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日本にも迫る?レイオフの意味とリストラとの違い、実際の海外事例も解説

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従業員の解雇を意味するレイオフは、企業の業績悪化時に実施される人事施策の一つです。もともとは一時的な解雇を指しており、業績が回復したときに再雇用されることを前提としていました。ただし、現在は恒久的な解雇もレイオフと呼ばれることが多いです。

日本ではあまりなじみのない言葉ですが、近年ではアメリカを筆頭に、海外大手企業によるレイオフの事例が相次ぎ、注目を集めています。

この記事では、レイオフの具体的な定義やリストラとの違い、実際に起きた海外の事例を紹介します。さらに、国内企業で行われる人件費削減の方法や日本でレイオフが導入される可能性についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

レイオフの意味とは

レイオフは、企業の業績悪化や景気後退を背景に、会社都合で従業員を解雇する措置のことを指します。

一般的な解雇(クビ)とは違い、恒久的な解雇を意味する「Permanent Lay-off」だけでなく、経営状況が回復した際に再雇用することを前提とした「Temporary Lay-off」もレイオフに該当することが特徴です。なお、国内では再雇用することを前提とした解雇でレイオフを使用することが多いです。

人件費は企業の固定費の中でも大きな割合を占めるため、レイオフはコスト削減策として実施されます。

レイオフとリストラの違い

国内企業における人員整理ではリストラが一般的です。一方で、レイオフは日本のリストラとは大きく異なる特徴があります。両者のおもな違いは、次のとおりです。

レイオフリストラ
解雇の種類整理解雇(一時的か恒久的)整理解雇(原則復帰なし)
特徴再雇用を前提とすることがある退職を前提とする
法的リスク違法になる可能性がある要件を満たすと適法になる

レイオフとリストラはいずれも、企業が人員を整理するための措置という点では共通していますが最大の違いは再雇用をすることがあるかどうかです。

リストラでは、解雇された従業員が復帰するケースは原則ありません。一方でレイオフは、一時的な施策として行われることがあり、業績回復後に再雇用されるケースもあります。

いずれも整理解雇ではありますが、現在の日本の法律上、会社都合で一方的にレイオフを実行すると違法になる可能性が高いでしょう。法的なリスクは、記事後半に解説します。

レイオフのメリットとデメリット

海外企業では珍しくないレイオフですが、なぜ多くの企業がこの施策を採用するのでしょうか。ここでは、おもに企業側の観点から、レイオフのメリットとデメリットを解説します。

メリット:人材とノウハウの流出を防止できる

企業側のレイオフによる最大のメリットは、人材やノウハウの流出を防止しつつ、一時的に人件費を削減できる点です。景気悪化などによる一時的な解雇であっても、再雇用を前提とすることで、優秀な人材や蓄積されたノウハウの流出リスクを最小限に抑えられます。

また、採用や育成には多大なコストと時間がかかるため、業績が回復した際に再び即戦力として戻ってもらえることも、企業にとって大きなメリットです。一方で従業員側のメリットは、レイオフがあらかじめ明示されていることで完全な解雇よりも、一定の安心感を持って将来を見据えられることです。

さらに、転職の機会やワークライフバランスを見直すきっかけにもなります。希望に合った条件での転職が実現すれば、キャリアアップにつながる可能性もありますし、働き方や価値観を見直すリフレッシュの機会としてもプラスに働くでしょう。

このように、レイオフは単なる一時的な解雇にとどまらず、企業にとっては優秀な人材の維持、従業員にとっては新たな選択肢や前向きな転機をもたらす制度といえます。

デメリット:実施するハードルが高い

一方で、レイオフには従業員の信頼やモチベーションの低下といったリスクも伴います。たとえ一時的な措置であっても、従業員は収入源を断たれる不安や本当に再雇用されるのかという不確実性が精神的なストレスとなり、企業への不信感が高まる恐れがあります。

特に、復帰のタイミングや再雇用の条件が明確でない場合、不安や不信感はより大きくなり、モチベーションが低下したり、好条件の企業へ転職したりする可能性があります。また、対応を誤ると対外的な企業イメージの悪化にもつながるリスクがあり、ブランド価値の低下や人手不足といった影響も出かねません。

このように、レイオフは制度の設計や従業員への説明・対応次第で、大きなマイナスに転じてしまう可能性もあるため、企業には慎重な運用が求められます。

日本で行われる人件費削減の実情とは

海外企業では、業績悪化による人件費削減策としてレイオフが実施されることがありますが、日本ではあまり一般的ではありません。

国内企業は、法的・文化的な背景から整理解雇に踏み切る前に、まずはほかの方法で人件費の抑制を図ります。ここでは、国内企業で実際に行われている人件費削減の方法を紹介します。

残業代の削減や見直し

国内企業において、一般的な人件費削減策のひとつが残業代の削減・見直しです。

時間外労働や休日出勤には割増賃金の支払いが義務づけられており、企業にとっては大きなコスト負担となります。そのため、業績が悪化した際には、残業時間を削減することで即効性のあるコスト削減が実現します。

まずは残業ありきの企業風土を見直し、業務の棚卸しや不要なタスクの洗い出しなどを通じて、本当に必要な残業かどうかを見極めることが重要です。

くわえて、残業削減には生産性の向上が不可欠であり、単に残業を禁止するだけでは従業員の不満や業務が滞る可能性もあります。そのため、業務の効率化とセットで残業の見直しを行うことが、効果的な人件費削減につながるといえるでしょう。

アウトソーシングの活用

業務の一部を外部に委託するアウトソーシングも、人件費削減の有効な手段の一つです。たとえば、税務処理や給与計算といった業務は、不可欠でありながら直接的な利益を生まないバックオフィス業務です。この業務を外部の専門機関に委託することで、社内の人件費を抑えることが可能です。

具体的には、税理士事務所や社労士事務所に依頼することで、高い専門性を維持しながら効率的な業務運営が期待できる点も大きなメリットといえるでしょう。さらに、アウトソーシングによって浮いた人件費を、営業や開発など利益を生み出す部門へ割けるため、全体の生産性向上にもつながります。

外注には一定のコストがかかるものの、繁忙期や閑散期に応じて契約量を調整できるなど、固定費を変動費に転換できる柔軟性も魅力です。このように、アウトソーシングはコスト削減と業務効率の両面で効果が期待できる施策といえるでしょう。

ツールやシステムを導入して業務効率化を図る

近年では、業務効率化による間接的な人件費削減にも注目が集まっています。外部委託以外にも、勤怠管理や経費精算、承認フローなどのツールを導入することで、少人数でも生産性を維持・向上させることが可能になります。

また、ITツールの導入によって単純業務が自動化されることで、残業の削減や人的ミスの防止にもつながり、結果的に人件費の抑制につながります。初期投資は必要ですが、長期的には効率化とコストカットの両立が期待できる施策です。

海外企業の大規模なレイオフ事例

ITの進化とともに急成長を遂げた海外のテック企業ですが、2022年から2023年にかけて、名だたる企業が相次いで大規模なレイオフを実施しました。ここでは、革新的な技術で世界を変え続けてきたアメリカの巨大テック企業、Google・Amazon・Metaにおけるレイオフの事例を紹介します。

Google

Googleは2023年1月、全従業員の約6%にあたる約12,000人の解雇を発表しました。

パンデミック中に大量採用した人員の見直しと今後注力するAI技術への投資資金の確保がおもな理由とされています。日本法人であるGoogle合同会社も例外ではなく、社員に対して以下のような退職勧奨を促すパッケージが提示されました。

  • 通知期間:90日間の通知期間中の給与支払(2023年3月2日から5月31日まで)
  • 退職金:勤続年数1年ごとに1カ月分の基本給+3カ月分の追加基本給
  • 早期署名支払:通知日から14日以内の署名で、9カ月分の基本給を一括支払
  • 再就職支援:6カ月間の専門的な再就職支援サービス など

このように、Googleはパンデミック後の事業構造の見直しと将来の戦略投資に向けて、従業員への手厚い補償を行いながらも、大規模なレイオフを実施しました。

(参考:【全文公開】日本のグーグル社員に通達された「退職パッケージ」連絡。2週間で退職合意、9カ月分の給与積み増し|Business Insider

Amazon

Amazonは2022年11月から2023年3月にかけて、約27,000人の従業員を解雇しました。さらに2024年1月には、動画配信サービスのAmazonプライム・ビデオやゲーム配信プラットフォームのTwitchにおける制作部門でもレイオフを実施しました。

パンデミックによって需要が急増した領域の見直しがおもな理由とされており、持続可能な組織への再構築が図られています。

Meta

Meta(旧Facebook)は2022年11月、全従業員の約13%にあたる11,000人のレイオフを発表しました。さらに2023年3月には、追加で10,000人の人員削減と5,000人分の採用計画の中止も決定しています。

Metaは、マクロ経済の減速や広告需要の落ち込みを背景に、創業以来初となる4四半期連続の減収となりました。業績悪化の立て直しと将来的な経営環境の不透明さを見据えて、大規模な人員整理に踏み切ったとされています。

日本でレイオフは導入されるのか?

日本ではレイオフを直接規制する法律はないにもかかわらず、レイオフを実施する国内企業はほとんどありません。ここでは、レイオフに対する法的リスクと国内で起きた人員削減、さらに将来的なレイオフ導入の可能性を紹介します。

日本では法律上レイオフが進みにくい

レイオフやリストラなどの整理解雇は、日本の法律である労働契約法に基づき厳しく制限されています。企業の業績悪化で実施される整理解雇は、次の4つの要件を満たすことで有効となります。

要件概要
人員削減の必要性倒産寸前など、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められるか
解雇回避の努力配置転換や希望退職者の募集など、整理解雇を回避するための努力を会社が実行したか
人選の合理性勤続年数や年齢など解雇となる対象者を選定する基準が合理的で基準に沿った運用であるか
解雇手続きの妥当性整理解雇の必要性や時期・規模・方法などを労働者側と十分に協議を重ね、納得を得るための説明を行っているか
(参考:解雇、退職|厚生労働省

このように、日本では整理解雇に対して厳格な要件が課されており、たとえ再雇用を前提としたレイオフであっても、要件を満たさなければ違法となるリスクが高いのが現状です。総合的には、解雇規制の緩やかな諸外国のように、レイオフを柔軟に取り入れるのは難しいといえるでしょう。

国内企業の解雇事例

料理レシピのコミュニティサイトを運営するクックパッド株式会社では、業績不振により、2023年に入って3度の整理解雇を実施しました。対象となったのは、国内外の子会社を含む約230人です。

日本国内ではおもに退職勧奨という形がとられた一方で、海外子会社ではレイオフが実施されました。このように、同じ企業であっても、国内と海外で異なる手法が用いられている背景には、それぞれの国の法制度の違いが大きく影響していることがわかります。

レイオフは将来的に導入される可能性がある

現状は、国内企業でレイオフを実施するのは難しい状況ですが、今後も導入されないとは限りません。そのため、制度に対する理解を深めておくことが重要です。

近年では、終身雇用を見直す動きが広がり、雇用形態の多様化も進んでいます。こうした背景から、解雇規制の緩和を求める声も増えており、労働市場の柔軟性を高めるための議論も進んでいます。

そのため、将来的に日本でもレイオフ制度が導入される可能性は十分にあります。企業としては、今のうちから制度の仕組みを理解し、導入に備えた準備を進めておくことが求められるでしょう。

レイオフにおける注意点とは

レイオフを実施するには、企業は次のような注意が必要です。

  • 合理的で透明性を持った説明
  • 従業員へのフォローを定期的に行う
  • 信頼関係を崩さないための施策

最も重要なのは、レイオフの理由や選定基準について、合理性と透明性を持った説明を行うことです。従業員に納得してもらうには、曖昧な言葉を避け、なぜこの判断に至ったのかを具体的に伝える姿勢が求められます。

次に、レイオフを実施した後も、従業員への定期的なフォローを欠かさないことが大切です。一時的な措置の場合でも、対象者にとっては不安の大きい出来事であるため、今後の見通しや再雇用の可能性、生活への支援などを継続して伝えていく必要があります。

また、企業全体としての信頼関係を崩さないためにも、社内全体への説明やコミュニケーションも欠かせません。レイオフは一部の従業員だけの問題ではなく、職場全体に影響を及ぼすため、誠実な対応が不可欠です。

これらの配慮が欠けてしまうと、レイオフによって従業員のモチベーションが低下し、企業のブランドや信頼性にも悪影響を与える恐れがあります。そのため、実施する際には人を大切にする姿勢を示しながら対応していくことが重要です。

将来的な可能性に備えてレイオフを理解しよう

レイオフとは、企業が業績悪化時に実施する人員削減策であり、恒久的な解雇だけでなく再雇用を前提とすることもある点が特徴です。この点で、リストラとは大きく異なります。

海外ではGoogleやAmazonなどが大規模なレイオフを実施しており、日本でも注目されつつありますが、法的・文化的な壁があり導入は難しいのが現状です。

一方、日本ではレイオフのような施策ではなく、残業削減やアウトソーシング、ITツールの導入などによって人件費を見直すのが一般的です。しかし、今後もレイオフが導入されないとは限りませんので、将来的な選択肢の一つとして理解しておきましょう。

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この記事を書いた人

GMOサインが運営する公式ブログ「GMOサインブログ」の編集部です。
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