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プロバイダ責任制限法とはどんな法律?2022年改正のポイントも踏まえて解説

現代では、SNSやWebサイトの書き込みから大きな問題に発展するニュースが多く見られます。このような事態に対応するために、プロバイダ責任制限法という権利侵害に関する法律が2022年に改正されました。

本記事ではプロバイダ責任制限法の概要や目的、重要な3つの内容などについて詳しく解説します。

※本記事は2023年10月に執筆されたものです。掲載内容は当時の情報を基にしています。

目次

プロバイダ責任制限法とは?

プロバイダ責任制限法とは、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」の通称であり、SNSやWebサイトなどの誹謗中傷によって権利侵害が生じた場合のルールが定められています。

本法律は2001年に制定されましたが、昨今ではインターネットの書き込みによる被害が多く発生しており、プロバイダなどの事業者が現状に合った対策を講じるために2022年に改正されました。なお、プロバイダとは回線をインターネットに接続するサービスを提供する事業者を指します。

プロバイダ責任制限法は2024年に改正され「情報流通プラットフォーム対処法」に名称が変わりました(2025年4月改正法施行)。

プロバイダ責任制限法が制定された目的

プロバイダ責任制限法が定められた目的は、以下の2つです。

  • 権利を侵害する情報の削除
  • 発信者に関する情報開示

それぞれ詳しく解説します。

権利を侵害する情報の削除

権利を侵害する情報とは、特定の個人や事業者に対する誹謗中傷や風評被害などを指します。このような情報を放置してしまうと対象者を傷つけてしまうだけでなく、拡散してしまう恐れもあるため、プロバイダなどの管理者が削除する必要があるでしょう。

しかし、これまでの法律では投稿者から実際には権利を侵害していないにも関わらず、自己判断で情報を削除したなどと責任を問われる可能性がありました。そこでプロバイダ責任制限法が改正され、投稿者の利益や管理者の責任のバランスをとれるように調整し、権利を侵害する情報の削除に対するハードルが低くなったのです。

発信者に関する情報開示

発信者に関する情報開示とは、誹謗中傷や風評被害などの投稿者を特定するために、管理者に対して発信者の情報を開示請求することです。通常SNSやWebサイトの書き込みや投稿は匿名で行われていますが、損害賠償などを行う場合には開示請求が認められるようになりました。

改正後におけるプロバイダ責任制限法における重要な3つの内容

2022年改正後のプロバイダ責任制限法は、以下の3つの内容から構成されています。

  • プロバイダなどの管理者に対する損害賠償責任の制限
  • 権利を侵害する投稿を行った発信者に関する情報の開示請求を認める権利
  • 発信者の情報の開示請求に関する裁判上の手続き

それぞれ詳しく解説します。

プロバイダなどの管理者に対する損害賠償責任の制限

改正後のプロバイダ責任制限法では、投稿者または被害者からのプロバイダへの損害賠償責任が制限されるようになっています。誹謗中傷によるプロバイダへの損害賠償は、原因となった投稿の発信者または被害者の両者から請求されるケースが考えられます。

たとえば、他人や他社の権利を侵害すると思われる投稿を削除した場合には、発信者から「手間暇かけた投稿を勝手に削除されて傷ついた。だから慰謝料を払え」などの請求が来る事態が想定されます。しかし、この場合では、以下の2つの要件を満たせば賠償責任は否定されます。

  • 権利侵害があると信じるに足る相当の理由があった
  • 削除の申し出を発信者に行ったが、7日以内に連絡がなかった

ただし、「公職の候補者等に係る特例」に該当する場合には、2つ目の要件において7日の期限が2日まで短縮されます。この特例は、選挙の候補者が何らかのデータの流出によって権利を侵害されたケースなどが考えられます。

また被害者からも、「私の尊厳を傷つけるような投稿を長期間放置して、その結果被害が広がった。その責任を償え」といった請求が来ることも考えられます。このような場合でも、以下の2つの要件のいずれにも該当しない場合には、賠償責任を免れます。

  • 権利侵害の事実を知っていた
  • 権利侵害の事実を知ることが可能だったと認められる

権利を侵害する投稿を行った発信者に関する情報の開示請求を認める権利

Webサイト上の投稿によって何らかの権利侵害を受けた場合、被害者はプロバイダなどの管理者に対して当該投稿の発信者を特定するための情報開示を求める権利があります。このような情報を特定発信者情報といいますが、具体的な内容はプロバイダ責任制限法第2、3条で以下のように定められています。

(発信者情報)
第二条 法第二条第十号の総務省令で定める侵害情報の発信者の特定に資する情報は、次に掲げるものとする。
一 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の氏名又は名称
二 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の住所
三 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電話番号
四 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電子メールアドレス(電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号に規定する電子メールをいい、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令(平成二十一年総務省令第八十五号)第一号に規定する通信方式を用いるものに限る。第六条第一項第一号において同じ。)の利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。第十一条第二項において同じ。)
五 侵害情報の送信に係るアイ・ピー・アドレス(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第百六十四条第二項第三号に規定するアイ・ピー・アドレスをいう。以下この条において同じ。)及び当該アイ・ピー・アドレスと組み合わされたポート番号(インターネットに接続された電気通信設備(同法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下この条において同じ。)において通信に使用されるプログラムを識別するために割り当てられる番号をいう。第九号において同じ。)
六 侵害情報の送信に係る移動端末設備(電気通信事業法第十二条の二第四項第二号ロに規定する移動端末設備をいう。以下この条において同じ。)からのインターネット接続サービス利用者識別符号(移動端末設備からのインターネット接続サービス(利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される端末系伝送路設備(端末設備(同法第五十二条第一項に規定する端末設備をいう。)又は自営電気通信設備(同法第七十条第一項に規定する自営電気通信設備をいう。)と接続される伝送路設備をいう。)のうち、その一端がブラウザを搭載した移動端末設備と接続されるもの及び当該ブラウザを用いてインターネットへの接続を可能とする電気通信役務(同法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)をいう。次号において同じ。)の利用者をインターネットにおいて識別するために、当該サービスを提供する電気通信事業者(同条第五号に規定する電気通信事業者をいう。次号において同じ。)により割り当てられる文字、番号、記号その他の符号であって、電気通信(同条第一号に規定する電気通信をいう。第五条において同じ。)により送信されるものをいう。以下この条において同じ。)
七 侵害情報の送信に係るSIM識別番号(移動端末設備からのインターネット接続サービスを提供する電気通信事業者との間で当該サービスの提供を内容とする契約を締結している者を特定するための情報を記録した電磁的記録媒体(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものに係る記録媒体をいう。)(移動端末設備に取り付けられ、又は組み込まれて用いられるものに限る。)を識別するために割り当てられる番号をいう。以下この条において同じ。)
八 第五号のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた電気通信設備、第六号の移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号に係る移動端末設備又は前号のSIM識別番号に係る移動端末設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
九 専ら侵害関連通信に係るアイ・ピー・アドレス及び当該アイ・ピー・アドレスと組み合わされたポート番号
十 専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
十一 専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号
十二 専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号に規定する電子メールのうち、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令第二号に規定する通信方式を用いるものの利用者を識別するための番号その他の符号として用いられたものをいう。次号において同じ。)
十三 第九号の専ら侵害関連通信に係るアイ・ピー・アドレスを割り当てられた電気通信設備、第十号の専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号に係る移動端末設備、第十一号の専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号に係る移動端末設備又は前号の専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号に係る移動端末設備から開示関係役務提供者の用いる電気通信設備に侵害関連通信が行われた年月日及び時刻
十四 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者についての利用管理符号(開示関係役務提供者と当該開示関係役務提供者と電気通信設備の接続、共用又は卸電気通信役務(電気通信事業法第二十九条第一項第十号に規定する卸電気通信役務をいう。)の提供に関する協定又は契約を締結している他の開示関係役務提供者との間で、インターネット接続サービスの利用者又は当該利用者が使用する電気通信回線を識別するために用いられる文字、番号、記号その他の符号をいう。)
(特定発信者情報)
第三条 法第五条第一項(各号列記以外の部分に限る。)の総務省令で定める発信者情報は、前条第九号から第十三号までに掲げる情報とする。

(参照:e-gov法令検索

この条文から、発信者の名前や住所、電話番号など詳細な情報を開示請求できるのです。

発信者の情報の開示請求に関する裁判上の手続き

発信者の情報の開示請求に関する裁判上の手続きは以前から行えていましたが、実際に手続きを行ってもプロバイダなどから直接情報を開示されない場合には、SNSやWebサイトの管理者および回線の管理者などの両者に対して訴訟する必要がありました。

これでは被害者が2回分手続きを行わざるを得なくなるので、手間やコストがかかります。

そこで改正後には1回の手続きで両方の管理者に対して開示請求が可能となりました。

事業者に求められる対応について

今回のプロバイダ責任制限法改正を受けて、以下のような対応が求められています。

  • 誹謗中傷などの書き込みに対する迅速な対応
  • ITリテラシーの向上

それぞれ詳しく解説します。

誹謗中傷などの書き込みに対する迅速な対応

プロバイダ責任制限法の改正によって、事業者は権利侵害に関わる書き込みに対して迅速な対応を行うことが求められるようになりました。もし自社が運営しているSNSやWebサイトに誹謗中傷や風評被害と思われる書き込みを見つけた場合には、削除などの対応をスピーディーに行わなければ、責任を問われる可能性があります。

また当該書き込みが権利を侵害しているかどうか見極めることも重要です。もし権利を侵害していないにも関わらず、勝手に削除されたと投稿者が判断した場合でも損害賠償を請求される恐れが考えられます。そのような場合に備えて、権利侵害に相当する理由を明示できるようにしておきましょう。

ITリテラシーの向上

従業員が他人や他社の権利を侵害するような情報を発信しないようにITリテラシーを向上させる社員教育を行うとよいでしょう。不用意な行動一つで企業全体に大きなダメージを与えかねませんので、経営陣を含むすべての従業員に注意喚起しておきましょう。

また従業員や自社が権利を侵害された場合に備えて、担当部署や顧問弁護士などと対応策やマニュアルを作成しておくことをおすすめします。

プロバイダ責任制限法についてのよくある質問

情報流通プラットフォーム対処法と旧プロバイダ責任制限法の違いは何?

旧プロバイダ責任制限法はプロバイダ(通信事業者)のみを対象としていましたが、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)はSNSなど大規模オンラインプラットフォーム事業者まで対象を拡大しました。

旧法が責任制限規定を中心としていたのに対し、新法は被害者救済に加え被害予防・拡大抑止も目的とし、プラットフォーム事業者の対処義務を強化しています。改正法は2025年4月1日に施行されました。

情報流通プラットフォーム対処法により何が変わる?

SNSなど大規模プラットフォーム事業者に対し、権利侵害情報の削除基準策定や対応状況の公表、削除対応の迅速化などが義務付けられ、違反には罰則も設けられました。

被害者は削除請求や発信者情報開示請求をスムーズに進められるようになり、Webサイト上で安心・安全にサービスを利用できるようになります。

(参考:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)|総務省

プロバイダ責任制限法を理解し、リスクのない情報発信をしよう

現代では、世界中でSNSなどを通じて情報が入手できるようになっています。またスマホなどのデバイスがあれば気軽に発信、受信できるため、便利な世の中になったといえるでしょう。

しかし、その分発信する情報の内容には注意する必要があります。もし他人や他社の権利を侵害するような内容だと判断された場合には、思いもしなかった大きな責任を負うことになりかねません。

プロバイダに関する事業者だけでなく、その他の事業者や従業員も意識せざるを得ませんので、ITリテラシーを高めてトラブルを起こさないように徹底しましょう。

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この記事を書いた人

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