自体が厳格。
その他消費者向け旅行契約、電気通信、有料放送などの書面利用者・旅行者等の承諾が必要。
※上表は概要です。各法令には例外や細かな要件があるため、運用時は最新の法令・ガイドラインの確認が必要です。

建設業:建設工事請負契約・見積書の電子化には注文者等の承諾が必要

建設工事の請負契約は、建設業法により契約書面の相互交付が原則とされ、電子契約(電磁的措置)を用いるには、あらかじめ契約の相手方の承諾が必要です。承諾は、電磁的措置の種類・内容を示したうえで、書面または電磁的方法により取得します。見積書の電子交付も同様です。

また、建設業の電子契約には、見読性・原本性・本人性という技術的基準への適合が求められます。2025年9月30日には国土交通省の新ガイドラインが策定されたため、最新ガイドラインに沿った運用が必要です。

出典:
建設業法19条1項・3項、建設業法施行令5条の5
電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン(令和7年9月30日) 国土交通省不動産・建設経済局建設業課

不動産取引:重要事項説明書・契約締結時交付書面・定期建物賃貸借などは相手方の承諾が必要

2022年5月施行の宅建業法改正により、重要事項説明書(いわゆる35条書面)、契約締結時交付書面(いわゆる37条書面)、媒介契約書面の電磁的提供が可能になりましたが、いずれも相手方等の承諾が前提です。提供方法とファイルの記録方式を示し、相手方のIT環境を確認したうえで、記録に残る形で承諾を取得することが国土交通省のマニュアルで求められています。

また、定期建物賃貸借契約の事前説明書面の電磁的提供にも、賃借人の承諾が必要です。個人が相手となることも多いため、承諾の取得と説明は特に丁寧に行いましょう。

出典:
宅地建物取引業法34条の2・35条・37条、借地借家法38条
ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について 国土交通省

運送契約:貨物自動車運送事業法の書面交付・商法上の送り状等は承諾が必要

物流・運送の分野では、2024年に成立した改正貨物自動車運送事業法により、2025年4月1日から、運送契約の締結時等における書面交付が義務化されました。

具体的には、荷主とトラック事業者が運送契約を締結するときは、運送の役務の内容や対価(附帯業務料・燃料サーチャージ等を含む)などを記載した書面を相互に交付しなければなりません。

また、トラック事業者等が他の事業者に運送を委託する利用運送の場面でも、委託先への書面交付が義務付けられています。

これらの書面は、電子メール等の電磁的方法で交付することもできますが、契約の相手方の承諾を得ている場合に限られます。なお、2026年4月からは、貨物利用運送事業者にも書面交付義務が拡大されています。

商法上の送り状にも注意が必要です。荷送人は、運送人から請求があったときは、運送品の種類などを記載した送り状を交付しなければなりません。この送り状を電磁的方法で提供するには、運送人の承諾が必要です。送り状は「荷送人が作成し、運送人に渡す」書面であるため、承諾を得る相手が、一般的な「発注者が受注者から承諾を得る」というイメージとは逆になる点が見落とされがちです。海上運送の場面でも、海上運送状の交付に代えて電磁的方法によるには、荷送人・傭船者の承諾が必要とされています。

なお、取適法には「特定運送委託」という取引類型があります。これは、販売・製造・修理・作成の目的物などを取引相手に運送する業務を他の事業者に委託する取引で、取適法の適用対象として2026年1月に新設されたものです。この委託については発注内容の明示(4条明示)のルールが適用され、電磁的方法による明示に事前承諾は不要です。運送契約に関する書面交付のルールとは別の制度なので、混同しないよう注意してください。

出典:貨物自動車運送事業法12条1項・3項、貨物自動車運送事業法24条、商法571条、商法770条、取適法4条

あわせて読みたい
物流業界の電子契約とは?導入メリット・対象契約・法改正対応のポイントを弁護士が解説 物流業界では、2024年問題によるドライバー不足や物流コストの上昇、多重下請構造に起因する契約条件の不明確さといった課題を背景に、契約・取引条件の可視化が急務と...

労働・雇用:労働条件通知書などは労働者本人が希望した場合に電子交付できる

労働基準法に基づく労働条件の明示は書面が原則ですが、労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メール、SNSのメッセージ機能など(出力して書面を作成できるものに限る)で行うことができます。

法令上の文言が「承諾」ではなく「希望した場合」である点に注意し、本人が電子での受け取りを希望したことを確認して記録を残すことが望ましい対応です。派遣労働者への就業条件の明示も、本人の希望がある場合に電磁的方法が認められています。

出典:労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条4項、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)34条1項、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(労働者派遣法施行規則)26条1項

特定商取引法:消費者への契約書面の電子化には厳格な承諾手続きが必要

特定商取引法は、訪問販売や電話勧誘販売、連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)など、消費者トラブルが生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールを定めた法律です。

これらの取引では、事業者は消費者に対し、契約内容を記載した申込書面・契約書面等を交付する義務を負います。2023年6月施行の改正により、消費者の承諾を得ればこれらの書面を電磁的方法で提供できるようになりましたが、その承諾取得の手続きは他の法令と比べて格段に厳格で、おおむね次の手順が求められます。

STEP
電磁的方法の種類・内容の提示

電子メールなどの提供方法や、ファイル形式等をあらかじめ消費者に示します。

STEP
承諾取得にあたっての説明

紙の書面を選べること、提供事項が重要であること、到達後は一定期間が経過するとクーリング・オフができなくなることなどを平易に説明します。

STEP
適合性等の確認

消費者が必要な端末を日常的に使い、自分で操作できるかを確認します。

STEP
承諾の取得

書面または電磁的方法で承諾を得ます。

STEP
承諾を得たことを証する書面の交付

電磁的方法で提供する前に、承諾を得たことを証する書面を原則として紙で交付します。

STEP
電磁的方法による提供と到達確認

基準を満たす方法で提供し、消費者が閲覧できる状態になったことを確認します。

特に注意したいのが承諾の取り方です。チェックボックスだけでは足りず、消費者自身に氏名と「説明の内容を理解した」旨をテキスト入力してもらうなど、真意に基づく承諾の担保が求められます。電磁的提供を希望しない消費者に手続きを進めること自体も禁止されています。

手続きに不備があると書面を交付したと認められず、クーリング・オフ期間が進行しない、行政処分や罰則の対象になるといったリスクがあります。消費者庁のガイドラインを踏まえた慎重な設計が不可欠です。

出典:
特定商取引に関する法律(特商法)4条、5条、18条、19条、37条、71条1号
「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」の公表について(特定商取引法の通達改正) 消費者庁

旅行契約・電気通信・有料放送など消費者向け書面も承諾が必要

このほか、旅行業法(取引条件の説明書面等)、電気通信事業法(契約締結時の書面)、放送法(有料放送の契約書面)なども、電磁的提供には相手方(旅行者・利用者等)の承諾が前提とされるのが一般的です。適用を受ける事業では所管省庁の通達やガイドラインまで確認しておきましょう。

出典:旅行業法12条の4・12条の5、旅行業法施行令1条、電気通信事業法26条・26条の2、電気通信事業法施行規則22条の2の3・22条の2の4、放送法150条の2・150条の3、放送法施行規則175条・175条の2

法律上の義務がなくても事前承諾を検討したい8つのケース

ここまでは「法令上、承諾が必要か」という観点でした。もっとも、法律上の義務がない契約でも、事前に承諾・合意を得ておくことを検討したい場面があります。

電子契約では、「そんな方式に同意していない」「操作がわからなかった」といった相手方との認識のずれが、トラブルにつながることがあります。こうしたずれが起きやすい次のようなケースでは、法令上の要否にかかわらず、事前承諾を記録に残しておくことを検討するとよいでしょう。

① 法令上、承諾の要否を判断しにくい契約

適用される法令の解釈に迷う場合は、まず対象法令やガイドラインを確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。そのうえで、承諾が必要または有効な制度であれば、要件に沿って承諾を取得し、記録を残しておくことが重要です。

② 相手方が電子契約に不慣れな場合

「操作方法がわからなかった」「署名した認識がなかった」といった混乱を防ぐため、事前に利用方法を説明し、合意を得ておくことが有効です。

③ 個人・個人事業主・中小企業との契約

契約管理体制や電子契約への習熟度は相手方ごとに異なります。契約方式について認識の行き違いが生じないよう、必要に応じて事前に説明し、合意の記録を残しておくとよいでしょう。

④ 高齢者や一般消費者が相手の場合

利用する端末や操作環境を確認し、電子契約で問題なく手続きできるかを丁寧に確認するプロセスが、トラブルの予防につながります。

⑤ 契約金額が大きい場合

万一、契約の成立や内容が争われたときの影響が大きいため、契約の締結方法についての合意も証拠として残しておく意義があります。

⑥ 継続取引・基本契約の場合

以後の個別契約をすべて電子契約で行う前提を最初に合意しておけば、取引のたびに方式を確認する手間が省け、運用が安定します。

⑦ 後から「同意していない」と言われるリスクがある場合

過去に紙での契約を強く希望していた相手など、争いになる兆候がある場合には、明示的な承諾を取得しておくことが有効です。

⑧ 社内監査・内部統制上、証跡を残したい場合

契約締結のプロセスが適切だったことを説明する資料として承諾の記録が役立ち、監査対応の観点からも有用です。

こうしたケースに当てはまるときは、法令上の要否にかかわらず、事前承諾を記録に残しておくことを検討するとよいでしょう。

電子契約の承諾を記録する主な方法|メール・Webフォーム・契約条項・事前承諾書

ここまで、事前承諾が必要になる場面と、取っておくことを検討したい場面を見てきました。次に問題になるのが、「承諾はどのような方法で取得すればよいのか」です。法令ごとに認められる承諾方法や手続きは異なりますが、実務で用いられる代表的な方法として、次の4つがあります。

方法内容注意点
電子メール電磁的方法の種類・内容を示したメールに、承諾の返信をもらう方法文面と日時が残るよう、保存ルールを決めておく
WebフォームWeb上で提供方法・記録方式を示し、承諾内容を入力してもらう方法特商法対象取引では、チェックボックスのみの承諾は認められない
契約書内の条項基本契約書などに、電子化に関する承諾条項を置く方法法令上許容される場合に限り、必要な提示事項・承諾要件を満たす形で設ける
独立した事前承諾書電子化の承諾のみを目的に、別書面として取り交わす方法承諾内容を独立した文書として整理・保存しやすい

このほか、法令によってはUSBメモリ等の電磁的記録媒体の交付が認められる場合もあります。いずれの方法でも、後から承諾内容を確認できるよう、対象法令の要件に沿って記録を保存しておくことが重要です。

承諾はメールなど記録に残る方法で取得する

実務上重要なのは、後から確認できる形で承諾を記録しておくことです。後日争いになったとき、「いつ・誰が・どの範囲について」承諾したかを客観的に示せることが重要になります。

建設業法や宅建業法など、承諾前に電磁的方法の種類・内容等の提示を求める法令があります。対象法令の要件を確認したうえで、国土交通省が公表する承諾取得の例示資料なども参考に、取得フローを整えておくとよいでしょう。

参考:国土交通省「承諾取得例」(「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」掲載)

承諾者・署名者の権限を確認する

法令上の電磁的提供への承諾と、契約締結の意思表示は別の行為です。一方、法人間取引では、それぞれ誰が権限を持つのかを確認しておくことが重要です。電子契約では、署名依頼のメールを受け取った担当者が操作できる場合があるため、契約締結権限のない担当者が署名してしまうリスクにも注意しましょう。

備えとしては、契約締結前に相手方の権限者(署名者)を確認し、誰のメールアドレス宛てに署名依頼を送るかを合意しておくことが有効です。運用上必要であれば、事前承諾書に署名担当者を明記する方法も考えられます。

無権代理について、詳しくは「電子契約の無権代理とは?契約の効力と企業が取るべき実務対策を弁護士が解説」もご確認ください。

あわせて読みたい
電子契約の無権代理とは?契約の効力と企業が取るべき実務対策を弁護士が解説 電子契約、特に立会人型の電子契約では、メールを受け取った担当者が画面上の操作だけで契約を成立させられます。便利な一方で、契約締結権限のない担当者が署名・送信...

承諾は撤回される可能性がある

見落とされがちですが、一度得た承諾は撤回されることがあります。建設業法や宅建業法、特商法など多くの法令で、相手方から「電磁的方法による提供を受けない」旨の申出があると以降は電磁的提供ができなくなり、再開には改めて承諾が必要です。

したがって、撤回を受けた場合の対応フロー(紙への切り替え、設定変更、記録の更新など)まで設計しておくことが重要です。事前承諾書に、承諾を撤回できることとその方法を明記しておくと、トラブルの予防にもつながります。

出典:建設業法施行令5条の5第2項、建設業法施行令6条2項、宅地建物取引業法施行令3条の3第2項、特定商取引法施行令4条2項 等

同意書・事前承諾書のひな形|記載を検討したい6つの項目とシーン別文例

承諾の取得方法が決まったら、次に考えるのは「承諾書に何を書くか」です。記載が不十分だと、せっかく承諾を得ても、対象範囲や提供方法をめぐって認識のずれが残ってしまいます。ここからは、承諾書に記載を検討したい項目と、シーン別のひな形(文例の骨子)を紹介します。

事前承諾書に記載を検討したい項目

法令ごとに必要な提示事項・記載事項は異なりますが、汎用的な事前承諾書を設計する際は、次の6項目を検討すると整理しやすくなります。実際に使用する際は、対象法令が定める要件を優先してください。

  • 電磁的方法の種類:電子メール、電子契約サービスの名称、Webダウンロード等の提供方法
  • 電磁的方法の内容:PDF形式などのファイル形式、閲覧に必要なソフトウェア
  • 対象となる書面・契約の範囲:どの契約書・書面についての承諾かの特定
  • 承諾の当事者と承諾年月日:誰が誰に対して承諾したのか、いつ承諾したのかの特定
  • 撤回に関する事項:提供を受けない旨をいつでも申し出られることと、その方法
  • その他の特記事項:費用負担の有無、署名担当者の指定など

【シーン別】事前承諾書のひな形

上記を踏まえたシーン別のひな形の骨子です。いずれも基本形のため、使用時は対象法令の要件や取引実態に合わせて調整し、必要に応じて顧問弁護士等の確認を受けることをおすすめします。

① 取引先向け・汎用(一般的な企業間取引)

電磁的方法による契約締結等に関する承諾書

〇〇株式会社 御中

当社は、貴社との間で作成・締結・交付する契約書その他の取引関係書類について、下記の電磁的方法により作成または提供を受けることを承諾します。

記

  1. 電磁的方法の種類
    電子契約サービス「〇〇〇」を利用した電子署名による方法、または電子メールによるPDFファイルの送信
  1. ファイルの記録方式
    PDF形式
  1. 対象書面
    貴社との取引に関する契約書、覚書、注文書、注文請書その他これらに付随する書面
  1. 承諾の撤回
    当社は、電磁的方法による提供を受けない旨を、貴社に対していつでも申し出ることができるものとします。

以上

承諾日:  年  月  日
会社名:         
所在地:         
役職・氏名:         

② 建設・請負向け(建設工事請負契約)

建設工事請負契約に係る電磁的措置の承諾書

〇〇株式会社 御中

当社は、貴社との間で締結する下記建設工事請負契約について、書面の交付に代えて、下記の電磁的措置を講じることを承諾します。

記

  1. 対象契約
    〇〇工事に係る建設工事請負契約および同変更契約
  2. 電磁的措置の種類・内容
    電子契約サービス「〇〇〇」を利用した方法
  3. ファイルの記録方式等
    PDF形式(電子署名・タイムスタンプ等、利用するサービスの仕様に応じて記載)
  4. 電磁的措置によらない旨の申出
    当社は、電磁的措置によらない旨を貴社に申し出ることができます。この場合、以後の対象契約については、書面により締結するものとします。

以上

承諾日:  年  月  日
会社名:         
所在地:         
役職・氏名:         

③ 不動産取引向け(重要事項説明書等の電磁的提供)

重要事項説明書等の電磁的方法による提供に関する承諾書

〇〇株式会社 御中

私は、貴社が下記書面を交付することに代えて、電磁的方法により提供することについて説明を受け、その内容を理解したうえで承諾します。

記

  1. 対象書面
    重要事項説明書(35条書面)
    契約締結時交付書面(37条書面)
  2. 提供方法
    電子メールによるPDFファイルの送信
  3. ファイルの記録方式
    PDF形式
  4. 電磁的方法による提供を受けない旨の申出
    私は、電磁的方法による提供を受けない旨を、貴社に対していつでも申し出ることができるとの説明を受けました。

以上

承諾日:  年  月  日
会社名:         
所在地:         
氏名:         

④ 個人・消費者向け(汎用)

電子交付に関する承諾書

〇〇株式会社 御中

私は、貴社から交付される下記書類について、紙の書面に代えて、電子メールで送信されるPDFファイルにより受け取ることを承諾します。

また、私は、電子交付を承諾しない場合には紙の書面が交付されること、およびこの承諾はいつでも撤回できることについて説明を受け、その内容を理解しました。

記

  1. 対象書面
    〇〇契約に関する契約書面
  2. 提供方法
    電子メールによるPDFファイルの送信
  3. ファイルの記録方式
    PDF形式
  4. 承諾の撤回
    私は、電子交付を希望しない場合、貴社に対していつでも申し出ることができます。

以上

承諾日:  年  月  日
会社名:         
所在地:         
氏名:         

特定商取引法対象ではチェックボックスだけでは不十分|消費者向けの特別ルール

④のような消費者向けの承諾書でも、取引が特商法の対象(訪問販売・電話勧誘販売など)に当たるときは特別なルールが適用されます。チェックボックスだけの簡便な方法では足りず、氏名や「説明の内容を理解した」旨を入力してもらうなど、真意に基づく承諾を確認できる方法が求められます。また、承諾を得たことを証する書面の交付も原則として必要です。汎用ひな形をそのまま流用せず、消費者庁のガイドラインに沿って設計してください。

電子契約導入時のチェックリスト|承諾が必要な契約の棚卸しから証跡管理まで

ここまで、事前承諾が必要になる場面から、承諾の取得方法、承諾書の記載項目までを見てきました。最後に、これらを自社の運用に落とし込むために、電子契約の導入時に確認しておきたいポイントをチェックリスト形式で整理します。

No.チェック項目確認内容チェック
1対象契約の棚卸し電子化に事前承諾を要する法令の適用を受ける契約・書面を洗い出す。例:建設業法、宅建業法、特商法など□
2技術的基準への適合確認出力による書面作成や改ざん確認の措置など、各法令の基準を満たすか確認する。例:電子署名、タイムスタンプ等□
3承諾取得フローの整備誰が、いつ、どの方法で承諾を取得し、どこに保存するかを決める□
4撤回時の対応フロー承諾の撤回を受けた場合に、紙の書面交付へ切り替える手順を決めておく□
5証跡の保存承諾の記録や送信履歴を、監査や紛争に備えて検索・出力できる形で保存する□
6書面交付請求への対応準備フリーランス法・取適法の適用取引で、書面交付請求に遅滞なく対応できる体制を整える□

こうした運用を手作業だけで回すと、承諾の記録が分散し、いざというとき証跡を示しにくくなることがあります。電子契約サービスによっては、事前承諾書そのものを電子で締結・保管し、承諾日時や操作履歴等とともに一元管理しやすくなります。

たとえば電子印鑑GMOサインには、承諾の取得にも活用できる「署名フォーム」や、相手方のスマートフォン・メールアドレスが不要で、店舗や訪問先のタブレットで契約締結できる「対面契約」機能があります。承諾の取得から契約締結、文書管理まで一連の運用を電子化する際の選択肢になります。

まとめ:電子契約の同意書・事前承諾書は「必要な場面の見極め」がポイント

電子契約の同意書・事前承諾書は、すべての契約で必要なわけではありません。重要なのは、「契約を電子で締結すること」と「法令上の書面を電子で交付すること」を切り分け、自社の契約に事前承諾を求める法令が関係するかを見極めることです。

建設業・不動産・運送・特定商取引法などの分野では、承諾の取得方法や示すべき事項までルールが定められており、承諾は撤回もされうるため、記録を証跡として残す運用が欠かせません。一方、フリーランス法や取適法(旧下請法)のように事前承諾が不要になった領域もあり、最新の法改正を踏まえた対応が求められます。

まずは自社の契約類型を棚卸しし、承諾が必要な書面と取得フローの整理から始めてみてください。承諾書の締結・保管から文書管理までを電子契約サービスで一元化すれば、法令対応と業務効率化を両立しやすくなるでしょう。

本記事の執筆者
中澤泉弁護士

執筆:中澤泉(弁護士)

2015年に中央大学法科大学院を修了し、2016年に弁護士資格を取得。弁護士事務所にて債務整理や交通事故、離婚、相続など幅広い案件を担当。その後、大手メーカーでのインハウスローヤーを経て、現在は弁護士として主に企業法務に携わる。その傍らでライターとしても活動し、2025年に合同会社ことりうみを設立。同社にて法律記事の執筆・監修を手がけている。専門性と読みやすさを両立したコンテンツ制作が強み。

電子契約サービスの導入を検討中の方必見!

 

電子契約サービスごとの違いや選び方などについて、下記の記事でわかりやすく比較しています。ぜひご参考にしてください。また、各社のサービスをまとめた比較表を “無料” でダウンロードできます。

\ “無料” で使える電子契約サービスをまとめました! /

\ 各社サービスを一覧でチェック! /

 

 

電子契約サービスを導入するなら「GMOサイン」が断然おすすめ!

 

GMOサインは、導⼊企業数No.1 ※ の電子契約サービスで、350万社以上の事業者にご利用いただいております。また、自治体などにおいても広く導入されています。同⽔準の他社サービスと比較をしても、使用料がとてもリーズナブルなのが特徴です。さらに、無料で試せる「お試しフリープラン」もあるので手軽に利用できます。各種機能も充実しているため、使い勝手も抜群です。ぜひ一度お試しください。

※ 導入企業数は「GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントする。内、契約社数「100万社」(複数アカウントをご利用の場合、重複は排除)

 

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

GMOサインが運営する公式ブログ「GMOサインブログ」の編集部です。電子署名/電子サイン/電子印鑑(デジタルハンコ)/脱印鑑(脱ハンコ)/電子文書/電子証明書/電子帳簿保存法など、電子契約にまつわる様々なお役立ち情報をお届けします。

電子サイン・電子契約・電子署名のことなら「電子印鑑GMOサイン」
目次