2024年(令和6年)12月2日に現行の健康保険証の発行が終了します。健康保険証が廃止され、マイナ保険証に移行するためです。とはいえ、今後医療機関を受診する際にはどうすればいいのか、いまだわかっていないという人も多いでしょう。マイナ保険証に関するデメリットを耳にすることも多く、不安を抱えている人もいるかもしれません。今後何をすべきなのか、把握しておきたいところです。
本記事ではマイナ保険証について、基本的な仕組みやメリット、デメリットなどを全般的に解説します。
目次
マイナ保険証とは?
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することです。あらかじめマイナ保険証の利用登録を済ませておくことで、利用できるようになります。では、マイナ保険証の利用登録の方法と利用方法について見ていきましょう。
マイナ保険証の登録方法
マイナ保険証の利用登録は、パソコンやスマートフォン、セブン銀行ATMなどで行うことが可能です。パソコンの場合にはICカードリーダーが必要で、スマートフォンの場合にはNFCの読み取りに対応している機種でないと行うことができません。
マイナ保険証の利用登録の場合、QRコードを用いた認証は利用できません。パソコンから利用登録を行う場合はICカードリーダーが必要です。
パソコンの場合
パソコンの場合には専用サイトにアクセスし、「利用を申し込む」をクリックしましょう。規約の確認などを行ってから、ICカードリーダーにマイナンバーカードをセットして「申し込む」をクリックします。それからマイナンバーカード発行時に設定した4桁のパスワードを入力するという手順です。
スマートフォンの場合
スマートフォンはマイナポータルアプリをインストールして起動しましょう。「健康保険証利用申込」を選択して規約の確認などを行います。それから「申し込む」をタップしてマイナンバーカードを読み込み、4桁のパスワードを入力するという手順です。
マイナ保険証の利用方法
マイナ保険証を利用する際には、医療機関の受付に設置されている専用のカードリーダーにマイナンバーカードを挿入しましょう。マイナンバーカードの読み取り後、本人確認が行われます。本人確認方法としては顔認証と暗証番号の2つの方法があり、どちらかを選択可能です。暗証番号の場合には3回間違えると利用できなくなってしまうため、注意しましょう。
本人確認が済むと、情報取得に関する同意を求められます。次に高額医療費の限度額利用の有無を選択するという手順です。
最後にマイナンバーカードを受け取るのをお忘れなく。
マイナ保険証のメリット
マイナ保険証を利用することでどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
自分で医療情報の確認ができる
マイナ保険証を利用している場合には、マイナポータルでこれまで受診した医療機関や処方された医薬品のデータを確認できます。これまでどのようなことで医療機関を受診してきたのか、どのような医薬品を服用したのか把握できるため、健康管理に役立つでしょう。
健康保険の切り替え手続きで手間がかからなくなる
就職や転職、退職などで健康保険が切り替わることがあります。家族の扶養に入ることもあれば、扶養から抜けることもあるでしょう。これまでは、健康保険証の切り替えの際には手続きが必要でした。以前まで使用していた健康保険証を返納して、新しい健康保険証を発行してもらう必要があったため、面倒に感じていた人も多いでしょう。
マイナ保険証なら、健康保険の切り替えに伴って返納や発行などの手続きは必要ありません。加入などの手続きを済ませるだけで済むため、手間がかからなくなります。
確定申告の医療費控除がかんたんになる
医療費控除の申請に必要な1年分の医療費を集計する方法にはさまざまなものがありますが、マイナンバーカードを持たず現行の健康保険証を使用している場合、その集計が面倒かつ複雑なものとなっているケースがあります。1年分の医療費の領収書を保管しておき、集計している方もいるかもしれません。毎年時間と手間をかけて行っている人も多いでしょう。
マイナ保険証を使用していれば、e-Taxとマイナポータルを連携させることで、医療費控除に使用する医療費通知情報を取得し、確定申告書の該当項目に自動入力できます。これまでのように集計作業をしなくて済む点は、大きなメリットです。
限度額を超える場合に一時支払いをしなくて済むようになる
医療費として支払う金額には、所得金額などに応じて限度額が設定されています。限度額を超える場合には高額医療費として扱われて、健康保険で負担する仕組みです。しかし、現行の健康保険証を使用している場合、限度額を超える場合でも窓口で一時払い(一時負担)をしなければなりません。後日払い戻しされますが、それでも大きな金額を工面するのが厳しいと感じている人もいるでしょう。
マイナ保険証を利用していれば、限度額を超える場合の一時払いは必要なくなります。これは、大きなメリットです。限度額を超える場合も、窓口では限度額の分だけ支払えば済むようになります。
役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをする必要もありません。
初診料と再診療が少し安くなる
現行の健康保険証を利用する場合には、初診料の加算が30円、再診料の加算が20円かかります。これに対して、マイナ保険証を利用する場合にはいずれも10円です。初診であれば20円、再診であれば10円安く済みます。
マイナ保険証のデメリット
マイナ保険証はメリットもありますが、デメリットが懸念されることも多いです。具体的にどのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
マイナンバーカードの有効期限が切れると利用できなくなる
マイナンバーカードには有効期限が設定されています。有効期限が近づいたら、期限切れになる前に更新手続きを済ませておかなければなりません。マイナンバーカードの有効期限は通常10年、未成年者は5年と長く、更新時期が近づくと通知が届きます。しかし、それでも更新手続きが面倒で先延ばしにするなどしていて、有効期限切れになってしまう人もいるでしょう。
マイナンバーカードが有効期限切れになった場合には、マイナ保険証も使えなくなってしまうため注意が必要です。
また、マイナンバーカードには電子証明書も付いています。電子証明書の有効期限は5年です。なお、マイナ保険証はマイナンバーカードのICチップにある電子証明書を使う仕組みのため、マイナンバーカードそのものは有効期限内であっても、電子証明書の有効期限が切れている場合はマイナ保険証を使えなくなります。
電子証明書の更新のお知らせが届いたら、忘れずに更新に行きましょう。
マイナンバーカードを紛失すると一定期間利用できなくなる
マイナンバーカードを紛失した場合には、マイナ保険証も使えなくなります。マイナンバーカードは再発行が可能ですが、すぐにはできません。現状では1〜2カ月程度かかります。その間はマイナ保険証が使えない点に注意が必要です。
ただし、2024年(令和6年)12月以降は、再発行にかかる期間が短縮され、最短5日程度で再発行できるようになるとのことです。
システムや機器の不具合により利用できなくなる場合がある
マイナ保険証の運用に利用されているシステムに不具合が生じることもあります。システムを通じて本人確認などを行っているため、システムに不具合が生じているときには、利用できなくなる可能性があるとされています。
また、医療機関に設置している読み取り機器が故障するなどして、一時的に利用できなくなる場合も考えられるでしょう。
一部の医療機関ではマイナ保険証に対応していない
2023年4月以降は、医療機関にマイナ保険証への対応が義務付けられました。そのため現在では9割以上の医療機関でマイナ保険証に対応しています。しかし、それでも一部の医療機関では、カードリーダーの設置がされていないなど、まだマイナ保険証に対応していません。
マイナ保険証に未対応の医療機関を受診する際には、現行の保険証を持参する必要があります。
公費負担医療制度を利用する場合には受給者証の提示が必要
医療費に関して、公費負担医療制度を利用している人もいるでしょう。公費負担医療制度というのは、小中学生医療費助成やひとり親家庭医療費助成、障害者医療費助成などです。
公費負担受給者証の情報に関しては、マイナ保険証には紐づけされていません。そのため、公費負担受給者証を使用する場合には、マイナ保険証に移行した後もこれまで通り窓口での提示が必要です。
情報漏洩のリスクがある
マイナンバーカードには顔写真が付いており、さまざまな個人情報が記録されたICチップも埋め込まれています。そのため、万が一紛失してしまったときには個人情報が漏洩してしまう可能性があります。
紛失時には、24時間365日フリーダイヤルのマイナンバーカード総合窓口(0120-95-0178)に利用停止の連絡をして、指示を仰ぎましょう。
高齢者にとっては利用時の操作が難しい
マイナンバーカードを利用するときに行う操作は、一般的にはごくかんたんなものです。しかし、高齢者など機械の操作が苦手な人にとっては難しいと感じる場合もあります。スムーズに操作できず時間がかかってしまうこともあるかもしれません。
後ろに並んでいる人にとっては、順番がなかなか進まないため、イライラしてしまうこともあるでしょう。
マイナ保険証が使えないときの対処法
前述の通り、システムの不具合や機械の故障などでマイナ保険証が使えなくなる場合も想定されます。そのような場合には、使えるようになるまで、医療機関を受診できないのかと不安になる人もいるでしょう。しかし、マイナ保険証に移行後に使用できないときがあっても、医療機関を受診できなくなるわけではありません。
マイナ保険証に移行する前に資格情報のお知らせが送付されます。資格情報のお知らせとは、マイナンバーの下4桁と健康保険に関する情報が記載されているカードです。マイナ保険証が使えないときには、マイナンバーカードと資格情報のお知らせを医療機関の窓口に提示すれば、受診ができます。そのため、医療機関に足を運ぶ際には、マイナンバーカードとセットで持参しましょう。
また、健康保険組合で各種申請などをするときにも、資格情報のお知らせが必要になる場合があります。主に記号や番号などの情報を確認するためです。
マイナ保険証を利用したくない場合の解決策
マイナ保険証にはさまざまなメリットがあることを理解していても、デメリットの方が気になってしまう人もいるでしょう。あまり利用したくないと考えている人もいるかもしれません。マイナ保険証の利用やマイナンバーカードの取得は強制ではないため、利用しないという選択肢も可能です。
マイナ保険証の利用登録を済ませていない人には、資格確認書が送付されます。資格確認書とは、現行の保険証に記載されている情報とほぼ同じ情報が記載されているカードです。医療機関を受診する際には、窓口でこの資格確認書を提示すれば、現行の保険証と同じようにして使用できます。
また、現行の保険証も、最長で2025年12月1日までは、これまでと同じように利用可能です。ただし、2024年12月2日以降に有効期限を迎える場合や転職や退職などで変更がある場合には、使用できなくなります。
まとめ:マイナ保険証はデメリットもあるが便利な側面も多い
マイナ保険証に移行した後は、現行の保険証が廃止され、マイナンバーカードを保険証として使用するようになります。医療機関の窓口に設置されている専用のカードリーダーにマイナンバーカードを挿入して、かんたんな操作をすることで使用可能です。
また、健康保険の切り替え手続きがスムーズになる点や確定申告の医療費控除がかんたんになる点はメリットです。一方、システムや機器の不具合時に使用できなくなる点や高齢者にとって機器の操作が難しい面などがデメリットとして挙げられます。マイナンバーカードには健康保険以外のさまざまな情報も紐づけされているため、情報漏洩を気にする人もいるでしょう。
現行の健康保険証の廃止(新規・再発行終了)は、2024年(令和6年)12月2日です。まだマイナ保険証の利用登録がお済みでない方は、本記事で紹介したメリット・デメリットを参考に、利用を検討してみてください。