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成年後見制度とは?判断能力の不十分な人をサポートする3つの制度

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今年の「敬老の日」にちなんだ総務省の発表によると、日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は29.1%。10人に1人は80歳以上とのことです。また、75歳以上の人口が2000万人を突破したとのことです。

【参考】統計からみた我が国の高齢者 -敬老の日にちなんで-(総務省)

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの事情によって判断能力が十分でない人(十分でなくなる可能性のある人)を法的に保護・サポートするための制度です。

判断能力が不十分である人に後見人等を付けることによって、その人が不利益な契約を結んでしまうなど各種の不利益から守ってあげることなどを目的としています。

民法上、成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあり、「法定後見制度」にはさらに「後見」「保佐」「補助」の3つの類型が定められています。

今回は、「法定後見制度」について解説いたします。なお、「任意後見制度」に関しては次の記事で詳しく解説しています。「今はまだ後見人によるサポートを受ける必要はないけど、将来が不安だから何か手を打っておきたい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

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目次

成年後見制度とは

成年後見とは、判断能力が欠けているのが通常の状態の人を法律的に保護・サポートするための制度です。

精神障害や認知症・知的障害等が原因で判断能力が不十分となっている場合には、日常生活において様々な不都合が生じる可能性があります。たとえば、本人に判断能力がまったく認められない状態である場合には、法律上「意思無能力者」による無効な行為となってしまうため、各種の行為を自分自身で行うことができなくなる可能性があります。この場合、自分自身の財産であっても自分で適切に管理することが不可能になってしまうリスクがあるのです。

一方で、「障害がある人も家庭や地域において通常の生活を送ることができる社会を作ろう」という考え方(ノーマライゼーション)も重要です。何もかも制限してしまうと、本人にとって必要なことも本人ができなくなってしまい、日常生活をスムーズに送ることができなくなる可能性も考えられます。

実務でよく問題となる事例を、一部ご紹介しましょう。

・自分の預金口座であるにもかかわらず、ATMを使うことができなくなり必要なお金を引き出すことができない
・(認知症の症状が出ている親に代わって)介護施設の利用契約などを締結しようとしても「本人の同意がないと難しい」と言われて断られる
・(年老いた親が)悪徳業者などに騙され、不必要な契約を結んでしまったため多大な損害を被ってしまった

このようなリスクから保護するためにあるのが、法定後見制度なのです。

法定後見制度を利用すれば、「本人の意思を尊重し、本人ができる範囲で自ら社会生活に参加する」という大前提に基づきながら、後述のように家庭裁判所が選任した成年後見人等によって、必要に応じて法律行為(契約など)を代理してもらったり、不必要な契約を取り消してもらったりするなどして判断能力の低下した本人の利益となるように法的に保護・サポートしてもらうことができるのです。

法定後見制度の3つのパターン

民法では「法定後見制度」として、以下の3つの類型を定めています。

(1)後見:精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況
(2)保佐:精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分
(3)補助:精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分

これらはすべて、家庭裁判所に対して審判の申立てを行い、一定の手続きを経た後にそれぞれの判断能力の高低などに応じて3類型のどれになるのかが決定されることになっています。

それでは順次、それぞれの詳細を確認していくことにしましょう。

後見

3つの制度中、もっとも本人の判断能力が低いケースにおいて選択される制度です。

具体的には、精神上の病気や認知症などの理由によって本人に判断能力がまったくないと家庭裁判所が判断した場合、後見制度が開始されることになります。民法第7条は、成年後見の対象となる人を「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と定めています。わかりやすく言うと、常に自分が何をしているのか自分で理解できず、自分の日用品などの買い物すらままならないような人などが対象とされると考えてよいでしょう。

後見制度を利用する場合、まず家庭裁判所に審判の申立てを行うことになります。家庭裁判所では、一定の手続きを経た後、妥当だと判断した場合には後見開始の審判を行います。この審判によって成年後見の対象とされた人(「成年被後見人」といいます。「被」は「受ける」の意味で、「被後見人=後見を受ける人」となります。)には、「成年後見人」が家庭裁判所によって付けられることになります。

成年後見人には、成年被後見人の財産管理(民法第859条1項前段)や法律行為の代理権(同項後段)および取消権(同法第120条)が認められます。そして、成年被後見人に必要な契約など一定の行為に関して成年後見人が本人を代理して行うことになるのです。また、万一本人が勝手に契約などを締結してしまった場合、原則として成年後見人にはその契約の取消権が認められます。

成年後見人とは、いわば本人である成年被後見人の「保護者代わり」と考えてよいでしょう。

民法は、成年後見人でも取り消すことができない例外も定めています。「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は成年被後見人がひとりでした場合であっても取り消すことはできません(民法第9条)。本人が日常生活を送る範囲まで取消を認める必要はないからです。また、遺言や婚姻など、本人の意思が重要であり誰かが代わってできるものではないもの(一身専属的な行為といいます)は、本人が意思能力を回復しているあいだ(一時的に症状が改善して十分な判断能力がある状態)であれば、本人自身が行うことができます。

民法第859条1項(財産の管理及び代表)
後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

民法第120条1項(取消権者)
1.行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

民法第9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索
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保佐

成年後見のケースとは異なり、本人に多少の判断能力が認められる場合に利用されるのが「保佐」の制度です。

民法第11条では、保佐の対象となる人を「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」と定めています。判断能力がゼロではないけれど平均的な社会人と比較した場合には、かなり判断力が低いようなケースが該当することになります。

たとえば、仮に認知症を発症している場合であっても、ある程度の判断能力がまだ残っているようなケースでは保佐制度が該当することになるでしょう。保佐制度を利用しようとする場合には、家庭裁判所に申立てを行い保佐開始の審判を受ける必要があります。保佐開始の審判を受けると、家庭裁判所によって「保佐人」が選任されます。そして、この保佐人が被保佐人をサポートすることになります。

被保佐人は、一般的な行為に関しては本人単独で行うことが可能です。しかし、民法第13条1項に定めのある保佐人の同意を要する行為等に該当する場合には保佐人の同意が必要とされています。ただし、上記以外の特定の行為に関しても保佐人の同意を要するとすることが必要な場合には、保佐人などは家庭裁判所に申立てることによって、その特定の行為に関しても同意が必要とすることができることになっています(同条2項)。また、保佐人には被保佐人を代理する権限はありませんが、家庭裁判所に申立てを行い代理権の付与を受けることも可能です。保佐人の同意が必要な行為であるにもかかわらず、同意なくしてその行為を行った場合には、保佐人はそれを取り消すことができます(民法第13条4項)。

民法第13条(保佐人の同意を要する行為等)
1.被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
  一 元本を領収し、又は利用すること。(*貸した金の返済を受けること等)
  二 借財又は保証をすること。(*借金や保証人になること)
  三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(*高額財産の売買等)
  四 訴訟行為をすること。
  五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲    裁合意をいう。)をすること。
  六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認    すること。
  八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
  九 第602条*に定める期間を超える賃貸借をすること。(*例:建物は3年、動産は6か月)
  十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1    項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2.家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3.(略)
4.保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

(*  )は編集部よる注記

補助

補助の制度を利用できる人は、法定後見における3つの中、判断能力が一般成人にもっとも近い人と考えてよいでしょう。

民法第15条は、補助の対象となる人を「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」と定めています。つまり、日常生活に関する基本的なことは単独でできるけれど、ある特定のことに関してはサポートが必要と思われるようなケースにおいては補助の制度を利用することになります。たとえば、軽度の認知症であるため日常生活を送ることには支障がなくても、忘れっぽくなっているため同じ新聞を多重に契約してしまうようなパターンが該当します。

補助制度を利用したい場合には、家庭裁判所に申立てを行い補助開始の審判を受ける必要があります。この場合、家庭裁判所では「補助人」を選任し、被補助人のサポートをさせることになります。後見や補佐と異なるポイントとしては、補助の申立てについて、本人以外の者が申し立てをしたときは、本人の同意がなければ補助開始の審判をすることができないということです。補助の制度は、本人の意思を最大限尊重しようというつくりになっているのです。また、補助人には「保佐制度」における保佐人のように広範囲の同意権が当然には認められていません。

補助人の同意権は、先述の民法第13条1項によって規定されている「保佐人の同意を要する行為等」の中の一部に限定されます。このため、補助人はサポートが必要と思われる特定の行為に関する同意権の付与を家庭裁判所に求めることになります。たとえば、被補助人が勝手に不動産を売却してしまう恐れがあるようなケースにおいては、不動産の売却だけに限定して補助人が同意権の付与を受け、その行為を被補助人単独ではできず補助人の同意を必要とすることなどが可能となります。

民法第15条(補助開始の審判)
1.精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2.本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3.補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
1.家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。
2.本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3.補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4.補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

まとめ

精神上の障害や加齢などによって正常な判断能力を失うリスクは、誰にとってもゼロではありません。急激に高齢化社会の進んでいる日本においては、認知症などの問題は決して他人ごとではないのです。

重度の認知症などによって判断能力が全くないと判断される場合、自分の財産を自分で管理したり、契約を締結したりすることすらできなくなるリスクがあります。そこまで判断力が低下していない場合でも、何らかの理由で法的に誰かのサポートが必要なケースは世の中には多数存在するものです。

そのような場合に利用できるのが、成年後見制度です。身近な親族の方などに成年後見が必要だと思われる場合には、今回ご紹介した知識を生かし、制度の利用を検討されてはいかがでしょうか?

最後に、有斐閣から出版されている「民法1総則」にわかりやすいまとめがありましたので、引用いたします。

 判断能力
(事理弁識能力を……)
効果
成年後見欠く・原則として行為能力をすべて制限
    and
・法定代理人を必ずつける
保佐著しく不十分・重大な法律行為について行為能力を制限
    and
・法定代理人をつけてもよい
補助不十分
(本人の同意も必要)
・重大な法律行為の一部について行為能力を制限
    and/or
・法定代理人をつけてもよい
【出典】香山崇, 竹中悟人, 山城一真.  民法1 総則.有斐閣ストゥディア, 2021,  p.47.
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この記事を書いた人

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