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【弁護士解説】犯収法改正でeKYCはどう変わる?2027年4月施行の本人確認方法と実務対応

2027年4月1日、犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則に基づく非対面での本人確認ルールが大きく変わります。改正の柱は、これまで広く使われてきた本人確認書類の画像送信等による一部の確認方法が廃止され、ICチップ情報や電子証明書を用いた、より信頼性の高い本人確認方法へ移行する点にあります。

改正命令は2025年6月24日に公表・公布されており、施行日は2027年4月1日とされています。システム改修や運用変更には相応のリードタイムが必要となるため、銀行、信用金庫、クレジットカード事業者、資金移動業者、宅地建物取引業者、ファイナンスリース事業者など、犯収法上の「特定事業者」に該当する企業では、eKYCシステムの見直しと計画的な対応が急務になっています。

本記事では、犯収法改正の背景・変更内容・廃止される本人確認方法の問題点・ICチップ情報や電子証明書を用いた本人確認の仕組み・対象となる事業者の範囲・今から準備すべきことまでを、順を追って解説します。

記事執筆:中澤泉(弁護士)

目次

犯収法とは?特定事業者と本人確認義務の基本

今回の改正を理解するには、まず犯収法がどのような目的の法律であり、どのような事業者に本人確認義務を課しているのかを押さえておく必要があります。

犯収法の目的とマネーロンダリング対策

「犯収法」とは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の略称です。2008年に全面施行されたこの法律は、犯罪によって得られた収益が、通常の経済取引を通じて移転・利用されることを防ぎ、犯罪組織の資金源を断つことを目的としています。

「マネーロンダリング」とは、犯罪によって得た資金について、送金や取引などを繰り返すことで、その出所をわかりにくくする行為をいいます。犯罪収益が預貯金口座や決済サービス、不動産取引などを通じて移転されると、資金の流れを追跡しにくくなります。

そこで犯収法では、マネーロンダリングやテロ資金供与を防止するために、一定の事業者に対して顧客の本人確認や取引記録の保存などを義務付けています

犯収法に基づき特定事業者に課される主な義務は、以下の3つです。

  • 取引時確認:顧客と特定の取引を行う際に、氏名・住居・生年月日などの本人特定事項に加え、取引目的や職業等を確認する
  • 確認記録・取引記録の作成・保存:確認した内容や取引の記録を一定期間保存する
  • 疑わしい取引の届出:マネーロンダリング等の疑いがある取引を行政庁に届け出る

こうした制度は、国際的なマネーロンダリング対策を主導するFATF(金融活動作業部会)の勧告などを踏まえて整備されてきました。日本も、FATFの審査への対応という観点から、犯収法の改正・強化を継続的に進めています。

本人確認義務が課される「特定事業者」とは

犯収法の義務が課される事業者は「特定事業者」と呼ばれ、法律に列挙された業種に限定されています(犯収法2条2項)。すべての企業が対象になるわけではなく、犯罪収益の移転に悪用されるリスクが高いとされる業種が指定されています。

具体的には、銀行、信用金庫などの金融機関のほか、クレジットカード事業者、資金移動業者、暗号資産交換業者などの決済・カード関連事業者、宅地建物取引業者、ファイナンスリース事業者などの不動産・リース関連、さらには弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などの士業も含まれます。

特定事業者の該当性については、後の章で業種別に詳しく整理します。

2027年4月の犯収法改正で変わるeKYCの本人確認方法

今回の改正は、非対面取引においてオンラインで本人確認を行う仕組み、いわゆるeKYCの在り方を大きく見直すものです。

犯収法施行規則の改正命令は2025年6月24日に公布され、2027年4月1日の施行が予定されています。現在、画像送信型のeKYCを利用している事業者は、施行日までに改正後の本人確認方法へ対応できる体制を整える必要があります。

改正のスケジュールと背景

改正の出発点となったのは、2024年6月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」です。この計画の中で、非対面取引の本人確認手法の信頼性を高めることが重点施策として位置付けられました。

これを受けて犯収法施行規則の改正作業が進められ、2025年6月24日に改正命令が公布されました。施行日は2027年4月1日が予定されています。

eKYCシステムの改修や運用変更には相応のリードタイムが必要なため、特定事業者にとっては今から準備を開始することが求められます。

画像送信のみに依存する本人確認方法が廃止され、ICチップ型本人確認の重要性が高まる

最大の変更点は、非対面での本人確認方法が見直され、本人確認書類の画像送信を受ける方法など、なりすまし等のリスクが高い一部の本人確認方法が廃止されることです。

現行の犯収法施行規則では、本人確認書類の画像データを送信する方式など、画像情報を用いた一部の非対面本人確認方法が認められています。しかし、画像だけでは本人確認書類の質感や厚みなどを確認しにくく、精巧な偽造・変造書類によるなりすましを見抜くことが難しいという課題があります。

改正後は、本人確認書類の画像送信を受ける方法などが廃止され、ICチップ情報や電子証明書を用いる本人確認方法への移行が進みます。

改正後に重要性が高まる本人確認方法の一つが、マイナンバーカードに搭載されたICチップを活用した公的個人認証(JPKI)です。電子証明書と暗証番号を組み合わせることで、画像データの送信だけに依存する方法に比べて、なりすましや改ざんのリスクを抑えた本人確認が可能になります。

現行と改正後の主な手法の変化を整理すると、以下のようになります。

手法現行(改正前)改正後(2027年4月以降)
本人確認書類の画像送信等による一部の方法利用可廃止
マイナンバーカードのICチップ・電子証明書を用いる方法(JPKI)利用可重要な確認方法として継続
運転免許証等のICチップ情報を用いる方法利用可継続
本人確認書類の原本送付を受ける方法利用可一定の場合に存置

※改正後も利用可能な本人確認方法の詳細については、警察庁・金融庁の公表資料および施行規則の改正内容をご確認ください。

なお、改正後の非対面本人確認は、JPKIに限られません。ICチップ情報と容貌画像を組み合わせる方法、運転免許証等のICチップ情報を用いる方法、一定の場合に本人確認書類の原本送付を受ける方法なども残ります。

そのため、自社の取引形態や顧客層に応じて、改正後に利用可能な本人確認方法を確認する必要があります。

対面確認でもICチップ情報の読み取りが必要に

2026年3月6日に公布された犯収法施行規則の改正により、2027年4月1日から、ICチップ付き本人確認書類を用いる対面確認では、ICチップ情報を読み取り、券面情報と照合する方法が導入されます。

対象となる本人確認書類には、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券などがあります。一方、ICチップが搭載されていない本人確認書類等を用いる方法も規定されているため、自社で受け付ける書類と確認フローを整理しておく必要があります。

参考:「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案」に対する意見の募集結果について | e-Govパブリックコメント

画像送信型eKYCの一部が廃止される理由

なぜ、これまで広く利用されてきた画像送信型eKYCが見直されるのでしょうか。その背景には、非対面での本人確認において、本人確認書類の真正性を画像だけで判断することの限界があります。

画像送信型eKYCに潜む「なりすまし」「偽変造」リスク

画像送信型eKYCでは、本人確認書類の表面を撮影した画像データをもとに、氏名、住所、生年月日などの本人特定事項を確認します。

しかし、画像データだけでは、本人確認書類の原本そのものを確認することはできません。対面確認であれば、担当者が書類の質感、厚み、ホログラム、印刷の状態などを直接確認できますが、非対面で画像データのみを確認する場合には、こうした物理的な確認が難しくなります。

そのため、精巧に作成された偽造・変造書類が使われた場合、画像だけでは真正な本人確認書類かどうかを見抜きにくいという課題があります。さらに、本人確認書類の画像データが不正に利用されれば、第三者が本人になりすまして口座開設やサービス申込みを行うリスクも否定できません。

こうした背景から、画像送信型eKYCについて見直しが進められることとなりました。

不正口座開設の現状とeKYC見直しの関係

画像送信型eKYCは、オンラインで本人確認を完結できる利便性の高い仕組みとして、多くの非対面取引で利用されてきました。

一方で、非対面取引では、顧客と直接対面しないため、取引相手に関する情報を十分に得にくいという特徴があります。警察庁の「犯罪収益移転危険度調査書」でも、非対面取引は、対面取引に比べてマネーロンダリング等に悪用される危険性がある取引として整理されています。

また、警察庁長官は、2025年2月27日の記者会見において、本人確認書類の偽変造によって他人になりすまして開設された預貯金口座等が悪用されている実態に言及しています。

もちろん、画像送信型eKYCが直ちに不正利用につながるわけではありません。各事業者も、AIによる画像解析や目視確認など、さまざまな対策を講じています。

しかし、制度全体としては、非対面取引における本人確認の信頼性をさらに高める必要があるとして、画像情報に依存する一部の本人確認方法を廃止し、ICチップ情報や電子証明書を用いた本人確認方法への移行が進められています。

ICチップ読み取りによる本人確認とJPKIの仕組み

では、改正後に中心となる、ICチップ読み取りによる本人確認方法とは、どのような仕組みなのでしょうか。代表的なものが、マイナンバーカードを活用した公的個人認証(JPKI)です。

公的個人認証(JPKI)の仕組み

JPKIとは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を使って、オンライン上で本人確認を行う仕組みです。正式には「公的個人認証サービス」と呼ばれ、行政手続きだけでなく、民間事業者の本人確認にも利用されています。

マイナンバーカードには、主に「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」の2種類の電子証明書が搭載されています。

署名用電子証明書は、インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用される電子証明書です。氏名・住所・生年月日・性別などの情報を含み、電子文書が本人によって作成・送信された真正なものであることを証明するために使われます。

一方、利用者証明用電子証明書は、オンラインサービスにログインする際に利用される電子証明書です。手続きをしている利用者が本人であることを確認するために使われます。

非対面で本人確認を行う場合、利用者はスマートフォンなどでマイナンバーカードのICチップを読み取り、暗証番号を入力します。暗証番号を知らない第三者が電子証明書だけを入手しても、通常、本人確認を完了させることは困難です。

事業者側は、電子証明書の有効性などを確認することで、本人確認書類の画像だけに依存しない、より信頼性の高い本人確認を行うことができます。

JPKIには、本人確認方法として以下のような強みがあります。

  • 偽造・改ざんがしにくい:ICチップに記録されたデータは物理的に取り出して改ざんすることが極めて難しい
  • 改ざんを検知しやすい:電子署名の仕組みにより、送信された情報が改ざんされていないかを確認しやすい
  • 本人による手続きであることを確認しやすい:マイナンバーカードの所持と暗証番号の入力を組み合わせることで、本人による操作であることを確認しやすい

このように、JPKIは、本人確認書類の画像を目視で確認する方法に比べて、非対面取引における本人確認の信頼性が高い仕組みといえます。

JPKIと運転免許証等のICチップ読み取りの違い

ICチップ読み取りによる本人確認方法には、マイナンバーカードを使う方法のほか、運転免許証のICチップ情報を使う方法もあります。

JPKIは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を用いて本人確認を行います。署名用電子証明書に含まれる氏名・住所・生年月日・性別などの情報を確認できるだけでなく、その電子証明書が有効で、改ざんされていないことを確認できる点に特徴があります。

一方、運転免許証等のICチップ情報を使う方法では、本人確認書類のICチップに記録された券面情報などを読み取り、その情報をもとに本人確認を行います。

どちらもICチップを使う本人確認方法ですが、確認に用いる情報や仕組みは同じではありません。事業者としては、改正後にどの本人確認方法を利用できるのか、自社のeKYCシステムがどの方法に対応しているのかを確認しておく必要があります。

画像送信型eKYCとの信頼性の比較

画像送信型eKYCとICチップ読み取りによる本人確認では、偽造・なりすまし・改ざんへの耐性に違いがあります。

画像送信型eKYCでは、本人確認書類を撮影した画像データをもとに確認を行います。そのため、画像の鮮明さや目視確認に依存する部分があり、精巧な偽造・変造書類が使われた場合には、真正な本人確認書類かどうかを判断しにくいことがあります。

これに対して、ICチップ読み取りによる本人確認方法では、本人確認書類に記録された電子的な情報や電子証明書を確認できます。たとえば、JPKIでは、署名用電子証明書の有効性を確認し、電子署名を検証することで、本人確認に用いる情報が真正なものかどうかを確認できます。

参考:警察庁JAFIC「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の改正に係るQ&A」Q6・Q13

電子的に検証可能な情報を用いることで、人の目による画像確認だけに依存せず、偽造・なりすまし・改ざんのリスクを抑えやすい点が、ICチップ型本人確認の特徴です。

このように、ICチップ読み取りによる確認方法は、画像送信型eKYCに比べて、本人確認の信頼性が高い方法といえるでしょう。

犯収法上の特定事業者とは?本人確認義務が課される業種一覧

記事の冒頭でも触れたとおり、今回の改正の影響を受けるのは、犯収法が定める「特定事業者」に該当する事業者です。

犯収法で特定事業者が定められているのは、犯罪収益の移転に悪用されるリスクがある取引について、事業者に確認義務などを課すためです。犯罪収益は、預貯金口座、決済サービス、不動産取引、貴金属取引、専門家による手続き代行などを通じて移転・隠匿されることがあります。

そのため、こうした取引に関わる事業者には、本人確認や疑わしい取引の届出などを通じて、マネーロンダリング対策の「ゲートキーパー」としての役割が求められています。

ここでは、特定事業者に含まれる主な業種を業種別に整理します。

金融機関・カード・決済関連

金融機関や決済関連サービスは、資金の移動に直接関わるため、マネーロンダリング対策上、特に重要な業種です。たとえば、不正に開設された口座や他人名義の口座が、詐欺被害金の振込先や犯罪収益の移転先として悪用されることがあります。

業種主な例
銀行等銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、農林中央金庫等
保険・証券生命保険会社、損害保険会社、証券会社等
カード・決済クレジットカード事業者、資金移動業者、電子決済手段等取引業者
暗号資産暗号資産交換業者
貸金・両替貸金業者、両替業者等

不動産・リース・その他

不動産、貴金属、ファイナンスリースなども、高額な取引や資産の移転を伴うため、犯罪収益の隠匿や移転に悪用されるリスクがあります。また、郵便物受取サービスや電話受付代行サービスは、所在地や連絡先をわかりにくくする目的で利用されるおそれがあります。

士業についても、会社設立、不動産売買、財産管理などの手続きに関与する場面では、マネーロンダリング対策上のゲートキーパーとしての役割が問題になります。

業種主な例
不動産宅地建物取引業者
リースファイナンスリース事業者
貴金属等貴金属・宝石等の売買を行う事業者(取引価格200万円超)
郵便等郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者等
士業弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士等

なお、特定事業者に該当する場合でも、すべての取引について本人確認義務が課されるわけではありません。本人確認が必要となる取引や業務の範囲は、業種や取引内容によって異なります。

たとえば、士業については、会社設立、不動産売買、財産管理など、一定の業務に関与する場合に本人確認義務が問題となります。また、弁護士については、犯収法上の取扱いに加え、日本弁護士連合会の会規に基づく本人確認等の対応も確認が必要です。

特定事業者の範囲は犯収法第2条に規定されており、警察庁JAFICが公表する「犯罪収益移転防止法の概要」でも整理されています。自社が対象に含まれるかどうかは、最新の法令や所管官庁の公表資料を確認することが重要です。

犯収法施行規則の改正に向けて企業が今から準備すべきこと

では、2027年4月1日に施行される犯収法施行規則の改正に向けて、企業は何から準備を始めればよいのでしょうか。

まず重要なのは、現在の本人確認方法を棚卸しし、画像送信型eKYCに依存している部分がないかを確認することです。そのうえで、改正後も利用できる本人確認方法に対応できるよう、システム対応・既存顧客の扱い・社内体制の見直しを進めていく必要があります。

eKYCシステムの対応状況を確認する

最も優先度が高い対応は、eKYCシステムの見直しです。

現在、画像送信型のeKYCシステムを利用している事業者は、2027年4月1日までに、ICチップ情報や電子証明書を用いた本人確認方法へ対応できる体制を整える必要があります。特に、マイナンバーカードのJPKIや、運転免許証等のICチップ情報を用いる方法に対応できるかどうかは、早めに確認しておくべきポイントです。

システム改修には、ベンダーの選定、要件定義、開発、テスト、運用移行といった複数のステップが必要です。社内マニュアルの整備や担当者への説明も必要になるため、相応のリードタイムが見込まれます。

施行日まで余裕があるように見えても、システム改修やベンダー切り替えには時間がかかります。現在の本人確認フローを棚卸ししたうえで、既存のeKYCシステムが改正後の方法に対応しているかを確認し、必要があれば早期にベンダーとの協議を始めることが重要です。

既存顧客の再度の本人確認が必要かを整理する

改正施行後、これまでに画像送信型eKYCなどで本人確認を済ませた既存顧客について、改めて本人確認を求める必要があるかどうかは、実務上の重要な論点です。

警察庁JAFICのQ&Aによれば、施行前に今回の改正で廃止される方法により本人特定事項の確認を行ったうえで開設された預貯金口座について、施行後に別の方法で再度確認することを求めるものではないとされています。

ただし、施行前に顧客が本人確認書類の写し等を発送していても、特定事業者が施行後にこれを受領する場合には、改正後の規則に基づく別の方法で改めて本人特定事項を確認する必要があるとされています。また、本人特定事項等に変更や追加があった場合には、確認記録への付記が必要です。

参考:警察庁JAFIC「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の改正に係るQ&A」No.3〜5

既存顧客への対応については、自社の確認方法、確認時期、本人特定事項の変更の有無を整理したうえで、最新のQ&Aや所管官庁の公表資料を確認することが重要です。

対面確認のICチップ対応を進める

2025年6月24日に公布された改正では、主に非対面取引における本人確認方法が見直されました。さらに、2026年3月6日に公布された犯収法施行規則の改正により、対面での本人確認方法についても見直しが行われ、2027年4月1日に施行されます。

参考:「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案」に対する意見の募集結果について | e-Govパブリックコメント

改正後、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券など、ICチップが搭載された本人確認書類の提示を受ける方法では、ICチップに記録された情報を読み取り、券面情報と照合して本人特定事項を確認する必要があります。

ただし、特定事業者が、法令上認められているすべての本人確認書類や確認方法に対応しなければならないわけではありません。ICチップが搭載されていない写真付き本人確認書類などを用いる方法もあるため、自社の顧客層や受付方法に応じて、採用する本人確認方法と受け付ける書類を整理することが重要です。

具体的には、以下のような対応を進める必要があります。

  • 対面で受け付ける本人確認書類と確認方法の整理
  • ICチップ情報を読み取り、画面に表示できる端末やアプリの選定・導入
  • 読み取ったICチップ情報と本人確認書類の券面情報を照合するフローの整備
  • ICチップを読み取れない場合や、券面情報と一致しない場合の対応方針の策定
  • 担当者向けの操作説明・マニュアルの整備
  • 確認記録の作成・保存方法の見直し

ICチップ情報の読み取りには、専用のカードリーダーだけでなく、対応するスマートフォンや民間事業者が提供するアプリなどを利用する方法も考えられます。自社の受付環境や既存システムとの連携を踏まえて、適切な方法を選定することが重要です。

端末やアプリの選定、システム連携、受付フローの変更、担当者への周知には一定の時間がかかります。非対面取引におけるeKYCの見直しと並行して、対面確認についても現行の運用を棚卸しし、2027年4月1日の施行に向けて準備を進めましょう。

eKYCベンダー選定で確認すべきポイント

eKYCシステムの見直しにあたっては、単に「ICチップ読み取りに対応しているか」だけでなく、自社の取引フローや既存システムとの相性も含めて確認することが重要です。

特に、ベンダー選定の段階では、以下のような点を確認しておくとよいでしょう。

  • JPKI対応:マイナンバーカードの公的個人認証に対応しているか
  • 運転免許証等のICチップ対応:運転免許証等のICチップ情報を用いる本人確認方法に対応しているか
  • 既存システムとの連携:現在利用している顧客管理システムや申込みフォーム、業務システムと連携できるか
  • 確認記録の保存対応:犯収法上必要となる確認記録の作成・保存に対応できるか
  • 将来的な拡張性:対面確認の見直しや、電子契約サービスとの連携を想定した場合にも柔軟に対応できるか

改正対応では、本人確認の方法だけでなく、申込みから契約締結、確認記録の保存までを一連の業務フローとして見直すことが大切です。

eKYCの導入・見直しを検討されている場合は、対応方法を比較しながら、自社に合ったサービスを選ぶことをおすすめします。GMOサインでも、今後eKYC機能の提供を予定しています。選定時の参考にしてみてください。

まとめ

2027年4月1日、犯収法施行規則の改正により、非対面での本人確認の在り方は大きく変わります。これまで広く利用されてきた画像送信型eKYCの一部は廃止され、ICチップ情報や電子証明書を用いた本人確認方法への移行が求められます。

今回の改正は、単なる手続き変更ではありません。偽造・変造された本人確認書類を使ったなりすましや、不正口座開設などのリスクに対応し、マネーロンダリング対策の水準を引き上げるための見直しです。

銀行、信用金庫、クレジットカード事業者、資金移動業者、宅地建物取引業者など、犯収法上の特定事業者に該当する事業者にとって、対応は避けられません。システム改修には一定のリードタイムが必要です。現在の本人確認方法を棚卸しし、改正後も利用できる方法に対応しているか、早めに確認することが重要です。

eKYCの導入・見直しを検討されている場合は、自社に必要な対応を整理しておくとよいでしょう。

本記事の執筆者
中澤泉弁護士

執筆:中澤泉(弁護士)

2015年に中央大学法科大学院を修了し、2016年に弁護士資格を取得。弁護士事務所にて債務整理や交通事故、離婚、相続など幅広い案件を担当。その後、大手メーカーでのインハウスローヤーを経て、現在は弁護士として主に企業法務に携わる。その傍らでライターとしても活動し、2025年に合同会社ことりうみを設立。同社にて法律記事の執筆・監修を手がけている。専門性と読みやすさを両立したコンテンツ制作が強み。

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この記事を書いた人

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