電子マネーやネットバンクの普及によって、遠く離れた友人や親戚にもかんたんに送金のやり取りができるようになりました。
一方で、結婚や出産のお祝いなど、振込や電子マネーでの送金がふさわしくないケースもあります。また、ビジネスシーンにおいても、顧客へ現金を送ることがあります。
本記事では、現代のビジネスパーソンにはあまり聞き馴染みのない、現金を郵便で送る方法についてご紹介します。現金書留が利用されるケースから送り方、注意点まで詳しく解説しますのでぜひ参考にしてください。
現金書留とは?

現金書留とは、現金を送ることができる郵便のことです。普通郵便で現金を送ることは、郵便法第17条で禁止されているため、現金を送るには現金書留の利用が必須です。
また、郵便法第84条では、以下のとおり規定されており、知らずに普通郵便を利用してしまうと郵便法違反となるため注意してください
「不法に郵便に関する料金をまぬがれ、又は他人にこれを免れさせた者は、これを30万円以下の罰金に処する」
引用:郵便法第八十四条
現金書留を利用するケース
お金のやり取りは、ネットで完結という方も多いのではないでしょうか。しかし、まだまだ現金書留を利用するケースは存在します。ここからは、現金書留を利用するケースを個人とビジネスの2つの側面から解説していきます。
個人間で現金書留を利用するケース
現金書留を個人間で送るのは、以下のようなケースが挙げられます。
- 結婚のお祝い
- 出産のお祝い
- 卒業のお祝い
- お香典
お祝いごとやお香典などで現金を送る場合、さすがに銀行振込や電子マネーの送金は適していません。また、現金書留は中に手紙を入れてもいいため、相手に気持ちを伝えるのにもぴったりです。
ビジネスシーンで利用するケース
企業間での取引では、支払金額の不備があったとしても、振込で対応することが通常ですが、一般消費者に対するトラブルでは、現金書留が利用されることがあります。
たとえば、店舗でのお買い物でお客様から多く金額を受け取ってしまったケースが挙げられます。振込で対応することもありますが、銀行口座を教えたくない方もいるため、その場合には、現金書留が利用されることがあるのです。
現金書留の料金
ここからは、現金書留にかかる料金について解説していきます。
現金書留にかかる費用
現金書留には専用の現金封筒が必要です。まずは窓口にて21円の現金封筒を購入しましょう。ただし、現金封筒に収まらない品物を一緒に送りたい場合には、表面に「現金書留」と記載すれば、通常の封筒も利用できます。
また、現金書留の郵便料金は、損害要償額によって変動します。損害要償とは、郵便の紛失や破損などの発生時に損害を補償するための制度です。郵便局の窓口で申告した金額が限度となり、申告額が高くなるほど高額になります。
たとえば、損害要償額が10,000円までなら、定形郵便料金にくわえて480円で利用可能。さらに、損害要償額が5,000円増えるごとに11円が加算され、最大50万円の補償までつけることができます。
(参考:書留 | 日本郵便)

現金書留を安く送るコツ
現金書留を安く抑えるためにできることは、大きく3つあります。
1つ目は、損害要償額を最低額である10,000円に設定することです。損害要償額は差出人が決めるため、たとえ50,000円が入っていても、10,000円に設定すれば送料を安く抑えられます。ただし、万が一の際に補償される金額が減ってしまう点については注意してください。
2つ目はオプション制度を利用しないことです。現金書留では追加費用を支払うことで、速達や指定日配達の利用ができますが、速達の場合は最低300円(250gまで)、配達時間帯指定郵便は最低440円(250gまで)が上乗せされます。安く送るなら、なるべく使わないようにしましょう。
3つ目は、重さを減らすことです。現金書留の基本料金である定形郵便料金は、重さに対して料金が加算される仕組みです。
現金書留とそのほかの郵便の違い
書留には、現金書留のほか、一般書留と簡易書留があります。また、現金を送る手段としてはもうひとつ、郵便為替というものもあります。ここからは、それぞれの違いについてみていきましょう。
一般書留との違い

一般書留とは、重要書類や貴重品を送る際に便利な郵送手段です。料金はゆうメールの場合、基本運賃に+420円、通常郵便を利用する場合は基本運賃に+480円かかります。
引受から配達までの全過程を把握でき、受取人の署名による受領証明を得られるのが特徴です。また、万が一郵便物が破損・紛失した場合には、実損額の賠償があります。一般書留を利用するケースは、以下のような場合です。
- 契約書の送付
- 金、銀、ダイヤモンドなどの約款で定められる貴重品の送付
- 外国紙幣、古銭の送付
簡易書留との違い

簡易書留とは、基本料金に350円を追加することで送れる書留です。一般書留よりも安い分、万が一の賠償金額は50,000円が上限となります。
また、送達過程の確認は、引受と配達のみ可能です。高額ではないものの、相手に確実に届いたことを把握したい場合に便利な郵送手段です。たとえば、履歴書や願書などの書類、コンサートのチケットなどを送るのに適しています。

現金が送れる郵便為替との違い
現金を郵送する手段には現金書留のほかにもうひとつ、郵便為替(かわせ)というものがあります。郵便為替とは、現金を為替証書に換えて送付する方法のことです。
この郵便為替には、普通為替と定額小為替の2種類があります。普通為替とは、10万円以下の金額を、普通為替証書と呼ばれる書類に引き換える方法です。5万円未満は550円、5万円以上は770円の手数料がかかります。現金の送付のほか、遠方にある住民票の取り寄せなどに利用できます。
定額小為替は、小額の現金を送るのに便利な方法です。50円から1,000円までの12種類があり、金額に応じて定額小為替証書と呼ばれる書類に引き換えます。定額小為替証書発行時の手数料は200円です。
現金書留との最大の違いは、お金を受け取るには郵便局まで行く必要がある点です。
現金書留の送り方とポイント
ここからは、現金書留の送り方とポイントを具体的に解説していきます。普通の郵便とは出し方が異なるので、しっかりと押さえておきましょう。
専用の封筒を購入する
現金書留には、専用の現金封筒を利用する必要があります。現金封筒は郵便局の窓口またはゆうゆう窓口で購入可能です。コンビニでは購入できないので注意しましょう。
サイズは通常サイズと大型サイズがあり、ご祝儀袋などを入れる場合には大型サイズがおすすめです。大型サイズに収まらない場合には、通常の封筒に現金書留のオプションを付けることができます。
必要事項を記入する
現金封筒を購入したら、以下の項目を封筒に記入します。
- 差出人と届け先の住所氏名の記入
- 封入金額の記入
金額は、きちんと記載しておきましょう。記載がない場合は、損害要償額を10,000円以上に設定していても、最低金額である10,000円しか補償されません。
現金を封入して割印を押す
現行仕様 | 新仕様 | |
---|---|---|
封筒の様式 | 二重 | 一重 |
封かんの位置 | 3カ所 | 2カ所 |
販売価格 | 21円(変更なし) | |
デザイン | ![]() ![]() | ![]() |
ほかの変更点 | ・「お届け先」および「ご依頼主」の住所等記入欄を大きくする。 ・裏面の注意事項に英文を追加 ・一重封筒に変更しても、強度が保てるように紙質を変更 | |
仕様の変更時期 | 2021年から順次 | |
販売場所 | 全国の郵便局など |
現金書留に使用する現金封筒は、以前は内封筒のある2重の構造でしたが、現在は1重となっています。内封筒のある仕様の現金封筒も利用できますが、それぞれ割印の数と位置が異なるため注意が必要です。
内封筒のある旧仕様の現金封筒の場合は3カ所、新仕様の場合は裏側2カ所に割印を押します。それぞれの具体的な位置は封筒に記載がありますので、印鑑や署名をしましょう。なお、印鑑はシヤチハタでも可能です。
郵便局の窓口から送る
現金封筒の準備が整ったら、郵便局の窓口で送付手続きをして、発送の控えと領収証書を保管します。
ポストに投函することは、そもそも違反なうえ、普通郵便として送られてしまい、追跡や紛失・破損の際の補償が受けられなくなります。
現金書留を受け取るには?
現金書留は、本人もしくは家族が直接受け取る必要があり、自宅のポストに投函されることはありません。
また、受取には印鑑またはサインが必要です。不在によって受け取れなかった場合には、当日17:00頃までに郵便局へ電話すれば、その日の21:00頃までに再配達が可能です。
現金書留で追加できるオプション
ここからは、現金書留で追加できるオプションについて解説します。
速達
速達は最短翌日に届け先まで郵便物を届ける事が可能なオプションです。ただし、郵便物の遅延状況や届け先の住所によって数日かかることもあるため、あらかじめ配達状況を確認しておくことがおすすめです。
また、速達にかかる追加料金は以下のとおりです。
重量 | 料金 |
---|---|
250gまで | 300円 |
1kgまで | 400円 |
4kgまで | 690円 |
(参考:速達 | 日本郵便)
配達日指定
お祝いの日にあわせて配達をしたい場合には、指定日配達が便利です。現金書留もほかの郵便物と同様に、土日休日を含めた日を指定することができます。
配達日指定をする場合、郵便局にある配達日指定シールを使用しましょう。なお、追加料金は指定日が平日か休日かで変わります。
指定する曜日 | 料金 |
---|---|
平日の場合 | 42円 |
土曜日・日曜日・休日の場合 | 270円 |
(参考:配達日指定 | 日本郵便)
配達時間指定
現金書留では、配達日だけでなく、時間を指定することもできます。つまり、配達日指定と配達時間の指定には、それぞれ追加料金がかかるということです。配達時間の指定は、以下3パターンから選択できます。
- 8:00〜12:00
- 12:00〜17:00
- 17:00〜21:00
また、追加料金は現金書留の重さによって以下のように変動します。
重量 | 料金 |
---|---|
250gまで | 440円 |
1kgまで | 570円 |
4kgまで | 920円 |
(参考:配達時間帯指定郵便 | 日本郵便)
そのほかのオプション
現金書留には、すでにご紹介した3つのオプションのほか、以下のようなオプションも追加できます。
- 返信依頼郵便
- 巡回
返信依頼郵便とは、返送用のはがきを1枚つけて送るというものです。返信依頼郵便だからといって、受け取った方が必ず返信しなければいけないわけではなく、あくまでも送り主が返信を貰いたいという意思表示と解釈できます。
なお、返送料金は返送に対する受取人が払うので、相手に負担はありません。また、巡回とは、官庁や各事業者を巡回しながら郵便物を集荷・配達するサービスで、社内便のようなものです。
このように、現金書留に追加できるオプションは、ほかの郵便サービスと比較して少ないのが特徴です。
現金書留の注意点
お祝いごとやお香典などの個人間での送り物をはじめ、ビジネスシーンでも利用することのある現金書留ですが、注意点がいくつかあります。ここからは、現金書留の注意点をご紹介していきますので参考にしてください。
現金書留は内容の証明ができない
何かのトラブルによって現金書留を使用する場合には、注意が必要です。現金書留では、配達をしたという証明は可能ですが、実際に相手がいくらを受け取ったかを証明することができないためです。
つまり、差出人は10,000円を入れたといっても、受取人が5,000円しか入っていなかったと言えば、それを証明することはできません。
銀行口座への振込であれば、現金の移動は明らかな証明になります。しかし、現金書留の場合、郵便局が証明するのは郵便物が確実に届けられたということだけです。
申し込み後のキャンセルはできない
現金書留は、一度窓口で送付手続きが済んでしまうとキャンセルできません。
万が一、送付手続き後に手違いが発覚した場合には、集配郵便局または取扱局へ取り戻し請求をしましょう。すると、集荷前に限り、差出人へ戻すことができます。ただし、現金書留を申し込むためにかかった料金は返金されませんのでご注意ください。
なお、取り戻し請求には、本人確認書類が必要なうえ、手数料がかかります。手数料は、配達郵便局へ請求した場合は550円、そのほかの郵便局へ請求した場合は750円がかかります。
現金書留は気持ちが伝わる!ただし使うシーンには要注意
現金書留は、お祝いやビジネスの場で利用できる現金の送付方法のひとつです。現代のビジネスパーソンには馴染みのない現金書留ですが、使うシーンや送り方、注意点を理解しておくことで、一目置かれるでしょう。
また、現金書留は銀行口座への振り込みや電子マネーの送金よりも相手に気持ちが伝わりやすいのが特徴です。お祝いやお詫びの際には手紙も同封できます。
一方で、顧客とのトラブルでの利用は要注意です。現金書留は実際に現金封筒の中にいくら現金が入っていたか証明する手段がありません。現金書留の送り方や注意点をしっかりと理解して正しく使いましょう。