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グレーゾーン解消制度というものを聞いたことがあるでしょうか。
新しく事業を営なもうとしているとき、その事業について法規制が適用されるかどうかがはっきりとせず、新しい事業に踏み出せない、ということがあると思います。せっかく新しい事業のアイデアがあるのに、規制が適用されるかわからないことが原因でそれを実現できないことは、産業の発達を阻害しているといえます。
グレーゾーン解消制度は、このような規制の適用の有無がはっきりとしない、いわゆる規制の「グレーゾーン」を解消し、安心して新しい事業を営むことができるようにする制度です。
本記事では、グレーゾーン解消制度についてそのメリットや具体的な手続きについて解説します。
グレーゾーン解消制度とは、産業競争力強化法に基づく制度で、規制の適用範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に対して規制が適用されるかどうかを確認することができるものです。
グレーゾーン解消制度を利用する場合、以下の流れで進みます。
まず、新しい事業を行おうとしている事業者は、その事業に対する規制の適⽤の有無について、主務⼤⾂に対して照会書を提出します。
これに対して、照会を受けた主務⼤⾂は、事業者の具体的な事業計画に即して、規制の適⽤の有無を判断し、事業者に回答します。
この回答は、原則として1ヶ⽉以内に回答するものとされ、1ヶ⽉以内に回答が出来ない場合には、1ヶ⽉毎にその理由を事業者に通知することとなっています。
事業者への回答後、主務⼤⾂は、回答の概要を公表します。また、事業者の同意を前提として照会書も公表されます。
照会書の様式は以下のページからダウンロードすることができます。
【参考】グレーゾーン解消制度、新事業特例制度及び規制のサンドボックス制度の様式
では、実際にグレーゾーン解消制度を活用した事例をみていきましょう。
近年のペーパーレス化の流れの一環で、契約書を電子で締結する電子契約サービスが登場し、その利用が増えています。
電子契約サービスは、契約書の電子データに電子署名を施すことで契約を電子的に締結することができるものです。
しかし、電子署名として信頼性があり法的に高い有効性を持つためには、電子署名法上の「電子署名」に該当することが必要です。
電子署名法上の「電子署名」に該当するかどうかは、電子署名に関する技術的な要素により判断されるため、一概にこれに該当するといえるかは明確ではありません。
そこで、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社は、電子契約サービスである電子印鑑GMOサインについて、グレーゾーン解消制度を用いた照会をしました。これにより、デジタル庁・法務省・財務省から、電子印鑑GMOサインの立会人型・当事者型署名が記名押印に代わる有効な電子署名として適法性を有することが確認されました。
以下は、デジタル庁・法務省・財務省からの回答の抜粋です。
GMOサインを用いた電子署名は、電子署名法第2条第1項に定める電子署名に該当し、同規定を引用する契約事務取扱規則第28条第3項に基づき、国の契約書が電磁的記録で作成されている場合の記名押印に代わるものとして、利用可能と考える。
出典:照会書
GMOサインを用いて、契約書等の電子データをクラウドサーバにアップロードし、それぞれの利用者がログインして双方の契約締結業務を実施する仕組みが、契約事務取扱規則第28条第2項に規定する方法による「電磁的記録の作成」に該当し、契約書、請書その他これに準ずる書面、検査調書、見積書等の作成に代わる電磁的記録の作成として、利用可能であると考える。
【事業内容】
睡眠を改善したい利⽤者に対して、ヒアリングや簡易測定を通して睡眠環境の分析・可視化を⾏い、その分析結果を踏まえた睡眠環境改善アドバイスや商品提案といった睡眠環境に関する総合的なコンサルティングサービスを提供。
【照会内容】
本サービスが医師法第17条において、医師のみに認められている「医業」に該当するか否か。
【照会結果】
本サービスは医師法第17条において、医師のみに認められている「医業」に該当しない。
【出典】睡眠環境の総合コンサルティングを行うサービスの実施に係る医師法、医薬品医療機器等法の取り扱いが明確になりました|経済産業省
【事業内容】
空き家所有者のうち登録所有者と受贈希望者をマッチングするサービスを提供するプラットフォームを運営する。
【照会内容】
本事業(登録希望者と受贈希望者の贈与契約の仲介)を行うことが、宅地建物取引業法第2条第2号に規定する「宅地建物取引業」に該当するか否か。
【照会結果】
本事業(登録希望者と受贈希望者の贈与契約の仲介)を行うことは、宅地建物取引業法第2条第2号に規定する「宅地建物取引業」に該当しない。
【出典】新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表
【事業内容】
従業員に対する賃金の支払いを使用者に代わって行うサービス
【照会内容】
本サービスを利用して行う、労働者への賃金支払方法が、労働基準法第24条第1項本文が定める賃金直接払いの原則に違反しないこと及び同条第2項本文が定める賃金毎月一回以上一定期日払いの原則に違反しないものであることを確認したい。
【照会結果】
本サービスは、労働基準法第24条に違反するものではない。
グレーゾーン解消制度と類似の制度として以下のものがあります。
新事業特例制度とは、新しい事業にチャレンジする事業者が、その事業に規制が適用されることを前提に、その特例措置を提案し、安全性等の確保を条件として企業単位で規制の特例措置の適用を認める制度です。
特例措置により実施された事業により効果が実証されれば、この部分的にしか適用されていなかった特例措置を一般に適用して、規制を緩和し、新しい事業が推進されることになります。
規制のサンドボックス制度とは、IoT、ブロックチェーン、ロボット等の新たな技術の実用化や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネスモデルの実施が、現行規制との関係で困難である場合に、新しい技術やビジネスモデルの社会実装に向け、事業者の申請に基づき、規制官庁の認定を受けた実証を行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制の見直しに繋げていく制度です。
この制度は、期間や参加者を限定すること等により、既存の規制の適用を受けることなく、新しい技術等の実証を行うことができる環境を整えることで、迅速な実証を可能とするとともに、実証で得られた情報・資料を活用できるようにして、規制改革を推進することができる制度です。
このように、グレーゾーン解消制度では、ある事業が法律上の規制や保護の対象となるかを確認することで、安心して事業を行うことができるのです。
もし新しい事業を行いたいが規制が気になって踏み出せないという方はグレーゾーン解消制度を利用して不安を解消しましょう。
また、グレーゾーン解消制度と類似の制度として、新事業特例制度や規制のサンドボックス制度もあります。規制を受けることがわかっている事業については、これらの制度を活用して規制を緩和させる方針も検討しましょう。
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