目次
1.はじめに
初学者の方が英文契約書を読み進めるために、ぜひとも押さえておいていただきたい以下の2種類の表現をご紹介します。
どちらもずいぶん地味な表現だと感じたかもしれません。しかし、これらを意味する表現を見た瞬間に意味がわかるようにしておくと、英文契約書を読み進めるのがずっと楽になります。
また、自分で英文契約書を修正する際にも、これらの表現を使わなければならない場面は多いです。よって、ここでご紹介する表現は、「読んで意味がわかる」だけでなく、「自分でも書ける」ようにしっかり練習しましょう。
それでは、解説を始めます。
2.「・・・に定められている」を表す表現
「・・・に定められている」「・・・に記載されている」(以下、「・・・に定められている」といいます)という表現についてご紹介したいと思います。
この表現は契約書中で本当によく使われます。
どの程度使われているかと言いますと、例えば、一般財団法人エンジニアリング協会が発行しているプラント建設向け契約書の雛形中には、合計で100回以上この「・・・に定められる」を表す表現が出てきます。これは、契約当事者の「権利」を表すmayが出てくる回数を上回ります。契約書が、当事者間の権利義務を明確に定める文書だということから、義務を表すshallや権利を表すmayが使われる回数が多いことはみなさん容易に想像がつくかと思いますが、そのmayを上回るということは、如何にこの「~に定められている」の表現が契約書中によく出てくるかを表している、と言えるのではないでしょうか。
(ちなみに、上記の雛形の中で義務を意味するshallが使われている回数は400回です。このことから、契約書は、当事者の義務の記述で埋め尽くされている文書であることもご理解いただけるかと思います。)
でも、どうして契約書中では、この「~に定められている」の表現がこんなにも多く使われるのでしょうか。
契約書は、「当事者間の権利・義務、特に義務を数多く定める文書」です。つまり、当事者がしなければならないことがたくさん書き連ねられていると言えます。そしてその当事者の義務は、具体的には以下のような表現で記載されます。
「買主は、本契約書の第3条に定められている支払条件に従って、契約金額を▲までに売主に支払わなければならない。」
「請負者は、本契約に添付される仕様書に記載されているスケジュールに従って作業を履行しなければならない。」
「本契約に定められているいかなる条文にも関わらず、売主が買主に対して本契約に関して負う責任は、契約金額の100%を上限とする。」
このように、契約書では、「当事者は、ある事柄が詳細に記載されている条文または仕様書等に従ってある行為をしなければならない」という書き方をすることが多いのです。
これが、契約書で「~に定められている」の表現が多く使用される理由です。また、このことは、契約書に限った話ではありません。
例えば、契約金額を支払わない顧客がいたとします。その場合、売主はいきなり裁判や仲裁で争うのではなく、何度か支払を催促するレターを顧客に出すことになります。
その際には、単に「契約金額を支払ってください」ということをレターに書くのではなく、「契約書の○条に定められている支払条件に従って支払いがなされていないので、直ちに支払ってください」と書きます。つまり、請求の根拠を顧客に示すのです。この場合にも、「~に定められている」という文言が使われるのです。
では、この「~に定められている」には、具体的にいかなる表現があるのでしょうか。以下に主な表現、使用例、そしてその訳の一覧をご紹介します。
表現 |
例文と訳 |
specified in |
the test(s) specified in Appendix 7 添付資料7に定められている試験
|
provided in |
the approval of design provided in Article 20 第20条に定められている図面の承認
|
set forth in |
the period set forth in this Contract この契約書に定められている期間
|
stipulated in |
the interest stipulated in Article 12.3 第12.3条に定められている利息 |
stated in |
all the conditions stated in Article 11 第11条に定められている全ての条件
|
described in |
any test not described in this Agreement この契約に定められていない試験
|
prescribed in |
the conditions prescribed in Article 6 第6条に定められている条件
|
表現は色々あるものの、どれも、「~に定められている」だと覚えておいていただければ、英文契約を読む際に役に立つと思います。
ちなみに「・・・に定められている」という意味を英語で表したい場合には、「自分はこれを使う!」と決めておくと、どれを使うべきか迷わずに済みます。
3.「・・・に従って」を表す表現
この「・・・に従って」は、具体的には、以下のような条文の中で使用されます。
「売主は、仕様書に従って、契約を履行しなければならない。」
「買主は、添付の支払条件に従って、売主に対して契約金額を支払わなければならない。」
この「~に従って」を表す表現としては、以下の2つが契約書中ではよく使われています。こちらも使用例を示します。
表現 |
例文と訳 |
in accordance with |
The Seller shall perform its obligations in accordance with the Specifications attached to this Agreement. 売主は、本契約に添付されている仕様書に従って、その義務を履行しなければならない。
|
pursuant to |
The Purchaser shall pay the Contract Price to the Seller pursuant to the payment terms specified in Article 3 hereof. 買主は、本契約の第3条に定められている支払い条件に従って売主に契約金額を支払わなければならない。 |
この2つは普通の英文では、あまり見たことがない表現かもしれませんが、英文契約書を読むと、上記の表現が頻出します。そのときに注意していただきたいのは、「・・・に従って」の「・・・」の部分に何が具体的に記載されているのかを確認することです。
例えば、上記の「売主は、本契約に添付されている仕様書に従って、その義務を履行しなければならない」というのは、英文では、”The Seller shall perform its obligations in accordance with the Specifications attached to this Agreement.”となりますが、では具体的にどのように義務を履行しなければならないのかは、in accordance with以下のthe Specifications(仕様書)に記載されているので、それをよく見て確認する必要があります。
例文の2つ目の「買主は、本契約の第3条に定められている支払い条件に従って売主に契約金額を支払わなければならない。」は、英文にすると、”The Purchaser shall pay the Contract Price to the Seller pursuant to the payment terms specified in Article 3 hereof.”となりますが、この場合は、pursuant to以下のthe payment termsは具体的にいかなる内容なのかを確認する必要があります。
in accordance withやpursuant toに続く部分は、契約中の別の条文や添付書類であることもあれば、法律であることもあります。
そして、権利義務に関して本当に重要なことはin accordance withやpursuant toに続く部分に記載されていることがあるので注意が必要です。
ちなみに、この「・・・に従って」は、より簡単な英単語で同じ意味を表すことができます。それは、「・・・に基づいて」を表すunderです。例えば、次のようになります。
The Seller shall perform its obligations under the Specifications attached to this Agreement. 売主は、本契約に添付されている仕様書に基づき、その義務を履行しなければならない。 |
The Purchaser shall pay the Contract Price to the Seller under the payment terms specified in Article 3 hereof. 買主は、本契約の第3条に定められている支払い条件に基づき、売主に契約金額を支払わなければならない。 |
「・・・に基づいて」何かをするということは、「・・・に従って」それを行う、という意味になりますよね。つまり、両者は代替可能なのです。
資格スクエア 英文契約書講座HP
https://www.shikaku-square.com/english-contract
東北大学工学部機械知能学科卒業、一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。株式会社東芝で企業法務として海外に発電所を建設するプロジェクト、国際仲裁案件、海外企業買収案件等多数の海外案件に携わる。海外案件で活躍する日本人の育成を志し、2017年に独立。英文契約、特に海外でプラント・インフラ・その他の建設契約のチェックの仕方について指導する本郷塾を立ち上げる。重電メーカー、重工メーカー、プラントエンジニアリング企業、建設会社、総合電機等様々な企業で、営業・技術・法務部門を対象に個別指導・社内研修を実施している。
著書に「はじめてでも読みこなせる英文契約書」「“重要英単語と例文”で英文契約書の読み書きができる」「頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく」など。
月刊誌「ビジネス法務」にて「新入法務部員が覚えたい契約英単語・表現」を連載。
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