転職活動の面接では、はじめに自己紹介を求められるのが一般的です。自己紹介は第一印象やその後の面接の流れを左右するため、要点を絞ってわかりやすく話せるように、事前の準備が欠かせません。
本記事では、転職面接で自己紹介をするときのコツやポイント、好印象を持ってもらえる回答例、失敗例などを詳しく紹介します。
転職面接で自己紹介を求める意図とは?
転職面接で面接官が最初に自己紹介を求める意図は、応募者の人柄や経歴、コミュニケーション力を把握するためです。面接官の多くは、面接の導入で応募者の印象を把握しておきたいと考えています。
また、経歴や実績を簡潔かつわかりやすく伝えられるかどうかをチェックする目的もあります。「自己PRも含めて自己紹介をしてください」と求められるケースもあり、意図を正しく理解し、論理的に話す姿勢が求められる場面です。面接官の質問に対して、適切に返答できるようにしましょう。
「自己紹介」と「自己PR」は混同しないように注意
自己紹介と自己PRは、伝える内容や目的が異なります。面接で混同しないように、正しく理解しておきましょう。
自己紹介と自己PRの違いを以下にまとめました。
| 自己紹介 | 氏名、現職での業務内容、これまでの経歴など、自分についての基本情報を簡潔に伝える |
|---|---|
| 自己PR | 応募企業で活かせるスキルや強みを、具体的なエピソードを交えてアピールする |
自己紹介の目的は、「自分がどのような人物なのか」を相手に知ってもらうことです。一方、自己PRは「自分にはこんな強みがあり、応募企業に貢献できる人材である」と印象づける目的があります。
面接の自己紹介は5つのポイントを押さえて組み立てる
面接の自己紹介は、以下の5つのポイントを押さえて組み立てましょう。
- 氏名
- これまでの経歴
- 現職(前職)で培ったスキルや実績
- 志望した理由
- 結びの言葉
それぞれを詳しく解説します。
①氏名
まずは、氏名をフルネームで伝えましょう。そのあと、面接の機会を設けてもらったことへの感謝の気持ちを一言添えると、好印象を与えられます。
面接官の目を見て、ゆっくりはっきり話すことで、誠実さが伝わるだけでなく、自分自身の緊張も和らぎやすくなるでしょう。
〇〇(フルネーム)と申します。本日はお忙しいなか、面接の機会をいただき、誠にありがとうございます。
②これまでの経歴
続いて、前職や現職の仕事内容・役割について、企業名・在籍年数・担当業務などを簡潔に伝えましょう。
相手が業界に詳しくない可能性もあるため、専門用語や社内用語は避け、誰にでも伝わる表現を心がけることが大切です。また、転職回数が多い場合は、説明が長くなりすぎないよう要点を絞って伝えます。
◯◯株式会社で3年間営業を担当し、新規顧客の開拓に取り組みました。
③現職(前職)で培ったスキルや実績
現職や前職で身につけたスキルや実績をもとに、「自分に何ができるか」を伝えましょう。中途採用では即戦力が求められるため、相手のニーズにあわせてアピールするのがポイントです。
スキルを伝える際は、個人の能力だけでなく、チームへの貢献について触れるのもよいでしょう。協調性やコミュニケーション力など、チームで働く姿勢も重視されるポイントです。たとえば、プロジェクトで自分が担った役割やチームメンバーとどのように連携して目標達成に貢献したかなど、具体的に説明しましょう。
実績は、数字やデータを交えると説得力が増します。たとえば「売上を前年比で120%伸ばした」「コストを30%削減した」など、成果を明確に伝えることで印象が強まります。
目立った成果がない場合でも、これまでに身につけたスキルや仕事に取り組む姿勢、成長意欲などを通じて、自分の強みや適性を前向きに伝えることが大切です。
〇〇の導入プロジェクトでは、営業と開発部門の橋渡し役を担い、導入から運用定着まで一貫して担当しました。チームメンバーと連携して運用上の課題を洗い出し、継続的に改善提案を行った結果、顧客満足度が向上し、契約継続率を前年比で15%改善できました。
未経験の職種に応募する場合は、即戦力となる専門スキルをアピールするのは難しいかもしれません。その代わりに、コミュニケーション能力や課題解決能力、学習意欲といった、どんな職種でも活かせる「ポータブルスキル」を具体的なエピソードと共に伝えましょう。
④志望した理由
志望理由は、自己紹介の段階では簡潔に述べれば十分です。面接のなかで詳しく聞かれるケースが多いため、ここでは、自身の経験やスキルと関連づけて要点だけを伝えるのがポイントです。
チーム運営のなかで培った課題解決力を活かし、御社の事業推進に貢献したいと考え、応募いたしました。
⑤結びの言葉
自己紹介の最後には、「本日はどうぞよろしくお願いいたします」のように、簡潔な結びの言葉を伝えましょう。
転職面接の自己紹介を成功させるための4つのコツ
転職面接の自己紹介の際は、以下の4つのコツを抑えておきましょう。
- 1分を目安に要点を簡潔に述べる
- 志望理由や自己PRなどを細かく話しすぎない
- 正しい言葉遣いで話す
- 視線や表情にも気を配る
それぞれのポイントを詳しく確認していきましょう。
1分を目安に要点を簡潔に述べる
自己紹介の時間に特に指定がない場合は、1分を目安に、要点を簡潔にまとめて話しましょう。話が長すぎたり、情報を詰め込みすぎたりすると、要約力やコミュニケーション力に欠ける印象を与えてしまう可能性があります。
なお、氏名と在職中の会社名だけを伝えるような、短すぎる自己紹介は避けましょう。必要最低限の情報しか話さないと、やる気が感じられないと受け取られるおそれがあります。
面接官に好印象を与えるためにも、自己紹介はあらかじめ構成を考え、自信をもって話せるように準備しておくことが大切です。
志望理由や自己PRなどを細かく話しすぎない
自己紹介では、志望理由や自己PRを詳しく話しすぎないよう注意しましょう。面接のなかで改めて質問されるケースが多いため、自己紹介の段階では簡潔に述べる程度で十分です。
たとえば、志望理由は「これまでの経験を活かして貴社に貢献したいと考え、志望しました」といった一文でまとめましょう。自己PRも同様に、詳細なエピソードは避けて、「これまで培ってきた◯◯のスキルを強みにしています」と概要だけを伝える程度で問題ありません。
正しい言葉遣いで話す
正しい言葉遣いで話すことは、社会人としての基本的なマナーです。内容が良くても、言葉遣いに誤りがあると、面接官の注意が話し方に向いて、十分に伝わらないことがあります。
丁寧に話そうとするあまり、かえって不自然な印象を与えてしまうこともあるため、正しい敬語を意識して事前に練習しておくことが大切です。
視線や表情にも気を配る
面接官に好印象を持ってもらうためには、自己紹介の内容だけでなく、表情や視線にも気を配ることが大切です。視線は面接官に向け、にこやかな表情を心がけることで、意欲的で明るい印象を与えられます。
自分では視線や表情を意識しているつもりでも、実際は視線が合っていなかったり、表情が固かったりする場合があります。鏡の前で練習したり、話している様子を録音・録画したりして、客観的にチェックしましょう。家族や友人に見てもらうのも効果的です。
質問別|転職面接における自己紹介の回答例・NG例
転職面接における自己紹介は、質問の内容によって答え方が変わります。ここでは、よくある自己紹介の質問に対する回答のポイントと回答例・NG例を解説します。
「かんたんに自己紹介をお願いします」
一般的によくある質問です。時間の指定がない場合は、1分程度にまとめて自己紹介をしましょう。話す順番は、
- 氏名
- 経歴
- スキルや実績
- 志望理由
- 結びの言葉
の流れで、要点を抑えて簡潔に伝えてください。
自己紹介のNG例としては、氏名を名乗らずに話し始める、仕事に関係のない学生時代のエピソードや趣味などに話が逸れるなどが挙げられます。転職面接では、応募企業でどのように活躍できるかをイメージできるように、前職や現職で身につけたスキルや実績をわかりやすく伝えましょう。
回答例
「〇〇と申します。本日は面接のお時間をいただき、ありがとうございます。前職では、人材紹介会社で法人営業を担当し、採用課題のヒアリングから求人票の作成、面接フォローまで一貫して支援してまいりました。なかでも「IT企業向け採用支援プロジェクト」では、年間成約件数が前年比130%を達成し、社内MVPを受賞しております。
今後は、より多くの企業の成長支援に携わりたいと考え、さまざまな業種のクライアントに採用コンサルティングを行う御社に応募いたしました。本日はよろしくお願いいたします。」
NG例
「大学時代は、野球部の部長として部員をまとめてきました。大学卒業後は、〇〇株式会社で営業職を3年間経験しました。趣味は旅行と読書です。よろしくお願いします。」
「職務経歴と自己PRを含めて自己紹介をお願いします」
面接官は、応募者が職種や業務に関連する経験・強み・スキルを持っているかを確認するために質問しています。経歴は簡潔にまとめつつ、具体的な数値や実際のエピソードを交えて、強みやスキル、実績をわかりやすく伝えましょう。
また、転職面接における自己PRでは、性格的な特徴を述べるのは不適切です。応募企業でどのように活躍できるかを示すために、前職・現職で培ったスキルや成果、具体的な実績を明確に示すことが求められます。
回答例
「〇〇と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。現在、△△株式会社で、ITソリューションの法人営業を担当しております。実績として、1年間で新規顧客の契約件数を130%増加させました。
成果につながった要因は、業界動向をもとにニーズを先読みし、提案内容を顧客のニーズにあわせてカスタマイズしたためです。また、導入後の活用支援まで一貫してサポートしたことで、顧客満足度を高められたと考えています。
課題の発見から提案、導入後の支援まで一貫して対応できるスキルは、御社でも必ずお役に立てると考えております。どうぞよろしくお願いいたします。」
NG例
「〇〇と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。これまではアパレル販売の現場で、お客さま一人ひとりに寄り添った接客を心がけてきました。性格は明るく人と話すことが好きで、店舗ではスタッフ同士の懇親会などでもいつも幹事を任されています。どうぞよろしくお願いいたします。」
「志望理由を含めて自己紹介をお願いします」
応募企業への理解度や入社意欲を確認するために質問されます。事前に企業の情報をよく調べ、答えられるようにしておきましょう。
企業の特徴や理念、今後の展開などを踏まえたうえで、自分の経験やスキルを活かして、応募企業でどのように貢献できるかが伝わるように回答を組み立てましょう。
なお、「方針に共感した」「給与や福利厚生が良い」といった理由だけを述べるのは望ましくありません。応募動機としては弱く、志望度が低いと受け取られる可能性があります。
回答例
「〇〇と申します。本日は面接のお時間をいただき、ありがとうございます。私は◇◇大学を20XX年に卒業後、広告代理店の株式会社△△に入社し、5年にわたり中小EC事業者向けのWebプロモーション提案を担当してきました。
20XX年に△△株式会社へ転職し、現在は〇〇向けのSNSマーケティング支援を行っております。新規開拓に強みがあり、これまで多数のブランド立ち上げを支援してきました。ただ、現職ではSNS広告に限定した提案しかできず、EC全体の課題に対応しきれないもどかしさを感じています。
御社は広告から物流、カスタマーサポートまでEC全体を包括的にサポートできる体制が整っており、より広い視点でお客さまに貢献できる点に魅力を感じました。特に、御社が今春リリースされた〇〇というサービスは、業界でも高いニーズがあると感じており、私の経験を活かして拡販に貢献したいと思い、志望しました。どうぞよろしくお願いいたします。」
NG例
「〇〇と申します。私は◇◇大学を20XX年に卒業後、株式会社△△で3年間医療業界を中心とした人材紹介営業を担当しております。ホームページを見て御社の方針に共感し、これまでの経験やスキルを活かせるのではないかと考え、応募しました。」
「自己紹介と前職の退職理由をお願いします」
転職理由を伝える際は「将来を見据えた前向きな決断である」という印象を与えることがポイントです。
たとえ実際の退職理由が労働環境や人間関係への不満だったとしても、そのまま伝えると、会社への批判と受け取られる可能性があります。そのため「自分の◯◯という目標を実現するために転職活動を進めている」といった前向きな表現に言い換えることが大切です。
ネガティブな理由を避け「どのような成長を目指しているのか」「何を実現したいのか」という視点で構成すると、意欲的で建設的な印象を与えられます。
回答例
「〇〇と申します。株式会社△△にて6年間、医療機器の営業に従事してまいりました。主に整形外科クリニックや病院に向けて、診療機器やリハビリ支援機器の提案・販売を行っておりました。医師や看護師の声を丁寧にヒアリングし、ニーズに合った機器構成を提案することで信頼を築き、前年比130%の売上達成に貢献しました。
しかし、売上だけでなく、患者様の治療効果や現場の利便性にも深く関わる提案をしたいと考え、転職を決意いたしました。これまでも、導入後の使用状況を確認し改善提案を行う支援をしてきましたが、前職ではフォロー体制に限界がありました。御社は、販売だけでなく、導入後の運用支援にも注力しておられ、医療現場の継続的な改善に関われる点に魅力を感じ、志望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。」
NG例
「前職では株式会社△△のマーケティング業務に携わっておりましたが、仕事がきつく、今後の働き方を見直したいと考えるようになりました。これまで培った接客力や調整力を活かしながら、より長く安定して働ける環境を求めて転職を決意しました。」
自己紹介後の転職面接の流れと対策方法
転職面接は、自己紹介から始まり、転職理由・志望動機・自己PR・逆質問の流れで進むのが一般的です。自己紹介だけでなく、それ以外の質問にも的確に答えられるよう、事前にしっかりと対策をしておきましょう。
面接対策に不安がある場合は、転職支援のプロである転職エージェントからアドバイスを受けるのも有効です。プロの視点からフィードバックをもらうことで、自分では気づけない改善点に気づける可能性があります。
以下の記事では、転職面接でよく聞かれる質問と対策、おすすめの転職エージェントも紹介しています。ぜひ参考にして、面接準備に役立ててください。

転職面接や自己紹介に関するよくある質問
最後に、転職面接や自己紹介に関するよくある質問を紹介します。
転職の自己紹介で何を話せばいい?
転職面接の自己紹介では、以下の順番で自分に関する基本情報を簡潔に伝えましょう。
- 氏名
- これまでの経歴
- 現職(前職)で培ったスキルや実績
- 志望した理由
- 結びの言葉
これらの項目を押さえて話すことで、要点をわかりやすく整理でき、好印象につながります。詳細はこちらをご確認ください。
転職回数が多い場合、何を意識すればいい?
転職回数が多い場合、自己紹介が長くなりやすいため、要点を整理して簡潔に話すことを意識しましょう。面接官が特に知りたいのは、「転職理由」と「これまでの経験を自社でどう活かせるか」の2点です。
転職回数が3回以内であれば、これまでの経歴を簡潔に説明し、共通する経験や目的を整理して伝えることで、継続的にスキルを磨いてきた印象を与えられます。
4回以上の転職経験がある場合は、すべてを詳細に説明するのではなく、業界や職種ごとの概要に絞って話しましょう。そのうえで、これまでの経験を通じてどのようなスキルや実績を得たか、そして応募企業でどう活かせるのかを明確に伝えてください。
未経験分野へ転職する場合、自己紹介のポイントはある?
未経験の業界・職種に転職する場合は、自己紹介で応募企業にマッチする強みやスキルを伝えることが大切です。
たとえば、顧客対応で培った傾聴力やコミュニケーション力、部下の指導・育成を通じて身につけたマネジメント力などは、業界を問わず活かせる汎用的なスキルです。
これまでの経験を通じて身につけた強みを、応募先でどのように活かせるのかを具体的に説明しましょう。
面接の自己紹介でダメな例は?
Web面接での注意点は?
Web面接を受ける際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 聞き取りやすい声ではっきり話す
マイク越しでは声がこもりやすいため、明瞭に話すことを意識しましょう。 - カメラを見て話す(面接官と視線を合わせることを意識する)
面接官の目を見るような意識でカメラを見ると、視線が自然に合い、好印象を与えられるでしょう。 - Web会議ツールや通信環境を事前に確認しておく
面接当日にトラブルが起きないよう、前日までに接続方法や通信状況を確認し、テストしておくと安心です。
転職の自己紹介は入念に準備して面接に臨もう
転職面接における自己紹介は、第一印象を左右し、その後の質問内容にも影響する重要なパートです。単に名前や経歴を伝えるだけでなく「自分に何ができるか」「なぜこの企業を志望したか」を簡潔にわかりやすく伝えることが求められます。
本記事で紹介した回答例やNG例を参考に、事前に構成を組み立てて繰り返し練習してみてください。
入社手続きのDXも企業選びのポイントに
面接を無事に突破し、内定を獲得した後には「雇用契約」の手続きが待っています。実は、この入社手続きの方法も、企業の働きやすさを測る一つの指標になります。
従来は、内定承諾書や雇用契約書を印刷・署名捺印し、郵送で返送するのが一般的でした。しかし近年、応募者の利便性を考え、GMOサインのような電子契約サービスを導入する企業が増えています。
電子契約であれば、PCやスマートフォン上で書類内容を確認し、そのままオンラインで契約を締結できます。応募者は「印刷・捺印・封入・投函」といった手間から解放され、現職で忙しい中でも、スピーディーかつ安全に手続きを完了させることが可能です。
このような入社手続きのDX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的な企業は、従業員の業務効率化や働きやすさの向上を重視している企業であるともいえるでしょう。転職活動の際には、選考プロセスだけでなく、こうした内定後の手続きにも注目してみてはいかがでしょうか。



















