注文を受けた際に受注者側が作成する文書の一つに、注文請書があります。
注文請書とは、今回の注文内容について、発注者側に「確かに注文を承りました」という意思表示をする文書のことです。実はこの注文請書、すべての事例ではないものの作成するにあたり収入印紙を貼り付けないといけない場合があります。
収入印紙はいくら必要なのか、文書へどのように貼り付ければよいのかなどについてみていくので、必要に応じて参考にしてください。
目次
注文請書に印紙が必要な事例
注文請書に印紙を貼り付けないといけない事例の一つとして、請負契約に伴い作成された注文請書の場合が挙げられます。一方、売買契約に関する注文請書については、一部の場合を除き、印紙を貼り付ける義務はありません。これは法令によって決められています。
請負契約書には印紙が必要
請負契約に基づき作成された注文請書の場合に印紙が必要となるのは、印紙税法によります。印紙税法上、第2号文書に該当する契約書やそれに関連する書類については、収入印紙を貼り付けることが義務づけられています。
ちなみに、請負に関する契約書に該当する第2号文書にはどのようなものがあるのでしょうか。これには以下のようなものが考えられます。
区分 | 内容 | 請負・売買の事例 |
請負契約に該当すると認められるもの | 注文者の指示に基づき一定の仕様又は規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの | ・家屋の建築 ・道路の建設 ・橋りょうの架設 |
注文者が材料の全部又は主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容としたもの | ・生地提供の洋服の仕立て ・材料支給による物品の製作 |
製作者の材料を用いて注文者の設計又は指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの | ・船舶、車両、機械、家具等の製作 ・洋服等の仕立て |
一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするもの | ・大型機械の取り付け |
修理又は加工を内容とするもの | ・建築・機械の修繕、塗装 |
売買契約に該当すると認められるもの | 一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの | ・テレビを購入した時のアンテナの取付けや配線 |
製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い、工作物を製作し、供給することを内容とするもの | ・建売住宅の供給(不動産の譲渡契約書) |
あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの | ・カタログ又は見本による機械、家具等の製作 |
【引用】請負と売買の判断基準(1)|国税庁
工事の注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、スポーツ選手や俳優との専属契約に係る書類には収入印紙が必要です。
請負契約とは、注文を受けて何かを作り提供する契約のことです。有形無形は関係ありません。一方、既存の物品売買の場合、収入印紙は原則不要です。
請負についての契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」に該当します。
請負とは当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれます。
内容
具体的には、工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、会計監査契約書などが請負に関する契約書に該当します。
また、プロ野球選手や映画俳優などの専属契約書も請負に関する契約書に含まれます。
なお、請負に関する契約書に該当するものであっても、営業者間において継続する複数の取引の基本的な取引条件を定めるものは、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当することがあります。
【引用】No.7102 請負に関する契約書|国税庁
注文請書にも収入印紙は必要
契約書を作成する際に収入印紙を貼り付けるイメージはあるかもしれませんが、注文請書にも必要なのかと思う人もいるでしょう。しかし法的には必要です。注文請書は、発注者側の作成する注文書に対して受注者側の作成する書類です。
発注者側が出したオーダーに対し受注者側がそのオーダーを受ける、という一連のやり取りを踏まえると、注文書と注文請書がセットとなって契約が成立したと考えることができます。注文請書が契約書と同じ文書という位置づけであるとすれば、注文請書には収入印紙を貼り付けなければならないとイメージすることができるでしょう。
注文請書と印紙税額の関係
注文請書に印紙を貼り付けるにあたって、いくらの収入印紙が必要になるのかは、その注文請書に記載された契約金額に基づきます。収入印紙の金額は、以下の表のとおりです。
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記載された契約金額 | 税額 |
---|
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
【引用】No.7102 請負に関する契約書|国税庁
契約金額を記載しないと、たとえ実際の取引額が1万円未満でも200円の収入印紙を貼付する必要があるので注意してください。
注文請書に収入印紙が不要な事例
すべての注文請書に対して収入印紙を貼り付けなければいけないわけではありません。請負契約以外の契約形態の多くや電子上の契約などの場合には印紙は不要ですから、誤って収入印紙を貼り付けないように注意してください。
売買契約
基本的に請負契約に伴い作成された注文請書の場合は収入印紙を貼り付ける義務があります。しかし、売買契約の場合であれば、収入印紙を貼り付けなくても原則は問題ありません。
ビジネスで備品などオフィス用品を販売会社に注文したと仮定します。もし多様な商品を大量に注文した場合、注文内容に誤りがないか注文請書を販売会社へ送ることがありますが、こちらは売買契約に基づき作成される注文請書になるので、収入印紙は原則不要です。
なお、単発の売買契約では印紙税はかかりませんが、継続的に取引をする売買契約の場合は、それに伴い作成される注文請書には収入印紙を貼り付けないといけないので注意してください。
契約書に収入印紙を貼り付けた
取引によっては注文書と注文請書のやり取りをした後で、正式に契約を締結する場合もあるでしょう。もし契約書を別途作成して、そこに収入印紙を貼り付けているのであれば、注文請書に印紙は不要です。
契約金額が1万円未満
もし注文請書に記載してある金額が1万円未満の場合には、収入印紙を貼り付ける必要はありません。ただし第2号文書のほかにも、約束手形や為替手形に該当する第3号文書から売上代金や有価証券に関わる受取書などの第17号文書に該当する文書で、第2号文書に所属すると解釈できた文書は、契約金額が1万円未満でも非課税文書にはならないので注意してください。
金額の記載されていない注文請書の場合は、200円の収入印紙を貼り付けないといけません。また、継続的取引の基本となる契約書である第7号文書に該当する場合は、一律4,000円の収入印紙を貼り付けないといけません。
電子契約の場合
もし注文請書を電子データでやり取りしているのであれば、収入印紙を貼る必要はなくなります。
具体的には注文請書をPDFファイルなどメールに添付して先方に送信した場合、タイムスタンプや電子署名など電子上でやり取りした場合などが該当します。なお、作成そのものはPDFだったのに、それをプリントアウトして先方に郵送すると、収入印紙を貼り付けることが必要になる場合がありますので注意してください。
印紙と割印の関係
注文請書を作成するにあたり、収入印紙を貼り付けるのであれば割印を押さなければなりません。なぜ割印が必要なのか、割印をどう押せばいいのか理解しておけば、割印の不備で取引が遅れるような心配もなくなります。
印紙に割印を押す理由
収入印紙に割印を押す大きな目的は、収入印紙の再利用を防ぐためです。台紙と収入印紙にまたぐように押印すれば、その印紙を再利用できません。印紙税法では、「課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない」と規定されています。
(印紙による納付等)
第八条 課税文書の作成者は、次条から第十二条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。
2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。
【引用】印紙税法 | e-Gov法令検索
注文請書の印紙への割印の押印方法
注文請書に割印を押印する場合、収入印紙から書類にまたぐような感じで押印してください。
押印する印鑑ですが、基本は何でも構いません。担当者の印鑑でもいいですし、会社の印鑑でも構いません。また契約時などに使用した印鑑と異なっていても問題ありません。ゴム印やシャチハタのようなもので押印して大丈夫です。
社印が一般的
どのような印鑑で割印にしても構いませんが、社印を押すのが慣例となっています。どのような印鑑でも法的には問題ないですが、社印で割印をしていないと先方が失礼と受け取る可能性があります。ですから社印があれば、社印で押印するように心がけてください。
割印に失敗したら?
割印を押したけれども、印影が薄くしっかり確認できなければ、再度割印を押したほうがいいでしょう。
再度押印する際のルールも一緒です。収入印紙から契約書にまたぐようにして、別の個所に押印してください。別の個所に押印することがポイントで、失敗した個所と同じ場所に押印することはやめましょう。重ね押しをしてしまうと逆に不鮮明になってしまうからです。
まとめ
すべての注文請書に収入印紙を貼り付ける必要はありません。しかし、請負契約に伴い作成される注文請書の場合、収入印紙を貼り付けることが定められています。
収入印紙の金額は契約金額に基づきますので、間違いのないように注意しましょう。また、収入印紙を再利用できないように、割印を押すことも義務づけられています。
割印の印鑑は基本何でも構いませんが、慣例は社印による押印となっているのでそのことも頭に入れておきましょう。