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秘密保持契約(NDA)に違反したらどうなる?違反の事例や罰則について徹底解説!

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契約を交わすにあたって、同時に秘密保持契約を締結するケースも決して珍しくありません。事業内容によっては、機密事項を取り扱うことも珍しくないからです。

秘密保持契約は個人や法人が保有している秘密情報について、第三者への漏洩を禁ずる取り決めを盛り込んだ契約のことです。会社によっては守秘義務契約や非開示契約と呼ぶこともありますが、内容としては同様です。

秘密保持契約の内容や、違反時のペナルティについては、正しく理解しておくべきです。

目次

秘密保持契約の必要性

契約を交わすにあたって、秘密保持に関する項目を盛り込むケースは決して少なくありません。秘密保持契約が必要なのは、相応の理由があります。

不利益を回避するため

まず大きいのは、会社の情報を取引先に開示することで不利益を被らないようにするためです。もし秘密保持に関する取り決めをしておかないと、独自に保有していた技術情報を取引先が勝手に使ってしまう可能性があります。

手に入れた技術を使って、自社よりも安い価格で商品を生産してしまい、自社が受けるべき利益を逸する可能性すら出てきます。また簡単に第三者が手に入れられるような情報では、特許の申請をしても認められない可能性があります。

(特許の要件)

第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明

 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明

 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

出典:特許法 | e-Gov法令検索

上で紹介したように、特許法では公然と知られているようなものでは特許を得られないと規定されています。特許を取得できれば、他社の模倣を防げるため、自社製品の売り上げを伸ばせます。秘密保持契約を締結しなかったことで、特許が得られなければ、得られるはずだった利益もみすみす逃す形になりかねません。

営業秘密の根拠を示すため

秘密保持契約の締結は、営業秘密の根拠を明確にすることも目的の一つです。

たとえば、取引先がこちらの持っている技術情報をベースに商品を作った場合、情報提供した側は不正競争防止法に基づき、違法性を指摘できる可能性があります。しかし不正競争防止法違反を指摘するためには、営業秘密の要件を満たすことが前提です。不正競争防止法の中では以下のような条文が記載されています。

(定義)

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

上記のように不正競争であることの根拠を示さないと、相手方に違法性を指摘できません。違法行為を主張するためにも、秘密保持契約を交わしておいた方が良いでしょう。

秘密保持契約によって制約の伴う行為

秘密保持契約を交わすのは、情報を開示した側が不利益を被らないようにするためです。情報開示を受けた側は、今後の経済活動において、いくつか制約を受けます。もし秘密保持契約の当事者になった場合、どのような制約を受ける可能性があるのか理解しておきましょう。

情報の複製

秘密保持契約を交わしたうえで、提供された情報の複製は制約されなければなりません。機密情報が漏洩されてしまえば、情報開示した側が被害を受ける可能性があるからです。

秘密情報の記載されている書類のコピーやスキャンなどの行為は原則として禁止です。また、秘密情報の記載された文書をメールに添付して送信することも禁じられます。

情報の分析

秘密保持契約の中に含まれる情報の分析が制限対象になる可能性のあることは、あらかじめ理解しておいた方が良いでしょう。たとえば、システムの根幹をなす構築情報や製品開発のベースになったノウハウを取得されれば、情報開示した側が何らかの不利益を被る可能性が出てきます。

具体的に禁止行為に該当する可能性のあるものとして、リバースエンジニアリングや逆アセンブルをはじめとした行為が考えられます。禁止の対象となる情報を明示することで、情報開示側も秘密情報の漏洩を特定しやすくなります。

契約で定められた目的以外での情報利用

秘密保持契約を交わした場合、契約の中で明記されている目的以外で情報を使用することも制限されます。

たとえば、契約の中で、秘密情報を両当事者共同でのシステム開発に利用すると記載した場合を考えましょう。この場合には、その技術を情報受領側が自社システム開発のために使ってはなりません。秘密保持契約締結の目的に合致しないからです。

情報返還や破棄に関する方法

入手した秘密情報の返還や破棄に関する方法も、制約が発生する可能性があります。秘密保持契約で一般的にみられるのが「契約が終了もしくは中止した時点で秘密情報の記された一切の書類や資料を返還(破棄)すること」という条文です。どの段階で秘密情報を破棄したり、情報提供側に返還したりすれば良いかを明記しておきましょう。

また、口頭ではなく、破棄した証拠としての文書を作成することも大切です。通常は破棄証明書と呼ばれる文書を作成して、情報開示側に提出する手法を取ります。

情報開示の範囲

秘密保持契約では開示情報の範囲や、開示された情報の提示対象者を特定するのが一般的です。

情報開示側からすれば、秘密情報を把握する関係者は、できるだけ減らしたいところです。情報開示する範囲が広くなれば、より情報漏洩のリスクが高まるからです。しかし受領側からすれば、情報のほとんどを自社の人間に開示せずにビジネスを進めるのは難しいでしょう。

そこで、開示情報の共有を許可する対象者を特定し、秘密保持契約の中に盛り込んだ方が良いわけです。また、契約当事者だけでなく、第三者に情報開示するケースもあるかもしれません。

たとえば、当事者の顧問弁護士や公認会計士、税理士に対しても情報開示の必要が出てくるかもしれません。ただし第三者に情報提供を許可する際には、第三者も契約当事者と同レベルの情報管理義務を負わないといけません。そのため、第三者が負うべき義務も契約書に盛り込んだ方が良いでしょう。

秘密保持契約に違反した場合のペナルティ

秘密保持契約を交わし、情報提供を受けた受領側が制限に違反した場合は、どのようなペナルティが科せられるのでしょうか。

違反によって、提供側に損害が生じた場合には、損害賠償請求を求められるかも知れません。また、契約違反が発覚すれば、契約解除の措置が取られるのが一般的です。しかし、秘密保持契約はその性質上、通常の契約とは若干異なりますので注意が必要です。

契約解除

契約違反が確認された場合、即刻契約解除になるのが一般的です。しかし、秘密保持契約の場合、問題になるのは、契約解除では、秘密保持義務が当事者から消失する点です。

つまり秘密保持契約を解除してしまうと、情報漏洩のリスクが逆に高まってしまいます。そのため、秘密保持契約書を作成する際には、違反した場合の措置として、即刻契約解除するという一文は盛り込まれないことが多いです。

差止請求や損害賠償請求が一般的

もし秘密保持契約に違反する行為が確認された場合、受領側には相応のペナルティが発生する可能性があります。具体的には差止請求や損害賠償の請求といったペナルティが科せられることが一般的です。

差止請求では、秘密情報を受領側がこれ以上利用できないように請求する形が一般的です。損害賠償額は、秘密情報の利用によって生じた損害がベースになるでしょう。

また、秘密保持契約に関する条項違反がない場合でも注意が必要です。不正競争防止法に定められた営業秘密の漏洩に該当する場合には、同様のペナルティが科せられる可能性があります。秘密保持契約を交わした場合には、情報の取り扱いに関して細心の注意を払わなければなりません。

秘密保持契約と法的保護の関係

多くの企業は、企業間の取引において秘密保持契約の締結が必須と考えています。まだ業歴の長くないスタートアップやベンチャー企業でも、秘密保持契約については注意を払っています。しかし、秘密保持契約が法的保護を受けられるかというと、そう簡単なものではありません。

判例がそもそもあまりない

上場企業ともなると、毎日のように秘密保持契約を締結することも珍しくありません。しかし、これだけ広く普及している秘密保持契約ですが、実際の裁判例はあまり多くありません。企業内における労使間の守秘義務に関する判例はありますが、取引先との秘密保持契約で争われた事例はあまり多くありません。

不正競争行為差止等請求事件

企業間の秘密保持契約をめぐる判例は、少ないですが、全くないわけではありません。たとえば、平成24年には、大阪地裁で不正競争行為差止等請求事件の判決が出ています。

原告は、攪拌造粒装置における主要パーツの製造を被告に委託しました。そして被告企業は、この取引が完結した後に、別の会社から委託を受けて攪拌装置を製造販売しています。これが特許権侵害と秘密保持義務違反に該当するとして訴訟を起こしました。

今回の契約では、以下のような秘密保持義務が盛り込まれていました。

「第35条(秘密保持)
1) 乙は,この基本契約ならびに個別契約の遂行上知り得た甲の技術上および業務上の秘密(以下,機密事項という。)を第三者に開示し,または漏洩してはならない。但し,次の各号のいずれかに該当するものは,この限りではない。
① 乙が甲から開示を受けた際,既に乙が自ら所有していたもの。
② 乙が甲から開示を受けた際,既に公知公用であったもの。
③ 乙が甲から開示を受けた後に,甲乙それぞれの責によらないで公知または公用になったもの。
④ 乙が正当な権限を有する第三者から秘密保持の義務を伴わず入手したもの。
2) 乙は,機密事項を甲より見積作成・委託・注文を受けた本業務遂行の目的のみに使用し,これ以外の目的には一切使用しない。
(略)
4) 乙は機密事項‥(略)‥を厳に秘密に保持し,本業務の遂行中はもとより,その完成後も甲の文章による承諾を得た者以外には,一切これを提供あるいは開示しない。」

出典:平成24年12月6日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官
平成23年ワ第2283号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成24年9月13日

原告側は取引終了後に利用した技術情報が35条に抵触すると主張しています。しかし、裁判所の判決は以下のようになりました。

本条における秘密保持義務の対象については,公知のものが明示で除外されている(本件基本契約35条1項②及び③)。そして,被告は,原告の「技術上および業務上の秘密」(本件基本契約35条1項本文)について秘密保持義務を負うと規定されているが,その文言に加え,被告の負う秘密保持義務が本件基本契約期間中のみならず,契約終了後5年間継続すること(本件基本契約47条2項)に照らせば,原告が秘密と
するものを一律に対象とするものではなく,不正競争防止法における営業秘密の定義(同法2条6項)と同様,原告が秘密管理しており,かつ,生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な情報を意味するものと解するのが相当である。

出典:平成24年12月6日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官
平成23年ワ第2283号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成24年9月13日

判決文の中では、不正競争防止法で定められた営業秘密の要件を満たしていない情報であると判断されています。そのような情報について、契約上からも被告側に特別な義務を負わせられないと結論付けています。

製造販売差止等請求控訴事件

平成11年12月に東京高裁で出された判決です。原告は、カードポイント管理システム開発企業で、被告はそのシステムをベースにしたPOS機器販売企業であり、両社は契約を締結しています。

契約の中で秘密保持義務規定を設け、その内容に基づき、被告企業にカードポイント管理システムの技術情報を提供しました。ところが被告企業は、この技術情報を使ったPOSシステムを小売店に使用させています。これが秘密保持義務違反となると訴訟を起こしたのですが、裁判所は以下のような判決を下しました。

本件契約において、本件契約第五条一項但書②の「公知または公用の情報」に、公然と知られ、又は公然と実施されている情報から容易に想到し得る情報が含まれるものと解しても、格別契約当事者の合理的意思に反する結果となるものとは認められない。

出典:平成一〇年(ネ)第四八三九号製造販売差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成四年(ワ)第八五三七号)(平成一一年一〇月四日口頭弁論終結)

同号証記載の技術と公知のカードポイントシステム(原判決九二頁七行目から九三頁九行目まで)とを組み合せることが、一般人やPOS端末機製造販売業者にとって、容易に想到し得るものとはいえないと主張するが、カードポイントシステムにおける累計ポイントの最新更新年月日に相当するものが、クレジットカードにおいては最新使用年月日に当たることは明らかであり、また、同号証記載の技術を公知のカードポイントシステムに適用することがPOSシステム又はPOS機器の製造販売業者にとって、容易に想到し得るものではないとする理由については具体性を欠き、控訴人の主張はいずれも採用することができない。

出典:平成一〇年(ネ)第四八三九号製造販売差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成四年(ワ)第八五三七号)(平成一一年一〇月四日口頭弁論終結)

原告側の開示した情報は公知もしくは公用の情報ではありません。しかし、情報そのものが容易に想到できるものであると判断しています。このような情報は公知もしくは公用の情報と同じで、秘密性は認められないという結論に至ったわけです。

まとめ

重要な情報を保護するために、取引先と秘密保持契約を交わすことは重要です。ビジネスの世界で秘密保持契約の締結は、常識になりつつあります。しかし、秘密保持契約違反があった場合、裁判を起こして裁判所が認めるかというと必ずしもそうではありません。

そのため、秘密保持契約だけに頼らず、自社のセキュリティを向上させることなども大事です。効果的な秘密管理方法に関しても検討し、秘密情報を自ら守る意識を持つようにしましょう。

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この記事を書いた人

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