下請事業者との契約を電子化したいが、下請法違反にならないか不安を感じる担当者は少なくありません。実際、下請代金支払遅延等防止法(下請法)では、一定の要件を満たせば3条書面・5条書面を電子的に交付・保存することが認められています。
本記事では、公正取引委員会の最新ガイドラインをもとに、電子契約における下請法の適法要件や承諾書の取得方法、電子化に必要な7つの要件を分かりやすく解説します。承諾書のひな形例やメール発注の注意点など、現場で迷いやすい実務対応も具体的に取り上げました。
・下請法の目的と、資本金区分による適用範囲(4類型)の判断基準
・電子契約で下請法が適用される取引と、紙契約との違い
・3条書面・5条書面を電子化する際の要件と注意点
・電子契約導の際に守るべき法令対応と実務上のポイント
なお、法令遵守と業務効率化を両立させ、下請法法の要件を満たすためには、電子印鑑GMOサインをはじめとした電子契約サービスの活用がおすすめです。
- 電子署名により契約書の改ざんを防止
- 認定タイムスタンプで契約締結日時を証明
- クラウド上で契約書を安全に保管できる
- 契約相手もアカウント不要でかんたんに署名可能
- 契約の進捗状況をリアルタイムで確認可能
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電子契約と下請法の基本|3条書面・5条書面の電子化は可能か?
下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者の優越的地位の乱用を防ぎ、下請事業者を保護する法律です。親事業者は発注の際に3条書面(発注内容や代金支払条件などを記載した書面)を交付し、取引の経緯を記録した5条書面を作成・保存(2年間)する義務があります。
3条書面と5条書面は、所定の要件を満たせば電子契約で対応可能です。2025年5月に改正法が成立し、2026年1月1日からは「中小受託取引適正化法」として施行されます。改正では、資本金基準に加え従業員数基準が新設され、3条書面の電子交付は承諾の有無にかかわらず可能となるなど、実務に影響する変更が加えられます。
それぞれ、見て行きましょう。
下請法の目的と適用範囲|資本金区分と4類型
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、親事業者による優越的地位の乱用を防ぎ、下請事業者を保護するための法律です。対象となる取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4種類で、適用の可否は取引内容と双方企業の資本金区分によって判断されます。
2026年1月1日施行の改正では、資本金区分に加えて従業員数基準(製造・修理委託:300人/情報成果物・役務の一部:100人)が追加され、対象となる企業が拡大します。改正後は資本金基準と併存する形となるため、適用範囲の確認方法も見直しが必要です。
【資本金区分による適用範囲】
| 取引類型 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託 | 3億円超 | 3億円以下 |
| 製造委託・修理委託 | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下 |
| 情報成果物作成委託役務提供委託の一部 | 5,000万円超 | 5,000万円以下 |
| 情報成果物作成委託役務提供委託の一部 | 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1,000万円以下 |
たとえば、親事業者が資本金1億円でソフトウェア開発を外注し、相手が5,000万円以下であれば、情報成果物作成委託として下請法の適用対象になります。
3条書面(発注書面)と5条書面(取引記録)の違い
下請法第3条に基づく「3条書面」とは、親事業者が下請事業者に発注する際、直ちに交付しなければならない書面です。少なくとも以下の事項(公正取引委員会規則で定める12項目)を明記する必要があります。
・委託内容(何を作成・提供するか、数量や仕様)
・下請代金の額
・支払期日および支払方法
・納品期日・場所
・検査を行う場合の検査完了期日など
一方、下請法第5条に基づく「5条書面」は、3条書面の内容を含め、取引の経過を記録するための書面です。親事業者が作成し、2年間の保存義務があります。発注書や納品書、検収書などをファイル管理するイメージですが、電子データで保存する場合は後述の要件を満たす必要があります。
【3条書面と5条書面の比較】
| 項目 | 3条書面(発注書面) | 5条書面(取引記録) |
|---|---|---|
| 交付タイミング | 発注の際、即座に交付 | 取引内容を記録 |
| 記載事項 | 給付内容、下請代金額支払期日など12項目 | 給付受領日、検査完了日支払額など |
| 電子化の承諾 | 下請事業者の事前承諾が必要 | 承諾不要 |
| 保存期間 | 2年間 | 2年間 |
| 違反時の罰則 | 50万円以下の罰金 | 勧告・公表 |
3条書面は下請事業者の権利を守るための書面なので、電子化には相手の同意が必要です。一方、5条書面は親事業者自身の記録義務なので、承諾なしで電子化できます。
電子契約を導入する場合も、3条書面の交付義務と5条書面の保存義務を区別して運用しなければいけません。
電子契約と下請法の関係
下請法では原則として書面交付が義務付けられていますが、一定の条件を満たせば電子交付も認められます。第3条第2項では、「親事業者は下請事業者の承諾を得て、情報通信の技術を利用する方法で当該書面の記載事項を提供できる」と規定されています。
つまり、下請事業者が事前に同意していれば、発注書面をメール送信や電子契約システム上のデータで代替することが可能です。ただし、承諾のないまま電子交付を行うと下請法第3条違反となり、担当者には50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、承諾を得ていても、技術的な要件を満たさない方法は認められません。たとえば、ウェブ上で閲覧させるだけで保存できない方式は不適切です。適法な運用を行えば、電子契約によって印刷・郵送コストを削減でき、下請法の遵守と業務効率化の両立ができます。
電子契約で下請法3条書面を交付する7つの要件
下請法の3条書面を電子データで提供するには、公正取引委員会の「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」で定められた7つの要件をすべて満たす必要があります。
1つでも欠けると下請法違反となるおそれがあるため、確実な対応が求められます。各要件を順に解説します。それぞれ、見て行きましょう。
事前承諾を得る
電子交付を行う前に、下請事業者から必ず事前承諾を得る必要があります。承諾は書面やメール、電子契約システムなど記録が残る方法で行うのが原則です。「3条書面を電子的に交付することに同意する」旨を明記し、口頭だけで済ませるのは避けましょう。
承諾を得ずに電子交付を行えば、下請法第3条違反にあたり、親事業者の担当者が50万円以下の罰金を科されるおそれがあります。実務では、取引基本契約書に電子交付への同意条項を設け、包括的に承諾を得ておく方法が一般的です。
ただし、運用方法を変更した場合や新しいシステムに切り替える際は、再度の同意が必要です。承諾の手順を明確にし、あとから証拠として提示できるよう記録を残しておきましょう。
電磁的方法の種類を明示する
承諾を得る際には、どのような方法で書面を提供するのかを具体的に示さなければいけません。「電磁的方法で交付します」とだけ伝えるのは不十分です。たとえば、次のように明確に記載します。
・発注書はメール添付のPDFで送付する
・契約書は電子契約システム上で提供する
複数の方法を使う場合は、すべての手段について記載しておくと誤解を防げます。また、実際の運用方法と承諾書の内容が食い違っていると、トラブルの原因にもなります。
そのため、承諾書には「A社は電子メールによるPDF送付の方法で3条書面を提供します」といった形で、媒体と送信方法を具体的に明記するのが確実です。契約時の説明と実際の運用を常に一致させておきましょう。
ファイル記録方法を明示する
下請事業者が保存・出力できる形式で提供することが要件となります。承諾書には、ファイルの形式と保存方法を具体的に記載しましょう。
たとえば「PDF形式のファイルをダウンロード可能な状態で提供する」と明記します。単にウェブ上で閲覧させるだけで、相手のファイルに記録されない方法は認められません。下請事業者側で印刷・保存できる形式であることが必要です。
特に、システム上でしか表示できない一時的な画面や画像形式では、証拠性が担保されないため注意が必要です。実務ではPDFを標準形式とし、ファイル名や保存先フォルダのルールを統一すると管理が容易になります。実際にファイルが問題なく保存・印刷できるか、試験的に送受信して確かめておくと安心です。
費用負担を明示する
電子交付に伴う費用を下請事業者に転嫁する行為は、下請法違反となるおそれがあります。公正取引委員会は、システム導入費や運用費を下請側に負担させることを禁止しています。承諾書には、費用の分担を明確に記載しておきましょう。
・システム利用料および運用費用:親事業者が負担
・通信費用(インターネット接続料など):各自負担
費用の負担関係を曖昧にしたまま電子契約を導入すると、親事業者の優越的地位の乱用とみなされる場合があります。特定のソフトやハードウェアの購入を強制することも禁止対象です。費用に関する誤解を避けるため、契約時点で負担区分を明確にしておきましょう。
書面交付への変更権を明示する
下請事業者は、電子交付から紙交付への変更を求める権利を持っています。承諾書や契約書には、「希望があれば紙で再交付する」と明記しておくのが望ましいでしょう。電子提供を承諾したあとでも、合理的な理由があれば紙交付に戻すことができます。
また、親事業者は、この変更要請を理由に取引条件を不利に変えてはなりません。そのような行為は、独占禁止法上の優越的地位の乱用とみなされるおそれがあります。また、変更申請の受付方法(メール、書面など)を明確にしておくと社内対応もスムーズです。
複数の下請先がある場合は、紙と電子の運用を並行させても構いません。形式にとらわれず、下請先の要望に合わせて柔軟に対応する姿勢が大切です。
スマートフォン受信の場合の注意点
携帯メールのみで発注書を受け取る場合は、注意が必要です。公正取引委員会は2023年12月の改定で、携帯メールによる提供は下請法で認められる電磁的方法に該当しないと明確に示しています。
スマートフォンの小画面では、内容確認や保存が困難な場合が多く、PC等で保存・出力できる環境が前提とされています。取引先がスマートフォンのみで受信する場合は、紙での交付への切替えや、PC環境の整備を行うことが実務上求められるでしょう。
ファイルをダウンロード可能にする
提供されたデータは、下請事業者が自社で保存できる状態でなければなりません。閲覧だけでダウンロードできない方式では、交付義務を果たしたとはみなされません。電子契約システムを利用する場合は、相手側でも契約書PDFをダウンロードできる仕様になっているか確認しましょう。メールの場合も、添付ファイルとして送付すれば要件を満たします。
一方、クラウド上でのみ閲覧可能な環境では、保存証跡が残らないため不十分です。ダウンロードできる状態が保たれているかを定期的に確認し、誤ってリンクが切れないよう注意しましょう。
受領後のファイルを社内サーバーに保存し、改ざん防止のためのアクセス権設定を行うとより安全です。電子交付の信頼性を保つには、保存環境を適切に整備し、管理体制を明確にしておきましょう。
書取得方法とひな形
ここでは、実務でそのまま使える承諾書の記載例と取得手順を紹介します。以下で説明する7項目をすべて含めなければいけません。ひな形をもとに、自社の取引内容や運用体制に合わせて調整してください。
それぞれ、見て行きましょう。
承諾書に記載すべき必須7項目
承諾書には前章で挙げた7要件をすべて盛り込む必要があります。箇条書きにすると以下のとおりです。
- 承諾意思の明示 –「書面交付に代えて電磁的方法で提供することに同意する」旨
- 電磁的方法の種類 – 例:「Email添付(PDF)による送付」や「電子契約システムでの提供」
- ファイル形式・保存方法 – 例:「PDFファイルとしてダウンロード可能な状態で提供」
- 費用負担の取決め – 例:「通信費は各自負担、システム利用料は親事業者負担」
- 書面再交付の権利 –「希望すれば紙の書面交付を請求できる」旨
- スマートフォン受信の了承(必要な場合) – スマートフォン等小画面で受け取ることへの同意(またはPCで閲覧できる旨)
- ダウンロード可能であること – 提供後、下請事業者がファイル保存できることの確認
上記の項目を定型文として契約書や念書に盛り込む形が一般的です。箇条書きで整理しておくと、抜け漏れを防ぎやすく、確認作業もスムーズです。基本契約書に組み込む場合は、条文の中で必要な要素をすべて含める形で規定するとよいでしょう。
承諾書のひな形(書面・メール・電子契約)
以下に承諾書のひな形例を紹介します。まずは書面形式の例です。
(承諾書)
〇〇株式会社(以下「甲」という。)と〇〇株式会社(以下「乙」という。)は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第3条第2項の規定に基づき、甲が乙に交付すべき書面(以下「3条書面」という。)について、書面の交付に代えて電磁的方法により提供することに同意します。
記1.承諾の内容: 甲が乙に対し発注を行う際の3条書面について、紙の書面に代えて電子メールにより提供することに乙は同意します。
2.提供方法: 甲は3条書面の記載事項をPDFファイルに書き込み、これを乙が指定する電子メールアドレス宛に送信する方法で提供します。乙は当該PDFファイルを自己のシステムにダウンロードして保存できるものとします。
3.ファイル形式: 前項のPDFファイルは印刷および保存が可能な形式とし、パスワード等により閲覧が制限されないものとします。
4.費用負担: 電磁的方法による提供に際して発生する甲のシステム利用料および運用費用は甲が負担します。乙が受信するために要する通信費用(インターネット接続料等)は乙自身が負担します。甲は通信費用を理由に下請代金を減額しません。
5.書面交付への変更: 乙は甲に対し、電磁的方法ではなく書面による提供への変更を求めることができます。その申し出があった場合、甲は速やかに以後の発注について3条書面を紙で交付します。
6.スマートフォン受信: (※乙がスマートフォンのみでメール受信する場合)乙はスマートフォンで電子メールを受信することによる書面内容の視認性低下の可能性を理解し、これに同意します。
7.記録保持: 甲は提供するPDFファイルについて乙のファイルに記録されたことを確認します。乙は受領後、当該PDFファイルを自己の責任において保存します。
以上、承諾することを証します。令和○年○月○日
甲:〇〇株式会社 契約部長 署名 乙:〇〇株式会社 契約担当 署名
上記は書面で取り交わす想定のひな形です。メールで承諾を得る場合は、同内容をメール本文に記載し「本メールに返信することで承諾したものとみなします」などの文言を付す方法もあります。ただしメールだと相手の署名(同意した証拠)取り扱いがあいまいになるため、できれば書面または電子契約で合意書を締結する方が確実です。
電子契約サービス上でも、契約書の一部として上記条項を盛り込んだ合意書を締結する形で承諾が得られます。
たとえばGMOサインでは、契約テンプレートに承諾条項を入れて相手に電子署名してもらうと記録が残ります。
大切なのは、承諾を得た証跡を残すことです。後日の公取委調査でも提示できるよう、承諾書や同意メールは2年間以上しっかり保存しておきましょう。
承諾取得でよくある失敗例と対処法
承諾取得に関する失敗例とその対処法をいくつか紹介します。同じ失敗をしないよう、以下を参考にしてください。
失敗例①承諾なしに電子交付してしまった
よくあるのが、電子契約の導入に安心してしまい、下請先から承諾を得ないまま契約書を電子で送付してしまうケースです。下請法上は、承諾を得ずに電磁的方法で交付することは認められていません。
対処:電子契約を利用する前に、必ず文書で承諾を取得してください。すでに違反の可能性がある場合は、速やかに書面を郵送し、先方にお詫びと説明を行うことが望ましいでしょう。
失敗例② 承諾書に費用負担の明記がなかった
承諾書テンプレートから費用負担の項目を失念し、あとで「通信費はどちら持ちか不明」となった例があります。不明確だとトラブルのもとです。
対処: 費用負担者を具体的に明記し、費用転嫁がないことを示しましょう。
失敗例③受信確認を怠った
電子メールで発注書を送ったものの、相手が迷惑メールに気付かずファイルが保存されていなかった場合、提供したことにはなりません。
対処:受信確認を徹底します。開封確認メールを使う、電子契約システムの閲覧ログをあとでチェックするなど、相手が確実に受領・保存したことを確認しましょう。未受領が判明した場合は、速やかに紙で再送付します。
失敗例④ 承諾を口頭で済ませた
–営業担当者が電話で「メールで送りたいんだけど、いいですね?」と了承を得ただけで電子交付してしまった例です。あとで証拠が残らず、問題になることがあります。
対処:書面や記録が残る方法で承諾を得ることが望ましいでしょう。メールで了承の返信をもらうか、正式な合意書を取り交わすなど記録として残る形で対応し、口頭の約束は避けた方が安心です。
下請法5条書面の電子保存要件|2年間保存とタイムスタンプ
下請法第5条では、親事業者に取引記録の作成と2年間の保存義務が課されています。ここでは、5条書面の電子保存要件と、下請法・電子帳簿保存法の両方に対応する保存方法を解説します。
5条書面の電子保存3要件(検索・見読・保存)
下請法第5条は、親事業者に下請取引の経緯を記載した書類(5条書面)を作成し、2年間保存する義務を課しています。保存方法は紙に限られず、電磁的記録による保存も認められています。
ただし、3条書面の電子交付とは異なり、下請事業者の承諾は不要で、電子保存を行う場合は公正取引委員会が定める技術的要件(施行規則第2条の3)を満たさなければいけません。おもな要件は次の3点です。
見読性:ディスプレイやプリンタで遅滞なく内容を表示・出力できるこ
検索性:取引先名や日付などで容易に検索できること
保存性:交付日から少なくとも2年間、改ざんされずに保存されていること
上記の3要件を満たすよう、ファイル名の体系化やバックアップ体制を整えましょう。改ざん防止のため、タイムスタンプ付与も推奨されています。
タイムスタンプと電子帳簿保存法の関係
電子データで契約書や発注書を保存する際に活用されるのがタイムスタンプです。タイムスタンプは、電子データが特定の時点以降に改変されていないことを証明する仕組みで、改ざん防止の有効な手段とされています。
下請法第5条に基づく取引記録では法定必須ではありませんが、公正取引委員会の調査の際に記録の非改変を示す証拠として活用できます。
また、注文書や請求書など下請取引に関する書類は電子帳簿保存法(電帳法)の対象でもあり、2024年1月から電子取引データの電子保存が原則義務化されています。
電帳法の検索要件やタイムスタンプ要件は下請法第5条と重なる部分が多く、両制度に沿った保存体制を整えることで、法令遵守と業務効率化の両立が図れます。
電子契約で下請法違反にならないための注意点
電子契約を導入すれば自動的に下請法対応も完璧というわけではなく、運用上の注意を怠ると違反リスクがあります。ここからは、電子契約で陥りがちな落とし穴と、その対策を解説します。
それぞれ、見て行きましょう。
メール送信だけでは「提供」にならない
発注書面をメールで送付しても、相手が受信・保存を完了していなければ「提供」とは認められません。公正取引委員会は、下請事業者の電子計算機のファイルに記録されることが必要としています。迷惑メールに分類されたり、受信者がファイルを開かず削除した場合も、書面交付義務を果たしたことにはならない可能性があるからです。電子契約システムの閲覧ログや開封記録など、証跡を残すことが求められます。
対策として、開封確認機能付きのメール送信や、電子契約サービスの閲覧ログをチェックしましょう。電子契約サービスなら、相手がいつ契約書を開封したか記録が残るため完了の証拠になります。
対策をとっても相手が確認していない様子なら、紙で再交付するなどのフォローは必要です。送ったから安心するのではなく、確実に届き保存されたかを追跡しましょう。
システム費用を下請事業者に転嫁できない
電子契約の導入は通常、親事業者の業務効率化を目的としたものであるため、基本的なシステム利用料や導入コストは親事業者側が負担することが適切とされています。承諾書には「システム利用料は親事業者が負担する」といった内容を明記しておくとトラブルを防げます。
一方で、下請事業者が自社の都合で有料オプションなどを追加利用する場合は、その範囲に限り下請事業者が費用を負担しても差し支えありません。
ただし、親事業者が電子化に要する費用を理由に下請代金を減額したり、通信費等を転嫁する行為は不当な経済上の利益提供要請(下請法第4条第2項第3号)に該当するおそれがあります。指導や勧告の対象となる場合もあるため、費用負担の線引きを明確にしておきましょう。
口頭発注・事後発注は違法
電子化の有無を問わず、発注の際には3条書面を事前または同時に交付する必要があります。口頭で依頼して、後から書面を作るという運用は、下請法第3条の趣旨に反するおそれがあります。
たとえば、電話で発注を依頼し、納品後に契約書を作成するケースは適切とはいえません。電子契約であっても、業務完了後に契約書データを締結した場合は、発注時の交付義務を満たさないリスクがあります。
発注書や契約書を発注のタイミングで交付・署名完了できるよう管理すること求められます。ITツールを利用する場合も、発注から支払いまでの流れの中で「発注時交付」が確実に実施されているか、社内フローを定期的に確認しておきましょう。
違反時の罰則(50万円以下の罰金・公取委勧告)
下請法に違反すると、公正取引委員会による指導や勧告の対象となり、刑事罰が科される場合もあります。特に書面不交付を行った担当者や代表者には、50万円以下の罰金が科される可能性があるでしょう。
下請代金支払遅延等防止法第10条
第3条の規定に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。
法人に対しても両罰規定が適用され、企業としての責任も問われます。勧告を受けた企業名は公表されるため、社会的信用の低下は避けられません。公正取引委員会が公表している違反事例には、承諾を得ない電子交付や記載事項漏れ、事後的な契約書発行などが含まれています。
実際の指導件数は、令和5年度(2023年度)が8,268件、令和6年度(2024年度)が8,230件と高水準で推移しており、コンプライアンス体制の整備が不可欠です。

電子契約で下請法対応するメリット
ここまでは、遵守事項を中心に説明してきました。電子契約を正しく導入すれば、業務効率化とコスト削減を同時に実現しながら下請法にも対応できます。
ここでは、電子契約導入によって得られる具体的なメリットを紹介します。
それぞれ、見て行きましょう。
業務効率化と印紙税・郵送費削減
電子契約を導入すると、契約書や発注書の作成・送付・保存にかかる時間が大幅に短縮されます。紙の契約では印刷・押印・郵送・返送という手順を経る必要がありましたが、電子契約なら最短で当日中に締結が完了します。リモートワーク環境でもオンラインで契約手続きができ、移動や対面の負担を減らせるでしょう。
さらにコスト削減効果も大きく、電子契約では印紙税が非課税のため印紙代が不要です。たとえば1契約200円の印紙を月100件発行していた場合、年間で約24万円の削減になります。
郵送費や紙代、保管スペースも不要になり、契約1件あたりのコストが従来の500円から50円程度まで減少した企業もあります。一度承諾を得てしまえば、継続取引では手続きが簡略化され、削減効果が積み重なります。
結果として、時間と人件費を本来業務へ振り向けることができるでしょう。
証跡管理によるコンプライアンス強化
電子契約システムには、契約や発注の履歴(証跡)を自動で記録する機能があります。送信日時、閲覧・署名のタイミング、相手の操作履歴まで残るため紙よりも透明性が高まります。送った・送らないの行き違いを防ぎ、内部統制を強可能です。
改ざん防止のタイムスタンプを付けておけば、提出書類の信頼性も担保されます。証跡管理の徹底は、コンプライアンス違反の抑止力にもなり、問題が起きても原因追及や再発防止策を立てやすくなるでしょう。
また、電子契約ではアクセス権限を細かく設定できるため、社内の閲覧制限や外部への漏えい対策にも効果的です。監査の際には閲覧権限を一時付与すれば、必要な資料を安全に共有できます。
電子契約は法令遵守と業務効率を両立させるための、最も現実的な手段と言えるでしょう。
下請法対応の電子契約システム活用法|承諾取得から保存まで
最後に、具体的な電子契約システムの活用方法を紹介します。市販の電子契約サービスには、下請法対応に役立つ機能が数多く備わっています。
その中でもGMOサインは、立会人型と当事者型の2種類の電子署名に対応し、幅広い契約シーンに利用可能です。
ここからは、GMOサインを例に取り、下請法における承諾取得や保存要件をどのように満たせるのかを解説します。
それぞれ、見て行きましょう。
立会人型電子署名のメリット
下請法対応を効率的に進めたいなら、GMOサインの立会人型電子署名が最適です。取引相手にアカウント登録や電子証明書の取得を求めず、届いたメールから署名まで完結できます。導入時の案内もシンプルで、ITに不慣れな取引先でも迷わず使えるでしょう。
契約のやり取りはGMOサインの運営事業者が立ち会い、手続きの履歴を記録するため、法的証拠力も確保されています。さらにテンプレート登録や差戻し機能を使えば、押印漏れや記載ミスを防げます。
システム費用は親事業者側のみの負担で済み、複数の下請先と契約を一元管理できるのもメリットです。スピード、法令遵守、コスト削減を両立させ、安心して電子契約を進めましょう。
承諾取得・保存機能で法令対応
GMOサインの最大の強みは、下請法対応に必要な承諾取得から保存までをワンストップで完結できる点です。承諾書のテンプレートを登録しておけば、取引先ごとに電子署名をもらうだけで、同意書の取得と保存が同時に完了します。
署名履歴や承諾記録はクラウド上で自動的に保管され紙のやり取りは不要です。契約締結の際にはタイムスタンプが自動付与され、改ざん防止の証拠となります。
契約データはクラウド上で安全に管理され、2年以上の保存も容易です。取引先名や契約日で瞬時に検索でき、5条書面の「見読性・検索性・保存性」要件をすべて満たします。公取委から資料提出を求められた際も、数秒で提示できる操作性は大きな安心材料でしょう。
電子契約と下請法に関するよくある質問(Q&A)
最後に、電子契約と下請法に関して寄せられることの多い質問と回答をまとめます。
下請法5条書面は電子でも可能ですか?
可能です。紙で保存する代わりに、電磁的記録での保存が認められています。ただし、電子保存では「見読性・検索性・保存性」の3要件を満たさなければなりません。
画面上で内容をすぐ確認でき、取引先名や日付で検索できる状態にしておくことが求められます。また、2年間改ざんされないよう、適切な保存体制を整えましょう。タイムスタンプを付与しておけば改ざん防止にもつながり、公正取引委員会の調査の際には有効な証拠として活用できます。
メール本文だけでも3条書面になりますか?
メール本文に必要事項をすべて記載し、下請事業者が承諾していれば、法的には有効な3条書面になり得ます。たとえば本文に発注内容・金額・支払期日など12項目を記載し、相手がこの内容で了承と返信すれば証跡は残ります。
ただし実務上は、添付ファイル(PDF発注書)の形が望ましいでしょう。本文のみでは相手側での保存性が低く、誤削除の可能性があります。さらにタイムスタンプが付与しにくく、証拠保全の観点でも不安が残ります。
電子契約サービスの使用では、承諾記録やタイムスタンプも自動で残せるため、法的証拠力が格段に高まります。
承諾書は取引基本契約に含められますか?
可能です。継続的な取引がある場合、基本契約書に「発注書面の電磁的提供に関する合意条項」を設けておけば、個別の承諾書は不要です。提供方法や費用負担、書面交付への変更権など、承諾時の7項目を条文内で明示しておきましょう。
既に結んでいる契約にこの条項がない場合は、契約変更の合意書を交わすか、別途承諾書をもらう必要があります。
新規契約の際にまとめて電子交付に同意しておけば、以後の承諾取得がスムーズに進むでしょう。
資本金5,000万円以下だと下請法が適用されますか?
はい。下請法の適用は、資本金の大小だけでなく、親事業者と下請事業者の組み合わせで判断されます。
情報成果物・役務取引では「親5,000万円超⇔子5,000万円以下」、製造・修理委託では「親3億円超⇔子3億円以下」が対象です。
資本金5,000万円の会社は、大企業から情報成果物の委託を受ければ下請側に、資本金1,000万円規模の会社へ発注すれば親事業者側になります。自社がどちらに該当するかは、公正取引委員会の下請法の概要を確認すると判断しやすいでしょう。
電子契約と下請法のまとめ|業務効率化とリスク回避を実現
下請法では、発注書面(3条書面)の事前交付と、取引記録(5条書面)の2年間保存が義務付けられています。紙でなくても、下請事業者の承諾と技術的要件(見読性・検索性・保存性)を満たせば電子化が可能です。
電子契約を導入すれば、印紙税・郵送費の削減、業務スピードの向上、証跡管理の自動化といった効果が得られます。
立会人型電子署名で相手に負担をかけず、承諾取得から契約締結・保存までをワンストップで完結できるのがメリットです。
【2026年改正に備えた対応ポイント】
2026年1月1日施行の改正では、法律名称が「中小受託取引適正化法」に変わり、従業員数基準の追加や、3条書面の電子交付に関する承諾要件の緩和など、実務に影響する変更が行われます。また、価格据置の禁止や特定運送委託の追加など、対象・禁止行為も拡大されます。自社の契約フロー・承諾書・規程類を改正法に合わせて更新し、早めの体制整備を行うことが重要です。
タイムスタンプや閲覧ログも自動で記録されるため、改ざん防止とコンプライアンス強化の両立が可能です。法令遵守を守りながら効率化を進めるには、確かな仕組みを選ぶことが欠かせません。
GMOサインは国内シェアNo.1(※1.2)を獲得した実績豊富な電子契約システムで、350万社以上(※1)に導入されています。GMOサインを導入で、下請法対応・コスト削減・業務効率化を図りましょう。
※1 導入企業数は「電子印鑑GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントとする 。 自社調べ(2023年11月)
※2 電子署名およびタイムスタンプが付与された契約の送信数(タイムスタンプのみの契約を除く。電子署名法の電子署名の要件より)。 自社調べ(2024年8月)











