社宅の契約書に必要な項目が分からない…
社宅使用で後々トラブルになるリスクが心配…
契約書に収入印紙は必要?金額はいくら?
この記事では、社宅使用契約書に記載すべき重要項目とテンプレートを紹介します。従業員へ社宅の使用を許可する場合は、以下のようなトラブルを避けるために契約書の作成をおすすめします。
トラブル事例
- 退職時の明け渡し期限をめぐるトラブル
- 原状回復の範囲についてのトラブル
- 入居者の家族や同居人に関するトラブル
- 無断での模様替えや改造による施設損傷
また、社宅使用契約書には、収入印紙が必要なケースがあります。適切な金額の収入印紙を貼り付ける必要があるためご注意ください。
ただし、電子契約であれば課税文書の対象外となるため、収入印紙が不要です。コストを抑えたい方は電子契約での取り交わしを検討してみるとよいでしょう。
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目次
社宅使用契約書とは?
社宅使用契約書は、会社が従業員に住む場所を貸す際の約束事を書いた書類です。この章では、社宅制度の基本や契約書に必要な項目、作る時の注意点などをわかりやすく説明します。
正しい契約書を作ればトラブルを防げるため、社宅管理を任されている方は、基礎知識を押さえておきましょう。
社宅制度の役割
社宅制度は、会社が従業員に住居を用意して貸し出す福利厚生です。従業員は住居費の負担が軽くなり、通勤時間も短縮できます。会社としても優秀な人材を確保しやすく、転勤がスムーズに進むといったメリットがあります。
特に地方勤務や転勤の多い業種では、社宅があることで従業員に安心感を与えられるでしょう。
なぜ社宅使用には適切な契約書が必要なのか?
社宅を運営する際は、正しい内容で作られた契約書がないと思わぬトラブルになることがあります。たとえば、退職時の退去期限をめぐる争いや、原状回復の範囲についての認識の違いがよく起きます。
適切に作られた契約書があれば、お互いの権利と義務が明確になり、「言った・言わない」のトラブルを防げます。後々問題になりやすい点をあらかじめ契約書に残しておくことが大切です。
社宅使用契約書と一般的な賃貸借契約書の違い
社宅契約書と一般的な賃貸契約書には大きな違いがあります。この違いを知らずに一般的な賃貸契約書をそのまま使うと、トラブルの原因になります。
| 社宅使用契約書 | 一般的な賃貸借契約書 |
---|
契約当事者の関係 | 会社(貸主)と従業員(借主)の雇用関係がある | 貸主と借主は対等な関係で、雇用関係はない |
契約の目的 | 福利厚生として従業員に住居を提供する | 家賃収入を得るために住居を貸し出す |
適用される法律やルール | 借地借家法にくわえ、会社の就業規則や社宅規程が適用される | おもに借地借家法が適用される |
社宅契約では雇用関係を前提としているため、退職時の退去など、一般的な賃貸契約とは異なる条件を設ける必要があります。
契約形態による違いと注意点
社宅には「借り上げ社宅」と「社有社宅」の2種類があります。種類によって契約形態が変わりますので、契約書作成前に、自社の社宅がどちらに該当するかを確認しておきましょう。
借り上げ社宅の場合:転貸借契約
借り上げ社宅とは、会社が外部の物件を借りて、従業員に転貸する形式です。この場合、会社は物件の所有者と賃貸借契約を結び、従業員とは転貸借契約を結びます。
注意点は、原契約(会社と所有者の契約)の制限を従業員との契約にも反映させる必要があることです。ペット禁止や楽器演奏禁止などの条件は、従業員との契約にも明記しましょう。
社有社宅の場合:使用貸借契約または賃貸借契約
社有社宅とは、会社が所有する物件を従業員に貸し出す形式です。無償の場合は使用貸借契約、有償の場合は賃貸借契約を結びます。
社有社宅では、建物の管理ルールを明確にすることが大切です。従業員による改装や設備の取り付けについての制限、退去時の原状回復の範囲を具体的に決めておきましょう。
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社宅使用契約書に盛り込むべき重要記載事項
社宅契約書には、後々のトラブルを防ぐために重要な項目を記載する必要があります。この章では、見落としがちな13の重要項目について具体例を交えて解説します。
会社と従業員の双方が、安心して締結できる社宅契約書を作成しましょう。
物件の表示
社宅契約書の最初に記載すべきは、貸し出す物件の情報です。物件の所在地は、番地まで正確に記載しましょう。たとえば「東京都千代田区〇〇町1-2-3 〇〇マンション405号室」のように具体的に書きます。物件の構造や面積についても、以下のように明記します。
- 建物の構造:鉄筋コンクリート造
- 階数:5階建ての4階部分
- 間取り:2LDK
- 専有面積:60.5㎡
面積は「登記簿上の面積」と「実測面積」が異なる場合もあるので、トラブルを避けるために、どちらの面積かを記載しておくことが重要です。
契約期間と更新に関する条項
社宅の契約期間は、会社の状況や従業員の雇用形態によって変わります。一般的には1年や2年の定期契約が多いですが、「雇用契約が続く限り」という条件付きの契約も可能です。契約期間の始期と終期を「2025年4月1日から2026年3月31日まで」のように明確に記載しましょう。
更新に関する条件も欠かせません。自動更新にするのか、更新の際に契約書を取り交わすのか、更新料が必要かどうかも明記します。
特に注意したいのは、従業員が退職した場合の扱いです。多くの企業では「従業員が退職した場合、契約期間中であっても退職日から30日以内に明け渡すこと」といったルールが記載されています。
賃料
社宅契約書には、賃料に関する取り決めを明確に記載することが大切です。月額賃料の金額を明記し、共益費や駐車場代などの追加費用についても具体的に記載しましょう。
敷金については、金額だけでなく返還条件も明記します。「退去時に原状回復費用と未払い金を差し引いた金額を返す」といった条件を入れておくと安心です。礼金や更新料が発生する場合も、その金額と支払い条件を具体的に記載しましょう。
給与天引きに関する規定
社宅費用を給与から天引きする場合は、労働基準法第24条に基づく賃金控除の同意が必要です。「従業員は、賃料その他の費用を給与から控除することに同意します」という文言を契約書に明記し、従業員の署名・捺印をもらいましょう。
社宅契約書には、控除する項目と金額も具体的に記載します。「月額賃料40,000円、共益費5,000円、駐車場代10,000円を毎月25日支給の給与から控除します」のように明確な記載が必要です。
また、休職や育児休業などにより、給与が支給されない場合の対応についても定めておくとよいでしょう。「休職中は口座振込による支払いに切り替える」などの規定があれば、給与がない時期の賃料未払いを防止できます。
使用目的・範囲
社宅の使用目的と範囲を明確にすることで、不適切な使用を防止できます。「居住目的だけに使用し、事務所や店舗などに使用しない」という基本的な制限を記載しましょう。
同居人については、「配偶者と子ども以外の同居を希望する場合は、事前に会社の許可を得ること」などの条件をつけるとよいでしょう。条件を明確にしておくことで、社宅の適正な使用を確保できます。
禁止事項
社宅では複数の従業員とその家族が暮らすため、お互いに気持ちよく生活できるよう禁止事項を定めることが大切です。明確なルールを設けることで、他の入居者に迷惑をかけたり、施設を損傷するトラブルを防止できます。一般的な禁止事項としては、以下のような内容です。
- ペットの飼育禁止
- 楽器演奏の制限
- 深夜の騒音禁止
- 共用部分での私物放置禁止
また、建物の保全に関する禁止事項も追加しておくとよいでしょう。「無断での改装・改造の禁止」「壁への釘打ちや穴あけの制限」などを明記します。
修繕費用の負担区分
社宅の修繕について、費用負担の区分を明確にしておきましょう。一般的には「建物の構造部分や経年劣化による故障は会社負担」「日常的な使用による小修繕や故意・過失による破損は従業員負担」といった区分けをします。
さらに、「電球の交換、排水口のつまり除去などは従業員負担」「雨漏り、外壁の損傷などは会社負担」などの例を挙げるとわかりやすくなります。
「修繕が必要になった場合は速やかに会社に連絡すること」という報告義務についても記載しておきましょう。
契約の解除・終了に関する条項
契約終了の条件と手続きを明確にすることで、スムーズな退去が可能になります。契約期間満了による終了の場合、「期間満了の〇カ月前までに書面で通知すること」などの手続きを規定します。また、会社から契約を解除できる条件として、以下のように定めます。
- 賃料の滞納が〇カ月以上続いた場合
- 禁止事項に違反し、是正勧告にも従わない場合
- 虚偽の申告が発覚した場合
会社都合で退去を求める場合は、従業員に十分な準備期間を与えることが大切です。「会社の業務上の都合により必要な場合」という条項を設けるときは、3〜6カ月程度の退去猶予期間を設定しておきましょう。
従業員の退職・転勤時の扱い
社宅契約で見落としがちな記載事項が、従業員の退職や転勤時の対応です。退職時は「退職日から30日以内に退去すること」という明確な期限を設定しましょう。通常は30日以内が多いですが、状況に応じて調整できます。
転勤の場合は、「転勤発令日から30日以内に退去すること」という基本ルールにくわえ、「単身赴任の場合は家族の居住継続を認める」といった特例も検討できます。条件をあらかじめ定めておくことで、トラブルのない社宅運用が可能です。
契約違反時の措置
契約違反があった場合の対応を明確にしておくことで、問題の早期解決が図れます。軽い違反に対しては「書面による是正勧告を行い、〇日以内に改善を求める」という段階的な対応を規定します。改善されない場合は「契約解除の対象となる」と明記しておきましょう。
重大な違反については「直ちに契約を解除できる」条項を設けます。たとえば「賃料の〇カ月以上の滞納」「無断転貸」「違法行為の実施」などが該当します。違反によって会社に損害が生じた場合の「賠償責任」についても記載しておくとよいでしょう。
原状回復に関する取り決め
退去時のトラブルで多いのが原状回復の範囲に関するものです。原状回復の基準を契約書に明確に記載しましょう。基本的には「入居時の状態に戻す」というのが原則ですが、経年劣化や通常の使用による損耗は除外するのが一般的です。
原状回復の費用負担について、具体的な項目は以下の表を参考にしてください。
従業員負担となる項目(参考例) | 会社負担となる項目(参考例) |
---|
壁紙のタバコのヤニ汚れ | 日照による壁紙の変色 |
ペットによる傷 | 通常使用による床の擦れ |
従業員の故意・過失による設備の破損 | 経年劣化による設備の故障 |
落書きや釘穴などの壁の損傷 | 通常の使用による壁紙の汚れ |
入居者による設備の改造 | 雨漏りなどの建物構造上の不具合 |
ただし、実際の契約では、個別の状況に応じて原状回復の範囲を調整します。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にするとよいでしょう。
連帯保証人に関する条項
社宅契約では連帯保証人を求めるケースもあります。保証人の責任範囲を明確にすることが大切です。「連帯保証人は、本契約から生じる従業員のすべての債務について、従業員と連帯して責任を負う」という基本的な条項にくわえ、保証期間や限度額についても記載するとよいでしょう。
保証人の資格要件(「日本国内に住所を有し、独立した生計を営む成年者であること」など)や、保証人に関する情報(氏名、住所、電話番号など)を記載する欄も設けます。保証人が責任を負えなくなった場合(死亡、破産など)の対応についても「新たな保証人を立てること」などと規定しておきましょう。
その他特約事項
標準的な条項だけでは対応できない個別の事情がある場合は、特約事項として追加します。たとえば「単身赴任の場合の週末のみの使用」「介護が必要な家族の一時的な同居許可」などの特殊な条件を認める場合は記載します。
特約事項は標準条項より優先されることを明記し、「本契約の他の条項と特約事項の内容が矛盾する場合は、特約事項の内容を優先する」といった文言を入れておくと安心です。個別の事情に柔軟に対応しながらも、明確なルールに基づいた社宅運営が可能になります。
社宅使用契約書のテンプレート(雛形)
前章までで解説した項目を盛り込んだ「社宅使用契約書のテンプレート」をご紹介します。
実際に利用するときは、自社の状況や社宅の形態にあわせて内容を調整してください。また、法的な効力を確実にするためには、弁護士などの専門家によるチェックを受けることをおすすめします。
社宅使用契約書
賃貸人 株式会社○○○○(以下「甲」という)と賃借人 ○○○○(以下「乙」という)とは、下記物件(以下「本物件」という)の社宅としての使用について、次のとおり契約を締結する。
第1条(物件の表示)
- 所在地:○○県○○市○○町○丁目○番○号 ○○マンション○○号室
- 構 造:鉄筋コンクリート造 ○階建ての○階部分
- 面 積:専有面積 ○○.○○平方メートル
- 間取り:○LDK
- 付帯設備:別紙「設備・備品リスト」のとおり
第2条(契約期間)
- 使用期間は○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までの○年間とする。
- 契約期間満了の○カ月前までに、甲または乙から特段の申し出がない場合は、同一条件でさらに○年間更新されるものとし、以後も同様とする。
- 更新時に、甲は必要に応じて契約内容を見直すことができる。
第3条(賃料等)
- 本物件の月額賃料は次のとおりとする。
(1) 賃 料:○○,○○○円
(2) 共益費:○,○○○円
(3) 駐車場:○,○○○円
(4) その他:○,○○○円
- 乙は上記1項の賃料等を毎月○○日までに甲指定の方法で支払うものとする。
- 賃料を○日以上遅延した場合は、年○○%の割合による遅延損害金を支払うものとする。
第4条(給与からの控除)
- 乙は、第3条で定めた賃料等を給与から控除することに同意する。
- 控除は毎月○○日締め、○○日支給の給与から行うものとする。
- 乙が休職等により給与が支給されない場合、または控除すべき金額が給与額を超える場合は、乙は甲指定の口座に振り込むものとする。
第5条(敷金)
- 敷金として○○,○○○円を預託する。
- 敷金は、本契約終了時に、原状回復費用および未払い金を差し引いた残額を返還する。
- 敷金は、契約期間中であっても、賃料の支払いを遅延した場合の弁済に充当することができる。
第6条(使用目的・範囲)
- 乙は本物件を居住目的のみに使用し、事務所、店舗など他の用途に使用してはならない。
- 本物件に居住できるのは、乙および甲が認めた同居家族に限る。
- 同居家族に変更がある場合は、事前に甲に届け出て承諾を得なければならない。
- 乙は甲の書面による承諾なしに、本物件の全部または一部を第三者に転貸または使用させてはならない。
第7条(禁止事項)
乙は本物件の使用にあたり、次の行為をしてはならない。
- ペットの飼育
- 楽器の演奏(午後○時から午前○時まで)
- 壁、柱等への釘打ちや穴あけ
- 甲の承諾を得ない改装・改造
- 火災の危険がある行為
- 共用部分への私物の放置
- バルコニーの物干し以外の使用
- その他近隣住民や建物に迷惑を及ぼす行為
第8条(修繕費用の負担区分)
- 本物件の構造上の欠陥または経年劣化による故障・損耗に対する修繕費用は、甲の負担とする。
- 乙の故意または過失により生じた修繕費用は、乙の負担とする。
- 通常の使用に伴う小修繕(電球交換、排水口の詰まり除去など)は、乙の負担とする。
- 修繕が必要な場合、乙は速やかに甲に連絡しなければならない。
第9条(契約の解除・終了)
- 乙が次の各号のいずれかに該当するときは、甲は催告なしに本契約を解除することができる。
(1) 賃料の支払いを○カ月以上遅延したとき
(2) 第7条の禁止事項に違反し、是正勧告にも従わないとき
(3) 甲に無断で○日以上不在にしたとき
(4) その他本契約に違反する行為があったとき
- 乙が本契約を途中解約する場合は、解約希望日の○カ月前までに書面で甲に通知しなければならない。
- 甲が業務上の都合で本契約を解除する場合は、○カ月前までに乙に通知するものとする。
第10条(従業員の退職・転勤時の扱い)
- 乙が退職した場合は、退職日から○日以内に本物件を明け渡さなければならない。
- 乙が転勤した場合は、転勤発令日から○日以内に本物件を明け渡さなければならない。ただし、単身赴任の場合で甲が認めたときは、乙の家族の居住継続を認めることがある。
- 乙が死亡した場合、同居家族は○カ月以内に退去するものとする。
第11条(契約違反時の措置)
- 乙が本契約に違反した場合、甲は書面による是正勧告を行い、○日以内の改善を求めることができる。
- 前項の是正勧告にもかかわらず改善されない場合、甲は本契約を解除できるものとする。
- 契約違反により甲に損害が生じた場合、乙はその損害を賠償しなければならない。
第12条(原状回復)
- 乙は本契約が終了したときは、通常の使用による損耗を除き、本物件を原状に回復して明け渡さなければならない。
- 原状回復の範囲や費用負担については、別途協議により定める。
- 原状回復工事は甲指定の業者が行い、その費用は敷金から差し引くものとする。敷金で不足する場合は、乙が別途負担する。
第13条(連帯保証人)
- 連帯保証人は、本契約から生じる乙のすべての債務について、乙と連帯して責任を負う。
- 連帯保証人の限度額は金○○万円とする。
- 連帯保証人が死亡その他責任を負えなくなった場合、乙は直ちに新たな連帯保証人を立てなければならない。
第14条(特約事項)
- 本物件のインターネット回線引き込みは甲の許可を得ること。
- その他特約事項については別紙のとおりとする。
第15条(協議解決)
本契約に定めのない事項または本契約の解釈について疑義が生じたときは、甲と乙は誠意をもって協議し解決するものとする。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲、乙がそれぞれ記名押印のうえ、各1通を保有する。
○○年○○月○○日
(甲)
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号
名称:株式会社○○○○
代表者:代表取締役 ○○○○ 印
(乙)
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名:○○○○ 印
(連帯保証人 )
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名:○○○○ 印
社宅使用契約書を作成・確認する際の重要チェックポイント
前章でご紹介した社宅契約書のテンプレートを利用するときは、契約書の内容をお互いがしっかり確認することが大切です。この章では、会社側と従業員側それぞれの立場で確認すべきポイントを解説します。
後々のトラブルを未然に防ぐために、お互いが納得できる契約を結べるようにしましょう。
会社側(人事・総務担当者)が確認すべき点
社宅契約書を作成する会社側の担当者は、法的リスクの回避と社内ルールとの整合性を重視する必要があります。以下の4つのポイントを特に注意深くチェックしましょう。
原契約との整合性(借り上げ社宅の場合)
借り上げ社宅の場合、会社が所有者と結んでいる原契約の条件に違反していないか確認することが欠かせません。
これらの条件が、従業員との契約内容と矛盾していないか確認します。
法的な有効性(借地借家法との関連)
社宅契約書の法的有効性を確保するには、借地借家法の規定を理解しておくことが大切です。借地借家法は賃借人(従業員)保護のための強い効力を持つ法律で、この法律に違反する条項は無効になります。
特に、借地借家法第28条の規定で、貸主は「正当な事由」がなければ契約の更新を拒絶できないとされています。たとえば、社宅契約書に「退職後30日以内に退去すること」と書いても、法的に必ずしも有効とはなりません。
正当事由は「社会通念に照らして妥当と認められる理由」で、「建物の老朽化で建て替えが必要」などが該当しますが、退職だけでは正当事由として十分でない場合があるため注意しましょう。
契約書の条項が法的に有効か不安な場合は、弁護士など専門家への相談をおすすめします。
社内規程との整合性
社宅契約書の内容が、自社の就業規則や社宅規程などの社内ルールと合致しているかを確認することも大切です。社内規程で「役職者は単身赴任の場合でも家族の社宅居住継続を認める」と定めているのに、社宅契約書で認めていないと、運用上の混乱が生じます。
免責事項や責任範囲の明確化
事故や災害時の責任範囲を明確にしておくことで、後々のトラブルを防止できます。
これらについて、会社と従業員どちらが責任を負うのかを明確にしておきましょう。
従業員側が確認すべき点
社宅契約書の作成・管理を担当する会社としては、従業員が以下のポイントを理解しているか確認が必要です。契約内容について従業員の理解が不十分だと後々のトラブルにつながりますので、以下の項目についてていねいに説明し、質問があれば親身に回答することが大切です。
自己負担額(家賃、共益費、更新料など)
契約書に記載している家賃(賃料)や共益費が、入居前の説明と一致しているか従業員に確認してもらいましょう。福利厚生として家賃補助がある場合は、「家賃」「会社負担分」「従業員負担分」の金額を明示し、従業員に理解してもらうことが大切です。
契約更新時に更新料が必要か、将来的な家賃改定の可能性についても事前に説明し、従業員の同意を得ておくことでトラブルを防止できます。
禁止事項や利用ルールの詳細
社宅での生活ルールや制限事項についても従業員に確認してもらいます。
こうした日常生活に関わる制限は、契約書に明記するだけでは不十分です。口頭でも説明し、従業員が納得したことを記録しておくと安心です。ほかの入居者の迷惑にならないように、入居前に十分な説明を行いましょう。
退去時の条件(原状回復の範囲、費用負担)
退職や転勤時の退去条件について、従業員の理解を得ておくことは特に大切です。「退職後〇日以内に退去」という条件や、原状回復の範囲と費用負担について、詳細に説明しましょう。
「通常の使用による損耗は会社負担、故意・過失による損傷は従業員負担」という原則を実例で示し、敷金からどのような費用が差し引かれるかを明確にするなど、具体例を挙げることで、退去時のトラブルを防止できます。
不明点・疑問点の確認方法
契約内容に関する従業員からの質問には、ていねいに対応できる体制を整えましょう。専門用語や法律用語については、わかりやすく説明することが大切です。
質問や確認を促すことで、「聞いていない」「説明と違う」というトラブルを防止できます。また、契約後も相談できる担当者を明確にしておくと、入居中の不安解消にもつながります。
社宅使用契約書に必要な印紙(収入印紙)は?
社宅契約書を作るときは、印紙税の正しい理解が大切です。この章では、社宅契約書に印紙が必要かどうか、必要な場合はいくらかかるのかを解説します。
法律を守りながら、無駄な出費も避けましょう。
社宅使用契約書は課税文書に該当する?
社宅使用契約書が印紙税の課税対象になるかどうかは、契約の内容によって異なります。基本的に、建物のみの社宅使用契約書は非課税文書で印紙は不要です。ただし、土地の賃貸借を含む契約や、土地・建物の混合契約は課税対象となります。
また、契約書の名称ではなく実質的な内容で判断されるため、「社宅規程」や「入居心得」という名前でも、実質的な社宅契約の内容を含み、署名・捺印があれば課税対象となる可能性があります。
印紙が必要となるケース・不要なケース
前章で解説したとおり、建物のみの社宅契約は基本的に印紙が不要ですが、土地を含む契約は印紙が必要となります。たとえば、一戸建て社宅で土地も賃貸する場合などが課税対象になります。
印紙が必要となるケース・不要なケースは、以下の表を参考にしてください。
契約の種類 | 印紙税の要否 | 補足説明 |
---|
建物のみの社宅契約 | 不要(非課税) | マンションやアパートの一室など |
土地を含む社宅契約 | 必要(課税) | 一戸建て社宅で土地も賃貸する場合 |
使用貸借契約 | 原則不要 | 会社が無償で社宅を提供する場合 |
ただし、使用貸借契約であっても実質的に賃料とみなされる金銭のやり取りがあると、課税対象となる可能性があるため注意が必要です。
社宅使用契約書に必要な印紙税額
印紙が必要な場合の税額は、契約の性質と契約書に記載された金額によって決まります。前章で説明した「土地を含む社宅契約」のほかに、以下のような保証金があるケースでも印紙税が課されるため注意が必要です。
- 敷地についての賃貸借契約が明らかな場合
(「第1号の2文書:土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当するため課税)
- 建設協力金や保証金などの取り決めがあり、一定期間据置き後に返還する約束がある場合
(「第1号の3文書:消費貸借に関する契約書」に該当するため課税)
(参考:No.7106 建物の賃貸借契約書|国税庁)
社宅使用契約書に必要な印紙税額は以下のとおりです。契約内容に応じて正しい金額の収入印紙を貼り付けましょう。
契約金額の範囲 | 印紙税額(1通あたり) |
---|
1万円未満 | 非課税(※一部例外あり) |
1万円以上~10万円以下 | 200円 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 1,000円 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超~1億円以下 | 60,000円 |
1億円超~5億円以下 | 100,000円 |
5億円超~10億円以下 | 200,000円 |
10億円超~50億円以下 | 400,000円 |
50億円超 | 600,000円 |
契約金額の記載がない場合 | 200円 |
(参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁)
権利金や返還する必要のない保証金がある場合は、その金額に応じた印紙税が必要です。なお、金額の記載がない場合は、原則として一律200円の印紙税となります。
印紙税の要否に不安がある場合は、税理士などの専門家への相談をおすすめします。
社宅使用契約に関するよくある質問
社宅の契約書は必要?
社宅の契約書は法律上の義務ではありませんが、作成することをおすすめします。契約書がないと、使用条件や退去時の取り決めがあいまいになり、後々トラブルの原因になるためです。
契約書を作ることで「言った・言わない」のトラブルを防げます。会社と従業員の双方が安心して社宅を利用するためにも、正しく契約書を交わしましょう。
社宅契約書はどのくらい保管すればよい?
社宅契約書の法定保存期間は特に定められていません。ただし、従業員が退去した後も一定期間は保管しておきましょう。原状回復や敷金返還に関するトラブルは退去後しばらくしてから発生するためです。
実務上、契約終了後10年間の保管をおすすめします。会社法で「会計帳簿の閉鎖から10年間の保管が義務づけられている」ことを基準にするとよいでしょう。
社宅契約とは何?
社宅契約とは、会社が福利厚生として従業員に住居を提供するときの取り決めです。一般的な賃貸借契約と似ていますが、雇用関係を前提としている点が大きな違いです。使用条件や退去条件、賃料などを契約書で明確にしておくことが大切です。
社宅賃貸借契約書がない場合はどのような問題がある?
契約書がない場合、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 退職時の明け渡し期限が不明確で、退去を求められない
- 賃料や共益費の支払い条件があいまいで、未払いが発生
- 原状回復の範囲が決まっておらず、費用負担でもめる
- 社宅の管理責任や修繕費用の負担区分があいまい
特に問題になりやすいのは退職時の明け渡しです。契約書がないと「いつまでに出ていけばいいのか」が決まっていないため、元従業員が長期間居住し続ける可能性もあります。
社宅契約書を天引きにする際はどのように記載したらよい?
社宅費用を給与から天引きする場合は、労働基準法第24条に基づく賃金控除の同意が必要です。契約書には以下のような記載をしましょう。
- 「従業員は賃料等を給与から控除することに同意します」という明確な文言
- 控除する金額と項目の明細(家賃〇〇円、共益費〇〇円など)
- 控除の時期(毎月〇〇日支給の給与から控除するなど)
- 従業員の署名・捺印欄
給与天引きの同意がないまま控除すると、労働基準法違反になる可能性があるので注意しましょう。
役員向けの社宅使用契約書を作成する場合の注意点は?
役員向けの社宅契約書を作成するときの注意点は、税務上の取り扱いです。
役員に対する社宅の提供は、一般従業員とは異なる税務上の扱いを受けます。役員に対する社宅の家賃が相当な額でない(市場家賃と比較して著しく低い)場合、その差額部分が給与として課税される可能性があります。
必要に応じて税理士などの専門家に相談し、妥当な家賃相当額の契約書を作成しましょう。
(参考:No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁)
社宅契約には印紙不要の電子契約がおすすめ
本記事では、社宅使用契約書に必要な重要項目とテンプレートを紹介してきました。社宅契約書は、会社と従業員の間で起こりがちな認識の違いを防ぐために欠かせない書類です。お互いの権利と義務をはっきりさせ、後々のトラブルを防ぐためにも、必ず作成するようにしましょう。
また、社宅使用契約書には印紙が必要な場合があることもお伝えしました。契約内容によって印紙が必要かどうかが変わるため、しっかりと確認して貼り忘れのないよう気をつけましょう。印紙の貼り忘れは法律違反になることもあるため、正しく理解しておくことが大切です。
最近では、社内の契約業務に電子契約を取り入れる会社が増えています。電子契約なら印紙税が不要になるだけでなく、契約書の保管・管理がしやすくなるといったメリットもあります。
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