小売店を経営しようとする場合、販売店は商品をメーカーから仕入れなければなりません。販売店は仕入れた商品を顧客に販売して利益をあげることができますが、その際に販売店は商品やサービスの提供元であるメーカー(サプライヤー)と販売店契約を結びます。
販売店は販売店契約への理解と、契約締結時における注意点を把握しておくことが大切です。
目次
販売店契約と代理店契約の違い
販売店契約を結ぶ際、まず理解しておくべき点は販売店契約と販売代理店契約の違いです。似ている言葉ではありますが、これらには大きな違いがあります。契約内容の違いから、販売店契約をディストリビューター方式、販売代理店契約をエージェント方式と呼ぶこともあります。
販売店契約(ディストリビューター方式)とは
販売店契約とは、販売店がサプライヤーであるメーカーから商品を買い取り、その後に買い取った商品を顧客へ販売する方式のことです。販売店契約では、実質的に「販売店が顧客に商品を販売する」という形になります。販売店の収益はメーカーから仕入れた商品と、実際にその商品を顧客に販売した金額の差額になります。
販売店契約を結ぶコンビニエンスストアを例に考えてみましょう。コンビニエンスストアは、お弁当メーカーからお弁当を250円で仕入れ(買い取り)ます。そして、そのお弁当を400円でお客さんに販売します。お弁当が売れた場合、販売店であるコンビニエンスストアは150円の利益を得ることが可能です。しかし、お弁当が売れなかった場合には250円の赤字になります。
販売代理店契約(エージェント方式)とは
販売代理店契約とは、販売店がサプライヤーであるメーカーと顧客の間に立ち、顧客が商品を購入しやすいように仲介する方式のことです。販売代理店契約では、実質的には「メーカーが顧客に商品を販売する」という形になります。販売店の収益は、サプライヤーであるメーカーから受け取る手数料になります。
こちらも販売代理店契約を結ぶコンビニエンスストアを例に考えてみましょう。コンビニエンスストアは、あくまでメーカーと顧客との仲介を行うだけなので、メーカーから商品の買い取りを行いません。メーカーが希望する価格で商品をお店に置きます。メーカーが400円でお弁当を売るように指示してきたとします。お弁当が売れれば、販売店はメーカーから手数料100円を受け取りますが、売れなかった場合には利益が発生しません。しかし、お弁当の買い取りをしていないので、売れなかった場合に赤字が発生することもありません。
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販売店契約のメリットとデメリット
販売店は、ディストリビューター方式でお店を経営するか、エージェント方式で経営するかを選べます。選択する際には、それぞれのメリットとデメリットをきちんと理解しておくことが大切です。それでは、ディストリビューター方式である販売店契約のメリットとデメリットについて考えてみましょう。
販売店契約のメリット
販売店側にとって、ディストリビューター方式で商品を販売するメリットは、利益をあげやすいことや裁量権が大きい点です。販売店はサプライヤーから商品を仕入れた後、それをいくらで販売するかを自身で決定できます。
先ほどのコンビニエンスストアを例に考えてみましょう。コンビニエンスストアは、メーカーからお弁当を250円で仕入れます。それを400円で販売すれば利益は150円ですが、450円で販売すると利益は200円になります。一方、エージェント方式の場合、原則として販売価格を自由に設定することはできません。売れ残るというリスクを抱えることにはなりますが、一般的にディストリビューター方式の方が大きな利益をあげられる可能性は高くなります。
販売店契約の場合、裁量権が販売店側にあるため、お店の状況を考えて販売価格を調整できます。販売価格を低くして薄利多売で利益をあげるといったことも可能です。
販売店契約のデメリット
一方、販売店側にとってディストリビューター方式のデメリットは、不良在庫による赤字発生です。販売店はサプライヤーから商品を買い取って仕入れているため、お店に置いた商品が売れ残ると赤字になってしまいます。
たとえば、250円で仕入れたお弁当を400円で販売した場合、売れれば150円の利益となりますが、売れ残った場合には、250円の赤字になってしまいます。売れると思って大量に仕入れた商品が、予想に反し売れなかった場合、多くの在庫を抱えることになるでしょう。お弁当のように日持ちしない商品であれば、在庫リスクはお店の経営に致命的な影響を与えかねません。
一方、代理店契約(エージェント方式)は、販売店契約(ディストリビューター方式)と比較し、販売価格を自由に決められないというデメリットはありますが、在庫による赤字を抱えるリスクが少ないという点が魅力です。
販売店契約をする際に注意すべき点
小売店を経営する際には、販売店契約を締結するのが一般的な方法になりますが、契約内容をきちんと理解しておくことが大切です。サプライヤーとの契約内容によって、経営は有利にもなれば不利にもなりかねません。
代理店契約との違いを確認
販売店がサプライヤーと結ぶ契約には、ディストリビューター方式である販売店契約とエージェント方式である販売代理店契約の2種類があります。これら2つの契約内容には明確な違いがあり、法的にも異なります。メリット面だけを見て契約を結ぶのではなく、双方のデメリットやリスクも考慮したうえで決定するようにしましょう。
独占性についての明確化
販売店を経営していくうえで重要になるのは、独占性があるかどうかです。同じ地域に類似店舗がいくつもあると、経営が難しくなってしまいます。そのため、一定の区域内で類似商品を扱う店舗の数を限定することもできます。こうした措置を独占的・排他的な販売権と呼びます。
契約時には独占的・排他的な販売権をサプライヤーに認めてもらうかどうかを明確にするようにしましょう。販売店側からすればライバルが少ない方が有利になるため、独占的・排他的な販売権があった方が望ましいです。しかし、サプライヤー側にすれば、販売店は多ければ多いほど有利となるため、契約時に双方の意見が割れることもあり得ます。交渉時には将来性やサプライヤーとの関係などを総合的に考えて契約するようにしましょう。
契約内容は、明確に記載しておくことが大切です。独占的・排他的な販売権を認めるのはどの製品なのか、範囲となる区域はどこまでなのかなどの条件を記載します。明確な記載がないと、後で問題になってしまう恐れもあるので注意しましょう。
競合品の取り扱い
競合品とは、契約を結ぶサプライヤー以外のメーカーによる競合商品のことです。販売店は、競合品を取り扱ってもよいのか、契約時に明確にしておくことが大切です。
一般的に、販売店にとっては競合品を取り扱える方にメリットがあるといえるでしょう。なぜなら、サプライヤー以外のメーカーから魅力的な商品が販売された際に売れ筋となる商品を増やせるからです。一方で、サプライヤーにとっては競合品の扱いを制限することにメリットがあります。そのため、場合によっては契約時に他のメーカーによる商品の販売を制限する内容を定めることも考えられます。
トラブルを招かないためにも、競合品の取り扱いについて、明確に契約書へ記載しておくようにしましょう。競合品の取り扱いを制限するのであれば、対象となる商品の種類や、制限を課す期間など具体的な情報も契約に含めることが大切です。一般的には独占的・排他的な販売権が与えられる場合には、競合品の取り扱いが制限されるケースも多いです。
契約期間
サプライヤーとの契約期間も明確にしておくことは大切ですが、契約期間を適切に設定することも重要です。
基本的に契約期間は自由に設定でき、双方の契約解除の合意がない限りは、自動的に契約が更新されるような規定を含める場合もあります。サプライヤー側は、販売店の成績に応じて契約内容を変更したいと考えるのが普通なので、契約期間を短めに設定することが多いです。販売店側は、他の契約事項もよく考えたうえで、計画期間を決定するとよいでしょう。
たとえば、独占的・排他的な販売権が販売店に与えられている場合、契約期間は長い方がよいと考えるかもしれません。しかし、在庫リスクや初期投資など、経営状況は販売店によって違うため、上手にバランスをとることが大切です。
契約終了に関する規定もきちんと記載しておきます。とくに契約違反が発生した時に、スムーズに契約を解除できるようにしておくことが重要です。
損害賠償や秘密保持
販売店契約を結ぶ際には、損害賠償についても契約内容を確認するようにしましょう。損害賠償は、相手が契約違反をした時に生じた損害を賠償してもらう規定です。損害賠償に関しても、賠償する範囲や条件などをしっかりと明記しておくことが重要です。多くの場合には民法を基準に損害賠償額を決定しますが、状況に応じて賠償の範囲を調整します。
秘密保持に関する規定については、サプライヤーによって規定が異なるため、内容を確認しておくことが大切です。機密情報が漏洩しないようにするための規定に加えて、もしもそのような事態が生じてしまった際の対応方法なども明記しておくようにしましょう。
まとめ:販売店契約をする時のポイント
小売業を始める場合には、商品の仕入れ先であるサプライヤーと契約を結びますが、販売店契約はディストリビューター方式であることを覚えておくようにしましょう。ディストリビューター方式のメリットは利益をあげやすいことや、裁量権が大きいことですが、デメリットとして在庫リスクが大きいことが挙げられます。メリットだけでなく、デメリットについてもよく考えてから契約を結ぶことが大切です。
契約を結ぶ際には、販売店契約と代理店契約の違いに注意しましょう。契約内容として、契約期間だけでなく独占性について明確にすることが必要です。また、競合品の取り扱いや、損害賠償、秘密保持についても明確に記載しておくことトラブルを未然に防げます。
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