近年ではAIが文章やイラストを生成できるようになり、素人でも作品を作るハードルが低くなりました。しかし、AIは基本的にWebで著作物である他人の作品を模倣しているため、著作権の問題が話題となっています。
そこで本記事では、著作物の概要や具体例、著作権の対策などについて詳しく解説します。行っている事業で著作権が気になっている方は、ぜひご覧ください。
そもそも著作物とは?
著作物とは、作者自身の創造性に基づいて作られた作品であり、その中でも著作権によって保護されているものを指します。著作権法では、第ニ条で著作物は以下のように定義されています。
(定義)
(参考:著作権法|e-Gov法令検索)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
また、著作権とは法律によって保護されている知的財産権の一種であり、ほかには特許権や意匠権などが挙げられます。
著作物の具体例
著作物は作者自身がオリジナルに作ったものを指しますので、幼稚園児が書いたお絵描きも著作物に該当します。また小説や曲、ダンスなども著作物となります。さらに無形物であるプログラムも著作物です。
著作物とならないもの
著作権は幅広く認められている権利であるため、世の中に存在するほとんどの作品は著作物となります。しかし、なかには著作物にならないものもありますので、ご紹介します。
客観的な事実を伝えたもの
作者の主観を交えずに単純に事実を伝えるものは、著作物として認められません。しかし、新聞や歴史のテキストなどは著作物になりますので、創造性の有無がポイントといえるでしょう。
その時点では実現不可能なアイデア
科学的または物理的な理由などで実現できないアイデアも著作物として認められません。しかし、この場合でもSF作品などは著作物となります。
イメージが確立された実用品
シャープペンやコンセントなどすでに一般的に使われており、特徴もない実用品は著作物にはなりません。ただし、画期的な機能がある場合には著作権の対象となる可能性があります。
事業を営むうえで気をつけるべき著作権の対策
他人の著作物と思われるものを商用目的で使うべきではありませんが、場合によっては使用を検討せざるを得ないケースもあるでしょう。そこで、事業で著作物を用いる場合の対策をご紹介します。
- 国内で作られたものか確認する
- 保護期間を過ぎているか
- 著作権関係をクリアにしておく
それぞれの対策について詳しく解説します。
国内で作られたものか確認する
当該著作物が外国で作られた場合は、訴訟となったとき煩雑になりかねませんので、日本で作られたものかどうか確認しましょう。また作者が日本国籍かどうかもチェックしておけば、より安心です。
保護期間を過ぎているか
著作権は永久に継続するわけではなく、効力が続く期間として保護期間が定められています。日本では原則著作権の保護期間は、著作物が作られた時点から作者の死後70年までとなっています。
ただし、外国の作品の著作権を侵害してしまった場合にはどちらの国の保護期間が適用されるかなどの問題も出てきますので、この点でも気をつけておきましょう。
著作権関係をクリアにしておく
楽曲などが必要な場合には、自社で作成すれば著作権関係の問題を解決できます。外注で作曲家やシンガーなどを雇い、著作権を譲渡する旨の契約を締結しておけば問題ありませんので、おすすめの方法です。
著作権を侵害した場合に科される罰則
著作物は著作権法によって保護されています。そのため、他人の著作物を無断で利用した場合には、著作権の侵害に該当して罰が科されます。
基本的には損害賠償請求や販売の差し止めが行われますが、悪質な場合には刑事罰が科される可能性もありますので、気をつけましょう。

自社で著作権の侵害行為が見つかった場合の対処法
著作権は広く認められている権利であるため、知らないうちに他人の著作権を侵害してしまっているケースも見られます。そこで、侵害行為を見つけた場合の対処法について解説します。
即刻使用を中止する
著作権の侵害行為を指摘された場合には、すぐに使用を中止しましょう。商用目的でないならば、大きなトラブルにならない可能性があります。
しかし、指摘されたあとでも使っていると問題行為とみなされかねませんので、早めに対処しましょう。
弁理士に相談する
弁理士は知的財産権の専門家で、著作権や特許、商標などに詳しいです。著作権のトラブルについては、弁護士よりも詳しい場合が多く、実務経験も豊富です。
著作物に関するよくある質問
身近な著作物としてどんなものがある?
著作物は、創作性がある表現なら身近なものでもたくさんあります。たとえば、以下のものが著作物になります。
- 小説や漫画
- 音楽、映画
- 絵画、写真
- 子どもが描いた絵や作文
- スマホで撮った写真や動画
ただし、単なる事実やデータだけでは著作物にはなりません。
キャラクターは著作物ですか?
キャラクターそのもの(名前や設定など抽象的なアイデア)は著作物ではありませんが、キャラクターを具体的に描いたイラストや小説、漫画などの表現には著作権が発生します。
そのため、キャラクターの絵や物語を無断で使うと著作権侵害になることがあります。
著作物と著作権の違いは何ですか?
著作物は「創作的に表現された作品」そのものを指します。著作権は、その著作物を作った人が持つ「無断でコピーや利用されないよう守る権利」です。
事業で作品を扱うときは著作権を意識しよう
著作権は広く認められている権利であるため、むやみに他人が作った作品は使わない方がよいでしょう。そのため、事業などで使う場合には自社で作成する方法をおすすめします。
