会社の経営が立ち行かなくなった場合、資金繰りに行き詰って支払いや借金の返済ができなくなる事態は十分想定できます。そのような場合に会社が取ることのできる方法の一つとして、破産申立てがあります。
ただ、実際に企業が破産するとはどのようなことなのか、詳しくはわからないという方は多いのではないでしょうか。また、もし取引先が破産した場合、自社にどのような影響が出るのか不安を感じる方も多いでしょう。
ここでは、破産の意義や手続きの流れなどについて解説します。ぜひ頭に入れておいてください。
目次
破産とは何か?
破産とは、債務超過の状態にある債務者や債務不履行になっている債務者である法人の財産を公平に清算するための手続きを指し、債務者の救済手段の一つです。いったん債務などを整理して、再生のチャンスを与えることも目的となっています。
破産法に基づいた手続き
法人が業績の悪化などで債務を期日までに履行できなくなることは十分起こりえます。この場合、債権者が自らの債権を回収するために強い手段に出る可能性はあるでしょう。また、複数の債務を抱えている場合、債権の取り立てにより望まないかたちで財産が清算されてしまうリスクが高まります。
このように、債権者と弱い立場にある債務者との間の関係を適切に調整するため、破産法が存在しています。
実際、破産法には第1条に以下のように規定されています。
第一条この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075/20230614_505AC0000000053
条文によれば、支払不能もしくは債務超過の状況にある債務者が対象になっていることがわかります。
支払不能と債務超過の違い
支払不能とは、簡単に言うと弁済の義務がある債務があるけれども返済できない状態になっていることを指します。
一方、債務超過は負債が資産よりも多くなっている状態で、債務者が法人の場合は破産開始手続開始の一つの要件となります。
破産と倒産の違い
会社が立ち行かなくなる状態で、「倒産」という言葉は広く知られているでしょう。倒産とは資金繰りの悪化などにより債務不履行に陥ってしまって、事業をたたまざるを得なくなる状況を指します。
会社を倒産させる手続きにはいくつか種類があり、民事再生や会社更生、特別清算などが挙げられます。
なお、会社破産も倒産の手続きの一つと考えてかまいません。
破産と民事再生の違い
会社を倒産させる手続きの一つである民事再生とは、債務者の手掛けている事業の再生をベースにして進めていく手続きです。
一方、破産は事業の継続を断念し、会社の財産を清算していく手続きです。
つまり、事業が今後も継続されるかどうかが大きな違いとなります。民事再生を選択すれば、現在手掛けている事業を続けながら、法人の再生を図ることができます。これ以上事業を継続したいか、継続して収益が見込めるかなどをベースにして、破産手続きと民事再生手続きのどちらを取るかを判断することになります。
破産手続きの流れについて解説
もし会社を破産せざるを得なくなった場合、どのような手続きを踏むことになるのでしょうか。破産管財人が手続きを全体的にマネジメントするかたちになるということはまず頭に入れておきましょう。
破産管財人とは?
破産法によれば、債務者の財産を債権者に対し公平に清算することが目標とされています。
債権者が複数いるのであれば、各債権者が少しでも自身の債権を多く回収しようと動くでしょうし、一方、債務者の中には財産を隠そうとする人がいるかもしれません。そこで大きな役割を担うのが破産管財人です。破産管財人は第三者の立場で破産手続きを適切かつ客観的に進めていきます。
この破産管財人は、当事者と利害関係のない弁護士の中から裁判所により選任されます。
管理処分
破産手続きの中では、債務者を破産者、破産者の財産で破産管財人によって管理されるものを破産財団といいます。まず破産手続きが開始されると、破産者の有する財産は破産管財人が管理するかたちになります。これ以降、破産者は自分の財産であっても自由に処分できなくなります。また、破産管財人は適切な方法で財産を換価処分して、債権者への配当原資をできるだけ増やすように努めます。
一方、債権者は自身の債権を回収するためには、どのような債権を有しているかを裁判所に申告することになります。この情報をもとにして、破産管財人は債権の総額を計算します。計算された金額をベースにして、各債権者にいくら配当するかを決めていきます。
廃止
債権者に対する配当がつつがなく完了すれば、破産手続きは完結し、会社の清算は終了となります。
しかし中には、破産管財人がいろいろと努力しても、配当に対して十分な財団を形成できないケースが出てきます。
具体的には、処分する財産がない状況や破産手続き費用すら支弁できないような状況が挙げられます。この場合、財産を清算することなく、破産手続きは廃止扱いになります。廃止になった場合、債権者への配当もできないことになります。
取引先が破産した場合の対策
反対に、取引先が破産手続きを始めるケースも想定できます。
この場合、会社としてみれば売掛金などの債権が回収できずに大きな損失を被る恐れも出てきます。取引先が万が一破産した場合の対応策も頭に入れておきましょう。
破産債権を行使する
取引先が破産した場合、破産債権の行使を検討することが大切です。
破産債権とは、破産者に対して手続き前に生じた財産請求権のことで、財団債権に該当しないものを指します。たとえば、商品を納品して本来であれば代金請求できるはずが支払いを受けられず回収できなくなった売掛金債権が挙げられます。財団債権とは、破産手続きを経ずに破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことです。租税に関する債権や手続き開始後の賃料債権などが該当します。
破産債権を抱えているのであれば、行使を検討しましょう。ただし、破産手続き開始後は破産手続きによらないと行使できないと決められていますので、裁判所で手続きをすることが必要です。具体的には、破産債権届出書に債権額やその原因など必要事項を記入して届け出ます。この届出期間も裁判所によって決められているので、期間内に提出することも忘れないようにしてください。
担保の行使
場合によっては債権に対して、何かしらの担保をつけていることもあるでしょう。このような場合、破産手続きとは関係なく担保権を行使することができ、これを法律用語では別除権といいます。たとえば、抵当権や質権などがあたります。
別除権を有している場合は、破産手続きによることなく、個別に権利を行使することが可能となります。
破産管財人に協力する
何度か紹介したように、破産手続きは破産管財人の管理の下で実施されます。そのため、破産者の財産に関して何かしらの情報を有しているのであれば、破産管財人に積極的に情報提供することが大切です。そうすれば、破産管財人がそれまで認知していなかった財産を発見することにつながり、債権者もより多くの債権を回収できる可能性が高まります。
まとめ
会社の経営状況が悪化した場合、何らかのかたちで会社の処分を進めなければならないケースが出てきます。その際、ここで紹介した破産手続きを進めるのは一つの方法です。
反対に、取引先が破産手続きを始めた場合は、少しでも債権を回収できるようにいろいろな対処法を検討することが大切です。ここでは対策の一例を紹介しましたが、何が有効かはケースバイケースですので、弁護士など専門家に相談しながら、適切に対処するように努めましょう。