契約書は種類(類型)が多く、どれを使えばいいのかわからない…
間違った契約書を使ってしまい、あとからトラブルになるのが怖い…
契約書ごとの注意点を知りたい!
契約書作成の際には、取引の本質にあった契約類型を選ぶことが肝心です。契約類型によって法的効果や責任の範囲が大きく変わり、契約類型の誤認は思わぬ法的責任や税務上のトラブルを引き起こすことがあります。
この記事では、典型契約や非典型契約といった契約書について、契約類型ごとの具体例や注意点を解説します。また、ビジネスで用いられる一般的な契約書ごとに、類型や作成のポイントをお伝えしますので、参考にしてください。
契約書作成後の取り交わしには電子契約の利用がおすすめです。一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)/株式会社アイ・ティ・アール(ITR)の調査資料によれば、2025年の国内調査における電子契約システムの利用率は78.3%にも上ります(※)。当事者双方がオンラインで契約業務を進められるため、手間が少なくスピーディーな契約提携が可能です。
※出典:JIPDEC/ITR「企業IT利活用動向調査2025」
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目次
契約類型とは?典型契約と非典型契約の違いを解説
契約類型には「典型契約」と「非典型契約」の大きく2種類に分かれます。まずはそれぞれの違いを紹介します。
典型契約とは?
典型契約とは、民法に規定されている13種類の契約形態のことです。典型契約の最大の特徴は、契約内容に不明確な点があった場合でも、民法の規定が補充的に適用される点にあります。
たとえば、売買契約を結ぶ際に瑕疵担保責任(商品やサービスの隠れた欠陥に対する責任)について特に定めなくても、民法の規定が自動的に適用されるのです。これにより当事者間の合意が不十分でも、法律が定める基本的なルールに従って契約関係が規律されます。
典型契約は長い歴史の中で形成されてきた契約類型であり、判例も多く蓄積されています。そのため、万が一トラブルが発生した場合でも、解決の指針となる先例が存在する可能性が高いという安心感があります。
はじめて契約を結ぶ方や、法的知識に自信がない方にとっては、典型契約を基本として活用することで、予期せぬリスクを減らせるでしょう。
非典型契約とは?
非典型契約とは、民法に明文規定のない契約形態のことで、無名契約とも呼ばれています。典型契約の13種類に当てはまらない契約は、すべて非典型契約です。
現在では非典型契約の利用は一般的で事例も無数に存在しますが、背景には新しいビジネスモデルが次々と生まれているのに対し、法整備が追いついていないという実情があります。例としては、以下のものが挙げられます。
非典型契約の例
- リース契約
- フランチャイズ契約
- ソフトウェア使用許諾契約
- 秘密保持契約
- 労働者派遣契約
非典型契約の特徴は、契約内容を当事者間で自由に決められる点です。民法に明確な規定がないため、契約書の内容がそのまま権利・義務関係を決定します。
このため、契約条項の細部まで慎重に検討する必要があり、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。
典型契約13種類一覧|契約類型ごとの具体例と生じる権利・義務
典型契約は民法で具体的な規定が設けられており、契約当事者の権利と義務が明確に定められています。ここからは、典型契約13種類について、それぞれの契約で生じる権利・義務を解説します。
贈与契約(民法549条~554条)
贈与契約とは、民法549条に規定されているとおり、贈与者が無償で自分の財産を受贈者に与える意思を表示し、相手方が受け入れることで成立する契約を指します。
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
(引用:民法第五百四十九条)
贈与者は、贈与する物を特定した時点の状態のまま引き渡す義務を負います。
贈与契約の例
- 親から子への不動産や金銭の贈与
- 友人に美術品を譲る場合
- 慈善団体への定期的な寄付(定期贈与)
贈与契約では、原則として贈与者は目的物の瑕疵責任を負いません。なぜなら無償で与えるものについて厳格な責任を負わせるのは公平ではないからです。ただし、贈与者がその瑕疵を知りながら告げなかった場合は例外的に責任を負うことになります。
また、書面によらない贈与(口頭での約束など)は、まだ履行されていない部分について撤回できるという特徴があります。これは「言った・言わない」のトラブルを防ぐための規定といえるでしょう。
高額な財産の贈与を考えている方は、後々のトラブル防止のために公正証書などの書面を作成することをおすすめします。
売買契約(民法555条~585条)
売買契約とは、売主が財産権を買主に移転することを約束し、買主がその対価として代金を支払うことを約束することで成立する契約です。
売買契約の例
- スーパーでの食料品や日用品の購入
- インターネットショッピングでの買い物
売買契約では、売主と買主にそれぞれ権利・義務が発生します。売主は目的物の所有権を買主に移転し、契約内容に合う物を引き渡さなければなりません。一方、買主は代金を支払い、目的物を受け取る義務を負います。
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法五百五十五条)
また、売買の目的物に欠陥(瑕疵)があった場合、売主は「契約不適合責任」を負うことになり、買主は修理や代金減額、損害賠償などを請求できます。そのほかにも、売買契約を行う際は以下の点にご注意ください。
- 他人の所有物の売買も可能だが、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負う
- 手付金を交付した場合は、買主は手付放棄、売主は倍額の支払いで契約の解除が可能
- 契約に適合しない物を渡された場合、買主は目的物の修補などを請求できる
交換契約(民法586条)
交換契約とは、当事者同士が金銭以外の財産権を互いに移転することを約束する契約です。民法586条に規定されており、売買契約との違いは、代金ではなく物や権利そのものを対価として交換する点にあります。
第五百八十六条 交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法五百八十六条)
交換契約においては、当事者は約束した財産権を相手に移転する義務があり、また相手から財産権の移転を請求する権利を持ちます。財産権に契約不適合があった場合は、追完請求や損害賠償請求などの権利が発生します。
交換契約の例
- Aさんの土地とBさんの土地を交換
- 古本屋での本と本の交換
- 会社間での株式交換
また、交換するものの一部に金銭が含まれる場合、その部分については売買契約の規定が適用されるため、ご注意ください。
消費貸借契約(民法587条~592条)
消費貸借契約とは、借主が貸主から金銭や物を受け取り、種類や品質、数量が同じものを返還すると約束する契約です。以下のとおり、民法587条に規定されています。
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
(引用:民法五百八十七条)
この契約では、貸主は目的物を引き渡す義務があり、借主は同種・同品質・同量の物を返還する義務を負います。利息付きの場合は、借主に利息を支払う義務も発生します。借りた物そのものではなく、同じ価値を持つ物を返す点が特徴です。
金銭消費貸借契約の例
- 知人との金銭の貸し借り
- 銀行ローンなどの金融機関からの借入
金銭消費貸借では、民法上は無利息が原則となっていますが、特約により利息を付けることが一般的です。この場合、利息制限法による上限金利の規制を受けることに注意が必要です。また、書面によらない消費貸借の場合、貸主はいつでも解除できるという特徴があります。
友人間や家族間での金銭貸借でも、返済期限や金額について明確な約束をしておくことでトラブルを避けられます。「貸したつもりが贈与と思われていた」というような認識の齟齬がトラブルの元になりやすいので、しっかりと話し合っておくことが大切です。
使用貸借契約(民法593条~600条)
使用貸借契約とは、貸主が物を借主に引き渡し、借主がその物を無償で使った後、契約終了時に返還する契約です。消費貸借契約と違い、借りた物自体を返さなければなりません。また、無償である点が賃貸借契約と異なります。
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法五百九十三条)
使用貸借契約では、貸主は目的物を引き渡す義務があり、契約期間中は借主の使用を妨げてはなりません。また、借主は目的物を契約目的に従って使用し、契約の終了時に返還する義務を負います。
使用貸借契約の例
- 友人に一時的に自宅の空き部屋を無償で貸す
- 親族に車を無料で貸し出す
- 農具や工具を近所の人に無償で貸す
使用貸借は無償契約であるため、貸主の保護が重視されています。例えば、貸主に予期せぬ急迫の必要が生じた場合には、契約期間中でも目的物の返還を請求できます。
賃貸借契約(民法601条~622条の2)
賃貸借契約とは、賃貸人がある物の使用と収益を賃借人にさせることを約束し、相手方が賃料を支払うことを約束する契約です。民法601条に規定されており、使用貸借とは「有償」である点、消費貸借契約とは「借りたものそのものを返す」点が異なります。
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百一条)
身近な例としては、以下のとおりです。
賃貸借契約の例
- アパートやマンションの入居契約
- オフィスや店舗のテナント契約
- レンタカーや機械設備のリース
賃貸人は目的物を引き渡したり、賃借人の使用を妨げたりしないことはもちろん、必要に応じて目的物を修繕をする義務があります。賃借人は賃料を支払い、契約終了時に返還する義務を負います。
賃貸借契約では、そのほかにも以下の点にご注意ください。
- 賃貸借契約の存続期間は50年まで
- 賃借人は原則、賃貸人の承諾なしに第三者への転貸(又貸し)や賃借権の譲渡はできない
- 建物の賃貸借については、借地借家法によって賃借人が特別に保護されている
雇用契約(民法623条~631条)
雇用契約とは、労働者が使用者に対して労働に従事することを約束し、使用者がその対価として報酬を支払う契約です。以下のとおり民法623条に規定されていますが、現代では労働基準法などの特別法が優先して適用されるため、民法の規定が直接適用される場面は限られています。
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百二十三条)
雇用契約では、使用者は労働者に対して賃金を支払い、安全に配慮する義務を負います。一方、労働者は労働を提供し、使用者の業務上の指示に従わなければなりません。
雇用契約の例
- 企業と正社員の雇用関係
- 店舗でのアルバイトやパートの雇用
- 家政婦や介護ヘルパーの雇用
なお、雇用契約を結ぶ際の注意点は以下のとおりです。
- 期間の定めのない雇用契約では、解約の申入れから2週間で終了(労働者側からの申し出の場合)
- 期間の定めがある場合でも、やむを得ない理由があれば即時解除が可能
請負契約(民法632条~642条)
請負契約は、請負人が仕事を完成させることを約束し、注文者が完成させた仕事に対して報酬を支払う契約です。
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百三十二条)
雇用契約との違いは、「仕事の完成」という結果に対して報酬が発生する点です。請負人には仕事を完成させる義務と、目的物がある場合はそれを引き渡す義務があり、注文者には報酬を支払う義務があります。
請負契約の例
- 建築工事の請負
- システム開発の契約
- 機械の修理サービスの実施
完成後の検査方法や期限、瑕疵担保責任の範囲なども事前に合意しておくと、のちのトラブルを防げます。そのほか、以下の点にも注意が必要です。
- 注文者は仕事の完成前でも損害賠償をして契約解除ができる
- 注文者の指示による不具合は請負人が責任を負わない
- 目的物が契約の内容とあわない場合、発見から1年以内に通知が必要
委任契約・準委任契約(民法643条~656条)
委任契約は、委任者が法律行為を受任者に委託し、受任者が承諾することで成立する契約です。法律行為以外を委託する場合は準委任契約となります。それぞれ、民法643条と656条で規定されています。
委任契約・準委任契約の例
- 委任契約の例(法律に関する業務)
- 準委任契約の例(法律に関係しない業務)
受任者は委任された仕事を進めるうえで、善管注意義務があります。同時に、状況の報告や、委任事務の処理で得た金銭の引き渡しなどを行わなければなりません。一方の委任者は、有償で委任する場合に報酬を支払う義務や、必要な費用の前払い義務を負います。
委任契約の特徴として、いつでも解除できるという点が挙げられます。信頼関係を基礎とする契約であるため、その信頼関係が失われた場合には契約の継続が困難になるからです。ただし、不利な時期に解除して相手方に損害を与えた場合には、損害賠償責任が生じる可能性があるため注意が必要でしょう。
寄託契約(民法657条~666条)
寄託契約は、受寄者が物を保管することを約束し、寄託者が承諾すると成立する契約です。以前は物の引き渡しが必要な要物契約でしたが、民法の改正後は合意のみで成立する諾成契約となりました。
第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百五十七条)
受寄者は無報酬の場合でも、自分の財産を扱うときと同じように注意を払って預かった物を保管する義務や、寄託者の承諾なしに使用・再寄託しない義務があります。寄託者は、有償で依頼する場合に報酬を支払う義務や、預けた物によって受寄者が損害を受けた場合に賠償する義務を負います。
寄託契約の例
- トランクルームの利用契約
- 美術品の保管委託
- 銀行の貸金庫契約
クラウドストレージサービスなどのデータ保管サービスも、寄託契約の一種と考えられています。物理的な物だけでなく、データという無形の財産についても寄託契約の考え方が応用されているのです。
組合契約(民法667条~688条)
組合契約は、各当事者が出資して共同の事業を営むことを定めた契約です。組合は法人格を持たず、複数の当事者が契約によって共同で事業をおこなう形態を指します。
第六百六十七条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百六十七条)
組合員には出資義務があり、金銭だけでなく労務や信用の提供も出資の対象となります。組合の業務執行は原則として組合員の過半数で決定し、各組合員は業務を執行し、組合を代表する権限を持ちます。
組合契約の例
- 建設工事の共同企業体
- 弁護士や会計士の共同事務所
- 投資組合
組合契約の重要な特徴として「連帯責任」が挙げられます。組合の債務について、各組合員は連帯して責任を負うため、一部の組合員が支払不能でも他の組合員が全額を支払う義務が生じる可能性があります。
共同事業を始める際は、信頼できるパートナーと十分な協議を重ねることをおすすめします。
終身定期金契約(民法689条~694条)
終身定期金契約は、自身や相手、もしくは第三者が亡くなるまで、定期的に金銭などを相手や第三者に給付する契約です。老後の生活保障を目的とした私的年金契約や、不動産の譲渡対価を分割払いにする「リバースモーゲージ」などが類似の仕組みとなっています。なお、現在は公的年金制度が整っていることもあり、終身定期金契約はあまり使われていません。
第六百八十九条 終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百八十九条)
定期金債務者(金銭を支払う側)には、契約で定めた金額を定期的に支払い続ける義務があります。一方、定期金債権者(金銭を受け取る側)は、自己または第三者が生存している限り、定期金を受け取る権利を持ちます。当然ながら、定期金債権者が死亡した場合には契約が終了します。
そのほかの留意点は以下のとおりです。
- 終身定期金は日割り計算する
- 元本受領後の債務不履行で契約解除できる
- 解除は将来効のみ有する
和解契約(民法695条~696条)
和解契約は、紛争を当事者同士が譲歩することで解決する契約で、裁判上の和解や示談交渉による合意、調停における合意などが該当します。
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
(引用:民法六百九十五条)
「互いの譲歩」が特徴であり、一方的な権利放棄は和解契約には当たりません。また、和解契約が成立すると、当事者は合意した内容に拘束されます。
和解の基礎となった事項について錯誤があった場合でも、原則として和解契約の無効を主張できないため、注意が必要です。
ビジネスで用いられる具体的な契約類型と注意点
13種類の典型契約について解説しましたが、実際のビジネスではどの類型が用いられるのでしょうか。ここでは代表的な契約の類型とそれぞれの注意点を解説します。
非典型契約に分類される場合は、民法による明確な規定がないため、契約書の内容がそのまま権利・義務関係を決定してしまいます。契約内容を当事者間で自由に決められることはメリットですが、契約条項の細部まで慎重に検討しなくてはならない点にご注意ください。
業務委託契約
業務委託契約とは、企業や個人が業務を外部に委託する契約です。おもに以下3つの形態があり、それぞれ典型契約に分類されます。
- 請負契約
- 委任契約
- 準委任契約
請負契約は成果物の完成を目的とします。システム開発やWebサイト制作などが当てはまり、成果物に対して報酬が支払われます。契約時には仕様や品質基準、納期、検収方法を明確にすることが大切です。成果物に関するリスクは基本的に請負側が負います。
委任契約は法律関係の業務遂行が目的で、経営コンサルティングや法律相談などが該当します。成果を求める契約ではない点に注意しましょう。契約の際には、業務の範囲や報酬体系、秘密保持への合意が大切です。
準委任契約とは、法律関係以外の業務遂行を依頼する契約で、システムの運用保守やマーケティングなどに用いられます。成果だけでなく業務の過程も評価対象となるため、契約締結時には評価基準や進捗確認方法を明確に定めましょう。
秘密保持契約(NDA)
秘密保持契約(NDA)とは、ビジネスで取引先や従業員などと情報を共有するときに、その情報が第三者に漏れたり本来の目的以外で使われたりするのを防ぐ契約です。非典型契約に分類されるため、契約で保護される情報の範囲を明確に定義する必要があります。
NDAを締結することで情報漏えいのリスクを軽減し、締結先との信頼関係の構築にもつながります。
また、契約書には違反時の責任範囲や違約金についても記載しましょう。契約違反があった場合は、損害賠償請求や差止請求ができる根拠になります。
ソフトウェア開発契約
ソフトウェア開発契約とは、クライアントと開発会社やフリーランスの間で締結される、ソフトウェア開発に関する契約です。
ソフトウェア開発契約は基本的に請負契約の性質を持ちますが、開発過程での仕様変更が頻発するという特殊性があるため、非典型契約の側面も強いのが特徴です。
契約書には業務範囲、成果物の定義、スケジュール、報酬体系、品質保証などの基本項目を細かく明記する必要があります。特に以下の点に注意が必要です。
- 仕様変更が発生することもあるため、変更管理のプロセスを決めておく
- 知的財産権の帰属についても明確に定める
(開発中に生み出されたノウハウなどの権利をどちらが保有するか、完全譲渡か利用許諾かなど)
- 公正な評価をするため、検収では、具体的な検証項目・テスト環境・合格基準を事前に設定する
- 不具合が発生した際の対応期限や費用の負担についても明記する
そのほかにも、納期遅延の場合の対応やセキュリティについての記載も必要です。
ライセンス(使用許諾)契約
ライセンス契約とは、権利者(ライセンサー)が自身の持つ著作権や特許権などを、第三者(ライセンシー)に条件付きで使用を許可する契約です。非典型契約に分類され、おもに以下の点に注意が必要です。
- 許諾範囲
- 契約期間
- ライセンス料の算定方法(一時金方式・ランニングロイヤリティ方式、ミニマムロイヤリティ方式など)
- 支払いのタイミングや方法
まずは許諾範囲について、ロゴや技術など具体的にどの権利を使用できるかをチェックしましょう。また、許諾範囲が「日本国内のみ」「特定の業界のみ」など、地域や業種で制限される場合もあるので、あわせて確認します。
契約期間や更新の条件も明らかにしておくことが必要です。「契約締結から5年間」などの期間を設定するとともに、自動更新の有無や更新条件、途中で契約を解除できるかも定めます。
販売代理店契約
販売代理店契約とは、メーカーが自社製品の販路拡大を目的として、代理店に販売促進を委託する契約です。非典型契約に分類されます。委任契約の性質を持ちますが、多くの場合、商品の仕入れ方式や販売地域の独占性など、独自の要素を含む非典型契約に分類されます。
販売代理店契約では、テリトリー(販売地域)の設定が重要です。独占的販売権を付与するのか、ほかの代理店と競合する可能性があるのかを明確にしましょう。また、以下の項目も定めておくべき重要な要素です。
- 契約期間と更新条件
- 解約事由
- 販売目標の設定と未達成時の措置
- 仕入価格や販売価格の決定方法
- 製品保証やアフターサービスの責任分担
特に解約時の在庫商品の取扱いや顧客データの帰属については、事前に合意しておかないとトラブルの原因となります。
製品やサービスの特性に応じた独自の条項も必要になるため、業界の慣行や前例も参考にしながら、双方にとって公平で持続可能な契約を目指すことが大切です。
人材派遣契約
人材派遣契約は、派遣元企業が雇用する労働者を派遣先企業に送り、派遣先の指揮命令で働かせる契約です。労働者は派遣元と雇用契約を結び、給与も派遣元から支払われます。
労働者派遣法という特別法に基づく契約であり、雇用契約とも請負契約とも異なる独自の契約類型です。偽装請負との大きな違いは、指揮命令系統です。請負では受注者が労働者を管理しますが、派遣では派遣先が直接指示できます。
そのため、責任の所在が曖昧になりやすく、契約書で明確に定めておく必要があるのです。特に労働安全衛生や機密情報の取扱いについては重点的に取り決めましょう。
労働者派遣法では派遣可能期間や派遣禁止業務など様々な規制があります。法令違反のリスクを避けるため、最新の法改正情報を常に確認することが重要です。
フランチャイズ契約
フランチャイズ契約は、本部(フランチャイザー)が自社のブランド、ノウハウ、ビジネスモデルを加盟店(フランチャイジー)に提供し、対価やロイヤリティを得る契約です。外食チェーン店や小売業などで広く活用されています。
一定の独占的経済関係や管理命令権を伴うため、単一の典型契約ではなく、販売代理店契約、委任契約、リース契約などの要素が組みあわさった独自の契約形態といえます。契約書に定めるおもな項目は以下のとおりです。
- 提供されるブランドやノウハウの範囲
- 支援内容
- ロイヤリティの計算方法
- 契約期間・更新・解除条件
また、加盟店の専属権や地域制限についても明確なルールを設けることがトラブル防止につながります。
契約類型に関するよくある質問
典型契約と非典型契約の違いは?
典型契約は民法などで規定された契約で、法によりルールが整備されているものです。契約内容に不明確な点があった場合でも、民法の規定が補充的に適用されます。
非典型契約は法令上明確な規定がなく、当事者の自由な意思で内容や救済措置を定める点が異なります。契約書の内容がそのまま権利・義務関係を決定するため、契約条項の細部まで慎重に検討しなくてはなりません。
典型契約に該当する場合の注意点は?
法定ルールに従うため、契約書の記載内容が法律の定める要件を満たしているか、義務や救済措置について十分に確認・検討する必要があります。
非典型契約に該当する場合の注意点は?
法令上の具体的な規定が不足するため、双方の合意内容を詳細かつ明確に定め、万一のトラブル防止のためのリスク管理と補完条項の設定が大切です。
契約の類型とは何ですか?
契約の類型とは、契約の性質・内容・法的効果に応じて分類する体系で、契約ごとのルールや特徴を明確にし、適用法規を理解しやすくするための概念です。
契約の13類型とは?
契約の13類型は、売買、賃貸借、請負、委任、贈与など、代表的な契約形態を分類した枠組みで、各類型に特有の法的規定や実務上のポイントがあります。
業務委託契約の類型は?
業務委託契約は、成果物の有無や遂行方法により、請負契約・委任契約・準委任契約に分類されます。契約内容に応じて、法規制や実務上の留意点が異なります。
契約書の取り交わしは電子契約がおすすめ
契約類型ごとに内容や注意点は異なりますが、どのような契約でも適切に締結・管理することでトラブルを未然に防げます。契約の種類によって確認すべきポイントや発生しうるリスクは変わってくるため、それぞれの特性を理解しておくことが大切です。
また、契約を取り交わす際は、紙の契約書よりも電子契約がおすすめです。
オンラインで完結するため、契約までの時間を短縮できます。また、印刷にかかるコストや郵送費、印紙代がかからないため、コストカットにもつながります。
「電子印鑑GMOサイン」では、立会人型と当事者型の両方の電子署名方式に対応しており、セキュリティ面でも認定タイムスタンプやルート証明書を使用し、契約書の改ざん防止や透明性の確保が可能です。
業界内の同水準のサービスと比較してもお得な料金で利用できる点が特徴ですが、さらに月間5件までの電子契約が可能な無料のお試しフリープランも用意しています。契約書の作成を行う際はGMOサインでの電子契約をお試しください。