働き方

2022年8月31日

2022年9月1日

消費税の仕入税額控除とは?インボイス制度の導入で何が変わる?仕組みや端数処理について徹底解説!

2023年10月から「インボイス制度」の本格的な導入が予定されています。それに伴って法人や個人事業主が受ける影響は非常に大きく、できるだけ早く方針の決定や準備を進めていかなくてはなりません。今さら聞けない、インボイス制度の基本的な仕組みや疑問点について確認していきましょう。



消費税のインボイス制度とは

インボイス制度とは2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式」のことです。所定の要件を満たした請求書(インボイス)を売り手側が発行し、買い手側が保存することで、仕入れにかかった消費税の仕入税額控除を受けられるようになる仕組みです。

消費税の仕入税額控除の仕組み

それでは仕入税額控除について改めて確認していきましょう。

消費税の仕組み

そもそも消費税とは、商品やサービスの最終的な消費者が負担する税金です。ただし、消費税を申告・納付するのは売り手であり、買い手から預かった消費税をまとめて納める仕組みとなっています。消費税は負担する人と、申告・納付する人が異なるため、「間接税」に分類されます。

売り手である事業者が納付する消費税額は、事業者が仕入れや経費に支払った消費税を「仕入税額控除」として差し引いて計算します。これは事業者が売り手であると同時に仕入れをする買い手としてすでに消費税を支払っているため、生産・流通の過程で二重三重に消費税が累積しないようにするための仕組みです 。

課税事業者と免税事業者

実際には全ての事業者が消費税を納めているわけではありません。課税期間の売上げが1,000万円を超えると、「課税事業者」となり、消費税の申告・納付をしなくてはなりません。一方で1,000万円以下の事業者を「免税事業者」といい、消費税の申告・納付の義務を免除されています。(なお、売上げが1,000万円以下であっても、課税事業者となる選択をすることは可能です。)

仕入税額控除の要件

従来、課税事業者が消費税を申告する際に仕入税額控除を受けるために、仕入れにかかった金額の証拠として請求書の保存が求められていましたが、2019年10月の軽減税率の導入に伴って、消費税率の区分と消費税額も明記した区分記載請求書の保存が必要になりました。スーパーのレシートなどに10%、8%といった税率やそれぞれの税額が記載されているのはこれに対応するためのものです。

さらに、2023年10月のインボイス制度が導入されると、これに加えて登録番号が明記された適格請求書(インボイス)の保存が必要になります。インボイスを発行するには、税務署長の登録を受けて「適格請求書発行事業者」になる必要があります。この登録を免税事業者のまま行うことはできず、適格請求書発行事業者になるには売上げが1,000万円以下であっても課税事業者にならなくてはいけません。

つまり、インボイス制度が導入されると、原則として免税事業者や個人など適格請求書発行事業者以外からの仕入れにかかる消費税を控除することができなくなります。そうすると、消費者から預かった消費税を仕入税額控除することなく全額納付しなくてはならなくなるため、事業者の税負担が重くなってしまうのです。

 

仕入税額控除の要件

従来 2019年10月1日~ 2023年10月1日~
帳簿の保存 帳簿の保存 帳簿の保存
請求書の保存 区分記載請求書の保存 適格請求書(インボイス)の保存

インボイス制度の経過的措置

それでは、2023年10月以降に免税事業者と取引した場合は一切仕入税額控除を受けられないのでしょうか。実際は、インボイスの発行を受けられなくても、2023年10月から3年間は従来の仕入税額控除の80%、2026年10月からの3年間は50%の控除が認められています。
このように、いきなり負担が増えることがないように段階的に控除できる割合を引き下げる経過的措置が設けられていますが、2029年10月以降はインボイスの発行がないと、仕入税額控除が一切できなくなります。

 

経過的措置による仕入税額控除の適用(インボイスの発行がない場合)

2023年10月1日~(3年間) 2026年10月1日~(3年間) 2029年10月29日~
80%控除できる 50%控除できる 控除できない

インボイス制度の目的

そもそも、なぜインボイス制度が導入されることになったのでしょうか?制度が改定されることになった背景について見ていきましょう。

取引における消費税額と税率の確認

2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられたのは記憶に新しいところです。同時に消費税の軽減税率制度が導入され、食料品(外食と酒類を除く)や新聞などは軽減税率8%、その他は標準税率10%が適用されることになりました。

以前は税率が一律だったので、仕入額から税率をかけ合わせることで単純に仕入税額を計算することができました。ところが商品の種類によって消費税率が混在するようになってしまったため、税率の区分ごとにかかった税額を管理する必要が生じたのです。

不正やミスの防止

複雑に混じりあった税率を適切に経理処理するのは非常に難しく、複雑なシステムは不正の温床にもなりかねません。不正をする意図がなくとも、ミスが起こりやすくなります。そこで、商品の税率区分ごとに消費税額を明記した請求書を発行・保存することにより、取引の透明性が高まり、不正やミスの防止ができると期待されています。

ここまでの理由であれば、区分記載請求書の保存によって十分管理できそうですが、なぜ適格請求書(インボイス)の保存が必要になるのでしょうか。免税事業者や個人は、買い手から消費税を預かっても納税する必要がないため、これまではそのまま利益にすることができました。

このように免税事業者がちょっとだけ得をするのも合法的でしたが、インボイス制度を導入することで見直されていくでしょう。

インボイス制度における問題点

インボイス制度の導入に反発する声もよく耳にするのではないでしょうか。制度改定にどのような懸念があるのかを説明していきます。

課税事業者である取引先の消費税負担が増える

インボイス制度で問題になるのは、買い手となる課税事業者が、個人事業主などの免税事業者と取引をする場合です。買い手は仕入れにかかる消費税を負担しますが、自分の売上げにかかる消費税を申告・納付する際には仕入税額控除を全額受けることができず、結果として税負担が増大します。

免税事業者のままでは取引先が減るおそれがある

上記の例のように免税事業者は申告・納付する義務を負わないので、一見すると変わりなく取引が行えるようですが、そういうわけにもいきません。

買い手側が課税事業者であれば、適格請求書(インボイス)の発行ができない免税事業者よりも適格請求書発行事業者と取引したいと考えるのは当然のことです。従って、課税事業者から取引を打ち切られてしまうおそれがあるのです。

たとえ取引を継続できたとしても、消費税分の値下げの要求には応じざるを得ないでしょう。おのずと競合の適格請求書発行事業者よりも低価格に設定していく必要に迫られるかもしれません。

対等な取引をするために課税事業者となることを検討する事業者も増えています。いずれにせよ、個人事業主など売上げが1,000万円以下の小規模事業者にとって、インボイス制度の導入は経営圧迫につながる逆風であり、大きな痛手となるでしょう。

経理の負担が大幅に増える

インボイス制度の導入にあたり、経理処理の複雑化は避けられません。適格請求書発行事業者は、買い手からの求めに応じて適格請求書(インボイス)を発行する義務があります。また、売り手から受け取ったインボイスが仕入税額控除を受けられる基準を満たしているかを逐一確認しなくてはなりません。

また、従来の請求書とインボイス(税率ごとに区分)を振り分けて管理・保存する必要があり、手間とコストがかかります。

制度に対応した会計ソフトなどの導入が必要になる

経理処理のためのフローを見直すことも重要です。複雑な仕訳は人の手を使って行うよりも、自動化されたソフトを使用した方が効率もよく、ミスを減らせます。

経済産業省は請求書の発行・保存をデジタル化する電子インボイスを推進しています。導入にあたり初期費用が必要となりますが、IT導入補助金により最大75%の支援が受けられます。電子インボイスに対応した会計ソフトの導入も検討してみましょう。

インボイス制度で消費税のよくある疑問

消費税の端数処理はどう計算する?

従来は商品ごとに端数処理を行っていましたが、インボイス制度の導入後は1枚のインボイスにおいて税率ごとに1回だけ端数処理を行うよう指定されています。

インボイスごとに8%の軽減税率と10%の標準税率の商品を振り分け、それぞれの合計額に税率をかけて、1円未満の端数を処理します。

「切り上げ」「四捨五入」「切り捨て」は指定されていないので任意で選択することができますが、一般的には「切り捨て」することが多いようです。

振込手数料はどう扱われる?

買い手が売り手に商品代金を振り込むにあたって、振込手数料を売り手負担とした場合のインボイスの取り扱いについての考え方は2通りあります。

①売り手が商品代金から手数料分を値引きしたとする

この場合、売り手は決済が行われた後に、売上対価の変換が行われたときに発行する適格変換請求書を発行します。

②売り手が負担する手数料を買い手が立て替え、決済と同時に生産されたとする

売り手は、買い手が金融機関から交付されるインボイスと立替金清算書を受け取って保存する必要があります。

いずれの方法にしても、売り手と買い手の間で認識を擦り合わせておきましょう。

煩雑化していく事務処理をデジタル化しよう

いかがでしたか?さまざまな意見が飛び交うインボイス制度ですが、本格的な導入までの時間が迫っていますので、正しく知って早めの対応ができるといいですね。

インボイス制度の導入一つをとっても複雑な経理処理が求められている状況ですが、これからも目まぐるしく制度の改定が行われていくでしょう。会計ソフトによる帳簿のデジタル化は普及してきていますが、契約書についてはまだデジタル化されていない企業も多いのではないでしょうか。

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ハンコ脱出作戦 編集部

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