契約書を作成する時に迷ってしまうのが「フォント」選びです。フォントは相手に与える印象を左右する重要なもので、契約書の読みやすさや読みにくさは、スムーズな契約締結に大きな影響を与えかねません。ここではフォントの基本と、その選び方を解説するとともに、契約書でよく使われるフォントを紹介します。
目次
フォントとは
文字のデザインのことを「フォント」と表現してしまいがちですが、正確にはある一貫したデザインで作られた文字の集まりのことを表す「書体」を、印刷や画面表示などに使えるようにひと揃えにしたものを言います。しかし、一般的にはフォントと書体を両方とも「文字のデザイン」という意味で使っているケースがほとんどです。
このように本来は文字のデザインのことを書体(Typeface=タイポフェイス)と呼びますが、ここでは一般的な言葉として、フォントを「文字のデザイン」という意味で解説しています。
契約書のフォント選びのマナー
契約書にはどのようなフォントを使えば良いのでしょうか。もちろん作成者の好みで選べば良いのですが、いくつかの注意点があるので覚えておきましょう。
以前の契約書やほかの書類のフォントに揃える
契約書を自分で作る場合、自分の好みで選ばずに、まずは以前作成した契約書のフォントに合わせましょう。受け取る相手方からしてみると、担当者や契約書によってフォントがバラバラというのは印象が良くありません。企業としては一貫したフォントに揃えることが重要です。この時、文字サイズや行間もできるかぎり揃えることが望ましいと言えます。
また、契約書だけでなく、ほかの書類ともフォントを合わせましょう。例えば、契約書とともに使用許諾契約書や受発注書などを送付する場合、すべての書類のフォントがバラバラだと、ちぐはぐな印象を与えてしまいます。もちろん、書類によってあえてフォントを変えることも考えられます。その場合でも、同じ種類の書類には同じフォントを使う統一感を持たせることが重要です。
ポップなフォントは避ける
契約書は固い印象があるため、丸文字やポップな印象のフォントを選ぶのは避けましょう。送付する相手によっては不快感を与えてしまい、契約が締結できないといったトラブルになることも考えられるためです。フォントの選択はTPOに合わせることが重要です。
フォントはOSに依存する
契約書に使うフォントをこだわって決めた場合、印刷して渡すのであれば問題ありませんが、電子契約を行う場合など、相手に電子ファイルとして送付するのであれば注意したいポイントがあります。それはフォントがOSに依存するという点です。
例えば、Windowsに標準で搭載されているメイリオ(Meiryo)というフォントは、Mac(macOS)にはありません。MacにMicrosoft Officeをインストールしている場合は使えるのですが、標準では搭載されていないため、もしメイリオが使われたファイルをMacで開くと、別のフォントに変換されてしまいます。また、Macに標準で搭載されるフォント、ヒラギノ角ゴを使ったファイルをWindowsで開くと、MSゴシックなどに変換されてしまいます。こうした場合、文字間や行間の設定によっては文字が重なったり、はみ出てしまったり、内容が読めないという事態も発生しかねないため、注意が必要です。
なお、PDFファイルにはフォントをファイルに埋め込むことで、OSになど環境のことなる相手でも同じフォントで表示できる機能があります。しかし、すべてのフォントが埋め込めるわけではないため、閲覧する相手によっては文字が見えない、レイアウトが崩れるといったことも懸念されます。OS依存のフォントを使う場合は、相手からどう見えるか、検証を行ってから使うようにしましょう。
ひげ付き、ひげなしで選ぶ
フォントは、大きく分けると2種類あります。日本語では明朝体とゴシック体、アルファベットであればセリフ体とサンセリフ体です。明朝体は筆で書いたようなデザインで「ひげ(または“うろこ”)」と呼ばれるデザインが特徴です。ゴシック体はシンプルに文字がデザインされています。同じようにセリフ体には「ひげ」があり、サンセリフ体にはありません。
好みの問題ではありますが、契約書などの固い文章では、明朝体やセリフ体が多く使われている印象です。しかし、明朝体は印刷する時は読みやすいフォントですが、コンピュータの画面上では読みやすいフォントとは言えません。電子契約がメインになるのであれば、デジタルコンテンツの多くがひげのないゴシック体で作られているように、契約書にゴシック体を使うことも検討してみましょう。
なお、電子契約ではスマートフォンで契約書を確認し、承認するといったことも可能になります。この時に注意しなくてはならないのが、明朝体です。OS依存と同じ問題ですが、Androidを搭載するスマートフォンの多くは、標準で明朝体が使えません。注意しましょう。
フォントサイズにも注意
長い契約書だからページを少なくしようと約款のように小さなフォントにしてしまうと、読みにくくなってしまいます。契約書には重要な内容が書かれているため、締結後もしばしば内容を確認します。フォントサイズはA4サイズの紙で10〜12pt程度で作ると良いでしょう。
プロポーショナルフォント
フォントには名前に「P」と付いたものがあります。例えば「MS Pゴシック」と「MS ゴシック」などです。これらはプロポーショナルフォントと言って、文字の種類によって文字の左右の空白を調整しているフォントです。一方、等幅フォントはすべての文字の幅が同じです。プロポーショナルフォントを使うと、細い文字の左右に発生する隙間がなくなり、読みやすくなります。しかし、等幅フォントにもメリットがあります。例えば、一行の文字数が決まっている場合には、等幅フォントのほうが読みやすいです。
契約書によく使われるフォント
フォントの選び方は分かりましたが、具体的にどのフォントを使えばいいのか迷うこともあるでしょう。。そこで、選び方の参考として、契約書でよく使われているフォントをいくつか紹介します。
日本語のフォント
ヒラギノ明朝
游明朝
MS明朝
ヒラギノ角ゴ
MSゴシック
游明朝

MS明朝

メイリオ

ヒラギノはMacに標準で搭載されるフォントで、ほかはWindowsに標準で搭載されるフォントです。しかし、MacでもMicrosoft Officeをインストールしていれば利用できます。なお、MS明朝やMSゴシックは文字によって線の太さがまちまちなため、きれいな文章に見えないことが欠点です。
英語/数字のフォント
Times New Roman
Century
Verdana
Arial
いずれもMac、WindowsどちらのOSにも標準で搭載されているフォントです。Arialは文字間が狭く、読みにくく感じる場合があります。また、Centuryには斜体(イタリック体)が用意されていません。このため、斜体にした場合は単純に文字が斜めに伸ばされるだけで、美しくないという欠点があります。
契約書のフォント選びは重要、電子契約ではきちんと読めるか確認も重要
契約書に使うフォントは、契約書を受け取った相手に与える印象に直結するため、その選び方はとても重要です。しかし、奇をてらったフォントを選ぶことは間違いです。まずは、ほかの契約書とフォントを揃えたり、読みやすい大きさに設定したりと、基本的なことを確認しましょう。もし、どのフォントを選べば良いか分からない場合は、本文で紹介した「契約書によく使われるフォント」を参考に選んでみてください。
なお、フォントは印刷した時とPCやタブレットの画面上では印象や読みやすさが変わります。電子契約をメインに考えているのであれば、ゴシック体を優先して選ぶのも良い選択と言えます。