居宅介護支援事業所は、主に在宅で生活する要介護者やその家族を支援する、介護サービスの提供機関の一つです。ケアマネージャー(介護支援専門員)と呼ばれる専門職が常駐しており、利用者の介護サービスに関する計画(ケアプラン)を作成します。
本記事では居宅介護支援事業所の役割から利用対象者、利用時の手続きの流れまで詳しく解説します。
現在介護業界ではDX化が急速に進んでいます。DX化の要素の一つ「電子契約」について、次の記事で詳しく解説しています。介護業界で業務改善に取り組まれている方必見の内容です。ぜひご覧ください↓
あわせて読みたい
介護業界で電子契約を活用!具体的なメリットや導入手順を徹底解説
日本の介護業界は、少子高齢化により要介護者数が増加し、人手不足が深刻化しています。この問題を解決するためには事務作業の効率化が急務ですが、救世主として注目さ...
目次
居宅介護支援事業所の役割
居宅介護支援事業所は、次の役割を果たしています。
なお、居宅介護支援事業所を利用するにあたって、料金の支払いはありません。費用は介護保険で全額賄われる仕組みになっています。
居宅介護に関する相談
一般の人の多くは、介護サービスに関する詳しい知識は持ちあわせていません。家族に介護が必要な状態となった場合に、どのような居宅介護サービスを受けられるのかよくわからず、困ってしまう人も多いでしょう。
居宅介護支援事業所では、居宅介護サービスを利用する予定の人やその家族にからの相談を受けつけています。ケアマネジャー(介護支援専門員)という介護サービスの専門家が相談に対応していますから、介護に関してわからないことがあれば、どのようなことでも質問可能です。
また、さまざまな居宅介護サービスのなかから、それぞれのサービス内容や特徴などを詳しく説明してもらえます。
要介護認定の申請
介護保険を利用するには、要介護認定を受けている必要があります。自治体に必要書類を提出し、申請手続きをすることで認定を受けられますが、実際に利用者やその家族が手続きを行うこと自体が難しいケースもあります。そのようなときに、居宅介護支援事業所に要介護認定の申請を依頼することが可能です。
要介護認定は利用者の状態に応じて要介護1~5までと、要支援1・2の7段階に認定されます。段階によって、利用可能な居宅介護サービスが決まる仕組みです。また、居宅介護サービスの種類によっては、介護認定の段階により料金が変わります。
あわせて読みたい
要支援と要介護の違いは?サポートの必要性と認定の申請方法を解説
介護サービスを利用する可能性を視野に入れ、準備として今から要支援と要介護の違いを把握しておきたいと考えていませんか。要支援と要介護は、審査によって認定されま...
ケアプランの作成
ケアプランは、介護サービスを利用する際に作成しなければならない書類です。利用者の状態を把握し、どのような介護サービスが適切か判断するために使用されます。
通常は、要介護認定を受けた後に居宅介護支援事業所に依頼してケアプランを作成します。ケアプランの作成は、居宅介護支援事業所の役割のメインとなるため、居宅介護支援事業所はケアプランセンターと呼ばれることもあります。
介護事業者や自治体との連絡・調整
居宅介護サービスを利用するにあたって、介護事業者や自治体との連絡が必要となります。介護事業者や自治体に対して、要望がある人もいるでしょう。そのような場合に、利用者と介護事業者や自治体との間に入って連絡を伝えたり調整をしたりするのも、居宅介護支援事業所の役割の一つです。介護事業者や自治体に対して要望があるときには、居宅介護支援事業所を通じて伝えることもできます。また、介護事業者と自治体との間に入って連絡や調整を行うこともあります。
ケアマネジャーとは
ケアマネジャーとは、介護保険や介護サービスに関する専門的な知識を備えた人のことです。介護支援専門員と呼ばれることもあります。居宅介護支援事業所にはケアマネジャーが在籍しており、手続きや相談などの業務を担っています。
なお、ケアマネジャーが在籍しているのは、居宅介護支援事業所だけではありません。一部の介護施設にはケアマネジャーの設置が義務づけられており、在籍しています。主に施設に入所して介護サービスを受ける利用者の支援やケアプランの作成が担当業務です。
介護施設のケアマネジャーは施設ケアマネとも呼ばれ、対して居宅介護支援事業所のケアマネジャーは居宅ケアマネと呼ばれます。
あわせて読みたい
ケアマネージャー(介護支援専門員)とは?仕事内容や役割を簡単に解説
初めての介護はわからないことが多いものの、誰かに相談したくても知り合いには話しにくい、専門家の伝手(つて)もないといった場合、頼りになるのがケアマネージャー...
居宅介護支援事業所として指定を受けるための基準
居宅介護支援事業所は、自治体から指定を受けて事業を行っています。指定を受けるための基準については以下の通りです。
人員に関する基準
居宅介護支援事業所の管理者は、常勤のケアマネジャーでなければなりません。管理者が通常のケアマネジャーの業務を行うことも可能です。
また、常勤のケアマネジャーの人数に関しても、担当する利用者の人数に応じて基準が設けられています。担当する利用者の人数が35人につき1人以上必要です。
たとえば、利用者が36人以上70人以下なら、常勤のケアマネジャーが2人以上いなければなりません。常勤のケアマネジャーの人数に35をかけた人数が、担当できる利用者数の上限です。
2018年度の介護報酬改定によって、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネージャーであることが要件となりました(※猶予措置あり)。
主任ケアマネージャーとは?
ケアマネージャー(介護支援専門員)のなかでもとくに高度な知識と経験を持つ専門職で、5年以上の実務経験と専用の研修を受講することなどが要件となっています。
組織に関する基準
居宅介護支援事業所は、事業目的が介護事業の法人である必要があります。法人の種類は、限定されていません。社会福祉法人やNPO法人はもちろんのこと、株式会社や合同会社でも居宅介護支援事業所の指定を受けることができます。
設備に関する基準
設備に関しては事務室と相談室、衛生設備の設置が義務となっています。事務室に関しては、専用の区画が必要になります。ほかの用途で使用している部屋の一部分を事務用に使用しているだけでは、事務室とは扱われません。自宅兼事務所などとしている場合には、居住部分を明確に区別している必要があります。
相談室は、利用者やその家族が相談に訪れたときに対応するための部屋です。個室にするかパーティションを使用するなどして、プライバシーを保護できる環境にしていなければなりません。
衛生設備としては、手を洗うための洗面所が必要です。ハンドソープや消毒液などを設置し、衛生を確保できる状態にしていることが求められます。
いずれの設備も、面積などの基準は設けられていません。
居宅介護支援事業所の利用対象者
居宅介護支援事業所は、居宅介護サービスを利用するための支援を行っているところです。そのため、要介護認定を受けている人を対象にしています。
要介護認定の申請を行った場合でも、要支援認定になるケースもあるでしょう。要支援認定となった場合には居宅介護サービスは受けられませんが、介護予防サービスを受けることができます。介護予防サービスのうち、自宅に居住したまま利用する居宅介護予防サービスを受ける際にも、居宅介護支援事業所での相談が可能です。
居宅介護支援事業所を利用するときの流れ
居宅介護支援事業所を利用する際には、次のような流れで行います。
STEP
要介護認定を受ける
最初に、要介護認定を受ける必要があります。手続きを行う際には、申請書を作成して市区町村の窓口で提出しましょう。このときに、介護保険被保険者証の提示も必要です。申請を行うと、職員が自宅や主治医を訪問するなどして認定調査を行い、一次判定が行われます。その後、主治医意見書などを元に二次判定を行い、要介護(要支援)状態と認められれば、認定通知書が発行されます。
STEP
居宅介護支援事業所を選ぶ
介護認定を受けたら、自治体または地域包括センターで地域の居宅介護支援事業所のリストを受け取ります。自宅からの近さやケアマネージャーとの相性を判断材料としながら、ケアプランの作成を行ってもらう居宅介護支援事業所を選定します。
居宅介護支援事業所および担当のケアマネージャーとの関係は、今後の介護の質を大きく左右する大切な要素です。要介護者本人はもちろん、家族のなかでよく話し合い、ベストな選択ができるよう慎重に進めましょう。
STEP
ケアプランを作成する
居宅介護支援事業所と担当のケアマネージャーが決まれば、さっそくケアプランを作成してもらいます。1回で作成するのではなく、何度かにわたって居宅介護支援事業所に足を運んで面会しながら作成するのが一般的です。ケアマネジャーが自宅を訪問することもあります。利用者本人や家族から話を聞くのに加えて、自宅の状況などを見るのも自宅訪問の目的の一つです。
ケアプランの原案が作成できたら、本人や家族が内容を確認します。必要に応じて修正を加え、本人や家族の同意を得られたら、ケアプラン完成となります。その後、利用者や家族、介護事業者に交付するという流れです。
STEP
介護事業者と契約してサービスを利用開始する
ケアプランが交付された後は、介護事業者との契約手続きを行います。必要な連絡や調整などは、居宅介護支援事業所の方で行ってもらうことが可能です。問題なく契約を締結したら、居宅介護サービスを利用開始するという流れとなります。
STEP
モニタリングを行う
居宅介護サービスを利用開始したら、それで終わりではありません。その後、居宅介護サービスが適切に行われ、利用されているのか確認することも、居宅介護支援事業所の役割の一つです。月に1回以上の頻度で担当のケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、モニタリングを行います。もし、ケアプランが現状に合わないと判断された場合は、ケアプランを修正したうえで再交付となります。
あわせて読みたい
介護施設に入るには?入居条件や施設の種類、入居手順を解説
日本には、民間の老人ホームや地方自治体が運営する施設など、さまざまな介護施設が存在します。いざ介護施設を利用したいと思っても、一体どのような条件を満たせばそ...
居宅介護支援事業所を選ぶときのチェックポイント
居宅介護支援事業所を選ぶ際には、次のようなポイントをチェックしておきましょう。
自宅からの距離
居宅介護支援事業所には、何度も足を運ばなければなりません。自宅からあまり遠いと、往復に時間がかかり大変です。できるだけ自宅に近いところを選びましょう。
相性が良いかどうか
ケアマネジャーとは、何度も会って話をすることになります。本人や家族と相性が悪いと話がスムーズに進まず、ストレスを感じてしまうこともあるかもしれません。本人や家族との相性を重視して選ぶようにしましょう。
聴く力があるかどうか
ケアプランを作成するにあたって、聴く力は大事です。本人や家族の要望をきちんと聞いてくれる居宅介護支援事業所なら、安心して依頼できます。潜在的な要望を汲み取るような問いかけをしてくれるケアマネジャーなら、なお良いでしょう。
提案力があるかどうか
本人や家族が希望することのうち、すべてが叶うとは限りません。ある程度の妥協が必要なこともあります。そのようなときに、できるだけ希望に近い形にできるように提案してくれるケアマネジャーを選ぶのがおすすめです。
まとめ:信頼できる居宅介護支援事業所を選び、利用者もその家族も安心の毎日を
居宅介護支援事業所は、居宅介護サービスを利用する際に必要な手続きを行ってくれるところです。ケアマネジャーという専門家が在籍しており、相談なども受けつけています。要介護認定の申請も自分で行うのが難しい場合には、居宅介護支援事業所へ依頼可能です。家族に居宅介護サービスの利用が生じたら、居宅介護支援事業所に相談してみましょう。
あわせて読みたい
親の介護は施設に任せるべき?メリットや費用面での対策、介護離職を避けるための工夫を解説
親が高齢になり介護が必要になった際、自分で介護するのか、それとも施設に入所してもらうのかは非常に悩ましいテーマです。介護サービスの利用に対する費用面の問題は...
介護業界が抱える課題を「GMOサイン」が解決します!
高齢化社会がますます加速する日本国内において、介護業界は「人手不足」「現場の負担の増大」「地域格差」など、さまざまな課題を抱えています。
電子印鑑GMOサインは、そんな介護業界を「契約」の面で徹底的にサポートします。
GMOサインは国内シェアNo.1(※)の電子契約サービスです。介護サービス提供時には利用者との間で契約を交わします。サービス提供者は契約の確認や署名捺印のために利用者のもとを何度も訪れなければならない、そのようなケースもあるでしょう。また、遠方で暮らす家族の方の同意を得なければいけない場面もあります。
そのような介護における契約時に役立つのが、自宅にいながらでも契約書の確認から署名まで行える電子契約サービスです。利用者の利便性向上はもとより、紙の契約書の廃止によるコスト削減、また契約締結までの時間短縮など、電子契約サービスは今後の介護業界において必須のツールになります。
GMOサインは、電子契約におけるあらゆる基本機能の提供はもちろん、パソコンやスマートフォンを利用しない高齢者のためにタブレット端末を利用した手書きサイン機能も用意しております。さらにGMOサインは、利用者との契約だけでなく、現場で働く方々との雇用契約や業務委託契約にもおすすめです。
まずはお試しフリープランにて、電子契約の一連の流れや操作性をぜひ体感してみてください。
※1 「電子印鑑GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントとする 。自社調べ(2023年11月)
※2 電子署名およびタイムスタンプが付与された契約の送信数(タイムスタンプのみの契約を除く。電子署名法の電子署名の要件より)。自社調べ(2023年12月)