捨印とは?安易に押してしまうと重大なリスクを被ることも!
ビジネスの世界では、契約書を含め各種文書を作成することは日常的業務の一部となっています。それら文書を作成する際、捨印を押すことを求められることがあります。
捨印を押していれば、後になって文書の訂正をする必要が出たときにすぐに修正することができ便利であるため、ビジネスの世界においては往々にして捨印が利用されてきました。しかし、安易に捨印を押すことは厳に慎まなければいけません。捨印を押すことには、潜在的に非常に大きなリスクを負うことになるからです。
今回は、この捨印について解説いたします。
捨印とは?
まずは読み方から確認しましょう。「捨印」と書いて「すていん」と読みます。
捨印とは、契約書や役所への届出書など各種文書の余白部分にあらかじめ押印しておく訂正用のハンコのことを言います。作成した文書内容に問題が無ければ、この捨印は利用されることがありません。しかし、文書中に訂正すべきミスなどが見つかった場合には、この捨印を利用することで法律上有効に文書を訂正することができるのです。
一般的には、銀行でのローン契約書や役所への届出書、各種契約書などを作成する際に捨印を求められることが多いようです。ハンコ文化である日本では、昔から多用されている文書の訂正方法といえるでしょう。
捨印が求められる理由
人間が文書を作成する以上、どうしてもミスはつきものです。いったん完璧に完成させたと思っていた文書でも、後になって訂正すべき間違いが見つかることは珍しいことではありません。当然、その部分は訂正しなければいけません。文書を作成してからすぐに間違いが見つかれば、話は簡単です。間違っている個所を訂正し、プリントアウトし直せば問題は解決です。しかし、既に相手方と署名・押印などの取り交わしが完了しているようなケースでは問題が複雑になります。
文書を訂正する場合、訂正する箇所を二重線で消し、文書の作成にかかわった当事者すべてが「訂正印」を押すことが原則です。訂正が必要な個所が複数ある場合には、その数だけ同様のプロセスを繰り返す必要があります。すでに取り交わしまで完了してしまっている文書を訂正する場合には、わざわざ相手方から訂正印を貰う必要があるのです。
このようなプロセスを経て訂正しなければならない場合には、手間暇もかかり相手方にも迷惑をかけることになります。実際に相手方とやり取りをする担当者としては、嫌な思いをすることになるでしょう。そのような場合に備えて予め捨印を押印してもらっておけば、簡易・迅速に訂正ができることになり担当者にとっては非常に便利です。主として、このような理由からハンコ文化のある日本において捨印は多用されてきたのです。
捨印による文書の訂正の仕方とは?
文書に捨印が押されている場合には、簡単に内容を訂正することができます。捨印で訂正できる文字数や内容などに関しては、一切の制限がありません。捨印による訂正方法は、主として以下のようなプロセスによって行います。
- 訂正したい個所を二重線で消す
- その近辺に正しい内容の文言を記入する
- 捨印の近辺に修正内容(例「〇文字削除△文字加入」)を記入する
捨印が押されている文書は、このように簡単に訂正が可能となります。なお、訂正した箇所は二重線などで消した後も判読できる状態にしておくことが必要です。また捨印として押すハンコは、契約書の署名(または記名)に際して押印するものと同一のハンコを利用します。
原則的な訂正方法とは?
文書の原則的な訂正方法として、「直接法」というものがあります。直接法による文書の訂正の仕方は、主として以下のようなプロセスとなります。
- 訂正したい個所を二重線で消す
- その近辺に正しい内容の文言を記入する
- 修正箇所の横にある余白に修正内容(例「〇文字削除△文字加入」)を記入する
- 修正内容に重なるように文書の作成当事者すべてが押印する
この場合も、間違った箇所が訂正後も判読できる状態にしておくことが必要です。訂正印として押印するハンコは、捨印の場合と同様に署名(記名)の際に使用するのと同一のものを押します。この訂正方法であれば、訂正するたびに文書の作成に関与している当事者の押印が必要となるため、自分の知らない間に文書内容を勝手に改変されてしまう恐れを避けることができます。
文書を訂正するたびに当事者全員の訂正印が必要となるというデメリットはありますが、勝手に文書内容を改変されてしまうリスクが少ないというメリットがあります。
捨印のメリット・デメリット
メリット
文書内に訂正すべき箇所が見つかった場合、上記の直接訂正法ではいちいち訂正印を貰って回る必要があります。しかし、文書の余白に予め捨印が押してあれば簡易・迅速に訂正することができるという点が捨印のメリットです。
デメリット
捨印を押した場合、相手方によっては書類内容を改ざんされるリスクがあるという点が捨印の大きなデメリットです。
捨印によって訂正が許される範囲には、原則として制限がありません。単なる住所や氏名の書き間違い程度の訂正であればリスクは低いかもしれません。しかし、契約内容の根本にかかわるような重要事項に関しても捨印を利用することで変更が可能なのです。
例えば100万円で売買するという契約書があるとした場合、捨印を悪用すれば売買代金を1000万円と改ざんするなど悪用されるリスクがあるのです。
捨印を押す法的な義務はない
このようにメリット・デメリットのある捨印ですが、法律的にみた場合、捨印を押印すべき義務はありません。
上述のように捨印には簡易・迅速に訂正できるというメリットがありますが、実際にそのメリットを受けるのは、契約書を預かり最終的に処理をする側だけなのです。つまり、捨印を押させられる側としては、ほとんどメリットはないということです。
法律上、捨印を押す義務はないため、捨印を断ることには何ら問題はないのです。
捨印を押した場合にはリスクを覚悟しなくてはいけない
上記のとおり、捨印によって修正できる内容には制限がありません。このため、最悪のケースとしては、契約内容をまったく違ったものにされる可能性まで考えておかなければいけません。有利な条件で契約できたと思ったところ、実際には捨印を悪用され非常に不利な条件の契約となるようなリスクも考えられます。
捨印を押すということは、このような非常に重大なリスクを自ら受け入れることになるということを忘れてはいけません。
電子契約には捨印という概念がない
捨印とは、これまで解説してきたように紙媒体の書類を作成する際に問題となるものです。電子ファイルで契約などの文書を作成する際には、紙媒体で必要だった署名や押印という手続きが必要ありませんが、代わりに電子署名などを施すことで、その内容が真正なものであることを証明することになりますが、「捨印を押す」という行為がそもそも発生しないため、捨印から発生する諸問題を回避することが可能となります。
日本ではDX化が叫ばれ、民間部門ではもちろんのこと行政でもデジタル化が推進されています。事実、近年は法改正が多くなされ、これまで紙媒体による書面でしか認められなかった各種の書面を電子的方法で作成することなどが認められるようになっています。これから、契約書を含めた各種文書は電子化がますます進むことが予想されますが、「脱ハンコ化」が進んでいく日本社会の中で、捨印を利用するのはすでに時代遅れになりつつあるのかもしれません。
私たちがオンライン上で何か申込みなどを行ったとき、入力内容が間違っていたら、私たち自身で入力内容の修正をしたり申し込みをやり直したりになります。しかし、オンライン上で入力内容を相手方が好き勝手に修正できるような仕組みだったら…それが捨印は可能にしてしまうものだ、と考えるとわかりやすいかもしれません。電子契約やオンラインでの申し込みに捨印のような仕組みがないことは私たちの安心感につながっているのです。
まとめ:捨印は押さないことがベスト
捨印を押さなければならないというような法的義務は存在しません。
捨印は、個人レベルで作成する文書はもちろん、ビジネスで取り交わす文書(特に契約書)に関して捨印を押すと非常に大きなリスクを被る恐れがあることがお分かりいただけたでしょうか?
捨印の押印は、極力断ることが大切ですし、上司や役員の指示を仰ぐなど、捨印押すかどうかの判断を一人で行わないようにしましょう。もし押してしまった場合には、非常に重大なリスクを抱えることになることを肝に銘じておくことが必要です。
現在、日本でも契約書を電子契約に切り替える企業も増えています。電子契約では内容を訂正する際にも、紙の文書のように押印をする必要がなく、迅速に行うことができ、捨印自体も不要です。この機会に、「電子印鑑GMOサイン」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?お試しフリープランもありますので是非ご活用ください。