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外部の法人や個人に仕事を依頼する際には準委任契約というものを結ぶことがあります。これはどのような場合に締結するのでしょうか?委任契約や請負契約などとの違いは?
今回は準委任契約の意味や種類、締結するメリットやデメリット準委任契約書の書き方についてご説明します。
準委任契約とは業務委託契約の一種で、特定の業務を行うことを定めた契約のことです。請負契約と異なるのは、その業務の遂行自体が目的となり、結果や成果物の完成については責任を求められないことです。
例えば、医師に診療を依頼する、コンサルタントからコンサルティングサービスを受ける際などに準委任契約を締結します。医師に診療を依頼しても病気が進行していて完治しないかもしれません。同様にコンサルティングを受けても結果がなかなか出ないといったこともあり得ることです。
このように必ずしも結果が出るとは限らない仕事、あるいは具体的な成果物を出すのが難しい仕事を依頼する際の業務委託契約の類型を準委任契約と呼びます。
準委任契約と同様に外部の法人や個人に仕事を依頼する際に締結する契約形態として「委任契約」「請負契約」「派遣契約」「SES契約」というものがあります。ここからは準委任契約とそれぞれの契約の違いについて見ていきましょう。
準委任契約と委任契約との違いは「法律行為を依頼するかどうか」ということです。委任契約は法律行為を依頼する際に締結し、準委任契約では法律行為以外の業務を依頼します。
法律行為とはその行為が法令に基づく一定の効果を生む行為のことです。例えば弁護士に裁判所への訴訟代理を依頼するケース、税理士に確定申告の手続き代行を依頼するケース、司法書士に会社設立手続きの代行を依頼するケースなどは法律行為にあたり、委任契約を締結します。準委任契約と同様、ゴールは業務の完遂です。
準委任契約は「業務を行うこと」を約束する契約ですが、請負契約は「仕事の結果を出すこと」を約束する契約です。請負契約を締結した場合、結果を出してはじめて報酬を得ることができます。
例えば住宅会社に家を建ててもらう、運送会社にトラックで荷物を運んでもらう、デザイナーにデザインを作成してもらうケースなどが代表例です。住宅会社は家を引き渡すことで、運送会社は荷物を届けることで、デザイナーはデザインをクライアントに納品することで、報酬を得ることができます。
準委任契約は仕事を依頼したい者と、仕事を請ける者とが契約して、仕事を請ける者自身が仕事を行うという契約です。一方で派遣契約は派遣会社(派遣元)と仕事を依頼したい会社(派遣先)が派遣契約を締結し、派遣元である派遣会社は派遣先に労働者を派遣します。
派遣契約の場合、派遣される労働者は派遣先の指揮命令下に入り、派遣先の就業規則や職場のルール、指示に従わなければなりませんが、準委任契約ではそもそも指揮命令関係は発生しません。
SES契約(システムエンジニアリング契約)はシステムやソフトウエアなどの開発や運用をシステム会社や開発会社、あるいはエンジニアやプログラマー個人に依頼する際に締結します。つまり、SES契約は準委任契約の一つであり、業務の遂行が目的となる契約です。
準委任契約には大きく分けて「成果完成型」と「履行割合型」の2種類があります。ここからはそれぞれの特徴について見ていきましょう。
成果完成型は依頼が完了した際に依頼者が報酬を支払うことを約束する契約形態です。通常の準委任契約であり、依頼を遂行する側は依頼者の指揮命令下や時間管理下には入りません。依頼を遂行した側は、報酬を成果の引き渡し時に請求することができます。病院やクリニックの診療代などでイメージするとわかりやすいでしょう。
履行割合型は依頼された側が、業務を行った労働時間や工数に応じて報酬を支払うことを約束する契約形態です。前述のSES契約は履行割合型で契約されるケースが多いようですが、一般的な準委任契約と同様に、必ずしも成果物を出すことは求められません。
準委任契約を締結する際は、事前に契約内容についてすり合わせを行って契約案を作成し、契約を締結するのが一般的です。ここからは準委任契約の書き方についてご説明します。
準委任契約書には最低限以下のような項目を盛り込みましょう。
上記の項目を準委任契約書に盛り込んでおくことで、後々トラブルが発生するリスクを軽減することができます。
準委任契約書を作成する場合、コストがかかる可能性があります。ここからは準委任契約書を作成する際の費用についてご説明します。
課税文書を作成する際には契約金額に応じて定められた印紙税額分の収入印紙を貼付しなければなりません。準委任契約書は基本的に課税文書に該当しませんが、準委任契約書の契約内で「無体財産権(特許権や商標権など)の譲渡に関する契約書」いわゆる1号文書や、7号文書と呼ばれる「売買の委託に関する契約書」や「売買に関する業務の継続委託に関する契約書」の要件を満たす文言が記載されている場合は課税文書扱いとなり、印紙税の納付が必要です。
特許権や著作権などの無体財産権の譲渡に関する契約の場合、1号文書に該当し、契約金額に応じて以下の額の印紙税を支払わなければなりません。 例えば、システム開発契約やソフト開発契約を締結し、準委任契約書に著作権を譲渡することが記されている場合は、1号文書とみなされる可能性があります。
【参考】1号文書の印紙税の額(2022年10月現在)
契約書に記載された金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満※ | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
※契約金額の記載のないもの | 200円 |
7号文書に該当する文書には、一律4,000円の印紙税が必要です。
発注者・受注者ともに準委任契約を締結するメリット・デメリットがあり、それらを考慮した上で準委任契約を結ぶか、他の契約形態を選択するかを考える必要があります。ここからは発注者側、受注者側それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
外部のスキルをもった法人や個人と準委任契約を締結して仕事を依頼すれば、労務管理や人材育成の手間やコストが削減できるというのがメリットです。
一方で準委任契約を締結した場合、雇用契約や派遣契約と異なり、相手を自分の指揮命令下に置くことができません。いつ、どのようにして業務を行うかは相手の裁量次第となり、コントロールができないのがデメリットといえます。また、準委任契約は成果物の納品がある請負契約とも異なり、必ずしも求めた結果が得られない可能性があります。
労働時間や仕事内容を細かく指示したい場合は雇用契約や派遣契約、何らかの成果物を納品してほしい場合は請負契約を締結する必要があります。
前述の通り、準委任契約の場合は発注者側の指揮命令下や管理下に入ることはありませんので、自分の裁量で仕事を行うことができます。特にフリーランスや自営業の方には向いている契約形態です。また、準委任契約は業務を行うことが目的であり、成果物を出す必要はありません。先ほども例に挙げたように、医療やコンサルティングなど、必ずしもクライアントが望む結果が出るとは限らない業務、形のあるものを納品できないサービスを提供する業務を行う場合は、準委任契約を締結することになります。
一方で準委任契約はクライアントからの解約が容易であり、収入が不安定になりがちなのがデメリットです。クライアントが満足できなければ契約を打ち切られてしまうかもしれません。特に個人の場合は雇用契約や派遣契約で雇用されるケースよりも生活が不安定になってしまう可能性があります。
また、委任契約と同様、準委任契約においても善管注意義務が生じます。委任契約における善管注意義務とは「受任者と同様な職業・地位にある者に対して一般に期待される水準の注意義務」(※)のことであり、「知識・才能・手腕の格差、委任者の受任者に対する信頼の程度に応じて」(※)判断されるとされています。準委任契約でも可能な限り結果を出すよう努力しなければなりません。
(※)内田貴(1997)民法III(第3版) 東京大学出版会
上記の通り、準委任契約を締結する際には発注者・受注者ともにメリット・デメリットが生じます。発注・受注する業務の内容や目的、手順などを考慮して準委任契約かその他の契約形態を選択するかを決める必要があります。
また、準委任契約を締結しても内容に不備があれば後々トラブルにつながる恐れもあります。今回の記事を参考にしながら作成してみましょう。
準委任契約を締結する際には電子契約の利用がおすすめです。スピーディーに締結できることは、ビジネスにおいてさまざまなメリットを享受することができるからです。例えば、インターネットを介して契約を締結することでテレワーク等にも対応でき、押印や製本の手間もかからず、印紙代などのコストが削減できます。特に準委任契約書が、印紙税法の課税文書に該当するか、また該当する場合は1号2号7号…など、どの課税文書に該当するのかを契約書の内容から都度判断する必要がありますが、その煩わしさからも解放されます。
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