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出向契約書を作成したいけど、どの項目を盛り込むべき?
法的な抜け漏れがないか不安…
この記事では、出向契約書について以下の内容を解説します。
出向契約書は形式を整えるだけでは不十分であり、実務と法令のバランスが求められます。法令や就業規則との整合性を欠くと無効になる可能性や、トラブル時の責任所在が不明確になるリスクがあるため、注意が必要です。
また、物理的な紙の出向契約書では、関係者が多い場合に手続きの遅延や保管の煩雑さがストレスになりがちです。特に出向契約のような「労使間」「出向元・出向先」といった複数の人物が関与する契約では、契約書の管理や履歴の明確化が欠かせません。
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出向契約書とは、企業の従業員を別の企業で一定期間勤務させる際に交わす契約書のことです。出向元・出向先・出向者の三者間での責任や労働条件を明確にする際に必要です。
まずは出向契約書について以下の内容を解説します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
出向には、「在籍出向」と「転籍出向」の2つの形態があります。おもな違いは出向元との雇用契約が継続するかどうかです。
在籍出向 | 転籍出向 | |
---|---|---|
雇用関係 | 出向元との雇用関係が継続 | 出向元との雇用関係は終了し、出向先と新たに契約 |
契約形態 | 労働契約は出向元に残る | 労働契約は出向先へ移行 |
具体例 | 親会社から子会社への一時的な出向 | グループ外企業への技術移転や業務提携 |
給与の支払い | 出向元が支給 (必要に応じて出向先が一部負担) | 出向先が支給 |
社会保険 | 出向元での加入継続が一般的 | 出向先で新たに加入 |
評価・賞与 | 原則として出向元の制度にもとづいて処遇 | 出向先の人事評価制度が適用される |
指揮命令権 | 日常業務は出向先、最終的な人事権は出向元 | 出向先が全面的に管理 |
出向期間終了後 | 出向元へ復帰 | 出向先で勤務を継続 (復帰なし) |
出向方法によって、契約書の内容・労務管理の責任範囲が異なるため、文書を作成する際は注意が必要です。
出向契約書は、すべての出向に義務づけられているわけではありません。しかし、以下のようなケースでは、後のトラブルを防ぐためにも、文書によって明確に取り決めておくことが推奨されます。
出向契約書は、給与・社会保険などが通常と異なるため、口頭やメールではトラブルの元となります。特に在籍出向では「労働時間」「残業代の支払い」が、労働契約法・労働基準法に適合しているかを見られます。
万一、出向先の勤務条件が法令を超過したり、不利益な内容が含まれたりすると違法と判断される可能性もあるため注意が必要です。
そのため、上記のようなケースに該当する場合は、出向契約書を作成し、内容を明確に取り決めておくことが重要です。
出向契約書には、出向元・出向先・出向者それぞれの責任や義務を明確にするために、記載すべき項目があります。
これらの項目が抜けていると、労務トラブル・契約の無効といったリスクにつながるので、必ず記載しましょう。この章では、実務に沿った主要項目をわかりやすく解説します。
出向契約書では、関係する3者の情報を具体的に記載し、契約の有効性と責任範囲を明らかにしなければいけません。
契約書に記載される当事者情報があいまいな場合、後の契約トラブル・責任の所在の不明確化につながるリスクがあります。
特に労務トラブルや賠償責任が発生した際、誰が担うべきか不明な状態では迅速に対応できません。このような事態を防ぐためにも、契約書の作成前に、出向元・出向先企業の間で記載内容を十分に確認しましょう。
出向契約では、出向の開始日・終了日を明示するのが基本です。業務状況や出向先の事情によっては期間を変更する可能性も少なくありません。そのため、延長・短縮の条件もあらかじめ定めておきましょう。
期間の取り決めがあいまいだと、出向終了のタイミングでトラブルが起きやすくなります。そうならないためにも、最大延長期間の上限・通知の期限(例:延長希望の1カ月前までに通知)を記載しておきましょう。
出向契約では、職務内容の齟齬・労務上のトラブルを未然に防ぐために、出向者の担当業務範囲・就業場所を明確にしなければなりません。
出向者に契約外の業務を任せてしまうと、労働契約違反とみなされる可能性があります。こうしたリスクを回避するためにも、業務範囲は契約書上で限定的かつ具体的に定義しましょう。
出向契約では、以下のように給与・保険・福利厚生の負担を明確に取り決めましょう。負担区分を定めなければ、未払いトラブルにつながる恐れがあります。
項目 | 基本的な取り扱い内容 | 補足説明・注意点 |
---|---|---|
給与の支払い主体 | 原則:出向元が支給 | 月額基本給・残業代・通勤費など。出向先が一部補助するケースもある |
社会保険の取り扱い | 出向元での加入を継続 | 長期出向の場合は、保険料負担の見直しが必要になる場合もある |
福利厚生制度 | 出向先の制度を利用することも可 | 利用条件や範囲(例:昼食補助、保養所など)は契約書に明記する |
賞与・評価反映 | 出向元の評価を基準とすることが多い | 出向先の評価を反映させる場合は、反映方法や比率も明記する |
これらがあいまいだと、後の清算や給与計算に齟齬が生じ、企業間・労働者間での信頼関係に影響を及ぼすリスクがあります。
出向契約で役割分担があいまいだと、指揮命令や評価で混乱を招きます。そのため、次のように評価・トラブル対応に関しては、双方がどこまで関与するかを具体的に取り決めておくことが大切です。
項目 | 出向元企業の役割 | 出向先企業の役割 |
---|---|---|
指揮命令 | 原則なし (契約により限定的な場合あり) | 日常業務の指示、勤怠管理などを担当 |
人事評価 | 評価・賞与・昇進判断の主導 (基準を保持) | 評価意見の提供 (反映方法を事前に定める) |
処遇・昇給 | 基本的に出向元が実施 | 特殊な処遇の希望があれば協議 |
就業規則の適用 | 出向元の規則を適用する場合は契約に明記 | 出向先の規則を適用する場合も契約に明記 |
懲戒・トラブル対応 | 原則として出向元が判断・処分を行う | トラブルの際に報告・連携する役割 |
特に評価の反映方法などは人事考課の公平性にも関わるため、契約書上で明記しておきましょう。
出向中の業務進捗や勤務態度を出向元が把握できるよう、定期的な報告ルールを設定しましょう。盛り込むべき内容は次のとおりです。
こうしたルールを明文化しておくことで、実務の円滑な遂行だけでなく、出向元・出向先間の信頼関係の維持にもつながります。
出向契約をする際には、契約後のトラブルを防ぐためにも、機密保持・競業避止などのルールを事前に取り決めておきましょう。特に以下の内容を明記しておくと安心です。
項目 | 内容の要点 |
---|---|
秘密保持義務 | ・対象:技術情報・顧客情報・営業ノウハウなど ・出向期間中および終了後も一定期間保持 ・違反時の責任や損害賠償の範囲を明記 |
競業避止義務 | ・出向終了後、一定期間(例:1年間)の転職、独立を制限 ・対象となる業種、企業、地域を具体的に指定 |
契約解除の条件 | ・解除事由:経営悪化、重大な契約違反、本人の希望など ・通知方法:書面で1カ月前までに通知と明記 |
これらは、契約書に記載がない場合に重大なトラブルに発展しやすい内容です。定義・制限範囲を明記しておきましょう。
契約を円滑に進めるために、出向契約書には補足的な条項を記載しておくことが大切です。以下の項目も明記しておきましょう。
項目 | 内容の要点 |
---|---|
準拠法・管轄裁判所の明示 | ・契約に適用する法律(例:日本法)を明記 ・紛争時の裁判所の所在地(例:東京地方裁判所)を明記 |
通知方法の指定 | ・連絡事項は書面または電子メールで通知 ・通知が効力を持つタイミング(例:発送日または到達日)を規定 |
契約の変更・追加手続き | ・契約内容の変更や追加は書面による双方の合意が必要である旨を明記 |
反社会的勢力の排除条項 | ・両当事者が暴力団等の反社会的勢力と無関係であることを保証 ・関与が発覚した場合の契約解除条項を設定 |
こうした一般条項は、法的なリスク回避・契約の実効性確保に直結する要素です。
特に反社会的勢力の排除条項は、多くの企業でコンプライアンス上必須とされています。形式的な記載でも省略せずに盛り込むようにしましょう。
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出向契約書の作成にはひな形を使用することで、記載漏れのリスクを減らし、効率的な文書作成が可能になります。以下は厚生労働省が提供する出向契約書のひな形(テンプレート)です。ダウンロードまたはWordなどにコピーしてご利用ください。
ただし、ひな形はあくまで「一般的な例」なので、自社の出向形態や就業規則にあわせた調整が必須です。
出向契約書
○○○○○株式会社(以下「甲」という。)と○○○○○株式会社(以下「乙」という。)とは、甲の労働者を乙に出向させるに際し、その取扱いについて下記のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。(定義)
第1条 本契約において、出向とは、甲の労働者を甲に在籍させたまま、乙の労働者として乙の業務に従事させることをいう。
2 本契約において、出向者とは、乙に出向する甲の労働者をいう。
(出向元及び出向先の名称及び所在地)
第2条 出向元たる甲と出向先たる乙の名称及び所在地は以下のとおりである。
[出向元(甲)]名 称 ○○○○株式会社
所在地 ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
[出向先(乙)]名 称 ○○○○株式会社
所在地 ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
(出向者及び出向期間)
第3条 出向者及び出向期間は以下のとおりとする。なお、出向期間の短縮又は延長をしようとする場合は、甲乙協議の上、書面による合意により決定し、甲は決定内容を出向者に通知するものとする。
[出 向 者]○○○○(昭和○○年○○月○○日生)
[出向期間]令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日(○年間)
(出向形態等)
第4条 出向者は、出向期間中、甲の労働者として甲に在籍したまま、乙の指揮命令下において乙の業務に従事する。
2 出向者は、出向期間中、甲において休職扱いとする。ただし、出向者の出向期間は甲の勤続年数に通算する。
(二重出向の禁止)
第5条 乙は、出向者を乙以外の会社へ出向させてはならない。
(出向者の業務等)
第6条 乙における出向者の勤務地、所属、役職及び業務内容は以下のとおりとする。なお、乙は、これらの事項を変更する場合は、甲の事前の書面又は電子メールによる承諾を得るものとする。
[勤 務 地]○○○○
[所 属]○○○○
[役 職]○○○○
[業務内容]○○○○
2 乙は、甲指定の方法に基づき、出向者の勤務状況その他甲指定の事項を翌月○日までに甲に報告するものとする。
(出向者の労働条件等)
第7条 出向者の労働時間、休憩、休日、休暇、服務規律、安全衛生、法定外災害補償、福利厚生並びに乙での配置転換及び出張については、乙の定めるところによるものとする(ただし、出向者が出向期間中に甲の福利厚生制度を利用することを妨げない。)。なお、年次有給休暇は甲の勤続年数に基づき付与されるが、労働基準法第39条第7項の規定に基づく使用者の年次有給休暇の時季指定義務は乙が負うものとし、その取扱いについては乙の定めるところによるものとする。
2 出向者の表彰及び懲戒については、乙の定めるところにより乙が行うものとする。また、諭旨解雇及び懲戒解雇については、甲の定めるところにより甲が行うものとする。
3 出向者の休職、退職及び普通解雇については、甲の定めるところによる。
4 出向者の賃金(時間外、休日及び深夜労働に対する割増賃金を含む。)については、甲の定めるところにより甲が出向者に直接支払うものとする。ただし、通勤費、交通費及び出張費については、乙の定めるところにより乙が出向者に直接支払うものとする。
5 乙は、出向時に、出向者に対して労働条件を明示するものとする。ただし、甲は、甲乙協議の上、乙に代わって出向者に対して労働条件の明示を行うことができる
(安全衛生の措置等)
第8条 出向者に対する安全衛生の措置(定期健康診断その他の労働安全衛生法上の措置を含む。)は、乙の負担により乙が実施する。
(社会保険等)
第9条 出向期間中の出向者の健康保険、厚生年金保険、介護保険及び雇用保険については、甲において被保険者資格を継続させ、その事業主負担分の保険料は甲が負担する。
2 労働者災害補償保険については、乙において加入し、その保険料は乙が負担する。
(出向先の給与負担金等)
第10条 本件出向に伴う給与負担金として、甲が第7条の定めに基づき出向者に支払った賃金(時間外、休日及び深夜労働に対する割増賃金を含む。)に相当する額を乙が全額負担する。。ただし、月の途中に出向が開始し、又は終了した場合の当該月の給与負担金については日割り計算とする。
2 乙は、甲に対して、前項に定める給与負担金を当月末日までに甲の指定する下記銀行口座に振り込むものとする。なお、振込手数料は乙の負担とする。
[銀 行 名]○○銀行
[支 店 名]○○支店
[口座種別]普通
[口座番号]○○○○○○○
[口座名義]○○○○株式会社
(復職)
第11条 出向者が次の各号に該当した場合、甲は当該出向者に対して復職を命じるものとする。
- 出向期間が終了したとき
- 出向の目的を達成し又は出向の目的が消滅したと甲が判断したとき
- 心身の故障等乙での労務提供が困難であると甲が判断したとき
- 甲の休職事由、普通解雇事由、懲戒事由に該当したと甲が判断したとき
- 出向期間中に甲を退職するとき
- 前号に掲げる事由のほか復職させるべき理由があると甲が判断したとき
(機密保持)
第12条 甲及び乙は、本契約期間中に知り得た相手方の業務上の情報その他の機密情報(次の各号に該当するものを除く。以下「機密情報等」という。)を、相手方の書面による事前の同意を得ることなく、第三者に提供、開示又は漏洩してはならず、本契約を履行する以外の目的に使用してはならない。
- 開示を受けた時点で既に保有している情報
- 開示を受けた時点で既に公知であった情報
- 開示の前後を問わずその責に帰すべき事由によらずに公知となった情報
- 開示の前後を問わず正当な権利を有する第三者より適法に入手した情報
- 開示された情報に基づかずに独自に開発した情報
2 前項の規定にかかわらず、甲及び乙は、裁判所又は行政機関の命令、要請等により要求される場合には、当該要求に対応するのに必要な範囲で機密情報等を開示することができる。ただし、甲又は乙は、当該要求を受けた旨を相手方に遅滞なく通知するものとする。
3 甲及び乙は、機密情報等の滅失、毀損又は漏洩のないようその責任において万全に機密情報等を保管するものとし、本契約が終了した場合において、相手方から機密情報等について返却又は破棄(電磁的記録の場合は削除)を指示されたときは、その指示に従い返却又は破棄(電磁的記録の場合は削除)をするものとする。
4 本条の規定は、本契約終了後もなお有効とする。
(個人情報)
第13条 甲及び乙は、出向者の個人情報の取扱いに関しては、個人情報の保護に関する法律、関連法令及びガイドラインを遵守し、当該個人情報の保護に努めるとともに、当該個人情報を出向者の雇用管理及び業務に必要な範囲についてのみ使用し、当該個人情報の滅失、毀損又は漏洩のないよう必要かつ適切な措置を講じるものとする。
(有効期間)
第14条 本契約の有効期間は、第3条の規定に定める出向期間が終了するまでとする。
(合意管轄)
第15条 本契約に関する一切の紛争については○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
(協議事項)
第16条 本契約の定めなき事項及び本契約の解釈適用につき疑義が生じたときは、甲乙協議の上誠意をもって解決にあたるものとする。
2 本契約を変更する場合は、甲乙協議の上、書面による合意による。
本契約締結の証として本書2通を作成して甲乙記名押印の上各自1通保有する。
令和○○年○○月○○日
甲 ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
○○○○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ ㊞
乙 ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
○○○○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ ㊞
引用元:厚生労働省|出向契約書の参考例(ダウンロード)
このひな形はあくまで一般的な在籍出向を想定したものです。特に、以下の項目については、個別の事情に合わせて必ず内容を精査・修正してください。
また厚生労働省では、在籍型出向に関して事例や必要な準備をまとめた「在籍型出向ハンドブック」を用意しています。こちらもあわせてご確認ください。
出向契約書を作成する際は形式だけでなく、法的整合性・実務上のリスクを十分に考慮しなければいけません。不備のある契約は無効になり、労務トラブル・法的責任を招くおそれがあるからです。
この章では、契約書の信頼性を高めるための注意点を解説します。
出向契約は、法律・社内規定との整合性を欠くと無効になるリスクがあります。そのため、以下のポイントを確認しておきましょう。
項目 | チェックポイント |
---|---|
法令遵守 | ・出向中の労働時間、休日、休憩などが労働基準法・労働契約法に適合しているか ・出向条件変更の際に、労働者の同意を取得しているか |
就業規則との整合性 | ・出向元・出向先の服務規律、懲戒処分、勤務条件と契約内容に矛盾がないか ・契約書に就業規則の適用対象が明記されているか |
整合性が取れない場合の対処 | ・社内規則と契約内容が食い違うときの対処方針があるか |
特にトラブルの原因になりやすいのが、両社の規則に食い違いがある場合です。契約前にダブルチェックし、リスクを事前に排除しましょう。
出向と派遣は法的な性質が異なるため、出向契約でも形式だけでなく「実態」が問われます。以下の措置を講じないと、実質的に労働者派遣と判断され、労働者派遣法違反となるおそれがあります。
項目 | 内容 | 契約書に記載すべきポイント |
---|---|---|
指揮命令権の所在 | 業務指示は誰が行うか | 出向先が業務指示を担うことを明記し、指揮命令系統を可視化 |
労働者の選定・更新判断 | 出向者の決定権限 | 出向元が人選や契約更新を行う旨を明確に記載 |
雇用管理の責任 | 雇用主としての管理業務 | 給与支払・社会保険加入・評価制度などを出向元が行うと記載 |
出向人数・期間の制限 | 実態が派遣にならないよう配慮 | 出向の人数・期間が業務目的に照らして適切であることを説明できるようにする |
形式だけでなく、実務運用でも出向と派遣の線引きを意識しましょう。定期的に運用状況を見直し、記録として残しておくと監査の際にも役立ちます。
出向は労働条件の変更を伴うため、労働者本人へのていねいな説明と書面による同意が必要です。特に勤務地や指揮命令系統の変更は、労働契約法第8条に基づき、事前に十分な説明が求められます。
労働者本人に伝えるべき内容は次のとおりです。
また、同意書には署名・押印・説明を受けた日付・担当者名の記載も残しておくとトラブル予防につながります。本人の理解と納得が得られない状態での出向は、違法リスクを高めるため注意です。
なお、就業規則や労働協約に出向を命じることができる旨の規定があり、その内容が合理的である場合は、必ずしも個別の包括的な同意までは必要ないと解釈されることもあります。しかし、労働条件の重要な変更点について本人の理解と納得を得ておくことは、後の紛争を予防する観点から極めて重要です。そのため、実務上は丁寧な説明の上で書面による同意を得ておくことが最も望ましい対応と言えるでしょう。
出向契約書だけではカバーしきれない実務的な取り決めを補完する手段として、「覚書(MOU)」の締結が推奨されます。覚書は両社間の合意事項を明文化するもので、以下のような内容を盛り込むのが一般的です。
項目 | 内容 | 契約書に記載すべきポイント |
---|---|---|
業務内容の詳細 | 出向者の業務範囲と役割 | 担当業務・職種・除外業務などを具体的に記載し、あいまいさを排除 |
責任分担と報告義務 | 報告ルールと対応手順 | 報告頻度(例:月1回)、報告方法(メールなど)、問題発生時の連絡フローを明文化 |
秘密保持の範囲と対応 | 情報保護と対応責任 | 対象情報(技術・顧客情報など)や保持期間、漏えい時の対応措置を明記 |
契約終了時の対応 | 出向終了・解約の処理 | 出向満了時・中途解約時の対応手順、通知時期、復帰条件などを記載 |
このように、業務運用面でのトラブルを未然に防ぐには、契約時点で具体的な運用条件を言語化して文書に残すことが大切です。
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出向契約書を取り交わさないまま人事異動を進めると、法的リスク・労務管理上の課題が生じかねません。特に責任の所在や労働条件が不明確な状態では、企業・労働者双方に深刻なトラブルを引き起こす恐れがあります。
本章では、出向契約を締結しないことで発生し得るおもなリスクについて解説します。
出向の際に新たな就業条件を設ける場合は、常時10人以上の労働者に適用するなら、就業規則に記載と所轄労基署に届出が必要です。(参照:労働基準法第89条)
これを怠ると、以下のようなリスクが生じます。
リスク | 内容・影響 |
---|---|
労働条件の法的効力が否定される | 出向期間、勤務時間、評価制度などが無効と判断される可能性がある |
労働基準監督署による是正・罰則 | 労働基準法違反として調査・是正指導や罰則の対象になり、30万円以下の罰金が科される可能性がある |
労働者からの申立・訴訟リスク | 契約不備が不当労働行為と見なされ、損害賠償請求や評判リスクにも波及するおそれがある |
評価制度や賞与の取り扱いが不明確だと、労使間の認識にズレが生じ、法的責任につながるおそれがあるので注意が必要です。
出向中に労働災害や事故が発生した場合、対応を誤ると企業間・労働者との間で深刻なトラブルに発展する可能性があります。特に責任の所在があいまいなままだと、損害賠償や保険給付対応の際に混乱を招きます。
おもな注意点は以下のとおりです。
項目 | 内容・対策 |
---|---|
労災保険の適用主体の明確化 | 原則として出向元が適用主体。ただし、出向先が労働条件を実質管理している場合は判断が複雑化する。 |
報告・対応フローの事前設定 | 事故時の報告経路・連絡先・記録手順・再発防止策を記載する。 |
契約書や覚書での責任分担の明記 | 責任の所在と対応範囲を契約書上で明確に記載する。 |
リスクを最小限に抑えるには、法的責任の分担を事前に擦り合わせ、文書で明記しておくことが大切です。
出向に伴い、給与・社会保険の取り扱いが不明確なままだと、労使間・企業間の双方で問題が起こりやすくなります。事前に以下の内容を取り決めておくことで、トラブルを未然に防げるでしょう。
項目 | 内容・留意点 |
---|---|
給与の支払い主体 | ・出向元が支払いを継続するケースが多い ・役職手当などの一部を出向先が負担する場合もある ・負担割合を明記(全額負担/一部補助など) |
社会保険の加入主体と手続き | ・原則として出向元の社会保険を継続 ・転籍出向時は出向先で新たに保険加入の手続きが必要 |
福利厚生や通勤費の取り扱い | ・適用する福利厚生制度(出向元・出向先)を明記 ・通勤手当や福利厚生施設の利用条件も契約書に記載 |
これらを明確にすることで、未払賃金・保険未加入などの法的リスクを回避できます。
出向先で業務を行う中で知的財産を生み出した場合、その権利の帰属があいまいだと企業間の紛争に発展するリスクがあります。また、出向者が出向元・出向先双方の機密情報に触れるため、秘密保持に関する取り決めも必要です。
以下の内容を契約書や覚書に明記しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
知的財産権の帰属先 | 出向中に発生した成果物(著作権・特許など)の権利帰属先を明記 |
業務外の情報漏えい対策 | 個人端末・USBメモリの持ち込み制限、社外持ち出しルール、アクセス権管理の明確化 |
退職・出向終了時の対応 | 情報の削除・返却、誓約書提出、業務データの完全消去、ログ記録の保存などの運用ルール |
情報漏えい・知的財産に関するトラブルを防ぐためにも、これらを明確にしておくことが重要です。
原則として出向には契約書が必要です。特に在籍出向では、雇用関係の継続・社会保険の取り扱いが複雑になります。
これらの項目を契約書に盛り込むことで、法的リスクやトラブルを回避できるでしょう。
出向契約とは、出向元の企業が自社の従業員を一定期間、他の企業(出向先)で働かせるための契約です。
雇用主との関係を保ったまま出向先で業務を行う「在籍出向」が多く、業務内容や期間、給与などを詳細に定めた契約を行う必要があります。
出向の際に必要とされる書類はおもに以下の3点です。
これらにより企業間・労働者との間で適正な合意と手続きが成立します。
出向契約は、出向元との雇用関係を維持しながら出向先で勤務する制度であり、労働者は出向元の社員のままです。
一方、派遣契約では派遣元が雇用主であり、指揮命令系統や法令上の規定が異なります。契約形態の違いにより、適用法令・労働保護の範囲も変わります。
業務上の必要性がなく、労働者に著しい不利益を与える場合は、出向命令が違法と判断される可能性があります。
たとえば、家庭事情を無視した遠方への出向や、報復的・懲罰的な出向は裁判で否定されることがあります。出向命令を行う際は合理的な理由・配慮が必要です。
出向契約は、労務トラブルを防ぐために欠かせないものです。特に在籍出向では、雇用関係の継続や責任の分担、給与・社会保険の負担区分など、細かな取り決めが必要です。契約内容を明確にすることで、関係者全員が安心して業務に集中できる環境を整えられます。
出向契約は紙面でのやり取りだと三者間のやり取りが煩雑になりやすく、ミスや抜け漏れのリスクも高まります。そのため、契約手続きを簡潔かつ迅速に進められる電子契約が注目されています。
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