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契約不履行とは?問題発生時の対応と未然に防ぐための方法

 

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契約を行ううえで、避けては通れない「契約不履行」。きちんと内容を理解していないと、万が一のトラブルがあったときの対処に困ってしまいます。ここでは、契約不履行とは何か、そして契約不履行が起こってしまった場合の対処法などをわかりやすく説明します。

目次

契約不履行とは?

契約不履行とは、契約を当事者の一方が守らないことをいいます。民法上では、「債務不履行」といいますが、意味はほぼ同じです。

例えば、買主Aと売主Bで商品(ここでは中古車を例に挙げます)を代金100万円で売買する契約を結んだとします。Aには、中古車を引き渡してもらう債権、代金100万円を支払う債務が発生します。一方でBには、代金100万円を受け取る債権、中古車を引き渡す債務が発生します。

しかし、このような契約関係にもかかわらず、売主Bが期限を過ぎても中古車を引き渡さない場合、Bは契約不履行に陥っているといえます。逆に、買主Aが支払期限を過ぎても代金を払わなければ、Aは契約不履行に陥っているといえます。

契約不履行の種類や要件

契約不履行には、①履行遅滞、②履行不能、③その他の債務不履行があります。

①履行遅滞

履行遅滞とは、履行期限が到来しても債務を履行しない場合をいいます。上の例では、買主Aが支払期限を過ぎても代金を支払わない場合、又は、売主Bが引渡期限を過ぎても中古車をAに引渡さない場合をいいます。

民法第412条は、履行遅滞について以下のように規定しています。

第412条

第1項        債務の履行について確定期限のあるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

第2項        債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

第3項        債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

このように民法第412条は、契約締結段階で、債務の履行についてⅠ確定期限を定めたとき、Ⅱ不確定期限のあるとき、Ⅲ期限を定めなかったときの3つのケースに分けて、履行遅滞に陥った債務者の責任について定めています。債務者の責任については、3 契約不履行の際の債権者の対処法で具体的に説明します。

②履行不能

履行不能とは、債務を履行できない場合をいいます。

上の例では、中古車が引き渡される前に落雷などによって使用不可能となったときに、売主Bは履行不能にあるといえます。

履行遅滞はまだ履行ができる状態にあるのに対し、履行不能はもはや履行できない点で、履行遅滞と異なります。

民法第412条の2は、履行不能について以下のように規定しています。

第412条の2

第1項        債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

第2項        契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償をすることを妨げない。

③その他の契約不履行(不完全履行など)

①、②以外の場合でも、債務を完全に履行したとはいえない場合には契約不履行となる場合があります。

例えば、上の例で、売主Bが期限内に中古車を買主Aに引渡したが、その中古車のエンジンは故障しており使用できないような場合、契約不履行となります。

また、上の例における中古車の取扱方法が特殊であり、売主が充分に取扱方法を説明しなければ買主が満足にその中古車を使用できず、契約の目的を達成することができない場合は、売主Bは買主Aに対して中古車の使用方法を説明する責任を負います。それにもかかわらず売主Bが中古車の取扱方法を説明しなかった場合、買主Aに期限内に中古車を引き渡していたとしても、売主Bには契約不履行があるといえます。このような説明義務違反もその他の契約不履行に含まれる場合があります。

さらに例えば、上の例において、売主Bが中古車を買主Aの住む建物内に運び入れる際に、故意又は過失により建物の壁を汚してしまった場合などがあたります。売主は原則として、買主に対し搬入先の建物を損傷しないように注意を払う義務を負います。それにもかかわらず、売主Bがその義務を怠った場合は、契約不履行があるといえます。このような注意義務違反もその他の契約不履行に含まれる場合があります。

③の類型のように、民法の条文にはなくとも、契約不履行となる場合があります。

契約不履行の際の債権者の対処法

ここでは、債務者が契約不履行になってしまった場合、契約の相手方である債権者はどのような権利を行使することができるのかを解説します。

履行の強制(第414条)

債務者が債務の履行を行わない場合、債権者は履行の強制(強制的に債務を履行させること)を裁判所に請求することができます(同条1項)。裁判所が債務者に対し強制執行をすることになるので、債権者は債務名義(債権の存在および範囲を公的に証明した文書)が必要となります。履行の強制は、契約不履行に陥っても債務の履行が可能であることが前提であるので、②履行不能の場合は履行が不可能であるため履行の強制ができないことに注意が必要です。

損害賠償請求権(第415条)

債権者は債務者に対し、債務を履行しなかったことによって負った損害を埋め合わせしてもらう権利も有します。上の例で、買主Aが業務を行うために今すぐ中古車を必要としており、売主Bが中古車を引き渡すことが遅くなったために他の車を借りなければならなかった場合、買主Aは売主Bに対してレンタカー代を損害賠償として請求することができます。

損害賠償の範囲は、契約不履行によって通常生ずる損害、又は予見することができた特別な事情による損害に限定されます(第416条)。

ここで、2020年施行の改正民法で第415条1項が改正されたため、債務者が損害賠償責任を免れるためには、請求を受けた債務者自身が責めに帰することができない事由(帰責事由)のないことを立証する責任があることが明記されました。そのため、債権者には債務者の帰責事由を立証することまでは要求されていません。なお、不法行為における損害賠償請求における故意・過失について立証責任を負うのは請求する側です。

第415条

第1項       債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

また、損害賠償請求には時効があることにも注意が必要です。債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求の場合は20年間経過した場合には債権は消滅するとされています(第166条、167条)。

契約解除(第540条)

債権者は、契約関係にある以上、債務者が債務を履行するのが遅れたり履行ができなかったりする場合でも、債務者に対する債務は残ります。上の例でいえば、売主Bは中古車を引き渡せない状況にあっても、買主Aは売主Bに対して代金を支払う債務は負ったままです。例えば、今すぐ業務のために中古車を必要とする買主Aは売主Bから中古車を受け取るのを待たなければならないとすると、業務が滞ってしまいます。そこで、買主Aは別の中古車を調達するために、新たな中古車売買契約を締結し、売主Bとの契約を解除することができます。

このように契約解除は、債権者を契約の拘束力から解放し、新たな契約を結ぶ自由を保障する趣旨のものです。したがって、損害賠償とは異なり、債務者の帰責事由は要求されません。そのかわり、債権者に帰責事由がある場合には債権者は解除をすることができません(第543条)。ここも民法改正によって変更された重要な点であるので、注意が必要です。

上の例では、売主Bが中古車を引き渡せなかったことが落雷など天変地異によるものでも、不注意により中古車を故障させたことによるものでも、売主Bの帰責事由の有無にかかわらず買主Aは契約を解除することができます。ただし、中古車の引渡し前に試乗した際に、買主Aの不注意で中古車を大破させた場合は、買主Aは契約を解除できず、代金を払わなければなりません(第536条1項)。

契約不履行を防ぐ方法

契約不履行は、債務者が契約によって生じる義務に違反することによって生じます。そのため、期限内に中古車を完全な状態で引き渡すなど、債務者が債務を完全に履行すれば問題ありません。では、債務者に債務を完全に履行させるにはどのようにすればよいでしょうか。

一つの方法として、債務者に債務を履行させるために、あらかじめ賠償額を決めておくことがあります。契約の当事者は契約不履行があった際の損害賠償の額を予定することができます(第420条1項)。あらかじめ債務を履行しなかった場合に支払わねばならない賠償額を決めておくことで、債務者は「債務を果たさなければ~円払わなければならないのか」と、契約不履行になったときに自分が負うことになる責任について具体的にイメージできるため、債務者が安易に債務を履行しないという事態を防ぐことができます。

なお、あらかじめ賠償額を規定したとしても、実際に契約不履行となった場合には履行の強制、又は解除も可能です(第420条2項)。

ただし、予定された賠償額が不当に高額であるなど、公序良俗(第90条)に反する場合には無効となるので、注意が必要です。賠償額の予定を書面として残しておくことも忘れないでください。

まとめ

本記事では、契約不履行についての基本的な事項を、具体例を混じえつつ、民法改正による重要な変更点も含めて説明しました。

以上はすべて、契約を結ぶうえでの基本的な知識であるので、しっかり理解しておきましょう。

 

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この記事を書いた人

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