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旅先で機械に話しかけるとその場ですぐに翻訳し現地の言葉の音声で返してくれる商品の広告を、目にすることが増えたかもしれません。IT技術の発達によって、現在では気軽にAIを利用したサービスを受けられるようになりました。
AIによる翻訳サービスやChatGPTを業務に導入すれば、従来人間が行うことで発生していたコストを大幅にカットでき、業務効率の飛躍的向上が期待できると考えられています。しかし、それらサービスを業務利用する際にはリスクがあるので注意が必要です。果たして私たちは苦労した外国語の勉強から解放されるのでしょうか?
今回は、翻訳サービスやChatGPTを業務利用する際に注意すべきポイントについて解説します。
ChatGPTの利用は、情報の精度や機密情報漏洩の危険性といった点でのリスクがございます。業務で利用する場合は各社のルールにのっとり、安全性を見極めたうえで適切に利用しましょう。
世界の人口は約80億人、言語は6000以上あるといわれています。日本語を母語とする人の数は、日本の人口とほぼ同じである約1億2,500万人(世界第8位)で、日本で生活する限り日本語だけできれば何ら問題ありませんが、ビジネスにおいては英語をはじめとした外国語の利用場面が増える一方です。
そこで活用したいのが翻訳サービスです。現在、インターネットなどを通じて利用できる翻訳サービスは、大まかに分けると次の3つに分類できます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについてご紹介します。
自動翻訳とは、文字通り基本的には人間が関与することなくAIなどの技術を利用することで行う翻訳のことです。機械翻訳とも呼ばれます。
AIが翻訳作業を行うため、長文でも短時間で翻訳が完了することが大きなメリットです。あっという間に翻訳が終わります。自動翻訳には有料サービスだけでなく無料で利用できるものもあるため、気軽に利用できます。
しかし、無料サービスでは翻訳できる文章量などに制限があることも多く、翻訳の精度にも不安が残るのは事実です。なにより入力した文章に記載された情報の流出リスクも考えなければいけません。
実際、翻訳サービスの利用規約を読むと、私たちが入力した内容はサービスのサーバーに送られ、保管されることが書いてあります。これによってサービスの翻訳精度が向上する恩恵も受けられますが、企業秘密や個人情報を翻訳ツールに入れてしまうことは社外に情報を開示してしまうことにもなるのです。
著名な自動翻訳サービスDeepLのプライバシーポリシーには「個人データが含まれるテキストを翻訳にかけるのは規約違反」「有料版で条件を満たせば可能」という記載があり、利用者に注意を促しています。
3. テキストと訳文(無料版のDeepL翻訳)
当社の翻訳サービスをご利用の際は、当社のサーバーに送信したいと思うテキストのみ入力してください。訳文を提供し、サービスをご利用いただくには、サーバーへのテキスト送信が不可欠です。当社では、ニューラルネットワークと翻訳アルゴリズムのトレーニングおよび性能向上を目的として、入力済みのテキストおよびアップロード済みの文書ファイルとそれぞれの訳文を一定期間保存します。訳文に加えられた修正内容も一定期間保存します。訳文に加えられた修正内容は、精度の検証を目的として当社のサーバーに転送されます。また必要に応じて、お客様による修正内容を反映させて訳文をアップデートします。用語集に用語ペアを入力すると、入力データはローカルに保存され、当社のサーバーには転送されません。そのため、別のブラウザやデバイスでは、用語集に登録した用語ペアを使用できません。
なお、当社の利用規約には、個人データの類が含まれるテキストはDeepL翻訳で使用してはいけない旨が記載されています。個人データが含まれるテキストは、DeepL Proで一定の条件を満たす場合に限り翻訳していただけます。
引用元:DeepLの個人情報保護方針
もし自動翻訳サービスを業務に導入するのであれば、利用規約を読み込んで社内の秘密管理ルールを満たすかの確認を行うとともに、セキュリティ対策のされた有料サービスを選ぶとよいでしょう。
翻訳アプリとは、翻訳に供することを目的として開発されたアプリケーションのことをいいます。スマホ向けの翻訳アプリは、無料でダウンロード・利用できることが多く、文字入力だけでなく音声入力した情報の翻訳にも対応しているなど機能が充実している点が大きな特徴です。
一方、デメリットとして、どうしても翻訳の精度が低く意味が通じない翻訳結果を出力するケースがある点があげられます。
こちらは上記2タイプとは異なり、人間が主体となって行う翻訳です。翻訳会社が依頼を受け、文書などの翻訳を人間が主体となって行うことが特徴です。
人間が翻訳作業を行うため、AIやアプリよりも精度の高い翻訳が期待できるというメリットがあります。また出版された本、経済・金融、法律・特許、研究、エンタメ、スポーツなど、業界ごとに異なる文章、専門性の高い文章でも翻訳してもらえるという大きなメリットがあります。
ただし、サービスの利用には料金がかかりコストが高くなる傾向があります。また、翻訳完了までに一定の時間がかかる点もデメリットといえるでしょう。
翻訳サービスを利用する際には、どのタイプを選択するにしても上記のようにそれぞれメリット・デメリットがあります。とくに、アプリやAIを使った自動翻訳を利用する場合には、次のようなリスクが存在することを念頭においておく必要があります。
自動翻訳サービスを利用するという性質上、翻訳元となる情報を外部に送信することになります。しかし、企業内の情報を外部に送信するということは、常に「情報の漏洩」というリスクと隣り合わせであることを理解しておかなければいけません。
一般的な情報であれば影響は少ないかもしれませんが、送信する情報が研究・特許、営業秘密など業務上の機密情報に該当する場合、情報の漏洩リスクは企業にとって重大な損失を生む可能性があります。
リスクマネジメントの観点から考えた場合、AIを利用した自動翻訳サービスを業務利用することは極力避けたほうがよいでしょう。繰り返しになりますが利用の際は、利用規約を十分に読み込み、業務利用に耐えられるものであるかを確認すべきです。さらに企業秘密に関する語句をマスキングする、別のワードに置き換えるなど慎重な利用が求められます。
近年のAIの急速な進歩によって、自動翻訳による成果物のクオリティは飛躍的に高まったとされています。しかし、完全に信用することは禁物です。たとえば、自動翻訳では慣用句(イディオム)として特別な意味を持つ文章を、直訳してしまうようなことが現段階では実際に起こります。
翻訳のプロセスに人間が関与していない以上、不自然な翻訳となってしまうリスクはゼロではありません。場合によっては、意図する内容とまったく異なる翻訳となる可能性もあります。
自動翻訳サービスを利用する場合には、人間によるチェックを最後に行いましょう。
どのサービスを利用する場合であっても社内の情報を外部に持ち出す点は同じです。他方、活用することで業務が大幅に効率化するのも事実です。
近年では、高度な秘密管理に耐えられるサービス、業界用語に強いサービス、英語だけでなく多くの言語に対応するサービスも登場しています。コストと相談しながら、情報漏洩や誤訳などのリスクを最低限に抑えられる翻訳サービスの導入を検討しましょう。
「ChatGPT」とは、ユーザーからの質問に対してAI(人工知能)が最適と判断した回答を与えくれる対話型AIチャットサービスです。2022年11月にリリースされたChatGPTは人間と会話するような感覚で利用でき、的確な回答を得られることが大きな話題となり世界中で一気に莫大なユーザーを獲得しました。
ChatGPTは従来のAIとは異なり、まったくオリジナルのコンテンツを創造できる生成AIの一種です。従来のAIは、あらかじめ人間によって与えられたデータの中から最適なものを抽出する程度のことしかできませんでした。これに対して生成AIでは、人間から与えられた情報だけでなく、AIが自ら学習を重ねることによってオリジナルコンテンツを創造できる点が大きな特徴です。
なお、ChatGPTと同じようにユーザーからの質問に回答してくれるプログラムとして「チャットボット」があります。従来のチャットボットはAI非搭載だったため、ユーザーからの質問に対してまったく的外れな回答をすることがありました。しかし、現在ではAIを利用した「AIチャットボット」も登場しており、注目を集めています。近年では、カスタマーサービスなどの負担軽減のためにチャットボットを導入する企業が増えています。
ChatGPTは非常に高機能であるため、さまざまな作業が可能です。その中で主だったものを挙げてみましょう。
あらかじめプログラムされた回答ではなく、質問された内容に応じて自然な回答を生成できます。
利用者が希望する内容を入力することで、プログラミング言語のコードを出力できます。
税金の計算をさせたり、計算問題について解答させたりすることが可能です。マイクロソフトオフィスのアドインを使えば、エクセルでもChatGPTを利用し関数を入力することなどが可能です。
日本語から英語など、他言語への翻訳が可能です。
主人公や大まかな内容を指示することで、簡単な小説を書くことが可能です。
今回ご紹介したのはChatGPTでできることの一部にすぎません。ChatGPTは日々進化を続けています。
このように非常に便利なChatGPTではありますが、これを業務で利用しようとする場合には注意が必要になります。それは次の理由によるものです。
ChatGPTはしばしば誤った回答をすることが知られています。まだまだ発展途上のサービスであり、日常では活用できるシーンがあったとしても業務に耐えられるかというと難しい状況です。
ChatGPTはAI自身が学習した内容から回答します。AIはインターネット上の情報などからも学習するため、著作権やプライバシーの侵害など法律的に問題のある回答をする可能性があります。実際、利用を一時禁止した国もあり、世界中を巻き込んだ議論は今後も続きそうです。
ChatGPTに入力した情報は、基本的にAIによって学習されてしまうため、業務上利用する際に入力した情報が他者の回答に使われてしまう恐れが考えられます。その情報が機密性の高いものであればあるほど、漏洩した場合に大きなリスクを負うことになります。
上記のような問題点があるため、ChatGPTを業務で利用する際は社内で入念な検討を重ねるべきでしょう。
IT技術の発達によって、現在ではAIを利用したサービスを気軽に利用できるようになりました。自動翻訳サービスにも同じことがいえ、精度が大幅に上がり便利になりました。AIを利用すれば、従来の業務効率を飛躍的に向上できることは明白で、これからの技術の発展にも期待が高まります。
一方、サービスの品質は発展途上だといわざるを得ません。無料サービスは、秘密管理や個人情報の取り扱いの面において課題があり、業務で使うことは避けたほうがよいケースもあるでしょう。また、有料サービスであっても利用規約をよく読み、テキスト入力時の際もマスキングなどを行うなど、情報漏洩が起こらないような配慮が必要です。
2022年の終わりに登場したChatGPT、そして2023年には最新版のGPT-4がリリースされました。世界中で盛り上がりを見せていますが、AIサービスはまだまだ始まったばかりともいえます。精度もセキュリティも開発途上であり、実際の業務での利用にはまだ壁があるのが現実です。
業務においてAIサービスを活用する際には、翻訳サービス利用の際の注意と同様、リスクを十分に認識したうえで慎重に利用しましょう。
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